No.17

バーバラの別荘

 ハーバードでの学生生活、ブラジル冒険旅行を経て、ニューヨーク州ピークスキルに帰り着くと、バーバラは、夏休みの最後をセカンドハウスで過ごそうと計画し、私を待ち受けていた。翌朝、バーバラの夫リチャードの運転する臙脂のトヨタカローラで、私、バーバラ、犬のバスターは、カナダに近いレークジョージに向けて出発した。ピークスキルから真っ直ぐ北へ、ハドソン川と平行して伸びるハイウェイをひた走る。森また森、行けども行けども、緑豊かな大自然が展開する。肥沃な大地のせいか、木々は驚くほど大きい。途中、ニューヨーク州の首都オルバニーを通り過ぎ、サラトガを通り過ぎ、出発から3時間ほど走っただろうか、レークジョージから少し奥まった、小さな湖のそば、林の中の別荘に到着した。

 こじんまりした 2LDKの平屋の建物は、それでも日本の家に比べると、中は十分ゆったりして気持ちがいい。500坪ほどの土地に、もう一棟、ガレージを改造した4,5人は泊まれるワンルームの建物が建っている。(この翌年、1997年8月末、バーバラと共に再びこの別荘を訪れ、この時は、この別棟にバーバラの友人2人と共に泊まった。)隣地との境は牧場のような柵で仕切られていて、背の高い針葉樹の林の中に、隣接した他の別荘が見える。
 
 初めて別荘の話を聞いたときは、ま、なんと豪勢なと、思ったのであるが、実は、バーバラは、この年の2月にこの別荘を買ったばかりであった。それも家具一式(ベッド、ソファー、チェスト、ダイニングテーブルセット、スタンドなどを含む)、布団、クイルトまで付いていて、日本円にすれば、600万円ほどで購入、ローンで払っているということであった。

 庭には、バーバラお気に入りのホットタブがあって、日本のお風呂の感覚で、楽しむことが出来る。ただし、水着を着て入るのであるが。形は正方形で、底は腰掛けたり寝そべったり出来るように変形していて、全体は、かなり広く、3,4人一緒に入ることが出来る。ボタンを押すと泡が出たり、泡の出方を調節したり出来るようになっていて、中で本を読んだり、ぼんやりしたりと、リラックスするには最適である。バーバラは、2度来日の経験があり、日本のお風呂にぞっこん惚れ込み、いつか自宅に、日本風呂を取り付けるのが夢という。

 カナダに近いこの地方は、8月末ともなれば、夜は肌寒く、ヒーターをつけることもある。眠る前にもう一度体をぬくめようと、ホットタブにつかり、夜の静けさの中で、空を見上げると、背の高い木立の間から、濃紺に広がる天に、無数の星たちがキラキラと輝いていた。

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