海へのペダル
前橋〜銚子 '08.05.03〜05.06


 晴天の続く絶好の行楽日和のはずが昼近くになっても雨は止まなかっ
た。それでもうっすらと差してきた雲越しの太陽に背中を押されて出発
した。
 自転車で、銚子まで2百数十キロを利根川に沿って往くのだ。

 利根川を下るのはこれで3回目になる。
 一度目はラフトボートで下ったが昭和村の利根大堰に阻まれてリタイ
ア。二度目はカヌーで佐原までは順調に行けたのだが、道草をしていた
ら台風がやって来てしまい、そこから銚子の手前まで列車を使ってのイ
ンチキゴール。
 今度こその思いで出発点に選んだ玉村大橋下の河原に立つと恐ろしく
速い流れに暗い空が映り、何となく不安な気持ちにさせられた。

 「海から186km」、利根川大規模サイクリングロードの玉村中学付近
にそんな標識がある。
 こんな標識、誰が利用するんだよ!
 通るたびにそんな突っ込みを入れていた自分がお世話になるとは思っ
てはいなかった。
 この標識は銚子まで500mごとにうるさいほどあって随分と励まされた。

 玉村から15km、広瀬川との合流付近に「島村の渡し」がある。
 写真を撮りに行くと船頭さんがやって来て、対岸まで乗って行けとい
う。
  こんな機会はないので喜んで乗り込むと船には船外機が付いていて、
速い流れも難なく横切って2分で対岸に到着した。おまけに料金は無料
という。
 何で?
 問い返すと、ここは県道だからと言われた。
 川の上にも見えない県道があり、誰でもが通行できるように無料の渡
しがあるとのことらしい。
 そう言えば那覇を北上した国道58号線は海上を鹿児島まで続く。
 しかし鹿児島まで無料の渡しがあるとは聞いたことがない。

 空気がネギ臭くなったと思ったら深谷市の標識が出てきた。河川敷も 畑やグラウンドに利用され、日射しと供に色とりどりの花が鮮やかなっ て気持ちも軽くなる。  マムシに注意!  そうだよな。暖かくなったから出てくるんだろうなあ。  イノシシに注意!  なに!この広い河川敷にはそんなヤツまでいるのか。  東北道の高架下はカヌーで下った時の1泊目のキャンプ地。初川旅の 不安な気持ちで高架から漏れる灯りを見上げたのを覚えている。  懐かしの場所を探しに行くが、雪解け水で増水しているのか全く地形 が変わっていてどこだったか判らなかった。  サイクリングの母娘とおしゃべりをしながらしばらく併走する。  娘さん(25歳くらい)は子供の頃やはりその河原でキャンプしたことが あると言っていた。  すぐに加須市。今日は100mの鯉のぼりを上げるイベントがあり、まだ その余韻が残っていた。  母娘ともうしばらく走っていたかったが、日も傾きだしたのでがんばっ ての声に送られてひとり先を急ぐ。  やがて路面がダートになった。  だいぶ尻が痛くなってきたところに揺れが堪える。 さらにサイクリングロード自体が消えて大きく迂回しなければならな くなった。民家を抜けると、どこも農作業の後片付けに忙しかった。  このあたりはもう田植えが始まっていた。
 栗橋に着いた。今日はここに泊まるつもりだ。  真夏だった前回は上陸した八百屋の店先でトマトを囓った。  塩をひとつまみもらって振りかけるとすごく美味くて生き返った気が した。  その時の店らしき八百屋があった。  今夜の宿が決まったら訪ねに来よう。  まず駅の観光案内所に行き宿を決めようとするとその観光案内所がな い。仕方なくタクシーの運ちゃんに聞くと街には宿は一軒だけという。 そしてその一軒に行くとGWで満員だと断られた。  こんな田舎町の宿に誰が泊まるんだ?  自分のことはすっかり棚に上げていた。  もう一度駅に戻りタクシーの運ちゃんに聞くと、それならひと駅だか ら古河に行って探せと言う。  ひと駅ならすぐだろうから自転車を飛ばすとそれがまた恐ろしく遠く、 さらに数件の宿に断られながら、やっとくつろげた頃にはすっかり暗く なっていた。  八百屋には寄れなかった。
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