前回までのあらすじ  確か、バンドのベースが決まったよ。 では、本編をどうぞ。

さて、今までで一番妙な決まり方はしたが、今までで一番腕は 立つような気はする。 「それじゃあ、これからよろしくね。」 私は言うと彼女は答えた。 「はい、宜しくお願いします。」 ふむ、中々真面目そうである。ある種私の嫌いなタイプである。 「年は?・・」 「16です」 わ、若い・・こんな年でベースをこなすのだから世も末だ。 そういえば「若い」と「苦い」をよく書き間違えるのは私だけであろうか。 「右と左」を「茶碗と箸」で説明されてピンとこないのは私だけであろうか。 「そ、そっかあ。女子高生ねえ。若いねえ」 「いえいえ、私なんかより15歳以下の子のほうが若いですよ。」 もっともだ、正論である。というよりバカにされた気がする。 「彼氏は?」 「います、いっぱい。」 せめて数人で勘弁願いたい。「いっぱい」の中の男の一人一人が哀れに思える。 「ご両親は?」 「います、二人います」 三人いたら怖かろう。この小娘はなんでも一言多い。 こんな真面目なようなとぼけたアホのような性格が最近の男どもには人気があるのか。 まだまだ研究の余地がある。 「おめぇよお、本当にベースできんのがい?」 田舎男が尋ねる。なんとなく構成的に妙である。 「出来ますよ。随分練習しましたし、気分しだいでなんとでもなります。」 「んでば、安心だぁ」 いや、むしろ私は不安になった。 「高校の勉強は難しい?」 主婦が聞く。もはやベースの話はどこか遠く彼方へ飛んでいってしまった。 「はい、ここだけの話、小中学校より難しいです。」 ここだけの話ではないと思うが、もっともだ。 「奥さんは子どもはいねぇのがい?」 田舎男が主婦に問う。このメンバーでひとつの話題でコミニュケーションを 行うのは無理だ。私は確信した。 「ええ、六歳の息子がおります。とても可愛いのよ。ホホホ」 多分今交番で泣いておりますが。 「そうなんですかあ、見てみたいですね、一目だけ。」 「ええ、ええ、見せたいわ、そういえばあの子どこ行ったのかしら。」 今さらか。なんにせよ、これで四人。 「では次はクラリネットを入れようと思います。」 「必要なんですか?」 「必要なんです。」 「要らなくねぇべが?」 「要ります。」 この者達にクラリネットの必要性を説くのには時間を要した。 もう、実際日が暮れた。パパからもらったクラリネットを歌わせられた時は 流石に恥ずかしかった。アンコールとして女子高生から女子高生から、「スイミー」と 「赤い実はじけた」の朗読を迫られた時はどうしようかと思った。  今の世代の若者達はこの二作品を知っているのだろうか。 私の世代では割とポピュラーなほうだと思う。そもそも知らない人にとって「赤い実はじけた」とは何であろうか。私は少々気になった。 「あの・・・赤い実はじけたって知ってます?」 私は田舎男に尋ねた。 「お?赤い実?んー、しらねえなぁ。イチゴだべか?」 イチゴ・・・・・!? 「じゃ、じゃあはじけたっていうのは・・・?」 「んー、ミキサーに入れるっぺや。牛の乳もいれでよぉ。うめぇぞぉ。」 ミキサー!?はじけるどころか粉々に砕けちゃっているじゃないか。 しかも、最後イチゴオレになってるし。 何ということだ、小学生の純粋な恋物語が「イチゴオレの作り方」になってしまった。 少々ショックをうけたが本題に戻ろうと思う。 クラリネット所持者を見つけるということは困難に思えた。 私達四人は作戦会議を開くことにした。 「どこか良い場所ないですかね?」 「吉野家がいいべさ!」 「横浜ベイヒルトンホテル」 「会議といったら国会議事堂じゃないですか?」 ・・・皆、とりあえず意見を出してくれるのは有難いのだが・・・ 「あ、あの、皆そこら辺の道端にしましょうか・・」 そう言って私がまとめようとした。すると 「じゃあ、皆の意見をまとめましょうか!」 婦人がそう言うと、小娘も答えた。 「では、国会議事堂と横浜ベイヒルトンホテルの丁度真ん中くらいの所に 位置している吉野家の前の・・・・道端にしましょう。」 「ナイスアイディアだべ!!!」 結局道端じゃないか。 続く