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エクスキューズミー

幼稚園の子どもたち
 アメリカの人達は、エクスキューズミーという言葉を頻繁に使う。アイムソーリー、サンキューとともに、電車、バス、飛行機の中、駅、道路、どこでも、知らない人達同士、ちょっとしたとき、何のためらいもなく声をかける。相手ももまた、「ダッツOK!」(いいですよ)と気軽に答える。気持ちのよいコミュニケーションである。                                    

 昔は、(エクスキューズミー!年をとったせいか、ムカシワ・・・と、度々口から出てしまいます)日本でも「ごめんなさい!」 という言葉をよく聞いたように思うのだが、最近は、ぶつかっても知らん顔をしている人が多くなったように思う。現に、バーバラは来日したとき真っ先にこのことに気づき、どうして日本の人は何にも言わないの?と不思議そうだった。                                         

 このエクスキューズミーは、謝るときだけでなく、子どもをたしなめるとき、人を呼ぶとき、席を外すときなど、広範囲に使えるとても便利な言葉である。5歳のダイアンが、食事中、大人の会話に口を挟もうとすると、トムの発する言葉は大体これであった。子どもたちも、小さいときから躾けられているのか、教室でも、折り紙をしていて、自分の手が私の手にあたりそうになったときなど、エクスキューズミーという。小さな男の子が紳士に見えた。                        

 渡米して2ヶ月程経ったある晴れた日曜日、一人でニューヨークシティに出掛けた。ピークスキルからグランドセントラルステーションまで、電車で約1時間、オフピーク(土日及び週日の昼間)には片道6ドル50セント、ピーク時には、確か8ドル70セントと高くなるのだが。映画「恋に落ちて」で、メリル・ストリープとロバート・デニーロが出会ったあの電車である。窓から悠然と流れるハドソンリバーを眺めながら終着駅へ。さて、この日は、メトロポリタン・ミュジアムを訪れたのだが、ウロウロ歩くうちに2階の戸口で出会い頭に、人とぶつかりそうになった。その瞬間、                                   
「あ、ごめんなさい!」                                と、女性の美しい声が聞こえたのである。久しぶりに聞いた日本語の心地よさは、その後、ミュジアムのレストランで食べたスモークサーモンの味と共に、今も記憶に残る。                  

 というわけで、海外に出掛けたときは、エクスキューズミーもしくはごめんなさいを、気軽に連発して、無礼な日本人のイメージを払拭したいと思う。はっとして、とっさに謝るとき何語でもいい。心が通じる事が大事なのだから。品格ある態度は、万国共通だと思う。       
         
 

メトロポリタン・ミュジアム
ピークスキル駅から見たハドソン・リバー