植物が有機物を吸収する/収量が2-3倍に高まる炭素肥料、17種全元素施肥栽培という考え方

第5章 最少律と保存則から有機物の植物へのリサイクルの存在を推定する


最終訂正西暦2014年01月04日:開設西暦2014年01月04日

第5章 最少律と保存則から有機物の植物へのリサイクルの存在を推定する


このホームページは、有機物を作物に吸収させて耕地の生産性を高める新しい考え方を提案します。この章では、これまでの作物の生産性の推移を概観し、最少律と保存則に基づいて「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」の存在を推定します。

即ち、作物の生育において、作物にエネルギーとCOHの有機3元素とを供給する機能を持つ有機物が存在し、作物の生育に大きく寄与することを推定します。


1.リービッヒの最少律とドベネックの桶

植物の成長についてのリービッヒの最少律とそれを簡潔に示したドベネックの桶について記します。

ドイツの化学者リービッヒは、「植物の成長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響される」と「リービッヒの最少律」を提唱しました。今日では、養分以外の水・日光・大気などの条件が追加されています。ただ、植物の成長に関係する要因がいくつあるのか、どこまで広がるのかは判っていません。

このリービッヒの最少律は、今日の栽培の基本となっています。

リービッヒの最少律を簡明に表現したものが「ドベネックの桶」といわれるもので、上に示します。桶の板が一つ一つの要因となります。

植物の成長は、図に示したようにさまざまな要因の中で一番低い水準の要素に支配されていることを簡明に示しています。桶に溜まった水の水位が植物の成長速度・生長量であり、また、作物の収量です。

桶の板は、栽培に影響しているいろいろな要因であり、原因とも言えます。桶に溜まった水の水位は総合的な結果です。

ある瞬間の植物の成長が、このような最少律によって支配され、その一連の繋がりが、収穫時の作物の収量になります。


2.ドベネックの桶の変形

ドベネックの桶は、判り易い例えですが、しかし、いろいろ活用するには曲線の桶と板の作図が難しく、不便な図です。このためドベネックの桶の図を、桶の板を平面に展開し、次のように図示します。

桶の水位は、栽培の結果であり、収量として示します。ドベネックの桶のそれぞれの板は、栽培を支配する要因を示します。

この図は、作物の成長を決定している要因の項目を「エネルギー保存則」「質量保存則」「他の要因」の3つに区分し、質量保存則については「COH有機3元素」と「NPK等 無機養分14元素」との2つに区分し、全部で4つの項目に区分しています。

作物の成長を決定している要因は、本来、1つの要因毎に独立しています。しかし、ここでは、説明の便宜上、上記の4つにグループ分をしています。この4つの項目で作物の成長を決める全ての要素が漏れなく含まれています

そして、今の栽培は「無機栄養説」に立脚しています。現在の施肥は質量保存則に関係するものであり、水色で示した項目です。この4つの項目について以下に簡単に記します。

@「エネルギー」:

植物にはエネルギーが含まれています。植物が大きく生育すると、より多くのエネルギーを含んでいます。植物に含まれているエネルギーは、光合成によって獲得し、代謝のために一部が失われ、その収支が結果として作物体に残されています。生育中の植物のエネルギーを計量することは難しいですが、しかし、「収量」は作物体に残されているエネルギーと一定の比率の関係にあるものと思われます。

また、植物がエネルギーを獲得する手段は光合成だけと考えられています。栽培の結果、単位面積の収量が「Y1」であったとき、破線で示した水準が最少律の水準であり、これら4項目の何れか一番低い水準のものがこの位置にあったことになります。他の項目はこの破線の水準か、それ以上の水準にあったことになります。この時、エネルギーは「植物体に含まれているエネルギー量」になるべきかもしれません。しかし、エネルギーの原因として考えた場合には「光合成によって獲得したエネルギー量=光合成量」と見ることもできます。

リービッヒの最少律やドベネックの桶は、成長を規制している原因を考えるための手段でもあり、その意味では、現時点では、エネルギー項は光合成量と置き換えることもできます。エネルギー項を、植物が獲得したエネルギー量とするか、植物に残存しているエネルギー量とするかは、自由に選択して構いません。このホームページにおいて、重要なことはリービッヒの最少律を考える際に「エネルギー項がある」という視点が存在することを明らかにすることです。

