公職選挙法と新聞広告 (この文章には著作権があります)

公職選挙法は第149条において、選挙運動のための新聞広告に関する条文を設けている。
候補者や候補者を擁する政党が選挙運動として新聞紙上に広告を掲載する場合、その新聞広告は、この条文に沿って掲載されなければならない。
これから逸脱していたり、この条文によらないで選挙運動のために新聞に広告を掲載したりすることは違法行為となる。
また、公職選挙法は公職者の選挙運動にもさまざまな規制をもうけており、それが新聞広告にも影響することがある。

(はじめに)選挙広告

公職選挙法で、新聞広告として違法となるものは以下の通りである。

1. 第149条にもとづいて行なわれる新聞広告のうち、公職選挙法で定める基準を逸脱したもの
2. 法第149条に定められたものを除いて、選挙のために新聞広告を行なうこと
3. 公職者、公職の候補者、および公職の候補者になろうとするものによるあいさつを目的とした有料での広告掲載(公選法152条)
4. 選挙後に当選・落選に関してあいさつを目的にして新聞を利用すること。(公選法第178条)

今回のレポートでは、
まず、(T)公職者広告に特有の用語を解説する。
続いて、(U)公職選挙法で認められた新聞広告の種類と規制について概観し、
(V)違法となる新聞広告、
(W)政策広告について見る。

(T)用語の定義

●公職
衆議院議員・参議院議院・地方公共団体の議会の議員、および地方公共団体の首長。
(「公職選挙法第3条 この法律において「公職」とは、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職をいう」)

●公職の候補者
公職選挙法に規定はないが、政治資金規正法には「公職の候補者」は、「公職にある者、公職の候補者及び候補者となろうとする者」としている。一般的に公職の候補者という場合には、現に公職にあるものを含むことが多い。

※政治資金規正法 第3条の4 この法律において「公職の候補者」とは、公職選挙法 (昭和二十五年法律第百号)第八十六条 の規定により候補者として届出があつた者、同法第八十六条の二 若しくは第八十六条の三 の規定による届出により候補者となつた者又は同法第八十六条の四 の規定により候補者として届出があつた者(当該候補者となろうとする者及び同法第三条 に規定する公職にある者を含む。)をいう。

●選挙運動・政治活動
法の定めはないが、新聞協会は、最高裁判所判決に基づき選挙運動を以下の四つの条件を満たすものとしている。
  @ 特定の選挙、
  A 特定の候補者、
  B 当選を目的としてなされる、
  C 直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他の諸般の行為であること。

※最高裁判所判例(昭和52年2月24日)
(選挙運動とは)特定の公職の選挙につき、特定の立候補者または、立候補予定者に当選を得させるため、投票を得若しくは得させる目的をもって、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすること〕
また、特定の候補者が特定の選挙で当選することを目的として行われるものでなければ、政治活動とみなされ、選挙活動とは区別される。

(U)公職選挙法第149条・施行規則第19・20条に認められた選挙広告

続いて、公職選挙法上、選挙広告として行なうことができる新聞広告の種類と法規定についてまとめる。この基準に当てはまらないものは違法となる。

[1]法第149条に定められた新聞広告の種類

法は、選挙の種類に応じて、以下のように選挙広告を設け、それぞれについて掲載方法などに規制を設けている。

衆議院議員 小選挙区選出候補者広告
  小選挙区選出候補者届出政党広告
  比例代表名簿届出政党等広告
参議院通常選挙 選挙区選出議員候補者広告
  比例代表名簿届出政党広告
都道府県知事 候補者広告
市長村長・自治体議員 候補者広告

[2]選挙広告の法定基準

1. 掲載日

立候補届出日から投票日前日まで(法第129条)

2.回数・スペース

■候補者広告(衆議院議員小選挙区、参議院議院選挙区選出、地方自治体の長、議会の議員)(法第149条、法第149条の3)

@ スペース:横9.6cm×2段(施行規則第19条)

A 回数・費用:以下の表に従う。

選挙 回数 費用
衆議院議員小選挙区候補 5回 国庫負担
参議院議院選挙区候補 5回 国庫負担
都道府県知事候補 4回 地方自治体負担
市長村長・自治体議員 2回 私費

■政党広告

国政選挙では政党が選挙運動として広告を掲載する事が認められている。なお、広告の種類は以下の3種類であり、原則として公費でまかなわれるが、衆議院議員比例代表選挙では、当該選挙区の有効投票の100分の2、参議院議員比例代表選挙では当該選挙区の100分の1の得票に満たないと私費の負担となる。

○衆議院小選挙区候補者届出政党広告(法第149条の1)
  (小選挙区の立候補者のため、政党が都道府県を単位として広告するもの) 

○衆議院比例代表選挙広告(法第149条の2)
 (比例代表選挙のため、比例代表選出ブロックを単位として広告を行なうもの)

○参議員比例代表広告(法第149条の3)
  (比例代表選挙のため、比例代表選出区で広告を行なうもの)

@ スペースの基準:一回当たりの広告寸法は、横9.6cm、縦1段組のサイズを2以上の整数で倍したものであり、横38.5cm、15段組のサイズ(すなわち、全広サイズ)をこえない長方形であること(施行規則第19条の2)

A スペース・回数:当該候補者届出政党の候補者の数に応じて、候補者届出政党に一括して与えられる。(施行規則第19条の2〜4)

