第6章 植物が有機物を吸収できる理由 植物の成長の過程で有機化合物を吸収するかどうか、そして、吸収された場合の影響がどのようになるかは、正しくは、一つ一つの有機化合物について、科学的に調査しなければなりません。しかし、有機化合物はバイルシュタインによれば約920万種類ともいわれるほど無数に存在し、そして、有益か否かは別として、作ろうと思えば意味もなく際限なく新しい有機化合物を合成できます。その一つ一つについて植物の成長に対する影響を調査することはできません。 凡そ、50年後には地球の石油が枯渇し、今の社会構造が破たんすることが懸念されています。今、新しく建設する建物や構造物の標準的な寿命に至る前に、それらの建物や構造物を利用するためのエネルギー資源が地球から永久に消滅し、現代文明の姿が廃墟になる可能性すら懸念される時期に到達しています。従って、膨大な種類の有機化合物の一つ一つの植物に対する厳密な影響を調査することは壮大なエネルギーの浪費で、ほとんど無意味な所作と言えます。 そこで、この章では、これまで膨大な科学的検証によって確認されている「生分解生成有機物は、有機物の形態で植物に吸収されてはいない。」とするこれまでのことを平易に理解してみます。 勿論、ある有機化合物が現実に植物に吸収されたとすれば、それを否定するものではありません。しかし、大多数の生分解生成有機物が植物に吸収されていないとする平易な見方があれば、大方の場合には有益です。その上で、ある種の有機物が植物に吸収されることを示します。 JP1359005号で示された慣行農法の2−3倍程度の収穫量の増大ができれば、世界の大多数の地域で食糧の自給が可能となります。必要とする食糧が近隣で生産できるのであれば、無駄な食料の物流を低減できます。日本でいえば、一人毎日1.6sの食材を消費しているとすれば、12000kmの遠隔地から輸送しているに等しい食の物流が生じているという驚愕的な調査報告があります。食に伴う長大な物流は稀有壮大な無駄です。海外との交易は石油燃料が不可欠であり、石油が枯渇することは、近い将来、食料の輸入手段が消滅することを意味します。古来、生物は食糧が近所で調達できる場所に居住するのが習わしです。自らの棲息に、遠隔地を必要とするのはごく最近の異常な姿です。 ここで、JP1359005号の栽培例を理解する平易な見方があれば、このホームページの見方が正しくなくても、真似をすれば同様の効果を得ることができます。 ここでは、太古の昔から地球生態系では有機物が植物の成長に寄与していないとする無機栄養説を簡潔に理解し、そして、JP1359005号の栽培例から垣間見えた、有機物をある種の有機金属化合物へ転換することで、有機化合物が土壌の無機養分と似たような挙動を示し、植物に吸収され、結果として、有機物の植物へのリサイクルができることを概観します。
1.土壌における物質の挙動 最初に、土壌の中で物質がどのように移動しているかを簡単に概観します。勿論、専門家に言わせれば「簡単に概観できるものではない」という明確な反論があるでしょう。 
上の図は、土壌の無機養分の挙動を図示しています。土の中の無機養分は、土壌の中の水の流れで移動します。 土壌の中の水は、大きく分けて3つの方向へ移動しています。地表と植物の根と地下水脈です。 水が移動する時、土壌に存在している無機養分を溶かし込みながら移動します。水が移動する理由は、「何か」に吸引されるからです。その一つが、大気への水分の蒸発です。もう一つが地下水への流入です。砂漠のような乾燥した地域の土壌では、その水分が地表に流れ、Tで示したように地表の部分に養分が集積します。この養分には、植物に害する物質もあり、「塩害」という栽培環境を悪化させる現象があります。また、植物は葉の気孔から活発に水分を蒸発させています。これを専門的には「蒸散」という用語で表しています。植物の蒸散によって、植物は水分を土壌から吸収します。土壌の水分が植物へ流入することで、土壌に含まれている無機養分は土壌水と共に植物の根の近傍に移動します。植物の根は水平断面で見れば、360度の全方向から土壌水を吸収しているので、植物の周囲の土壌に含まれる無機養分は、360度の全方向から中心の植物の根に移動することになります。