ラプラス変換とは、下のような積分の式をいいます。ラプラス変換を使うと、線形(まあ、一般的な)の、実数係数の微分方程式が、「簡単に」(といわれていますが、そうでもないです。まあ、他の方法を使うよりは、一般解法的に、定型的に解けはしますが)解けます。
まずは、ラプラス変換の性質(これは、結構、不思議です。むつかしい式に、ラプラス変換をすると、妙に簡単な式に、変わってしまいますから)を、下に、並べていきたいと思います。計算が楽になるように、s=α+iβ,α>0、とか、a<α,s=α+iβ、とか、いろいろ条件をつけています(私の勝手に)。
∞
L[f(t)](s)=∫f(t)e^(−st)dt=F(s) (s=α+iβ,α>0)
0
1を、ラプラス変換します。これは、もちろん、もとの式より、むつかしい式になります。
∞
L[1](s)=∫e^(−st)dt
0
e^(−st) ∞
=[---------]
−s 0
1 1
=0−----=----
−s s
t、t^2、t^3、........、t^nを、ラプラス変換します。残念ながら、これらは、もとの式より、むつかしい式になります。
∞
L[t](s)=∫te^(−st)dt
0
e^(−st)∞ ∞ e^(−st)
=[t --------]−∫ ---------dt
−s 0 0 −s
1 ∞ 1
=[0−0]+----∫e^(−st)dt=-----
s 0 s^2
∞
L[t^2](s)=∫(t^2)e^(−st)dt
0
e^(−st)∞ ∞ e^(−st)
=[t^2--------]−∫ 2t ---------dt
−s 0 0 −s
2 ∞ 2
=[0−0]+----∫te^(−st)dt=-----
s 0 s^3
∞
L[t^3](s)=∫(t^3)e^(−st)dt
0
e^(−st)∞ ∞ e^(−st)
=[t^3--------]−∫ 3t^2 ---------dt
−s 0 0 −s
3 ∞ 3!
=[0−0]+----∫(t^2)e^(−st)dt=-----
s 0 s^4
n!
L[t^n](s)=----------
s^(n+1)
上の変換の系列をつかうと、tの多項式は、下のように、変換されます。ちょっと、おもしろいと思いませんか。
L[t^3+at^2+bt+c](s)=L[t^3](s)+aL[t^2](s)+bL[t](s)+cL[1](s)
3! 2a b c
=-----+-----+-----+-----
s^4 s^3 s^2 s
e^(at)をラプラス変換します。これは、簡単な分数の式になります。この性質が、あとでいろいろ役に立ちます。
∞
L[e^(at)](s)=∫e^(at)e^(−st)dt (a<α,s=α+iβ)
0
∞
=∫e^{(a−s)t}dt
0
e^{(a−s)t} ∞ 1 1
=[------------]=0−-----=-----
a−s 0 a−s s−a
( ∵e^{(a−s)t}=e^[{a−(α+iβ)}t]=e^[{(a−α)−iβ}t]=e^{(a−α)t}e^{(−iβ)t}、で、
t →∞、のとき、e^{(a−α)t}→0(∵a<α)、で、e^{(a−s)t}→0、になるから )
cos(at)をラプラス変換します。無理関数(もうひとつ、意味がわかりません)が、単なる分数の式になります。
e^(iat)+e^(−iat)
L[cos(at)](s)=L[------------------](s)
2
1
=----{L[e^(iat)](s)+L[e^(−iat)](s)}
2
1 1 1 1 2s s
=----(------+------)=----(-----------)=----------
2 s−ia s+ia 2 s^2+a^2 s^2+a^2
( ∵e^(iat)+e^(−iat)={cos(at)+isin(at)}+{cos(at)−isin(at)}=2cos(at) )
sin(at)をラプラス変換します。cos(at)同様、単なる分数の式になります。
e^(iat)−e^(−iat)
L[sin(at)](s)=L[------------------](s)
2i
1
=----{L[e^(iat)](s)−L[e^(−iat)](s)}
2i
1 1 1 1 2ia a
=----(------−------)=----(-----------)=----------
2i s−ia s+ia 2i s^2+a^2 s^2+a^2
( ∵e^(iat)−e^(−iat)={cos(at)+isin(at)}−{cos(at)−isin(at)}=2isin(at) )
f(t)にe^(at)をかけたものをラプラス変換しますと、f(t)をラプラス変換したものの、引数だけを変化させたものになります。
∞
L[e^(at)f(t)](s)=∫e^(at)f(t)e^(−st)dt (aは実数,a<α(s=α+iβ,α>0))
