植物が有機物を吸収する/収量が2-3倍に高まる炭素肥料、17種全元素施肥栽培という考え方

第7章 植物工場の経済性の一つの側面


西暦2014年01月04日

第7章 植物工場の経済性の一つの側面

このホームページは、「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」という考え方で栽培を進める新しい栽培の取り組みを紹介しています。今のNPK慣行農法の生産性に比べて、2‐3倍程度高まることが期待されます。

しかし、人工照明や高濃度CO2を駆使する植物工場は、NPK慣行農法に比べて40倍もの生産性を誇ります。高い生産性を誇る植物工場の生産コストが十分低いものであれば、このホームページで提案する「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」という考え方は不要かもしれません。

このため、植物工場の凡その経済性を概観し、NPK慣行農法、あるいは、このホームページが提案する新しい栽培の取組が植物工場よりも生産性が低くても一定の存在価値があるかどうかを概観します。


1.植物工場の概要

植物工場は、自然光を透過できるガラス温室または光を透過しない堅牢な断熱壁で作られ、内部の栽培条件を人為的に調節できるようにした栽培施設で、通常は電気照明、温度調節、雰囲気の成分調節、培地の養分調節が可能なもので、更に、培地を移動可能として栽培間隔を調節できるようにしたものです。

オランダに代表される最先端の植物工場では、軒高が高いガラス温室で、1000ppm程度の高濃度CO2の環境の下で年間を通じて栽培の適温に維持され、培地もロックウールの隔離床とし、通常は狭い間隔で配置され、収穫や手入れをするときには株の間隔を広げて作業するようにし、通常の露地栽培では想像もできないほどの高い生産性を記録しています(1000uの年間トマト生産量が100トンにも達している)。

オランダの温室栽培については、第20章の参考文献に示すヨランダ・モウリッツ(第20章参考文献1))、カーラ・ボーンストラ(第20章参考文献2))、および池田英男(第20章参考文献4))の其々の資料が公表されています。


2.人工照明による栽培のエネルギーの推移(第20章参考文献3))

このような植物工場で特徴的なものは、人工照明、高濃度炭酸ガスおよび最適温度維持による光合成および代謝の高速化です。

そのために、電気による照明、燃焼排ガスの利用、燃焼ガスの廃熱の利用などあらゆる資源を利用しています。高濃度CO2は、燃焼排ガスの利用で費用がかかりません。加熱するための熱源に燃焼ガスの廃熱を利用することも費用がかかりません。しかし、電気による照明には電気を必要とします。この照明に必要なエネルギーを推定します。

石油の火力発電で考えると、その発電効率は約43%であり、植物工場に用いられている高圧ナトリウムランプの発光効率は約20%と見込まれます。ランプから照射された光の半分は植物以外の場所を照射し、植物の栽培に利用されないものとします。更に、植物の表面で葉緑体の占める面積の割合を82%と見込み、葉緑体に照射された光のエネルギーの8.7%が光合成の生成物である炭水化物に移行するものと仮定します。

この値は、文献に示されたものです。植物が成長するためには、炭水化物をATPの生成に利用し、自己の組織を増大させます。光合成で生成した炭水化物の22%を消費し、78%が植物体のエネルギーとして残存しているものと仮定します。植物の全体のうち、作物として収穫される割合は、品目で異なります。高い割合で可食部になる白菜や、可食部の割合が小さいサフランなど様々です。ここでは、33%が可食部で、67%が非食部と仮定します。

更に、植物工場の稼働全体に占める照明の電力費を25%と仮定します。これをまとめると次のようになります。

石油のエネルギーの約0.08%が可食部のエネルギーに転換されることが推測されます。これは、平均的な係数を用いただけの概算で、今日の現実のものを示す訳ではありません。発電方式も天然ガス発電の事例も多数出現し、照明もLED照明が発達しているので、最新の技術の事情を考慮すると違ったものになるかも知れません。また、照明の電気だけで植物工場が機能する訳ではなく、全体を考慮すると、電力費の4倍程度の経費を要するものと見込まれます。

