第8章 1000kcalのエネルギーの価値の比較 このホームページでは、有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料という新しい見方の栽培を提案しています。 それは今までの無機栄養説に従う栽培に、新たに、COH有機3元素を肥料元素に加えて必須全元素を施肥する「必須の全元素(養分)施肥栽培」という今までにない栽培の取組です。 この時、新たに施肥される有機物は、全く同じCOHの量でありながら、含まれているエネルギー量が異なる値をとることができます。即ち、植物の成長には、化学元素の収支ばかりでなく、エネルギーの収支も関係していました。新たに植物に吸収されることになる有機物は、COHの有機3元素を含む他にエネルギーも含んでいます。簡単に言えば、酢酸CH3COOHとブドウ糖C6H12O6とは何れも「CH2O」と表示できます。しかし、両者の1sの燃焼熱は3477kcalと3811kcalとで異なります。無機養分の吸収では、エネルギーが考慮されることはありません。しかし、有機物が植物に吸収されることになれば、同じ元素量でもエネルギーが異なる事態が生じます。 このことは、「エネルギー肥料」という新しい見方が生まれたことになります。 この章では、いろいろなもののエネルギーの価値を比較します。これは、格別難儀なことではなく、日頃目にしている物や値段を、単にエネルギーを基準に見直しただけのものです。 買い物のレシート、ダイエットの教本、スーパーマーケットのプライス表示、道路の看板等で見かけるものと数値から、学童でも整理できることです。 栽培や肥料とは全く関係がない単なるエネルギーの価値を関係するデータを収集して計算しただけのものです。
【総務省の公表資料】 
上記のグラフは、総務省統計局が公表した「カロリー単価」です。いろいろな食料品の100kcalの値段を記しています。 ここに示された値は、誰もが日ごろの経験から納得できる数値です。ただ、100kcalという値が日頃の感覚では利用する頻度の少ないエネルギー量かもしれません。 それと、市中で見掛ける食料品の値段は、安いものと高いものとで大きな格差があります。1個1000円を超えるリンゴや1個10000円を超えるメロンというように高額な食料品があります。高価な国産米に至っては1s1000円でも購入できません。ワインはフランスであれば、1本500円の安価なワインもあれば、日本では1本数十万円もする高価なフランス産ワインがあります。上記のカロリー単価のグラフには、その幅が示されていません。
【1000kcalの単価】 このホームページでは、食料以外のエネルギー資源、廃棄物処理(し尿とか糞尿)を含めてエネルギーの価値を概観します。このため、エネルギー量を「1000kcal」とします。これは、その2倍の量が2000kcalで成人男子の1日の基礎代謝をやや上回る程度であり、食事による摂取カロリーとなり、身近な大きさとなります。大雑把にいえば、1000kcalは夕食の摂取エネルギー量に近いエネルギーです。 また、文献によれば、1000kcalは、TNT火薬1kgの爆発エネルギーと等しいものです。火薬は全く無縁な物品ではあっても、名前だけは広島や長崎の原爆で「20キロトン=2万トン=TNT火薬2千万s」の爆発があったことが判ります。 更に、エネルギー資源の交易では「1000kcalの燃料資源の値段」が尺度に用いられることもあります。これは、石炭火力の燃料に用いる石炭(チャイナ5500)の1000kcalの熱量(200g弱)が「約1円」であり、他のエネルギー資源と比較する時に便利だからです。 石炭火力の発電効率が30%であれば、1000kcalの電力(約1.16kWh)の燃料費は約3.3円になります。 次の表は、身近なものの1000kcalの凡その値段を示しています。発熱量は、一般的な値を用いています。市価の中には交易の値段や市場の値段も含まれていますが、普通の日常生活で接することがある安い値段や高い値段です。1千kcalの値段は、発熱量と市価とから計算によって求めました。 ここにはし尿処理とか糞尿処理は含まれていません。 
この値をグラフ化したものが次のものです。横軸が1000kcal当たりの金額です。目盛は対数目盛です。 (より正確な値が必要であれば、各自で求めください。) 