(1)衆議院小選挙区候補者届出政党広告の出稿総段数と出稿回数

当該各都道府県における名簿搭載者数 総段数 回数
1〜5人 4段 8回以内
6〜10人 8段 16回以内
11〜15人 12段 24回以内
16人以上 16段 32回以内

(2)衆議院比例代表選挙広告の出稿総段数と出稿回数

該選挙区(ブロック)の名簿搭載者数 総段数 回数
1〜9人 8段 16回以内
10〜18人 16段 32回以内
19〜27人 24段 48回以内
28人以上 32段 64回以内

(3)参議員比例代表広告の出稿総段数と出稿回数

当該選挙区の名簿搭載者数 総段数 回数
1〜8人 20段 40回以内
9〜16人 28段 56回以内
17〜24人 36段 72回以内
25人以上 44段 88回以内

3.原稿制作上の注意点

@ 掲載面は記事下のみ、色刷りは不可(施行規則19条の5)

A 候補者の氏名は戸籍簿に登録された名前でなければならないが、通称使用の認定を受ければこの限りではない(施行令第88条の8)

B 回数やサイズを超えない限りにおいては、候補者広告、政党広告、政策広告を同載させることも可。ただし、それぞれが独立しているものと見なされることが前提となり、合体しているものや文章が複数の広告にまたがっているものは掲載できない。

C 必要表示事項

(1)衆議院小選挙区候補者届出政党広告
当該都道府県における「衆議院選挙区選出議員の選挙に関する広告」である旨(施行規則第19条の10)

(2)衆議院比例代表選挙広告
当該選挙区における「衆議院比例代表選出議員の選挙に関する広告」である旨(施行規則第19条の10)

D 「わたる表示」について

わたる表示とは、ある選挙運動において、他の選挙に関する運動が、前者が主、後者が従の関係において行なわれることを言う。例えば、衆議院の小選挙区の比例代表選挙の広告の中にたとえば「小選挙区はお住まいの地域の○○党の候補に投票をお願いします」と一文を入れることがこれにあたる。以下が「わたることを妨げない」とされているものである(法173条の3の1〜3)。なお別添資料Tを参照されたい。
・ 衆議院議員の選挙において、小選挙区の選挙運動が比例代表選挙の選挙運動にわたること
・ 衆議院議員の選挙において、候補者届出政党である名簿届出政党が行なう比例代表選挙の選挙運動が、小選挙区選挙の選挙運動にわたること。
・ 参議院議員の選挙において、選挙区選挙の選挙運動が比例代表選挙の選挙運動にわたること

(V)公職選挙法上、違法となる新聞広告

  1.事前運動・売名行為

・ 公職選挙法第149条に定められた新聞広告以外で、選挙運動とみなされるものは、時期・出稿元を問わず全て違反となる。これは、特定の候補者や政党への投票を呼びかけたり、候補者としての知名度を上げたりするものが相当する。

・ ただ、どのような広告が上記のような「事前運動・売名行為」に相当するかは、「選挙運動」について明確な法の定めがないため一概には言えず、背景事情まで総合的に判断されなければならない。

・ 次のような例は、事前運動にあたるおそれがある。

@ 政党等が、候補者の推薦決定を告知する広告
A 常識以上に候補者の氏名が大きく記載してあるもの
B 特定選挙区の立候補者である事を明示又は暗示する広告
C 第三者が特定候補について新聞広告すること       など

   2.あいさつ目的の有料広告

公職選挙法第152条は、次の条件の全てを満たす広告を一切禁止している。また、このような広告を公職者に対して求める事も禁じられている。

@ 公職者、公職の候補者または後援団体によってなされるもの。
A 自らの選挙区におけるもの。
B 主としてあいさつを目的とするもの(年賀、寒中・暑中見舞い、慶弔激励、感謝などにあたるもの。名刺広告も同趣旨の中に含まれる)。
C 有料で掲載すること。      

   3.選挙後のあいさつ行為の禁止 

公職選挙法第178条は、選挙日後に、当選又は落選に関し、あいさつ目的で以下の行為をすることを禁止している。

@ 選挙人に対する戸別訪問
A 自筆の信書及び当選又は落選に関する祝辞、見舞等の答礼のためにする信書を除くほか文書図画を頒布し又は掲示すること
B 新聞紙又は雑誌を利用すること
C 放送設備を利用して放送すること
D 当選祝賀会その他の集会を開催すること
E 自動車を連ね、または隊を組んで往来する等によって気勢を張る行為をすること
F 当選に関する答礼のため、当選人の氏名または政党その他の政治団体の名称を言い歩くこと

W.政策広告

・ 政党その他の政治団体の行なう政治活動の中には、選挙期間中制限されるものがある(法201条5〜13)。ただし、新聞広告は、この制限を受ける選挙運動には含まれないので、いかなる期間であっても、自主的に私費で広告を掲載することができる。

・ 政談演説会については、指定都市を除く市議会の議員、町村の議会の議員および長の選挙を除いて選挙期間中は制限が設けられており、確認団体しか行なうことができない。このため、選挙期間中の政談演説会の広告の掲載に当たっては、確認団体か否かの確認が必要となる。

・ いずれの場合も、選挙運動にならないよう注意が必要である。

(参 考)選挙期間中に制限される政治活動

●被選挙人のホームページの更新はできない。