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アメリカ人の食生活


ダイアンの庭、奥に見えるのが家庭菜園



 アメリカの朝は、コーヒーの香りと共に始まる。初めてやって来た早春のニューヨークで、ダイアンは毎朝、私のためにコーヒーとフルーツを用意してくれた。真っ赤ないちごやオレンジ色のメロンをたっぷり用意してくれる。その豊かさに初めは驚いたが、グロサリーストアに行って、またまた、その値段の安さに驚いてしまった。なんと、メロン(マスクメロンではない)が、たったの88セントだったのである。ちょうどバーゲンの日で、普段は2ドルちょっとするということであったが、野菜、果物、何 を見ても、安いの安くないの、もうあきれてしまった。                                                                      

 ダイアンは早起きで、毎朝、新聞の広告やチラシに目を通し、クーポン券なども切り取っておいて、夕方勤めから帰ると、こまめに買い出しに出掛ける。挽肉や鶏肉など安いときに大量に買ってきて、挽肉はハンバーガー用に金の枠で形を整え、間に紙を挟んで何枚も冷凍しておく。鶏肉なども、何羽分も買ってきて、流しで皮や脂肪部分を切り取り、バーベキュー用に整え、地下室の大きな冷凍庫に蓄える。地下室には食料品の棚があり、缶詰、ワインなどの瓶類、即席の食料品の箱などが、整然と並んでいる。家計切り盛りの腕は抜群と見受けた。                                         

 こんなに野菜の値段が安いのに、ダイアンは、庭の一角に家庭菜園を作っている。5月初め頃だったか、ある日曜日、息子のカーチスがトラクターを何処からか借りてきて耕し、肥料を入れた。その後、ダイアンが小さな苗を植えたのを、見てはいたが、2ヶ月半不在にした後、9月初め、ダイアンの家に帰ってみると、畑には、トマト、ばかでかいキュウリ、バジル、茄子類が、たわわに実っていたのである。トマトは、その後、取っても取っても次々と無数に取れて、ダイアンは、トマトソースを大鍋で何度も作り、瓶詰めにして、地下室に蓄えたとのこと。バジルも、乾燥して、翌年まで蓄え、ダイアンの大好きなイタリア料理に役立つということであった。                                               
                        
 滞在9ヶ月の間に、アメリカ人の食生活が簡素なことを知り、時には味気ない思いもしたが、ダイアンは、簡素な中に料理のセンスが光り、新鮮なもの、珍しい物をおいしく食べさせてくれた。例えば、溶かしバターにつけて食べるアーティチョーク、手のひらよりも大きいマッシュルームをスライスして、ガーリックとオリーブオイルで炒めたもの、ゆでた新鮮なコーンやアルミホイルでくるんでオーブンで焼いた大きなポテトの味など懐かしい。肉類は、オーブン料理以外は全て外のバーベキューコンロで男達が料理する。煙や油で室内が汚れるのを嫌うためである。冬も、防寒ジャケットにフードをかぶって外で肉を焼く姿は、いささか滑稽であった。という風に食べ物の話はまだまだ尽きることがない。