| いよいよもって消滅寸前というところまで来たドリームキャストの最後っ屁のような作品で、おそらく末期DCにおいてもっとも元気が良かったと思われるアルケミスト+ヒューネックスのタッグによる作品。例によってパソコン18禁作品からの移植作で、元々の開発は戯画。確か同じアルケミストの「ショコラ」と同じ会社だったのではないかと記憶しています。
パッケージに記述されているジャンル名は「SFアクションアドベンチャー」となっています。昔のゲーム界にあったアクションアドベンチャーなるものとはほぼ別物で、ここ数年ですっかりスタンダードになってしまったノベルタイプのアドベンチャーゲームにアクション要素の極めて強い戦闘パートを組み入れたという形式です。「サクラ大戦」の戦闘がすべて「サクラ3」収録のミニゲーム「光武ナックル!!」になったと考えると分かりやすいと思います。もしくはPCエンジン時代にあったギャルゲーのアクション+ビジュアルシーンという形式の比率がビジュアルシーンの方に大きく片寄った感じ。
ぶっちゃけた話、戦闘シーンをノベルでのコマンド選択式にしてしまえばアクション要素を省ける内容なので、いくらでもあるノベルタイプギャルゲーのひとつだと考えてもらって構いません。
「SF」という冠がつくことから想像出来る通り、この作品は行き着くところまで行き着いてしまったネット社会の裏側という退廃的なイメージの近未来世界を舞台としています。
「チップ」を首筋に埋め込むことにより、仮想のネット空間へ意識をダイブさせることの出来るようになった社会。主人公の相馬透はその底辺にあるスラム地区を根城として凄腕のハッカーとして仲間と共に「草原の狼(ステッペンウルフ)」というチームを作っていた。透はハッカーであると同時にネット空間で使用する武装兵器「シュミクラム」の天才的パイロットであり、どんな危険なハッキングも無事にやり遂げている。
しかし、やんちゃないたずらから引退することを決意した最後のゲームで破局は訪れる。親友の内、ひとりは身柄を警察に拘束され、ひとりは死んでしまった。ネット空間での死は現実世界でも死となってしまうのである。
透はなんとかネット空間からの脱出に成功するものの、警察に逮捕されてしまう。そのままでは刑務所送り決定というところで、八木澤という男が現れ透に助け舟を出して来た。親友の仇を討つために彼の誘いに乗る決断を下した透は、ハッカー時代の敵であった軍人への道へと進んで行く。
そしてそこからの数々の選択が彼を数奇な運命へと導いて行く……。
学園物が幅を利かせるギャルゲー界において近未来を舞台設定に置く作品というのは意外と珍しかったりします。そのためわりと新鮮な、もしくは過去の剣乃作品にあったような懐かしい雰囲気を味わうことが出来ます。この作品だけでしか通じない特種用語の数々も雰囲気を高めるスパイス的な効果を発揮しており、これだけで人にお勧め出来てしまうくらいの魅力を持っています。
「バルド」の物語世界では軍部とテロリストが激しい戦いを繰り広げていて、第三者として軍に協力する民間のネットセキュリティ会社も存在。ゲームのシナリオは分岐によって、そのいずれにも主人公が所属するというダイナミックな構成です。それによって主人公は敵であったもの、味方であるはずのものの隠された真実を知ることになる。このあたりのさじ加減はなかなか見事です。
この作品のヒロインとなるのは、軍からチームメイトでオペレーターの瀬川みのり、同じくチームメイトの紫藤彩音。
テロリスト「飛刀」に所属するリャン、透の幼馴染みであり「草原の狼」でも仲間だった笹桐月菜。
「草原の狼」で仲間だったものの、誰も現実世界での素顔を知らない凄腕ハッカー「バチェラ」。
それに最後に控える謎の仮想空間幽霊(ワイヤードゴースト)の6人。
クリア出来る順番が厳密に設定されていて、みのり&彩音>リャン&月菜>バチェラ>ワイヤードゴーストという構成です。シナリオをクリアするたびに新しく選択肢が増え、別の分岐に乗ることが出来るようになるという仕組みになっています。
いずれのシナリオでもラスボス級の敵を相手に回すことになるので、かなり盛り上がります。特にラストシナリオの真の最終ボスの強さといったらもう……。
全ヒロインに複数(2or3)のエンディングが用意されています。グッドバッドという分けられ方こそされていませんが、エンディング毎の落差はものすごく大きく、バッド気味なエンディングを見ると鬱になること受けあい。なのにグッドエンドよりも味わい深いバッドエンドもあってなかなか侮れません。
続いてこのゲームのもうひとつの主役であるアクション面。
プレイヤーは透の操る「シュミクラム」というメカ(ネット空間のことなので、実際にはプログラム)を操作することになります。視点は2Dタイプのフィールドを見下ろす俯瞰タイプ。敵との位置取りによって自動で拡縮します。