0
∞
=∫f(t)e^{(a−s)t}dt
0
∞
=∫f(t)e^{−(s−a)t}dt=F(s−a)
0
下に、いくつか例を書くと、ラプラス変換は、複雑な関数ほど、簡単な式に変換してくれることが、わかります。
1
L[te^(at)](s)=---------
(s−a)^2
2
L[(t^2)e^(at)](s)=---------
(s−a)^3
s−b
L[e^(bt)cos(at)](s)=---------------
(s−b)^2+a^2
a
L[e^(bt)sin(at)](s)=---------------
(s−b)^2+a^2
微分の式をラプラス変換します。微分の項が消え、定数の項(f(0))が、あらわれました。
∞
L[f’(t)](s)=∫f’(t)e^(−st)dt
0
∞ ∞
=[f(t)e^(−st)]−(−s)∫f(t)e^(−st)dt
0 0
∞
=0−f(0)+s∫f(t)e^(−st)dt
0
=−f(0)+sL[f(t)](s)=−f(0)+sF(s)
2階(なんで、こんな言い方をするのでしょう)の微分の式をラプラス変換します。やはり、微分の項が消えました。
L[f’’(t)](s)=−f’(0)+sL[f’(t)](s)
=−f’(0)+s{−f(0)+sL[f(t)](s)}
=−f’(0)−sf(0)+s^2L[f(t)](s)=−f’(0)−sf(0)+s^2F(s)
3階の微分の式をラプラス変換します。同様に、微分の項が消えます。
L[f’’’(t)](s)=−f’’(0)+sL[f’’(t)](s)
=−f’’(0)+s{−f’(0)−sf(0)+s^2L[f(t)](s)}
=−f’’(0)−sf’(0)−s^2f(0)+s^3L[f(t)](s)=−f’’(0)−sf’(0)−s^2f(0)+s^3F(s)
n階の微分の式をラプラス変換しますと、微分の項が消え、定数の項と、定数とsの累乗との積の項が、あらわれます。ここまでくると、式が簡単になっているのかどうか、私には、言えません。
L[f’’(n)’(t)](s)=−f’’(n−1)’(0)−sf’’(n−2)’(0)−........−s^(n−1)f(0)+s^nL[f(t)](s)
=−f’’(n−1)’(0)−sf’’(n−2)’(0)−........−s^(n−1)f(0)+s^nF(s)
微分の式のラプラス変換で出てきた、f’’(n)’(0)、というのは、初期値(微分方程式とすると)で、最初の位置とか、初速度とか、いったもので、これを考えに入れると、式が非常に複雑になるので、ここから以降、基本的には、初期値は0、f’’(n)’(0)=0として、考えをすすめていきたいと思います。なぜなら、私が限界だからです。
運動方程式から、いってみましょう。別に、ラプラス変換をつかう必要も、ないですが。
ma=F mx’’(t)=F
式を、一般化すると、
x’’(t)=a
ラプラス変換し(x(t)→X(s))、X(s)について、式を整理すると、
a
(s^2)X(s)=-----
s
a a 2
X(s)=-----=-----・-----
s^3 2 s^3
そして、逆変換すると、微分方程式が解けている、というわけです。
a
x(t)=-----t^2
2
空気抵抗を考えにいれた、落下の微分方程式です。
mv’(t)+mg+kv(t)=0
運動方程式同様、式を一般化して、
v’(t)+av(t)+b=0
ラプラス変換し、V(s)について、整理すると、
b
sV(s)+aV(s)+-----=0
s
−b
(s+a)V(s)=-----
s
−b A B
V(s)=--------=-----+-----
s(s+a) s s+a
式が複雑になると、ここでひとつ、手順が増えます。部分分数展開ということをしなければ、解けません。
両辺に、s、をかけてから、s=0、とすると、A、が求まります。両辺に、s+a、をかけてから、s=−a、とすると、B、が求まります。
−b −b
sV(s)|= -----|= A = -----
s=0 s+a s=0 a
−b b
(s+a)V(s)|= -----|= B = -----
s=-a s s=-a a
これで、式が、逆変換がつかえる状態に、なりました。
−b/a b/a
V(s)=-------+-----
s s+a
逆変換をおこなうと、落下(空気抵抗あり)の微分方程式が、解けました。
−b b
v(t)=-----+-----e^(−at)
a a
定電圧のLRC回路の、微分方程式です。
q(t)
Lq’’(t)+Rq’(t)+-----=E
C
式を、一般化します。
q’’(t)+aq’(t)+bq(t)=c
ラプラス変換し、Q(s)について、式を整理し、部分分数展開をつかって、式を変形すると、
c
(s^2)Q(s)+asQ(s)+bQ(s)=-----