A「COH有機3元素」:

植物を構成する主要な元素は、炭素C,酸素Oおよび水素Hの3種類の元素です。この3元素は、植物が光合成によって獲得できる元素です。このため、通常の栽培では、COHの3元素については施肥しません。稀な例として、植物工場で空気中の炭酸ガス濃度を高め、光合成量を増大させるものがあります。

光合成によって植物はブドウ糖(炭水化物)を獲得します。ブドウ糖の分子式はC6H12O6で示され、COHの3元素が含まれています。ここでは、便宜上「COH有機3元素」として一つのグループとして取り扱っています。植物は、光合成によってCOH有機3元素を獲得し、そして、代謝によってエネルギーを失うことでCOH有機3元素を燃焼させて失います。植物体に残されているCOH有機3元素は、光合成で獲得した量と代謝の消費エネルギーとして失った量との収支による残留量です。COH有機3元素を残留している量と見るか、光合成で獲得した量と見るかは、前記@の「エネルギー項」と類似しています。「エネルギー」と「COH有機3元素」とについては、植物が光合成によって同時に獲得していることが知られています。このことから、双方を「光合成量」と一括して認識することも可能でしょう。

この2つの項目は、一般的な露地栽培や土耕ではほとんど考慮されていない要因です。それは、考慮しないのではなく、考慮しても人為的に為す術がないからかもしれません。しかし、エネルギー保存則と質量保存則という自然の保存則からすれば、エネルギーと質量とは明らかに別の事柄です。質量保存則は、元素毎に規定されるものであり、エネルギー保存則は元素や化学種の区別をせずに計量されるものです。

B「NPK等無機14元素」:

「無機栄養説」に従う作物の栽培では、この項目が最も重要視されている項目です。

NPKに代表される必須無機元素については、詳細に調査されています。不足した時の作物体の様相や過剰になって障害が現れた時の様相などが克明に調査されています。そして、土壌分析やその風土における標準的な収量のデータから必須無機元素の所要量が決定され、生育期間中に欠乏症や過剰障害が起きないような肥培管理が計画され、順調な生育を促しています。植物に共通した必須の無機14元素以外の無機元素を必須とする作物についても、通常の範囲では調査されており、適正な配慮がなされています。

C「他の要因」:

植物が生育するには数多の要因が影響します。上記の@〜B以外の要因の全てをこの「他の要因」に含めています。

温度、湿度、土壌水分、風速、CO2濃度、O2濃度、気圧等有らん限りの要因が含まれています。温度が南極のように低温であれば植物は育ちません。空気に炭酸ガスが含まれていなければ植物は育ちません。湿度が常に飽和湿度であれば、蒸散ができず、吸水もできないために、生育が停止します。このように「他の要因」には、植物の生育に決定的な影響を及ぼす要因もあります。しかし、通常は、所望の作物が繁茂する風土で耕作しているために、「他の要因」についてはあまり手当てすることもなく、成り行きに任せることが多いと言えます。

単位面積当たりの収量の最高値を「Ymax.」とした時に、赤の二点鎖線(仮想線)の上の領域は、到達可能かどうかわからない領域です。しかし、ある栽培の収量が「Ymax.」未満であれば、何れかの項目が制限要因となっていることになります。制限要因となっているものについて、適切な改善の術があれば、収量を高めることができる可能性があります。制限要因ではない要因について、過剰な手当をしても効果はありません。リービッヒの最少律は、制限要因を的確に見定めて、的確に手当をすることを求めています。


3.幾つかの栽培の収穫量の比較(4つの栽培の比較)