十字キーで上下左右に歩行。同じ方向に二度入れることでダッシュへと移行し、Rトリガーで敵を自動追尾するショートダッシュを繰り出します。が、DC版の場合十字キーよりもアナログキーで操作する方が遥かに楽です。こちらは普通にアナログキーを傾けるだけでノーマルダッシュしてくれます。一応軽く入れることで歩行も出来ますが、戦闘中に歩くケースは皆無なので忘れて構いません。
攻撃に使用するボタンはABXYの4種。ABXはそれぞれボタンに割り振った攻撃を使い、Yボタンはゲージを溜めることで出せるようになるフォースクラッシュ用です。
特徴的なのは、自機の状態によってABXボタンを押して出せる攻撃が大きく変化することでしょう。格闘ゲームをイメージしてもらうとわかりやすいでしょうか。敵と非常に近い位置、敵と離れた位置、ノーマルダッシュ状態、ショートダッシュ状態で出る攻撃が異なります。つまりひとつのボタンで4種類の攻撃を出せるということです。それが3ボタンありますから、全部で12種類+フォースクラッシュひとつで13種類。プレイ中はこれらほぼ総てを使いこなさなければいけません。
というと複雑に聞こえるかも知れませんが、やってみると意外と簡単です。近接時は直接攻撃武器、離れた位置ではトラップ系や射撃武器、ノーマルダッシュ中は牽制を兼ねた射撃武器、敵へ突っ込むショートダッシュ中は当たりの強い打撃攻撃武器とおおよその役割が決まっています。
そしてもうひとつ重要な要素がコンボです。基本的に近接攻撃を出した後続けて同じボタンを押すことで、近接>遠距離>ショートダッシュ>ノーマルダッシュへとつなげることが出来ます。またAボタンで攻撃した後にBボタンの武器へと移行することも可能。この場合Aボタンでノーマルダッシュ攻撃までつなげてもBボタンで出せるのは近接攻撃になります(レバー及びトリガー入力で強引に変更することは可能)。
また、どんな攻撃でも出せばヒートゲージを増やすことになります。ヒートゲージは簡単に言えば一息に攻撃出来る限界値のようなものです。強力な攻撃ほど息切れして何も出来なくなる状態になりやすくなるという仕組み。コンボ中はヒートゲージが減ることが無く増える一方ですから、自然と出せる攻撃の数に限界が来ます。程度の低い武器ならフォースクラッシュまで全13種の攻撃をつなげられますし、燃費の悪いものだと3〜4種で終わりになります。武装はどのボタンのどの場所にも振り分けられますから(射撃武器を近接に設定出来たりもする)、これをいかに上手くやりくりするかが攻略の鍵になるわけですね。
ヒートゲージは非常に重要な要素で、ゲージが溜まれば溜まる程攻撃力が上がり、同時に防御力が下がります。コンボは強大な破壊力と装甲のガラス化を伴う諸刃の剣なのです。ゲージMAX状態で敵のフォースクラッシュを喰らうと鬼のように減らされます。即死ありえるくらいです。このゲージは敵にもあって、なにも攻撃してない状態だと防御力が高く威力の低い攻撃を弾いてしまいます。ゲージが溜まっているとどんな攻撃でも入れ放題。また限界までゲージを溜めてしまい減少中の敵は防御力ゼロで、しかもどんな攻撃を出すことも不可能です。叩くならここが狙い目になります。敵の体力やヒートゲージは画面右下にきちんと表示されていますので、常に注意が必要です。ちなみに各武装のヒートゲージ増加量は使い込むことで1/3まで減らすことが出来ます。
一方フォースクラッシュゲージは格闘ゲームでも普通に見られるゲージシステムです。攻撃を出したり喰らったりすると増えます。用途はフォースクラッシュを出すだけ。この攻撃に限ってヒートゲージMAXでも繰り出すことが可能です。フォースクラッシュはゲージを消費するだけあって抜群の破壊力を誇ります。通常の武装と同様に非常に多くの技が用意されていますので、どれを選ぶかはプレイヤー次第です。使うと自動的にヒートゲージが満タンになるので、増加量軽減のギミックはありません。
プレイ開始当初は固定武装しか持っていませんが、通常の武装は各武装の経験値を上げることで新たに開発可能になります。一度に開発出来る武器はひとつだけです。中には複数の武器が条件になっているものもあるので注意。フォースクラッシュの方はシナリオ中で特定の敵を倒したりすることでもゲット可能。
システム面ですが、ノベルタイプに必要なものは一通り揃っています。やや特殊なのはセーブ。この作品のシナリオはそれぞれ章構成になっていて、次の章に進む時にセーブするかどうかメッセージが表示されます。また戦闘シーンに入る前のセッティング画面でもセーブ可能。といっても、通常のシナリオ時にセーブ出来ないということではありません。いつでもセーブ可能です。
