
| 世界遺産旅行をしたかった。 しかも、ヨーロッパの世界遺産。 遡ること幾年。俺は当時大学3年生だった。 年明けには就職活動を控え、漠然とした不安感を持っていた頃。 そんな折、何気なくテレビのチャンネルを回していて俺は出くわしてしまった。 TBS日曜夜、世界遺産。 忘れもしない、その回はオーストリアのとても小さな湖岸の街・ハルシュタットだった。 現実世界とは思えぬ得も言えぬ美しい風景が目に焼きつき、 以来、冒頭の思いはずっと胸の中で燻り続けていた。 |
| 数年後。 俺は大学を卒業し、社会人5年目となっていた。 明るい職場に楽しい同僚達、やりがいのある仕事、地元の仲間・スンダイズ、大学の仲間・明蹴会に99、バイト仲間・東花房。 全ては満たされているかに思えた。 しかし、大旅行をするに足る現実的な金が出来た時、もう気持ちは固まっていた。 「どうして休職ではなく退職なの?」は出発前にも旅行中にもよく言われたこと。 俺は帰る時期も仮にしておきたかったし、帰ってきてからやることも決めておきたくなかった。 人生を根本から変えてしまうような何か、仕事かもしれないし、人かもしれないし、その土地かもしれないし、何だか分からないがそんな何かに出くわすことを、ただ子供のように憧れていた所があったのだと思う。 |
| 俺は会社を辞し、着々と準備を進めた。 非常に恥ずかしい告白になるがNOVAにもひと月通った。 俺の中の小心者が、何の準備もなく日本語が使えない環境に行くことを恐れていた。 案の定、実力は7C(最低レベルのクラス)。 外国人講師を前にして、俺はただのデクだった。 これでぶっ飛んだ15万が無駄だったとは思わないが、旅の最後、ロンドンにてこの価格が異様に高いものであることを知る。 |
| この間、会社・明蹴会・スンダイズ・・・。多くの仲間が送別会・壮行会を開いてくれた。 本当に嬉しかった。 これは「ヤベェ、もう中止にできねぇ」という脅迫でもあった。 |
| 出発の朝、親友・I上が鎌倉からミニクーパーをぶっ飛ばして来てくれた。 彼の大台に近い自重と、俺と俺の20s超のバックパックで、ポンコツミニクーパーはひーひーいっていた。 成田空港。 「じゃあな」目を合わせて握手で別れ。 いつも通りのこいつとの儀式を終え、出発ゲートをくぐったその時、 一年近くにも及ぶ俺のヨーロッパ世界遺産の旅が始まったのだった。 ただ一人、付き合って間もない彼女を日本に残して。。。。 |
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