ここでは、次の4つの栽培の段階について比較します。

T:TNPK出現前

U:UNPK慣行農法

V:V植物工場

W:WJP1359005号の実施例

この「TW」の栽培形態は、人類が経験してきた栽培です。ただし、この4つの栽培の収量を同一の栽培品目で比較するものではありません。

TNPK出現前(1)」とは、NPK等の化学肥料が出現前の栽培の収量で、ここでは、便宜上、その収量を「1」としています。日本でいえば、江戸時代あるいは明治時代の農業で、化学肥料の概念が無い時代の農業です。コメの生産性は1反当たり2〜3俵であったと言われています。この時代、「肥料店」は存在していません。栽培に用いる肥料は、耕作者自身が作っています。肥料をお金で購入する風習はありません。このため、後世、肥料店で販売している肥料を「金肥」と表現しています。古い農業では、肥料を購入することはありません。

UNPK慣行農法(2.5)」とは、NPK等の化学肥料による現在の主流の栽培における単位面積の収量を示し、収量が「2.5倍」になったと推定し、その値を用いています。NPK化学肥料による収量の増加の度合を2.5倍に想定しています。しかし、この値に相応しい別の値があれば、適宜、変更できます。なお、この「U」の栽培は、およそ100年前に達成した栽培の取り組みです。即ち、ハーバーによって空中窒素をアンモニアとして固定する手法が編み出されたことで、リービッヒの提唱する「無機栄養説」に必要な無機肥料の全てが完成し、今の施肥設計が完成した時期です。今日の農業の主力となっている栽培が完成したのは約100年前のことです。

V植物工場(100)」とは、オランダの温室栽培に代表される最先端の栽培です。この栽培の単位面積当たりの生産性を「100」と推定しています。オランダの温室栽培では、1000u当たり年間100トンのトマトを生産していることが知られています。日本の露地栽培のトマトでは、1000u当たり年間2.5トンの生産量と見こまれています。しかし、今日、生業として日本の露地でトマトを栽培する事例は少なくなっています。このことから、単位面積の生産性で比較すれば、日本の露地栽培の40倍がオランダの植物工場の生産性と推測されます。「TNPK出現前」からすれば、単位面積当たりの1年間の生産性は「100倍」の生産性になります。

WJP1359005(4‐8)」とは、第2章で記した日本特許1359005号の明細書に記載されているこの発明の実施例による栽培の収穫量が対照区に比べ「1.9−3.5倍」となっていることから、「T=1」と比較して「4.75−8.75倍」であり、便宜上、「4‐8」と表示したものです。

以上のように、このホームページでは、「TUVW」の単位面積の収量を「1、2.5、100、4‐8」と推定しています。この推測値についてはいろいろな見方があるでしょう。

しかし、単位面積当たりの1年間の収量の大小関係でいえば「VWUT」であることは疑いのないことです。必要であれば、それぞれがどのような値に置き換えても、この大小関係が維持されている限り、当ホームページの主旨に全く変わりはありません。

以下、「TW」の栽培を順番に図で比較します。


4.「UNPK慣行農法」が完成した時

この図は、「TNPK出現前」から「UNPK慣行農法」へ推移した時の状況を示しています。時期的には約100年前になり、現在も続いている栽培形態です。

いつの時代であっても、作物の栽培では、収量が最大になるように努力しています。リービッヒが科学的な視点で農業と取組む以前は、個人的な経験と感性が赴くままの農業がおこなわれていました。科学的な検討をすることで農業の生産性が高まるとは誰も考えなかった時代です。そもそも、「科学」という概念が無い時代です。

リービッヒによる化学分析の結果、収穫によって失われる無機元素を的確に補う無機栄養説の栽培が確立し、そして、ハーバーによる空中窒素の固定が可能となり、無機栄養説が求める14種の必須元素が化学肥料によって補給すること可能となりました。それが今の栽培の主流となっている「UNPK慣行農法」です。農業に科学的な思考を取り入れるためには、「化学分析」が不可欠でした。化学分析の発達によって、栽培の実態がはじめて科学的に解き明かされました。それまでの農業は、家長が赴くままに所作を決めていた加持祈祷に等しい農業と言えます。その理不尽に数多の「嫁」が苦労していた時代です。

