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3軒目のホストファミリー
ボブ、バーニー、ローレンの家

 11月に入ると、木々は葉を落とし、気温もぐっと下がって、どこもかしこもすっかり冬の様相を呈してきた。窓際の寒暖計は室内、室外の気温が両方表示されているのだが、朝起きると、外の温度は氷点下の日が多い。二重窓とセントラルヒーティングのお陰で、家の中は寒さ知らずであるが、外気の冷たさは、11月にしてこの厳しさである。退職後は、ニューヨークのこの寒さから逃れて、フロリダに移住する人が多いのもよく分かる。勿論ニューヨーク州の高い税金からのがれる為でもあるのだが。

 もともと秋はもの悲しくて苦手な私なのだが、異境にあってこの寒さである。ハンブルグから帰った辺りから、気持ちは下降気味であった。そんな気分でいた11月初め、3軒目のステイ先に移った。ボブとバーニー、娘のローレン、それに犬のトビーの温かい家庭である。お陰で、この後12月半ばに帰国するまでの1ヶ月余りは、ホームシックも吹き飛んでしまう程、楽しく、快適な生活となった。

 この一家の住む家は、ピークスキルから車で10分ほど離れた、モントローズという郊外にあった。まるでバーバラのレイク・ジョージの別荘の辺りのように、林が広がり、その中にあちこちと美しい家々が点在している。ボブとバーニーの家は、今までの家と違い、建って6年程の新しい、気持ちのよい木造の家であった。表の通りからかなり奥まっていて、家の回りはひろびろと快適な空間が広がっている。広いバルコニーには、リスや美しい色の野鳥たちがたくさんやって来る。この後少し寒くなると、鹿の姿を見かけることもあった。リスの食べる乾燥したとうもろこしや小鳥の餌は、グロサリーストアで買って、常備していて、軒下の餌箱や、リスの止まり木の脇に、とぎれないよう補充する。ディナーの残りもお皿に入れて、庭においてやる。自然のなかで、動物達と仲良く暮らす様は、気持ちがよい。
 
 ボブは50代半ば、ピークスキル高校の建築の先生である。バーニーは40代前半、中学校の特別教育の専任教師で、2人は再婚夫婦であった。結婚7,8年というところだろうか、年令の割には、新婚ムードもあってか、仲良くほほえましい夫婦であった。16歳のローレンはバーニーの連れ子で、小柄で利発な高校2年生であった。日本語や日本の文化にも興味を持ち、私にとてもなついてくれた。ボブには別居している22歳の息子がいるということで、大きな写真が飾ってあったり、ローレンの実のお父さんにも後に紹介されたりと、離婚社会の実態に触れるようでなかなか興味深いものがあった。

 ここでの生活は、早寝早起き、6時起床、高校で授業の時は、ボブの4WDで7時には家を出る。何しろ始業時間が7時半と早いのだ。ボブの建築科の教室の窓からは、ピークスキルの町の北部が一望出来る。暗い空から雪の降り出す様や、木々の間に見え隠れする家々の風景は、絵はがきを見るようで美しい。中学へは、バーニーの緑のアメリカ車で、途中ローレンを高校に送ってから出勤する。帰りは、中高校とも、3時には学校を出る。

 
あれから3年近くが経つ。実は昨年も一昨年もこの懐かしい家を訪れた。ボブは昨年退職し、少しイメージは違うのだが、不動産業を営んでいる。建築が専門だから、適職なのだろう。ローレンは、今はワシントンD・Cにあるジョージワシントン大学の2年生になっている。Eーメイルで、教科の事や、将来の事、オーケストラでビオラを弾いていること、学校新聞のスタッフになったこと、委員に立候補しようかといったこと、秋からアルバイトをすることなどなど、知らせてくれる。年の離れた親友とお互い思っているようだ。
1999.8
台所の窓際 ここで朝食をとる