はっきりと特殊な点として、ヒロイン毎に表示される台詞のフォントカラーを変更出来るなんてものがあります。変更する意味とか、ほとんど無いとは思いますが。それと戦闘シーンの難易度選択も可能です。HARDランクに設定するとそれ以下では使って来ないような攻撃もしてくるようになります。けしてミニゲームレベルの作り込みではないのです。
また、プレイ中シナリオマップを見ることが出来て、これによって現在どの辺のシーンにいるのか、どこからどう分岐するのかなどを分かりやすく知ることが出来ます。分岐条件の結構複雑なゲームなのでとても助かります。
シナリオのことはあえて触れません。しっかりと面白いから。クリア順が決まってるだけあって、物語の核心が少しずつ明らかになる部分はぞくぞくできること受け合いです。個人的にラストシナリオのヒロインを好きになれませんでしたが、これはあくまで個人の問題ですから。
シナリオもさることながら、このゲームの最大のキモはコンボにあります。一度のアタックでいかに敵の体力を奪えるかを目指すだけでも充分に遊べる程面白いです。ポイントはコンボ補正とヒートゲージ。
このゲーム、コンボ補正がかなりきついです。単発なら強力な攻撃でも、コンボの後の方にもってくるとへにょへにょになってしまいます。なのでコンボの前半に単発でダメージの大きいもの、後半に多段技を持ってくるのが基本です。コンボの早い段階で空中に浮かせてしまい、他の敵に邪魔されなくすることも非常に大事ですね。フォースクラッシュもコンボ補正を受けますが、通常武装ほど極端に攻撃力ダウンしません。もっともフォースクラッシュを出すと自動的にヒートゲージが満タンになるので、最後に出すしかないのですが。
ヒートゲージは先述した通り、上昇させると同じ技でも攻撃力が高くなります。つまりコンボの後半の技は攻撃力が高くなる。でもコンボ補正もかかる(笑)。この辺の微妙な兼ね合いがなんとも面白いのです。
それに加えて通常武器だけでも12種類設定出来るという点があります。どの武装をどう組み合わせるかはそれこそプレイヤーの数だけパターンがあるといっていいでしょう。このゲームの武装は初期装備の極端に弱い(かわりにヒートゲージ増加も極端に少ない)武装でもない限り、無駄なものがありません。一見して「どう使えばいいんだ」というようなものでも他の武装と組み合わせることで劇的な効果を産んだりします。
たとえば「インペリアルストライク」という真上を殴る普通にはまったく使えない攻撃があります。この技、まともに当てられないかわりに攻撃力が非常に高いという特徴を持っています。どうやってこの攻撃を当てるか。何通りかの回答がありますが、それを考えること自体が既に面白いのですね。一例を挙げるとバルカンビットで真上に浮かせてから真下へ入り、落下する所を攻撃なんてのが考えられます。
ちなみに武装は複数のパターンを所持することが出来るので用途によって使い分けることも可能です。
ラストシナリオをクリアした後はサバイバルモードとヘルモードが出現します。いずれもアクション面を抽出したモードです。サバイバルは本当にサバイバル気分を味わえるモードで、格闘ゲームによくあるものと同じ。ただ、××人抜きとかいうレベルではなく200とか1000とかそういう話になります。極まるとラスボスを5体同時に相手にするとかいうことになるので大変(笑)。また、サバイバルモードは長期戦を想定しているせいか、せっかく育ててヒートゲージ増加量も減らした武器がリセットされています。序盤はこれらの武器を鍛え直すことから考えないといけません。
ヘルモードは設定されたさまざまなシチュエーションのステージを選択して攻略して行くものになります。本編ではありえなかった戦闘ばかりで、かなりのやり応えです。このモードでのみ、他社製作品の「みずいろ」に登場したヒロインたちが敵として出現します。日和以外はみな鬼のように強いです。実は自機も彼女達の中の特定のキャラに衣替え出来るとか出来ないとか……。
アクション要素を持つからということもありますが、プレイ後のやり込み要素を持つギャルゲーというのはかなり珍しいと思われます。
基本的に強くお勧め出来る面白い作品です。PS2版も発売予定なのでぜひプレイして欲しいと思います。
あえて欠点を挙げるとすると、アクション面での強制イベント中(人形劇みたいなものが挿入される)にスキップするとフリーズするポイントがある点。味方機が勝手に破壊されてゲームオーバーになるケースがある点、敵機の数が増えると露骨に処理落ちする点あたりでしょうか。それにラスボスだけ即死技を持っていて異常に強いこと。たぶん。ファーストプレイでラスボスをストレートに倒せる人はいないんじゃないかと思います。後は複数の武装パターンを確保出来るせいか、セーブ一ケ所あたりの消費ブロック数が多めであるというところでしょうか。プレイする前にVM内のデータを整理しておいた方が良いです。
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