| FF11と経済学 |
| ファイナルファンタジー11とは、スクウェアにより発売されたネットワークRPGである。 このゲームは、ネットワークゲームの初心者から上級者まで多く存在したせいか、ゲームバランスに苦慮し、ゲームシステムなどにおいて様々な批難が生じたが今回はそれについて触れない。他のゲームとの比較もせず、むしろ、一プレーヤーとしてFどのような「経済学観点からの楽しさ」があったかを述べたい。 まず興味深かった点は、「バザー」である。これは、各PCが自分の持ち物の中で売りたいと思った物を自分の好きな価格に値付けをして「展示」するというものである。ただ、「展示」といってもシステム上はただPCの名前にところに袋のアイコンがくっつくだけなので、戦闘中だろうが移動中だろうがそれは可能であるという点で自由度は現実世界のフリーマーケットよりもはるかに高い。 また、バザーにはコメントも付け加えることが出来る。例えば、 「callを入れたら値下げします」 と、交渉を自分が受け付けることもアピールできるし、また 「○○を1000ギルで売ってください」 と、逆に欲しい物を募集することもできる。 そこで、バザーを見てみたい、またはバザーで何か購入したいと思う人は、そのバザーをしているPCを「じっと見つめる」ことでバザーを除くことができ、ほしいものがあれば自動販売機のように買えるのである。この過程において、売り手のPCは買い手を選べないことに注意する必要がある。また、PCは自ら資金を投入することで「職人」にもなれる事が出来るので、PCは生産者も兼ねる。 この取引で最も注目すべき点は、PCは買い手にも売り手にもなれるという点である。それゆえ、時間の機会費用という点を除けば取引費用もないので、裁定取引が発生しうる。例えば、1000ギルでイベントや店売りなどにより確実に売ることが可能であったりするものが500ギルで売っている場合などがしばしば見受けられるが、そのような時にその裁定機会を知っているPCにとっては転売する為に買うインセンティブが働く。 しかし、当然ながらFF11の世界でも同時点で一物一価とはならない。その理由としては、転売をすることの機会費用の存在もあるだろうが、商品の各バザーにおける価格に関するPCの情報の非対称の可能性の方が理由として大きいように思われる。なぜなら、FF11において「オークション」(実際は共用の値札の見えない早い者勝ちの自動販売機と見た方がいいが)のシステムが導入され、過去の取引履歴により「相場」(これはしばしば独占的供給者により操作されるが)がわかるようになることでそのようなバザー間の同商品の価格の乖離は著しく減少したからである。 ただ、「オークション」は一般的には競争的ではない。特に、一部のレアモンスターしか持っていない物だったり、一部の上級職人(これもPCであるが)しか生産できない物などは特に価格が怪しい。一気に値崩れしたりすることも多い。 また、商品が生産可能なものの場合、始めは価格が高いものの、時間が経過し、商品の手に入れかたや生産技術に関する情報が漏洩したり、職人の増加や高LVPCの増加により供給が増えるにつれ供給が増加し、結果として利益がゼロになったり、赤字になる場合も多い。実際、発売日から半年も経つとほとんどの中級武器防具は非常に安く(店売り価格、つまり「底値」)なっており、新規参入の生産者が赤字で生産するのが当然となった。 また、バザーや「オークション」で取引される商品は、最終消費財だけではなく、生産要素になるという点も興味深い。例えば、ポイズンナイフという武器のレシピが発見されると、新たな生産が生じ、当然その原料となる毒素が必要となるので当時は何にも使い道が無いとされた「毒麦粉」の価格が数倍に跳ね上がり、さらにはその毒麦粉を落とすモンスターを狙って狩るPCが現れる、といった事態がある。これは、特に発売日から時間がたって多くのPCが職人として修行を始め、生産を行う為にスキル上げの買占め行為が行われたときに顕著に表れ、最終生産物価格の異様な低下、供給過剰と生産要素となる商品の価格の上昇、供給不足が生じた。 FF11では武器防具は消耗しない、完全な耐久消費財だったために転売もされて供給過剰になったという点は当然であり、その点では実際の経済と大きく違うが、上記で上げた点以外にも多くの示唆があると思われる。 例えば、PCのバザーをする場所についての選択行動について考えると、産業組織論の店の立地の話になる。一番人が集まる町の広場だと、ライバルが多いためにバザーを覗かれさえしないことも多く、従って特に売りたい商品に特定の傾向が見られる場合ならその売りたい商品が需要されるところに立地するなどである。例えば私の場合は、釣りを本業としていたので調理ギルドの前で魚をバザーしていた。実際に、こういった専門バザーはギルドの前などでよくみられ、その運営は特定のベテランPCによってなされていた。これは、特定の商品を欲しがる買い手にとっても機会費用がなくなり、また売り手にとっても客を確保し、在庫を減らしやすくなるという点では双方にメリットがあっただろう。ただ、適当にいろいろなものを売る場合はとにかく人が多いところにバザーを出した方が売れる傾向があったように思われる。これは、店が集中している電気街と人のいるところならどこでもあるコンビニの違いのようなものかもしれない。 また、FF11では「金持ち」も少数存在するわけだが、かれらは特に他のPCよりもプレイ時間が異様に長いわけではない。また、始めはみんな同じもちギルなため、始めからハンデがあったわけでもない。そこで、彼らを観察してみると、その稼ぎ方が大体わかる。それは、裁定機会をみつける行動力、商品の利用方法や価格に関する情報の豊富さ、未知なる物への探究心、ナンバー1の技術の生産者、などである。大体要約すると、「裁定の利用」と「独占利潤」の2点であろう。 なお、「裁定の利用」は、FF11の管理者と一部PCの戦いの歴史といえるかもしれない。例えば、店で売っている銀鉱を利用して生産を行いそれを店に売ると大量の利益がでる、という現象が初期の段階であった。当然それはFF11の管理者としては都合が悪いわけで、すぐに修正されたがその修正までの間に一部のPCは多額のギルを稼いだ。 これまで、主にFF11の「現実認識」について書いてきたが、これらの情報を得るにあたって最も注意した指標は「価格」である。いちいち生産者の情報を人に聞かなくても価格に注目することで新たな生産技術の発見や供給の変化が推測できるからである。しかしながら、そういった予想は必ずしも当たるわけではない。物によってはかなり複雑な事情があったり、誤情報による需給の変化などもあるからである。複雑な事情の例に、寡占市場で「消費者重視」の原価・安値販売をする職人が上げられる。彼らは積極的に値下げを行うので同業者から見れば「悪魔」と恐れられる。ただし、それら職人は他業種においては十分な利潤をあげていたり、生産が困難な上級アイテムに関しては値下げをしなかったりするので、その安値販売は在庫を抱えるリスクの減少を考慮すると彼らなりの合理的な行動であることは十分に考えられる。 単純化されたゲームの世界でもこれだけ複雑なら、現実の経済を見る上で指標にだけ頼るに危険性はもっと高いだろう。 とまとめてみたものの、結局は自分がいかにゲーマーかアピールしただけじゃん。 |
| 2003年2月16日
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