4、地震予知研究と自然科学
自然科学とは、「自然を貫く法則を追求すること」である。データを基に仮説をた て、仮説の真偽を観察と実験による検証を繰り返すことで、妥当性の確認とより精度の高い法則を導いてゆく。地震研究もこの考えに順じており、国家レ ベルの予知研究は、地震波速度・地殻変動・地盤観測・地殻熱流量・地磁気・ 地電流の最新型測定器によるデータ集積等の科学的情報に基づくものしか行われておらず、又認められてもいない。そのため、科学的根拠を持たない 予知は「えせ科学」の一種とされている。しかし中国では、国家による地震予知に成功し、多くの人命を救った実績(1975年、遼寧省海城県中心に起こっ た海城地震の予知に成功)があり、この予知に用いられた方法が、えせ科学とされる「宏観前兆学」によるものなのである。科学は、「再現可能な現象のみを対象とする」という特徴があり、限界がある。そのため「不完全情報下での現象」や「再現不可能現象」は、科学の対象外であることを認識しておく必要がある。この科学の可能性と限界の両方の認識を正しく持てば、「科学」や 「えせ科学」を妄信することもなく、全面否定する必要も無い。
地震予知は、大気の状態や運動が気象衛星等のさまざまな手段で監視されその理論も確立している「台風の進路予測」とは、状況がまったく異なっています。地下の監視手段は心許なく、地震のタイプや、地域によって一律に論じることが出来ないからです。つまり、「台風の進路予測」が「風邪の治し方」であるとすると「地震予知」は「病気の治し方」に相当するといえます。そのため地震予知に普遍的方法を見出すことはそもそも不可能であると思われます。しかし、地震予知が、全くの無駄かといえばそうではありません。下の図は地震予知連絡会指定「観測強化地域(赤字)」「特定観測地域」ですが、20年以上も前のものです。つまり長期的予測として、「阪神大震災」は発生が懸念されていたのです。
図 地震予知連絡会指定「特定観測地域」(図中の赤部)(線は活断層を示しています。)
しかし現実は百年・千年単位の予測は無意味とされ、何の施策もされないままに地震が発生し、大惨事となってしまいました。昨今の大事故の原因も「安全の為に行なうべき基礎研究」や、「安全性を高める施策」が「予算削減」の名目でなおざりにされてきた事が原因です。神戸の震災の場合は、前者に関しては研究者たちの並々ならぬ努力が続けられてきたようですが、後者の減災施策に関しては手落ちであった感は否めません。これらの事例を教訓として私達は、過去の天災・人災を問わず大惨事の原因がどこから発し、その原因を「政府・企業」が真摯に受け止め、改善できているかどうか、或いは改善しようとしているかを厳しく監視すると同時に、自分たちの手で問題解決に協力出来る事があるのかどうかを真剣に考え、共に努力し続けなければなりません。
参考文献:石橋克彦 . 阪神・淡路大震災の教訓 . 岩波書店