UNPK慣行農法」によって、耕地の生産性は2.5倍、あるいはそれ以上に増加しました。

農業が始ってからの長い期間、世界中の各地で多数の人が額に汗して取組んでいた農業の生産性が、「リービッヒとハーバー」で一気に2.5倍に高められたことになります。

このNPK化学肥料の出現で判ったことは、2点です。赤線(水平線)で示します。

第1は、収量が2.5の位置の2点鎖線(仮想線)の赤線です。これ以上の収量は達成できるかどうか判りません。収量の上限かもしれません。仮想線で領域を分けます。収量が2.5を超える栽培を目指す場合には、何か別の工夫が必要です。或いは、それは不可能なことかもしれません。

第2は、収量が1の位置の二重線の赤線です。NPKに代表される無機要素を施肥したことで収量が増しました。NPK出現前の栽培は、この二重線が最少律による障壁だったことが判ります。収量が2.5の水準までは、NPK等無機要素は人為的な手当が可能であり、最早、この項目が収量を抑制することはありません。昔の耕作者は、NPKに代表される必須無機養分を適切に施肥することで昔の栽培の2.5倍程度の収量を達成することができます。


5.最新の「V植物工場」の達成した成果

この図は、「V植物工場」の実績を表したものです。栽培の形態でいえば「UV」の推移期です。

植物工場では、人工照明、高濃度CO2、冷暖房による適温の維持、隔離床(ロックウール)、高密度栽培、コンピュータ管理等考え得る限りの要素を人工的に最適に管理し、高い生産性を実現しています。この図の縦軸は「対数目盛」となっています。これは、「1〜100」という幅広い範囲を表示するためのものです。植物工場は、さまざまな事柄を研究し、その知見に基づいて計画的に構築された栽培形態であって、偶然見出された驚異的な生産性を持つ栽培形態ではありません。

V植物工場(100)」の出現で、幾つかのことが判明しました。

第1に、収量が100を超える領域については、到達可能かどうか判りません。

第2に、収量が100までの領域については、栽培に影響を与える要因の全てを充当しています。エネルギー項、COH有機3元素、NPK無機14元素、および他の要因の全てが「収量100」の水準まで充当できました。

第3に、NPK等無機14元素については、「無機栄養説」に従って施肥設計し、肥培管理している現代農業の考え方で十分対応ができることが判りました。

第4に、作物の種子に予め備わっている繁茂能力は、格別な配慮をしなくても十分に大きなものであることが判りました。

第5に、エネルギー項、COH有機3元素、および、他の要因の3つの項目も収量が100の水準まで充当されていました。人工照明、高濃度CO2、冷暖房による温度維持など露地栽培では対処できない改善が影響していると言えます。光合成では、光エネルギーを化学エネルギーへ転換し、そして、COH有機3元素を生成する過程であり、エネルギー項とCOH有機3元素は、人工光合成によって充当されていると見られます。

第6に、「UNPK慣行農法」の制限要因は、エネルギー項、COH有機3元素、および、他の要因の3つの項目のうち、何れかであったといえます。しかし、何れであるかは特定できません。しかし、今のNPK慣行農法において収量を高めるには、この3つの項目に特別な配慮が必要であることが浮かび上がりました。通常の栽培環境では、種子と無機要素とについては十分すぎるほど高い水準にまで手当できます。


6.「最少律と保存則から見える栽培の姿(1)」の修正

V植物工場」の結果から、実は「最少律と保存則から見える栽培の姿(1)」の図は、次のように修正されます。

第1に、無機栄養説に立脚したNPK慣行農法の無機要素に対する手当は、収量が極めて高い水準の領域まで適正な所作であり、今の見方で十分対応できます。従って、収量に見合う適切な配慮をする限り、無機要素は制限要因にはなりません。いままで、収量2.5までの充当を担っていたNPK等の無機栄養素の施肥技術は収量100まで完璧に対応できました。このため、収量が100以下の領域では、無機要素は適正な配慮をする限り、十分対応ができます。

第2に、種子の繁茂能力は極めて旺盛であり、特別な場合を除き、種子は制限要因にはなっていません。

第3に、収量2.5における仮想線の上方は、適切な手当で達成できる可能性が生まれました。その時の手当は、恐らく、無機要素や種子ではない要素の改善によります。このため、仮想線(ニ点鎖線)から、破線に変更されます。無機養分の手当と種子の能力は十分なものがあります。

