連鎖販売取引のページ

ここでは、「連鎖販売取引の法的定義」について簡単に研究しています。具体的事例については、マルチ&悪徳商法 SOS-FILE などをご覧下さい。


■連鎖販売取引とは、いわゆるマルチ商法とも呼ばれ、問題商法のひとつに数えられています。

しかし、「マルチ商法」という言葉が、普段耳にするものであっても、その厳密な定義についてはなかなか把握できていないのではないかと思います。

そこで、連鎖販売取引とはどのようなものであり、どのような点に注意して付き合っていかなければならないかということを、一度きちんと把握しておきたいと思います。

本来ならば、条文に沿って内容の把握をしていくのが望ましいと思いますが、最初から複雑な条文を読んでも内容の把握がしにくいと思われます。そこで、まず骨格を掴んだ上で、法律を精査していくことにしましょう。


■まず、大まかな定義付けを行うとすると、連鎖販売取引とは、

『@商品の販売員や役務(サービス)の勧誘員の募集に当たり、A特定利益が得られるといって勧誘し、B特定負担を伴う契約を結ばせること』です。

連鎖販売取引の第一の特徴は、「商品の販売」や「サービスの提供事業」に従事する人の募集することです。ですから、マルチ商法の募集広告は、一見、求人広告の形をしています。

そして、マルチ商法に勧誘されるときには、「必ず儲かる」「女性にも簡単なビジネス」という言葉が飛び出してくるのが定石となっているのです

(真の目的が、金銭集めであることはいうまでもありません)。


■連鎖販売取引と一般の販売員募集とを分ける最も大きなポイントは、「特定利益が得られるといって勧誘し」という点です。

単に「販売で利益が得られる」ことを標榜し、かつ代理店契約を結ばせる時に保証金や権利金を取るということであれば連鎖販売取引には該当しませんが、「特定利益」が絡んでくることにより「マルチ性」を帯びてくることになります。


■A特定利益

それでは、特定利益とは何なのでしょうか。それは、「他の販売員・勧誘員の募集に絡んだ利益である」と理解することが一番近道であると思います。

特定商取引法の条文には次のようにあります(読みやすいように何行かに分けて書くことにします。)。

特定利益

その商品の

・再販売、
・受託販売 若しくは 
・販売のあつせん

をする他の者 又は

同種役務の

・提供 若しくは
・その役務の提供のあつせん

をする他の者

が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。

その商品〜〜のあっせん」「同種役務〜〜のあっせん」という言葉が文章を読みづらくいます。そこで、これらの言葉を「その商品の販売など」「同種役務の提供など」とひとまず置きかえることにしましょう。

特定利益

その商品の販売などをする他の者 又は

同種役務の提供などをする他の者

が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。

他の者、というのはどのように考えたらよいのでしょうか。

例えば、あなたがマルチ商法に勧誘されているとしましょう。ここで登場するのは「勧誘する人」「勧誘されている人(つまり、あなた)」です。この状況で「他の者」は、登場している「勧誘者」「被勧誘者」どちらにも該当しない人という意味です。

すなわち、「あなた」や「勧誘している人」以外に、「商品の販売や役務の提供をする他の者」がいて、その人が提供した金銭が利益としてあなたに支払われる場合、特定利益となる、ということです。

言いかえれば、マルチ商法は、「他の販売員」の存在を前提として、その人が提供する金銭を得て利益とする、という内容となっているのです。

そして、ほとんどのマルチ商法では、この「他の販売員」は、あなたが勧誘し、それにより、多くの利益が上げられる、という契約になっています。以上を踏まえると、特定利益とは次のようにも置きかえられるでしょう。

特定利益≒

(あなたが勧誘してきた)他の販売員等や勧誘員などが

支払う取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。

こうして、勧誘者―あなた―他の販売員、という、マルチ商法に特徴的なピラミッドの最少単位ができあがることになります。そして、他の販売員が増えれば増えるほどあなたの利益が多くなる、ということになれば、そのシステムの加盟者の勧誘というマネーゲームに巻き込まれていくことになるのです。