人間は、男女差、体躯の大小、年齢などで必要とする食事量は違います。しかし、概ね2000〜2500kcalの食糧を毎日必要とします。その調理の未調理部分を含め、一人の必要な食材のエネルギーを3000kcal/日と見込むことで、植物工場による食糧生産の概算費用が推測できます。

凡そ、一人の食糧のために照明だけで380sの石油を毎日必要とする計算です。この石油消費量は、日本人の年間石油消費量を10日で消費する勘定です。勿論、植物工場は、人間が食べる作物の全てを生産するためのものではありません。また、植物工場自体も、ガラスのように自然光を利用する形態のものもあり、光合成の全てが人工光によるものとは限りません。また、其々の係数は、技術の進歩や経験で高められるものもあります。


3.飽食の状況の下での食糧生産の抑制

現在、世界人口が約70億人とされ、8億人程度が食糧難におかれ、その2倍以上の人が食べ過ぎによる肥満・高血圧・通風・糖尿病等に悩まされているとみられます。平均的には、食糧生産は大過剰の時代です。今の高カロリー畜産品を利用した食事を、穀物・蔬菜・果物・豆を中心とした適正な食事に改めることで、世界の食糧生産は更に大過剰なものとなります。このため、農業生産に関しては、今以上の合理性・高生産性を求める必要がない、とする見方もあります。

しかし、より効率の良い栽培手法があれば、誰しも効率の良い楽な栽培を取り入れます。また、収穫物がより美味しくなる栽培手法があれば、少なくとも、消費者は美味しいものに高い経済的な価値を与えます。往時、日本に大凶作が喧伝されて、外国産米が流通した時、外国産米の不味さに辟易し、中には食べずに捨てた人がいました。結局は、日本のコメは、国産米だけで需要を満たす量が存在していたため、外米を捨てても食事に苦慮することはありませんでした。同じコメ粒の外観をしていても、日本では国産米と外米では大きな差があり、前者は主食の食材であり、後者は「廃棄物」同然の評価でした。勿論、この差別を積極的に是認するものではありません。

このことから、飽食の時代であっても、より美味しい農産物の生産を求めて、改善の努力は続けられます。

一般的には、食料品は、美味しいものとそうではないものとの価格差が極めて大きく、メロン(1個400円と12,000円)、米(1kg60円と1,000円以上)、ワイン(1本500円と百万円?)というように同じ量でも安いものと美味しくて高価なものとでは、科学的な解釈では理解できない法外な格差が生じています。

そして、現実の社会では、この不合理な格差に対して誰一人として問題視することはなく、むしろ、高額な食料を喜んで食べているようにすら見えます。このような社会的な傾向は、科学的な見地からは理解する術がありません。


4.古くからの露地栽培や簡易ハウス栽培の必要性

このホームページでは、植物工場に関する独自のデータは一切なく、公表されている資料だけに基づいて植物工場について概観しています。

最も新しい栽培形態の植物工場では、人工的に調整された最上の栽培環境の下で、ロボットが栽培を管理し、単位面積当たりの生産性は、自然環境における植物の繁茂を観察しただけでは想像もできないほど高いものとなっています。しかし、投資額の大きさや投入されるエネルギーの大きさを考慮すると、古くから行われている露地栽培や簡易ハウス栽培のような栽培形態による食糧生産を完全に駆逐するものではないようです。

因みに、世界中の全人口約七十億人の食糧を植物工場で生産するとすれば、そのエネルギー消費量は膨大な値となり、地球の地下に埋蔵されている化石燃料が1年で枯渇しかねないほどになります。従って、最先端の栽培の形態として植物工場が開発されて、目覚ましい成果を達成していますが、従来からの露地栽培、簡易ハウスを用いた土耕という古い形態の栽培も今後継続して利用されるものとみられます。

そうであれば、耕地の生産性を2−3倍に高め、そして、食味が向上するために収穫された産物が高い評価を受けているJP139005号の栽培を参考にした新しい栽培は、それなりに活用の道があるように推測されます。



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