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 マンハッタンから北へ50マイル、ハドソン・リバーの東岸に位置するピークスキル市は、人口約2万、美しい住宅街と、ハドソン・リバーの素晴らしい景観を持つ平和な町である。地名の由来は、17世紀初め、町の基を作ったオランダ人の名前ピークと、キルはオランダ語で川の意で、ピークさんの川ということらしい。

 さて、最初のカルチャーショックは、4月6日イースター前夜に到着したホストティーチャーの家である。50歳のベテラン教師バーバラと、同じく小学校教師リチャードとの共稼ぎ夫婦の家は、150年前、つまり南北戦争以前に建てられた14部屋もある大邸宅であった。外壁は薄黄色、鎧戸は濃い緑、窓枠、扉、バルコニーは白く塗られ、木立の中に、今なお美しい佇まいを見せて建っていた。

 玄関ホールから、2階への階段は深紅のビロードが張られ、台所では、暖炉に太い薪が燃えている。家中の壁紙は特別に注文して貼られてきたとのこと。さながら、小さなミュージアムにいるような気分にさせられる。窓の外は柵のない広い庭、背の高い木立の中に古い4人乗りのブランコが見える。


 イースターの午後は、親戚一同あつまって、ゲスト用の食堂のシャンデリアの下で、銀食器を使ってのディナー、その後は、教室の半分もあるゲストルームでの団欒と続くわけであるが、この大邸宅、後で聞くところによると、12年前に驚くほど安い値段で購入したとのこと。 その後、数年は週末ともなればアンティックのオークションに出掛け、一つ一つ家具を揃えていったということである。


 美しい大邸宅に圧倒されたことは確かであるが、イースター前夜、それも真夜中に、地球の裏側から、ひょっこり現れた東洋人を、みんな温かく腕を広げて、ほっこりと受け入れてくれる懐の大きさ、深さに感動を覚えた。

                         

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