更に、雨が長く降り続いて表面の土壌が水で満たされるような状況では、土壌の水分は地下に浸透します。地下には地下水が流れています。地下に浸透した水が地下水脈に到達して、地下水の一部となることもあります。 このように、土壌の水は、上の図の青線で示したように、表土に向かう流れ、植物に向かう流れ、そして、地下水へ向かう流れの何れかの方向に移動します。 従って、土壌に含まれている無機養分も水の流れに同伴して移動します。土壌水がT〜Vの何れの方向へ流れるかは、周囲の環境次第です。乾燥した砂漠であれば、表土に向かう割合が高いでしょう。熱帯雨林の雨季であれば、地下水脈へ向かう割合が高くなるでしょう。ビニールハウスのように雨が降らない環境では、地下水へ向かうよりも表土か植物に向かう割合が高くなるでしょう。 いずれにしても、このような土壌の水分と養分の動きを考慮して栽培が営まれています。
2.植物に対する土壌中の成分の挙動(水) ここでは、改めて簡単な図を参照して植物の周囲の様子を概観します。先ず、水についてです。 

この「植物に対する土壌中の成分の挙動(水1/1)、(2/2)」は、土壌に生息している植物の近傍の様子を模式的に示したもので、(1/2)は垂直断面図で、(2/2)は平断面模式図です。 植物は、土壌の水分を吸収して大気中に水蒸気として放出しています。この植物による水分の蒸発を蒸散と言います。 植物の近傍には、雨天の時に大気から雨水が供給されます。雨水や灌水が植物に移動するときに土壌中の溶解成分を水に溶け込ませながら植物に接近します。 そして、植物の体内と土壌水側の成分濃度が釣り合うように、細胞膜を透過できる成分は植物体内へ移行します。植物体内では、根から葉部に向かう水流があり、土壌から吸収された養分は葉部に濃縮されます。 葉部の蒸散は、水分だけを大気に放出するため、結果として土壌から運ばれた養分は、葉部で濃縮され、然るべき代謝に供されます。葉部で合成されたさまざまな水に溶解する成分は、師管を通じて植物体の全体に移送され、それぞれの部位の成長のために消費されます。このような植物内の物質循環におけるそれぞれの養分は、植物体が成長することで所定の部位に固定されて所定の機能を発揮します。それぞれの成長部位に保持された養分によって植物内を循環する液体の養分濃度が低下し、この養分濃度の低下が土壌側の養分を植物体内へ移送させる原動力の一つとなります。 平断面模式図で示すように、植物は周囲の土壌の方々から土壌水を吸水しています。その土壌水には水に溶解する成分が溶け込んでいます。 圃場に施肥された肥料は、土壌水の流れによって作物に集められ、作物内部の養分濃度が低下すると、順次、土壌から作物へ補給されます。
3.植物に対する土壌中の成分の挙動(有機物) 次は、土壌の有機物について概観します。これまで100年以上にもわたって土壌の有機物の挙動の科学的な調査がされています。その結果として、生育している植物は有機物を吸収して成長している訳ではないことが判明しています。即ち、今日の農業や植物学は無機栄養説に立脚しています。 太古の時代からの膨大な植物は、外部からは無機養分だけを取り入れて、有機物は自己の光合成で獲得して成長しています。従属栄養植物のように例外はありますが、しかし、生態系の生命活動を生み出している植物は、外部の有機物に依存して生命を維持していません。陸上植物の大多数を占める独立栄養植物は、有機物や他の生命体がない無機的な環境で何不自由なく成長できます。 多くの土壌の有機物は、土壌のカビや微生物の作用によってほぼ例外なく無機化されて炭酸ガスと水になります。 土壌にもたらされる有機物は、植物の遺骸、動物の遺骸、或いは、動物の排泄物のような形態で、所謂、生体組織の形となっています。生体組織は、COHの3元素ばかりでなく、いろいろな無機養分を含んでいます。生体組織がカビのような分解者の作用で無機化される時、無機養分は炭酸ガスや水に変化する訳ではなく、無機養分のまま土壌に存在しつづけます。 土壌の有機物が、結果として、無機化されて炭酸ガスと水になり、そして、土壌に生息している植物に有機物を供給していないことは、積年の科学的な調査の結果、明らかにされており、この下の図の考え方に誤りはありません。 