第4に、収量が100の水準までは、無機養分の充当は適正でした。従って、収量が2.5の「UNPK慣行農法」においても、施肥設計や肥培管理が適正なので、過剰に施肥しないことが肝要です。過剰に施肥しても、障害が出ず、判らない恐れがあります。大過剰の施用は、肥料が無駄になります。

第5に、最早、「TNPK出現前」の、科学的な根拠を考慮せず、意味もなく効能が無い資材を圃場へ投入することは厳に慎む配慮が必要です。それは、1840年以前の科学的な思考ができなかった時代の所作と全く等しく、もっと言えば、太古の人々と同等ともいえます。これ以降、「TNPK出現前」については、格別関与することがありません。


7.「WJP1359005号」の位置付け

そこで、「WJP1359005(4‐8)」を(2)の図に追加します。緑色で示しています。JP1359005の栽培は、土耕でのハウスと露地の例です。収量は「4‐8」の水準に高まっています。

今までの図とこの図を参照したときに、次のことが判ります。

第1に、無機要素と種子については、収量100以下の領域では検討の対象外です。十分問題なく対応できます。

第2に、エネルギー項、COH有機3元素、および、他の要因が、収量4-8の水準まで充当されました。しかし、露地栽培やビニールハウス栽培であり、人工照明・加熱・高濃度CO2等は行っていません。JP1359005の事例は、土壌改良材を追加しただけです。即ち、土壌改良資材の施用で、この3項目が充当されたことになります。勿論、この3項目のうち1つまたは2つの項目は制限要因ではなかった可能性もあります。

第3に、本来は光合成によって充当される「エネルギー項」と「COH有機3元素」が、上図の緑の領域のように施肥資材で手当されています。このことは、この時の土壌改良資材が作物に直接有機物を供給したのか、作物の光合成能力を活性化させたのか、あるいは、その双方かは別として、結果的に、光合成を助勢したと同じ現象が出現しています。エネルギー項とCOH有機3元素の水準の上昇は、今までの施肥の概念では理解できません。少なくとも、人工照明や高濃度CO2ではないことは明らかです。光合成を付加せず、資材の施肥によって光合成の増大と等しい効果が得られています。

第4に、「UNPK慣行農法」の「エネルギー項」と「COH有機3元素」の項目は、収量が2.5の水準において、自然の光合成の限界による障壁があったといえます。それは「他の要因」については何も手当をせずに、収量が高まっており、慣行農法の収量を規制していた障壁は「自然の光合成」と考えることができるからです。

第5に、植物工場のような最先端農業ではなく、普通の栽培で施肥によって収量を、二重破線よりも上に引き上げることができるかどうかは、判りません。


8.植物工場を除外し、露地や簡易ハウスのような普通の栽培だけで見る

V植物工場」は余りにも最先端の栽培形態で、一般的ではありません。また、「TNPK出現前」も今の時代では稀です。そこで、植物工場によって得られた知見を加味し、露地や簡易ハウスのような広く行われている栽培の部分だけに拡大したものが下の図です。種子や、無機養分の施肥は一般的な認識に基づいて行う限り、制限要因にはなりません。

そして、JP1359005の事例では、収量が「4‐8」の水準まで高められることが判ります。この図の数字の縦方向の目盛は「真数」です。

JP1359005号の事例は、「UNPK慣行農法」に土壌改良資材を追加しただけの栽培です。「UW」の栽培は、1作毎に随時変更ができます。JP1359005号の実施例に示された栽培は、今、露地栽培を行っている耕作者であれば、直ちに次の作付から実施できる簡単な栽培方法であり、導入が極めて容易です。何故ならば、NPK慣行農法に対して、たった一つの施肥資材が追加されるだけだからです。

他の要因の項目は、格別な手当はしていません。成り行きで「4-8」の収量が得られています。

W」の土壌改良資材の追加によって、緑色で示すエネルギー項とCOH有機3元素の項目が充当されています。

この図からは、次のことが判ります。

第1に、JP1359005号によって引き上げられた収量(緑色の領域)は、大きな飛躍です。慣行農法の収量の1.9〜3.5倍の収量水準へ到達することは大変な増大です。この増大は、無視できない大きさと言えます。たった1種類の施肥資材の追加で、その収量が「青色矢印」から『赤色矢印』へ変化しています。

