\documentclass[a4paper,9pt,fleqn]{jreport} \title{内外価格差の発生原因について\\ {\normalsize ―マークアップ・プライシングの実証分析を通ずる検討―\\馬場直彦\\についての発表}} \author{{\small sin}} \date{{\small 平成13年10月16日}} \pagestyle{plain} %%%%%% TEXT START %%%%%% \begin{document} \maketitle \chapter*{{\large 1. はじめに(目的・趣旨・構成)}} \ \ \ 貿易財・非貿易財セクター間の生産性格差\footnote{詳しくはバラッサ=サムエルソンモデルに関する文献\cite{baba1,ballasa1,samuelson1}等を参照}以外で内外価格差を説明する理論としてのマークアップ・プライシングの可能性を考え、複数の手法により日本の産業セクターごとのマークアップ・プライシングの測定を行った。 \begin{flushleft} {\normalsize {\bfseries 結論の要約}} \end{flushleft} 1.規模に関する収穫一定+中間投入を含む産出量ベースのデータによる測定\footnote{詳しくは\cite{hall1}を参照} \begin{eqnarray} \to & & markupは非製造業>製造業(繊維・食料品業では1以下) \nonumber \\ & &特に規制下産業(農林水産・金融・保険業)で顕著 \nonumber \end{eqnarray} 2.規模の経済を考慮したモデル \begin{eqnarray} \to & & 規模の経済は製造業≒非製造業、金融・保険、卸売・小売業で高い \nonumber \\ & &markupは非製造業>製造業 \nonumber \end{eqnarray} 3.費用関数と需要関数の同時推計モデル \begin{eqnarray} \to & & 製造業、非製造業で完全競争が棄却された \nonumber \\ & & 非製造業のほうが寡占度を示すパラメータの水準、有意性が高い\nonumber \end{eqnarray} 4.費用関数から技術進歩の効果をみる \begin{eqnarray} \to & & 製造業では費用削減効果が見られたが非製造業では未検出 \nonumber \\ & & 非製造業では技術進歩の遅れが限界費用の相対的高止まり\nonumber \end{eqnarray} 5.マークアップ率を過去20年間にわたり時系列的に見る \begin{eqnarray} \to & & 製造業は横這いだが非製造業では下落傾向\nonumber \\ & & markupも勘案すると非製造業は競争が強まってきたが、相対的にまだ弱い\nonumber \end{eqnarray} 6.景気循環 \begin{eqnarray} \to & & 製造業・非製造業ともmarkup比率は景気と同方向に動く \nonumber \\ & & 非製造業のほうがその傾向が強く、不況時の「価格破壊」の要因に\nonumber \end{eqnarray} \chapter*{{\large 2. ソロー残差を用いたマークアップ・プライシングの検証}} \begin{flushleft} {\normalsize {\bfseries (1)規模に関する収穫一定のもとでの検証}} \end{flushleft} \begin{flushleft} {\normalsize イ. 付加価値データによる検証方法} \end{flushleft} ソロー残差\footnote{導出は付録1を参照}では付加価値ベースの生産量が想定され、それは一次同次と完全競争の2つの仮定のもと生産量の変化のうち生産要素の変化で説明できない部分の残差として求まる。実際の推定では、完全競争の仮定が成立しないときにソロー残差に生じるバイアスを利用してマークアップ比率を推定する。 技術進歩率$\theta_{VA,t}$を平均進歩率$\theta_{VA}$とランダムな誤差項$\epsilon_{VA,t}$に分離し、それから生産量$\Delta q^k_{VA,t}$や労働投入比率$\Delta l_{VA,t}$には影響を与えるが誤差項とは無相関な外生変数$\Delta Z_t$があると仮定し、それを利用。 マークアップ比率$\mu_{VA,t}=1$のときソロー残差$\theta_{VA,t}$と操作変数は無相関だか$\mu_{VA,t}\neq 1$のとき相関を持つ。したがって、ソロー残差を操作変数に回帰し、操作変数の係数が有意かどうかを調べることで完全競争を検定。 マークアップ率を時系列変化しないと仮定すればそれも操作変数法で求められる。 \begin{flushleft} {\normalsize ロ. 付加価値データを使用することによる推計バイアスと修正モデル} \end{flushleft} 付加価値ベースの生産量の変化率は産出量ベースのそれよりも揺れが大きくなりやすく、ソロー残差もより過大(または過小)推定しやすい。また、マークアップ比率も中間投入財の変化率$\Delta m_t$が生産量の変化率と相関関係を持つ場合バイアスを持ち、1を境に過大(または過小)推定しやすい。したがって、中間投入量を考慮に入れたモデルを作る必要がある。 \begin{flushleft} {\normalsize ハ. マークアップ比率の測定結果} \end{flushleft} 付加価値ベース(VA)と産出量ベース(G)両方のデータを使用。(ただしマークアップ比率は時系列で一定と仮定)操作変数法、OLSで1972年度から1992年度まで22分類(製造業:13分類、非製造業:9分類)について推定。 結果は付加価値ベースではバイアスがみられ、有意性も相対的に低いので産出量ベースのデータの推計結果を見ると、結論1のような結果が得られた。 \chapter*{} \begin{flushleft} {\normalsize {\bfseries (2)規模の経済性とマークアップ・プライシング}} \end{flushleft} \begin{flushleft} {\normalsize イ. 基本的な考え方と分析方法} \end{flushleft} 規模の経済性が発生しているとき、他の条件が一定なら収穫一定時よりも限界費用が低く先のような分析を規模の経済性の存在時に行うと限界費用の過大評価とマークアップ比率の過小評価をもたらす。 分析としては、まず規模の経済性の指標$\delta_G$を生産量の変化率をコストシェアをウエイトとする生産要素の加重和に回帰し、その係数として得る。そして次に利益率$S_{\pi}$を用いてマークアップ比率$\mu_G$を求める。 \begin{flushleft} {\normalsize ロ. 規模の経済性、マークアップ比率の測定結果} \end{flushleft} 推定期間、方法は(1)と同じ。規模の経済性、マークアップ比率については結論2の通りで特に非製造業では金融・保険業、卸売・小売業、製造業では精密機械でマークアップ率が2を超えているが農林水産業については(規模の経済性の低さもあり)マークアップ比率も低い。利益率は、製造業が5%程度なのに対し、非製造業は15%以上となっており、不動産業、金融・保険業で顕著。全体的には(1)の分析と大体同じ。 この分析では規模の経済性の指標を生産・費用の関係からみているので技術進歩と厳密に区別するのは実際には困難であり、またこの指標にはマーシャル的な外部経済効果も含まれていることに注意。 \begin{thebibliography}{4} \bibitem{baba1}馬場直彦、「内外価格差について―サーベイを通じた考え方の整理―」『金融研究』第14巻第2号、日本銀行金融研究所、1995年7月 \bibitem{ballasa1}Ballasa, Bela. "The Purchasing Power Parity Doctorine: A Reappraisal,"{\itshape Journal of Political Economy\/} 72, pp.584-596, 1964. \bibitem{hall1}Hall, Robert E."The Relation between Price and Marginal Cost in U.S. Industry,"{\itshape Journal of Political Economy\/} 96, pp.921-947, October 1988. \bibitem{samuelson1}Samuelson, Paul. "Theoretical notes on trade problems,"{\itshape Review of Economics and Statistics\/} 46, pp.145-154, 1964. \end{thebibliography} \end{document}