なお、植物が吸収しやすい有機物ついては、前記の高橋英一(第20章参考文献7))が凡そ、次のようにまとめています。 1)水に溶解すること 2)分子量が小さいこと 3)電荷を持たないこと
4.植物に対する土壌中の成分の挙動(無機養分) 次は、土壌の無機養分について概観します。 土壌の無機物の中で土壌水に溶解するものは、植物の吸水によって植物の近傍に集められます。土壌水に溶解した無機養分は、カビのような分解者が存在しても、炭酸ガスや水に転換されません。分解者は、元素を他の元素に転換する能力は持っていません。従って、土壌の無機養分は土壌に存在し続けます。そして、水に溶解する無機養分は植物側に移動し、植物近傍の無機養分の濃度は高められます。前記の水の挙動で述べたように、植物の近傍に集められた無機養分は、植物の状況に応じて植物内部へ移行します。このように、植物が土壌から必須養分を取り込んで成長していることは、科学的に検証されています。 1840年代にリービッヒが提唱した無機栄養説は、今日まで、揺るぎのない自然界の理解です。 なお、植物には、植物が必要とする必須14元素以外にも多数の無機元素を見出すことができます。それは、植物の物質吸収が、自己に必要な成分を選択的に吸収しているのではなく、一定の条件に合致した物質を分け隔てなく吸収するためです。作物に有害金属のカドミウムCdが含まれていたり、放射性物質であるストロンチウムSrやセシウムCsが含まれていて問題になるのは、これらの無機物が水に溶解し、土壌側と植物側の濃度の高低差によって、植物側が低ければ土壌側から植物側へ濃度拡散するためです。 
5.植物に対する土壌中の成分の挙動(低位有機酸カルシウム) 次は、土壌の低位有機酸カルシウムについて概観します。この低位有機酸カルシウムは、当ホームページでは「炭素肥料」と想定している物質です。有機金属化合物でもあります。 図では「有機Ca塩」「低位有機酸カルシウム塩」としています。 次の図において、「低位有機酸カルシウム塩」を緑色と青色とが合体した図形で示しています。緑を有機物、青色を金属としています。緑と青の斑の矢印は低位有機酸カルシウム塩の流れです。 図では、○の図形を緑と青で色分けしたものが土壌の低位有機酸カルシウム塩を示し、斑の矢印は土壌水に溶解して移動する低位有機酸カルシウム塩の流れとなります。そして、植物に低位有機酸カルシウム塩が取り込まれていることを模式的に示しています。 この低位有機酸カルシウム塩は、カビのような分解者による生分解を受けないため、土壌中に長期間にわたり滞留し続けることができます。土壌水に溶解した低位有機酸カルシウム塩は、土壌水の移動に従い植物に近づくか、あるいは、地下へ浸透して流亡するかすることになります。しかし、この低位有機酸カルシウム塩は土壌の分解者による生分解を受けないので、土壌において低位有機酸カルシウム塩から炭酸ガスや水が生成することはありません。 このように、分解者の分解作用を受けない物質は、実は、土壌の無機養分と類似した挙動をすることとなります。 植物体内と土壌とのバランスで、植物体内に移行することができます。 低位有機酸カルシウムとして、家畜糞尿の生石灰分解で多量に生成する「酢酸カルシウム」でみれば、水に溶解しやすい性質で、分子量も小さく、弱酸弱塩基の塩であるために、水に溶解しても非解離成分が多量に存在する可能性があり、また、一般的には植物の体内には少ない化学種です。このような性質を持つ酢酸カルシウムは、植物の土壌水の吸水によって土壌の各方面から植物の方向に移動し、植物の近傍における酢酸カルシウムの存在量が高まります。そして、植物体内との濃度差のバランスで、体内が低く、土壌側が高ければ土壌側から植物体内へ酢酸カルシウムが移行します。 植物体内に移行した酢酸カルシウムは、導管や師管の水流に従い、植物体内を移動しますが、その過程で葉部では蒸散による濃縮が行われ、濃度の高まりとともに代謝に関与するようになります。植物によっては体内にシュウ酸のような成分を含む品種もあり、そのような場合には、難溶性のシュウ酸カルシウムを形成し、アセチル基を細胞基質に放出します。このようにして、酢酸カルシウムに含まれる酢酸基は、植物の代謝の過程で適宜活用され、植物の成長に寄与しています。 結果として、土壌から取り込まれた酢酸カルシウムが別の化学種に転換し、そして、植物体内の酢酸カルシウムの濃度が低下することで土壌水の酢酸カルシウムは植物側へ移行しやすくなります。 