第2に、今の緑の上限にある二重線の破線は、更に、上方へ移動できる可能性があります。収量を高めるための手当の目標がハッキリ判ります。エネルギー項、COH有機3元素および他の要因の改善によって、より高い収量が見込めるかもしれません。

第3に、「UNPK慣行農法」の収量2.5の水準(赤線の二重線)において、エネルギー項とCOH有機3元素の項目で自然の光合成の限界があるものと推測できます。このことは、「UNPK慣行農法」の生産性の上限は、自然の光合成が規制しているものといえます。自然の光合成によって獲得されるエネルギーとCOH有機3元素とが最少律でいう最も低い水準にあったといえます。このため、「UNPK慣行農法」の栽培で更なる生産性向上を目指すのであれば、この2つの項目の改善あるいは光合成の改善が有益と言えます。

第4に、この土壌改良資材の効果は光合成の助勢に等しいと言えます。しかし、有機物を直接補給しているのか、或いは、作物の光合成を活性化させているのか、あるいは、両者なのかは判りません。ただ、結果として、土壌改良資材の施用は光合成を助勢したのと同じ効果になっています。

第5に、土壌改良資材として用いていた場合と、肥料として用いた場合とでは施肥量に違いがでます。JP1359005号では土壌改良資材と認識しています。これが肥料による効果とすれば、効果を高めるために、灌水を行うなど、他の要因においても収量を高めるための手段があります。


9.これまでの栽培の推移を最少律と保存則から概観する

以上に詳述した栽培の推移を次の図にまとめます。

それぞれの栽培の収量の数値は、必ずしも厳密なものではありません。しかし、耕地の生産性は、昔の農業では「1」であったものが、NPK慣行農法によって「2.5」と飛躍的に大きくなりました。そして、植物工場の出現によって「100」という信じ難い生産性を記録するまでになりました。そして、JP1359005号の例では人工照明や高濃度CO2に依存せず、露地やビニールハウスで「4‐8」という水準を記録しました。このような推移を示したのが上記の図です。重複しますが、全体を概観します。

第1に、収量が100を超える領域は、未踏領域です。この水準の赤の二点鎖線(仮想線)D以上については、到達可能かどうか判りません。しかし、100までの領域は、人為的に達成できました。従って、この水準まで人為的には栽培に係る全ての要素を手当できました。

第2に、種子の繁茂能力は極めて旺盛で、高い水準の収量まで対応できると考えられますD

第3に、NPK等無機要素14元素については、これまでの考え方で十分対応できますD。NPK等無機要素については、これまでの通り、想定する収量に対する適切な施肥設計と肥培管理をすれば何ら問題なく対応できます。

第4に、今は無い古い時代の農業は、NPK等無機要素の不足が原因で収量が低い水準に止まっていたと言えます@

第5に、植物工場とJP1359005号の栽培とから、NPK慣行農法では、自然の光合成が制限要因になっていたと言えますA

第6に、JP1359005号の栽培では、土壌改良資材がエネルギー項とCOH有機3元素項について緑色で示した領域を充当しています。それは、光合成ではないものの、光合成の機能を代替しているといえますB

第7に、このJP1359005号の光合成の代替の現象は、植物工場の人口光合成のように非常に高い水準の収量まで到達するものではなく、増収の効果は限定的です。

第8に、前記第6の現象については、「作物が有機物を吸収している」か、「作物の光合成が促進されている」か、或いは「両者が同時に進行している」などと考えられます。しかし、これだけの検討ではその何れであるかは特定できません。しかし、理屈は判らなくても、現象として「光合成と同じ効果が得られている」ことは明らかです。

第9に、「他の要因」については、植物工場以外では格別工夫をしていないので制限要因かどうかは判りません。しかし、温度が低ければ作物は育たないので重要な制限要因であることには違いありませんC

農業の目的は、人間に必要な食糧を十分に生産することです。そのために、いろいろ調べて、より容易に食糧が生産できるように努力しています。所望する食糧が生産できるのであれば、主要な目的は達せられています。