s
c
(s^2+as+b)Q(s)=-----
s
c c c
Q(s)=---------------=-------------------------------=----------------------- (a=2a’)
s(s^2+as+b) s(s^2+2a’s+a’^2−a’^2+b) s{(s+a’)^2−a’^2+b}
c A B
=--------------------=-----+----------------- (−a’^2+b=b’^2、あとの計算が、楽です)
s{(s+a’)^2+b’^2} s (s+a’)^2+b’^2
c c
sQ(s)|= -----------------|= A = ------------
s=0 (s+a’)^2+b’^2 s=0 a’^2+b’^2
c c
{(s+a’)^2+b’^2}Q(s)|= -----|= B = ----------
(s+a')^2+b'^2=0 s ~=0 −a’±ib’
c/(a’^2+b’^2) c/(−a’±ib’) b’
Q(s)=-----------------+-----------------・------------------
s b’ (s+a’)^2+b’^2
逆変換をすると、LRC回路の微分方程式が、解けました。う〜ん、これで、簡単に解けたと、言えるのかどうか。
c c
q(t)=-------------+------------- e^(−a’t)sin(b’t)
a’^2+b’^2 (−a’±ib’)b’
( ∵(s+a’)^2+b’^2=0, (s+a’)^2=−b’^2, s+a’=±ib’, s=−a’±ib’ )
正弦波電圧をかけた(cos関数をつかっていますが、cos関数をつかうのが、普通のようです。)、LRC回路の微分方程式です。
q(t)
Li’(t)+Ri(t)+-----=Ecos(ωt)
C
両辺を微分して、右辺がsin関数になるようにします。ラプラス変換したとき、sin関数のほうが、式の形が簡単なんです。
i(t)
Li’’(t)+Ri’(t)+-----=ωEsin(ωt)
C
式を一般化し、ラプラス変換し、式を整理し、部分分数展開をつかって、式を変形します。
i’’(t)+ai’(t)+bi(t)=csin(dt)
d
(s^2)i(s)+asi(s)+bi(s)=c ----------
s^2+d^2
cd
(s^2+as+b)i(s)=----------
s^2+d^2
cd cd
i(s)=--------------------------=----------------------------------------- (a=2a’)
(s^2+d^2){(s^2+as+b)} (s^2+d^2)(s^2+2a’s+a’^2−a’^2+b)
cd A B
=------------------------------=----------+-----------------
(s^2+d^2){(s+a’)^2+b’^2} s^2+d^2 (s+a’)^2+b’^2
(−a’^2+b=b’^2、上に書いたように、あとの計算が、楽になるようにです)
cd cd
(s^2+d^2)I(s)|= -----------------|= A = -------------------
s^2+d^2=0 (s+a’)^2+b’^2 ~=0 (a’±id)^2+b’^2
cd cd
{(s+a’)^2+b’^2}I(s)|= -----------|= B = ---------------------
(s+a')^2+b'^2=0 s^2+d^2 ~=0 (−a’±ib’)^2+b’^2
cd/{(a’±id)^2+b’^2} d cd/{(−a’±ib’)^2+b’^2} b’
I(s)=------------------------・----------+---------------------------・-----------------
d s^2+d^2 b’ (s+a’)^2+b’^2
逆変換をすると、目的の微分方程式が、解けました。う〜ん、むつかしい。
c cd
i(t)=------------------ sin(dt)+------------------------- e^(−a’t)sin(b’t)
(a’±id)^2+b’^2 b’{(−a’±ib’)^2+b’^2}
( ∵s^2+d^2=0, s^2=−d^2, s=±id )
ここまでやってみて、ラプラス変換のいいところを考えてみると、ラプラス変換をつかうと、ほかの方法に比べて、技巧的なことを考える必要がなく、ほとんど、代数的に解くことができる、ということでしょうか。簡単とは、言い難いと思いますが、感覚的には、代数方程式の一般解法に近い、ように、私は感じました。
ああ、苦しかった。