<産卵から仔育てのあらまし>
(本章では写真と文章が別々のテンボになっています。
写真は本文に対応せず、本文より先行していきますので
写真単独のシリーズとして順次開いて見ていって下さい。)
その1 [産 卵]
産卵塔を入れてやるとあちこちを口でつつきながら産卵場所を探し始め、ここと決めると産卵の模擬行動を行う。
尚、産卵場所としては平坦な場所があればよいので、産卵塔が唯一のものではなく、太めの塩ビ管などを用いる人も多い。産卵したがる雌は、ヒーターカバーやシリコンシーラーは勿論、スポンジフィルターや床にまで産卵する。(床の場合、広範囲に散らばっていれば、撒いてしまったとものと思われるが、密集していれば正常産卵であり、床産卵が孵化し体着に至った例もあるので諦める事はない。)
[3] 護卵
産卵後は雌雄が交互に卵を護り、胸鰭を使って間断無く新鮮な水を卵に送り続ける。産卵→失敗を繰り返すケースでは、親魚の胸鰭がボロボロになっているのを見かけることがある。
[4] 夫婦仲
水温が30度前後では卵は2日で孵化する。孵化が近づくと親の緊張は一層高まるが、もしこの時点で雌雄が卵を奪い合うようだと孵化後の仔育てはうまく行かない惧れがある。
100 匹もの稚魚が一斉に親から親へ移り替わる様は壮観であり、(親によるこの「移し替え」のテクニックを見るためにも)是非にも両親による健全な育成を求めたいところであるが、アマチュアの水槽では優秀な雄はなかなか得難いことがあり、贅沢を言ってはいられない場合もあるので、非常手段として「育ての親を一匹に限定することも可能」な事を知っておいて損は無い。
卵を独占しようとしている方が育児に熱心かというと必ずしもそうではない。孵化の近づく頃には体表の暗化は極限に達している筈であるから、あくまで体表をより一層暗化させている方の親を選ぶのが無難である。
ペアの行動のうちよく知られる代表的なものは「大袈裟なお辞儀」である。これは双方が向かい合った状態で斜め上方に進み、ほぼ接触した辺りで急転して斜め下方に進みながら交差してゆく動作で、平常時には見られないものである
事情があって分離していたペアを一緒にした場合など、相手を見つけると近づきながら双方で慌ててこれをやったりしているのを見るが、ほほえましい光景である。
(但しこの行動はあくまでペアの形成を証明するもので、お互いを認識しその意思を確認し合っている証拠ではあるが、必ずしも夫婦仲が良いことまで保証するものではない。)
[2] 産卵
これはNC工作機械などで安全確認のためプログラムをテスト走行させる「ドライ・ラン」のようなもので、こうして予行演習しながら最適な身体のもって行き方や産卵範囲などを決めているように思われる。
テスト走行を繰り返すうちいつしか本番に移行し、雌が下から擦り上げて行く跡にオレンジ色の卵が生み付けられている。一列が終わると雄が同じようになぞって放精していき雌は又隣の列の産卵に入る。
卵は不整形に産み付けられるより、なるべく角張らずに密集した形に産み付けられるのが良いとされる。又雌の産卵を待ってから雄が放精に行くようでなく、雄が待ち切れずに雌の後を追うように放精し、雌雄が同時に擦り上げて行くような態勢が見られるような場合に受精率が高い。
産卵数は環境条件によって違うようだが、通常100〜200程度だ。
この時期の親は気が立っているので、なるだけ刺激しないように気を付けなければならない。
親は水槽の限られた条件の中でも、水流や光線などを考慮し最適な場所を判断して産卵しているので、飼い主が見やすいようになどの理由で産卵塔を回してしまうのは言語道断で、あまり親を怒らせると親は孵化を断念し卵を食べてしまう。
この時期親は既に仔育てに備え体表を暗化し始めている筈である。この暗化の程度は親の繁殖経験や繁殖に掛ける集中度などを推し量る貴重なバロメーターとなる。
我が家では産卵以降10日間程度は、夜中も蛍光灯を一本はつけっ放しにしておくことにしている。(親が卵や稚魚を良く見張れるようにとの配慮である。)
尚、「ペアの仲が良いのに孵化しない」ケースを再三繰り返す場合には、水質などの環境条件よりも「雄」に問題がある事が多い。極端な場合には "マジでレズ" というケースも現実にあるので、こうした場合では環境条件の整備に並行して雄を代えてみる試みが是非とも必要である。
経験を積んでも繰り返し同じようになる場合には、いずれか一方を除くことを考えなければならない。片親では孵化数が多い場合にはそれだけ仔育ての負担はきつくなるが配合にこだわればやむを得ない。双方のケースを試してみて上手に仔育て出来る方の親を選ぶことになる。