今日、世界平均では、一人当たり5000uを越える耕地があり、そして、一人当たり約1000uの耕地の作物を食べていると考えられます。食料を自給できない地域は、他の地域から食料を輸送しています。食糧の輸送には、エネルギー、とりわけ石油を必要とします。石油はやがて枯渇する化石燃料です。石油は、50年ほどでほぼ枯渇すると見られています。

そのため、耕地の作物の生産性を高める術を手に入れることは大切です。必要な食料を、より近い場所で豊富に生産することが「食糧の輸送エネルギー(石油消費)」を抑制します。

今の社会の姿は、約100年前に完成した「UNPK慣行農法」の下で形成されたものです。その食糧生産性を2-3倍に高めることができれば、多くの地域で食糧を自給できることになります。JP1359005号の現象(緑色の領域)が、「有機物の吸収」であるか、「光合成の活性化」であるかは判然としません。しかし、その理由はさて置き、耕地の生産性を高める資材が出現したことになります。

そして、その資材の効能は、「光合成を助勢する」という今までの無機栄養説に従う肥料では想定していない効果です。

更に言えば、作物が光合成によって獲得していたCOH有機3元素についてもJP1359005号では充当されています。このことは、従来の「無機栄養説」ではなく、『必須全元素施肥』という施肥形態とも言えます。植物が必要とする全元素を施肥する考え方は、従来にはありません。そして、全元素の施肥という新しい形態が出現したことで「無機栄養説」の限界があることもよく見えてきました。「無機栄養説」ということから、COH有機3元素は施肥対象から除外されます。手当てしないCOH有機3元素が最少律における制限要因となっていた場合には、改善の術がありません。それが「無機栄養説」に従う栽培の限界になります。

また、「無機栄養説」に従えば、地球上に存在する膨大な量の有機物も栽培に活用することができません。その道が閉ざされています。

しかし、「無機栄養説」は、100年以上も前から、科学的な手法によって綿密に調査された結果に基づく自然界や耕地の主体的な形態であることには違いありません。

当ホームページでは、有機物を、「有機金属化合物(例えば、低位有機酸カルシウム)」という形態で施肥することで植物への吸収を高め、そして、吸収した植物が旺盛に繁茂するという見方をしています。

「有機金属化合物」という有機物であれば、土壌微生物による分解を受けにくく、且つ、植物の根から吸収されやすく、また、植物体内の代謝において活用されやすいものと推測しています。結果的に、当該植物が光合成で有機物を得たのと同様の結果になり、植物の繁茂が旺盛になったといえます。


10.簡単なまとめ

JP1359005号の事例を仔細に検討すると、従来の常識では考えられないことが起きていると思われます。このホームページは、従来の想定外のことをいろいろな視点から検討します。ここでは、最少律と保存則とを利用していろいろな栽培を概観したことから得られる幾つかの知見をまとめます。当ホームページは、JP1359005号の現象を「作物が有機物を吸収したことによる効果」と推測しています。

1)リービッヒの最少律と保存則とで栽培を概観する評価手法

上記のように、ドベネックの桶を平面に展開し、そして、各要素を「エネルギー保存則」「質量保存則(COH有機3元素・NPK等無機14元素)」「他の要因」に区分し、栽培の手法と収量とを勘案し、リービッヒの最少律で評価すると、厳密とはいえないまでも、収量に影響している其々の要因の状況がかなり明瞭に判って便利です。

2)施肥による光合成の助勢

JP1359005号の事例では、土壌改良資材の施用が、あたかも光合成が促進された結果になっています。これは、植物体内の光合成の過程の進捗速度が増大した可能性と、有機物の吸収と同化によってエネルギーとCOH有機3元素が付加された可能性等の幾つかの見方があり、上記の記述では、何れかは特定できません。