このようにして、有機金属化合物の土壌における挙動を見れば、「無機養分と大差ない挙動」といえます。
6.無機栄養説の理解 1840年代にリービッヒが無機栄養説を提唱してから今日まで、多数の人や機関が食料の安定的な生産のために最も合理的な食糧生産を見出すべく、多数の無機物・有機化合物を科学的に調査しています。世界中の総力を挙げた調査の結果、植物は無機養分を吸収して成長しており、有機化合物は格別の貢献をしていないことが判明しています。 見渡す限りの森林や原野、あるいは、耕地に繁茂する植物は無機栄養説に準じて成長しています。人間が食べる食物において、有機栄養説に従って繁茂している植物が食糧として経済的な価値を持つ例は存在しません。 それほど、無機栄養説は圧倒的な科学的な根拠によって支持されています。 【しかし、有機物が植物へリサイクルされている=炭素肥料が存在した】 処が、当ホームページは、有機物をある種の有機金属化合物へ転換してから施肥することで、植物に有機物を吸収させることができる、としています。 太古の時代から、ほぼ地球の陸地全体で営まれている植物の繁茂において、「植物は有機物を利用して成長することはない」とされているにもかかわらず、このホームページでは、「有機物が植物へリサイクルされている」とするのは、一般的には暴論に見えます。 しかし、「有機金属化合物」は、有機物でありながら土壌では無機養分と同様の挙動をします。 これまでの科学的な検証によって、無機栄養説ははっきりと自然の姿を正しく表現している理解とされています。そのことに誤りはありません。 土壌の有機物は、ほぼ例外なく分解者による分解を受け、無機化され、炭酸ガスと水になっています。このことに誤りはありません。 この無機栄養説が示す自然の理解に全く誤りはありません。 しかし、ある種の有機金属化合物であれば、植物に有機物を供給することができます。即ち、植物の繁茂に、外部の有機物を付加できます。 これまでの無機栄養説および有機栄養説の調査において、科学的な調査では、前者に軍配を上げました。それは、正しい現状認識です。 この現状の認識を、「植物が吸収する物質は、土壌に安定的に存在し続け、そして、植物の細胞膜を透過できる性質を持つもの」という見方をすれば良かったのかもしれません。有機金属化合物は、明らかに、有機化合物です。土壌において分解者の作用を受けないために、土壌に存在し続けることができます。そして、ある種の有機金属化合物は、分子量が小さく、水に溶解し、電荷を持たない成分を持ち、植物の細胞膜を透過できる性質があります。 これまでの科学的な調査によって、植物の成長における養分の吸収は、無機栄養説に従う、とする見方は、眼前に広がる自然の理解としては正鵠を射ています。その理解を、「植物は無機養分を吸収して成長している」という理解から、一歩進めて、「無機養分は、土壌で分解者によって分解されずに安定的に存在し続けることができるので、植物の吸水によって寄せ集められ、やがて、植物に吸収され、植物の成長に寄与する」というような理解の仕方をすれば、『土壌で分解者による分解を受けない有機化合物にすれば、有機物も植物へ供給できる』と、案外、安直に有機物のリサイクルの術を見出せたかもしれません。 
現代科学が農業へ目を向け、科学的な農業を目指してから約170年が経過しています。科学的な農業の大枠は、最初のリービッヒによってほぼ完ぺきに構築されています。そして、ハーバーの空中窒素の固定によって、ほぼ100年前に無機栄養説に従う今日の農業は完成しました。リービッヒの提唱した無機栄養説を丁寧に読み解けば、無機養分の挙動に類似した有機化合物であれば植物の成長に有機物を付加できることが判ったのかもしれません。 このホームページが提唱する有機物の植物へのリサイクルは、盤石の無機栄養説に真っ向から対立する考え方に見えます。 しかし、上図のように、無機栄養説の真髄を有機物でも真似しただけのものであることがはっきりとわかります。