■次に、「取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益」とはどうなるでしょうか。特定商取引法施行規則第24条には次のように規定があります。

(1)
商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者 又は

同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者

が提供する取引料により生ずるものであること。

(2)
商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者

に対する商品の販売

又は

同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者

に対する役務の提供により生ずるものであること。

(3)
商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者

が取引料の提供若しくは商品の購入を行う場合

又は

同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者

が取引料の提供若しくは役務の対価の支払を行う場合に

当該他の者以外の者が提供する金品により生ずるものであること。

やはり、「商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者」「同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者」という言葉が条文をわかりにくくしているので、

ここも「他の販売員や勧誘員など」という言葉で置きかえ、詳しく見ていくことにしましょう。

@他の販売員や勧誘員が提供する取引料から生ずるもの。

「取引料」というのは「取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品」ということになります。「あなたが勧誘した販売員が支払った保証金、加盟金の一部があなたのものになる」という勧誘方法が該当します。

A他の販売員や勧誘員に対する商品の販売、役務の提供から生ずるもの。

「あなたが勧誘した販売員が商品を購入すると代金の一部があなたのものになる」という勧誘方法が該当します。

B他の販売員や勧誘員が取引料を支払った場合や、他の販売員や勧誘員が商品等の購入などを行った場合に、「他の者以外の者が提供する金品」から生ずるもの

分かりにくいですが、「あなたが勧誘した販売員が加盟金を支払った場合や、商品を購入した場合に、報奨金として本部から報奨金がもらえる」といった内容が該当します。


■ここで整理。

とりあえず、「特定利益」の理解が深まったと思うので、これまでの内容を整理しておきましょう。

「連鎖販売取引とは、商品の販売員や役務(サービス)の勧誘員の募集に当たり、特定利益が得られるといって勧誘し、特定負担を伴う契約を結ばせること」でした。

そして、特定利益とは取引料や商品購入代金という名目で他の販売員が支払う金銭の授受に伴って発生する利益であるということがわかりました。

そして、次に気になるのが、特定負担とは何か、ということです。


■「B特定負担」は比較的分かりやすいと思います。これはいわば「ビジネス参入の費用」と捉えておいてください。

特定負担=

その商品の購入 若しくは その役務の対価 の支払い 又は

取引料の提供 をいう

法律用語はどれとどれが並立となっているかの理解が極めて重要です。

(蛇足ですが「若しくは」は比較的小さい並立、「又は」は大きな並立です。)

今回の場合は、(A or B)and Cという形になっています。

ここで触れられているのは

A 商品購入の支払い
B 役務の対価の支払い
C 取引料の提供(保証金、加盟金など名称は問わない)です。

つまり、いま勧誘されているビジネスに参入するために、商品や役務(例えばエステティックサロンのチケットなど)を購入しなければならなかったり、保証金や権利金などの名目で金銭を提供しなければならないという場合には、特定利益に該当するのだ、ということになります。


■ここまで見てくれば、だいぶマルチ商法のシステム全体が掴めてきたと思うので、最後に、特定商取引法に定める連鎖販売取引についての条文をきちんと読んでおきましょう(見やすいように改行して書いてあります)。

特定商取引法 第33条「(この章並びに 第66条第1項及び 第67条第1項において)

「連鎖販売業」とは、

(1)
・物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下同じ。)の販売(そのあつせんを含む。) 又は

・有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、

(2)
販売の目的物たる物品(以下この章において「商品」という。)

再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、

受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。) 若しくは

販売のあつせん

をする者 又は 

同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。) 若しくは

その役務の提供のあつせん

をする者

(3)
特定利益

(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章において同じ。)

を収受し得ることをもつて誘引し

(4)
その者と
特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章において同じ。)を伴う

その商品の販売 若しくは

そのあつせん 又は

同種役務の堤供 若しくは

その役務の提供のあつせん

に係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう


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