3)「無機栄養説」の限界と「全元素施肥」

理由はどうあれ、施肥によってエネルギーとCOH有機3元素が補給されていることになり、無機栄養説に従う現在の栽培では対処していなかった要因の充当になっています。エネルギーとCOH有機3元素が施肥によって充当される事態になれば、「必須全元素施肥栽培」となり、従来の無機栄養説とは異なり、新たな栽培の考え方となります。1800年代から今日まで、農業は無機栄養説に立脚しています。そして、この考え方で膨大な経験を蓄積してきました。栽培に関するいろいろなものが無機栄養説を基盤にした栽培実績に基づいて構築されてきました。しかし、このホームページで注目した激しい増収をもたらす栽培の背景に、「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」という現象があるのであれば、「全元素施肥栽培」という全く新しい視点に立脚した栽培も成立つことになります。その適用範囲は、NPK慣行農法の収量の2−3倍の範囲まで拡大できる見込みです。

4)膨大な資源量

JP1359005号の効果が「光合成の強化」によるものか「有機物の吸収」によるものかは判然としないまでも、家畜糞尿を生石灰で殺菌分解したときの生成物を圃場施用することで実現する効果であり、家畜糞尿の発生量(日本では年間8900万トン程度)は極めて多く、従って、理由は判らなくても、その真似をすれば甚大な効果を手にすることができます。日本ばかりではなく、世界的にも家畜糞尿、食品加工残渣等の有機廃物は大量に存在します。多くの場合には、始末に困っている物質と見られます。ほとんど廃棄物とも言える膨大な有機物質を活用して耕地の生産性を高める道が拓けました。

5)有機物の吸収による効果であれば

当ホームページは、この現象を「有機物の吸収による効果」と推測しています。もし、「有機物の吸収による効果」であれば、「無機栄養説」に従うこれまでの考え方では利用されていなかったバイオマス(天然の有機物)は、所定の有機化合物へ転換すれば植物に吸収されて、成長を促すことになり、毎年風土から生まれる膨大な量のバイオマスが食糧へ転換できる経路が見出されたことになります。この激しい増収が、家畜糞尿以外のバイオマスをも原料にできるのであれば、地球の大多数の耕地で、近隣から原料を得られることになり、ほとんど地場の資源を利用して食糧を増産できます。

6)エネルギー肥料と言う概念

「エネルギー肥料」という概念は従来にはありません。しかし、植物が有機物を吸収する現象が無視できないほど大きな影響を及ぼすことになれば、吸収される有機物の化学種によって植物に取り込まれるエネルギー量が異なってきます。植物が獲得するエネルギーとCOH有機3元素との双方が光合成だけによってもたらされるのであれば、植物の出発点は「CH2O」という元素の比率と光合成で獲得するエネルギー量とで一義的にその比率は決まります。しかし、外部の有機物を吸収によって獲得することになれば、COHの原子数の比率もことなり、持ち込まれるエネルギー量も異なります。このため、このホームページでは、ドベネックの桶の板に相当する要因において「エネルギー保存則」と「質量保存則」とを区分して取り扱っています。植物に吸収される有機化合物の保有するエネルギーを定量的に評価し、施肥資材の保持している効能を定量的に示しやすい利点があります。

7)従来は、「有機物の植物へのリサイクル」はなかった

空き缶、アルミ、紙、銅、布等のリサイクルは大切な心がけとして社会に定着しています。残飯・食品残渣・家畜糞尿・し尿・雑草等の有機物を堆肥化若しくは腐植させて圃場還元する事例も数多くあります。

しかし後者の有機物の圃場還元は、一見、リサイクルに似た形態であっても、リサイクルとは言いません。家畜糞尿やし尿を新鮮な家畜糞尿やし尿に戻す訳ではありません。生分解による無機化に際し、包含していたミネラルを開放し、作物に与えるための行為です。COH有機3元素は酸化されてCO2と水になるだけです。

しかし、当ホームページでは見掛け上、「有機物の植物へのリサイクル」が生じています。これはいままで想定されていない現象です。バイオマスに含まれるCOH有機3元素が有機物の形態で生態系の出発点に位置する植物にリサイクルできることになれば、バイオマスに含まれている無機物も従来通り植物へリサイクルできるので、植物が要求する全ての元素とエネルギーがリサイクルの対象となります。

有機物の植物へのリサイクルは、生態系全体のリサイクルであり、もっとも大きな規模のリサイクルかもしれません。



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