7.無機栄養説と新しい全元素(養分)施肥の考え方の違い 
この図は、慣行栽培と新しい栽培の施肥成分と成長の様子を模式的に示したものです。左がこれまでの無機栄養説に従う慣行栽培です。右側が当ホームページにおいて提案する新しい栽培の取組の考え方です。炭素肥利用を利用した栽培、あるいは、全養分施肥栽培というような栽培の考え方です。 無機栄養説では、成長体の固形分の約4%を占める無機養分だけが施肥対象でした。有機物を施肥しても作物に吸収されません。 他方、有機物を低位有機酸カルシウム(ある種の有機金属化合物)として施肥することで、COHの有機3元素も施肥対象となり、成長体の100%を占める必須全元素が施肥対象になり、そして、成長体は大きく成長します。 従来の成長体は、その有機物の全てを自己の光合成によって、耕地で栽培期間中に生産しなければなりません。 新しい考え方では、有機金属化合物の形態で施肥された有機物が成長体に取り込まれるため、成長体は大きく成長します。そして、施肥される有機物は、家畜糞尿や雑草などの有機物を予め有機金属化合物に加工して、準備されたものです。過去の光合成で生成した有機物を、有機金属化合物として固定し、その価値を減じることなく未来の栽培に利用することができます。 このように、予め炭素肥料として準備された有機金属化合物は、将来の栽培でいろいろな種類の作物に転換されるばかりではなく、耕地の生産性を高めます。 【栽培の生産価値に対する影響】 
この図は、栽培において、どのような所作が、どのような価値を生み出すのかの一つの見方を簡単に示しています。 有機物のリサイクル(炭素肥料)によって、単収が高まると同時に、作物の体内の糖度が高まるために、結果として、増収と糖度の向上とが同時に達成されることになるものと推測されます。そして、有機物のリサイクルが「有機酸カルシウム塩」の施肥によってなされた場合には、作物体内のシュウ酸を難溶性シュウ酸カルシウムとして固定し、エグミを軽減する効果が期待されます。 栽培の生産価値は「=収量×単価」によって表されます。単価は、収穫物の品位によって変化し、概して糖度が高ければ高く評価され、エグミが低ければやはり高く評価されます。当ホームページが推奨する有機酸カルシウムを炭素肥料と考えて栽培する場合には、栽培する品目に応じてどのような栽培結果を目指すかを明確に意識することが大切です。
8.堆肥・腐植の利用とCaO処理(炭素肥料)の利用との違い 耕種農業へのバイオマス(天然有機物)の利用の代表的なものは家畜糞尿です。家畜糞尿は強い臭いがあり、多様な感染性病原体を含んでいることから処理が大切です。家畜糞尿は発生量も多く、その始末は大変です。 
上記の表は、「バイオマス・ニッポン総合戦略」の資料に記載された2005年の日本の主なバイオマスの発生量とその利用状況から作表したものです。 大雑把にいえば、国民一人当たり毎日2kgの家畜の排せつ物を生み出しています。そして、「輸入食品」に由来して外国で発生している家畜糞尿を加えれば、日本人は一人4kg程度の家畜糞尿を発生させているかもしれません。一般的な人の排泄物の量は1日当たり2kg程度です。人間の排泄物は、尿が圧倒的に多く、汚物の度合は希薄です。家畜は糞の割合が高く、鶏は全部鶏糞です。このため、汚物を適正に浄化するとすれば、大きな負担となります。 大まかに言えば、一人が負担しているし尿処理・下水処理の約20倍もの家畜からの汚物の発生量になります。その汚染の量を人の排泄物に換算すると、一人が、今の普通の排泄物を毎日40kgほど発生することになります。勿論、大多数の人にとっては、終生遭遇することのない事柄かもしれません。 家畜排せつ物の約90%が堆肥利用と言う形態で活用されています。それは、作物に「無機養分」を与える使い方です。本章の第6項の最初の図に示した無機栄養説に従う慣行栽培です。従って、有機物のリサイクルにはなっていません。 食品廃棄物についても肥料や飼料に20%が利用されています。価値の高い利用用途は人間が食べる食料の生産がより高いと言えます。 |