野菜と果物のカロリー単価が際立って高いことが判ります。 極論すれば、一番安い石炭に比べて数万倍にもなっています。馬鈴薯のような例外的な作物を除けば、1000kcalの価値は1000円以上になっています。そして、野菜と果物に特徴的なことは、不味いものと美味しいものとでは大きな価格差になっていることです。そして、米と野菜、果物の場合、その高額なものを喜んで消費しています。一般的には、不当に高額な商品を利用する時には不愉快になります。処が、これらの美味しくて高額な食料を利用する時には、概して満ち足りた様子になります。
【バイオマスを加える】 人間のし尿や家畜糞尿のような廃棄物は適正に浄化処理しなければならず、大きな負担となっています。野原に繁茂する雑草や森林に放置されている残材などは放置していてもよいことから放置されています。多くのバイオマスは、格別の規制がなければそのまま放置や投棄されるものです。 し尿や家畜糞尿は汚物で、悪臭や感染性病原体も含まれており、浄化しなければ公害を引き起こします。このため、それぞれに応じて然るべき処理がなされていて、関係者には大きな負担となっています。その1000kcal当たりの費用を概算して、「マイナス」として評価して追加したのが次の図です。上記のカロリー単価はそれぞれの項目毎に、概算でまとめています。食料品だけは、美味しいものと不味いものとで大幅に値段が異なり、緑色を高額な価格帯として示し、一般のものを黒い価格帯としています。 
家畜糞尿や汚泥や木材などのバイオマスは、積極的には利用されていません。バイオマスの利用形態としては、燃焼熱の利用、メタン発酵による可燃ガスの取り出し、発電、堆肥化などが行われています。それは工学的なエネルギーとしての利用になります。 次の表は、バイオマス・ニッポン(平成14年から文部科学省等が行っている「バイオマス・ニッポン総合戦略」の活動)から公表されている日本のバイオマスの年間発生量と、その利用量・未利用量を示しています。 年間約8900万トン発生している家畜糞尿の90%は堆肥化による利用です。この家畜糞尿の発生量は、国民一人当たり年間710sであり、毎日約2kgとなります。人間のし尿を病院で行うように毎日袋に集めると約2リットルです。人間の場合には、尿量が圧倒的に多く、糞の量が少ないと言えます。それに比べ家畜糞尿は糞の割合が高く汚物の固形分量で見れば、家畜糞尿が人間の約10倍もの量になります。人間のし尿に関しては下水道やし尿処理場で適正に処理されており、大まかに言えば、1000kcal当たり100円程のコストなっています。その10倍の量が発生している家畜糞尿の処理費用は、1000kcal当たり10円程度と見込まれています。これは牛1頭の糞尿の処理に「コーヒー1杯程度の負担は避けて通ることはできない(約300円)」という見方です。このコーヒーは喫茶店でのコーヒーであって、平素体験している家庭でのインスタントコーヒーではありません。 
【炭素肥料による増収効果と食味の向上効果】 JP1359005号の栽培の実際の例では、収量が高まると共に食味が向上している、と言われています。この食味は主観的な評価であるため、客観的な数値で示すことは困難です。しかし、現実の社会では、ものの美味しさこそが最も重要な指標です。概観は同じコメでも、日本の国産米と、外国産米では前者が1s1000円を超えるものもあれば、後者は1s50円程度です。それは栄養の違いではなく、食味の違いです。 もし、有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料によって、収量の増大と共に食味が向上した時、収穫物の価値は、増収分ばかりか既存の収量分も食味が向上しているために、全体としての価値の上昇は大きなものとなります。 一般には、「増収分だけの効果」と受け取られがちですが、しかし、食味に改善があれば、収穫物全体の価値を高めます。 この食味の改善効果は、暖房用のエネルギー、照明用の電気エネルギー、輸送用の機械エネルギーというような工学的な領域では思考の対象外となる「主観・感性」に影響されるため、客観的な表現はできません。しかし、この食味に関係する部分が圧倒的に巨額の価値を創出していることがわかります。
【畜産の肉乳卵とその排泄物の価値】 牛豚鶏を飼育し、肉乳卵を生産し、同時に、家畜排せつ物を発生している畜産業では、肉乳卵を主な製品として取り扱っています。そして、排泄物は汚物とか廃棄物と見られ、一定量の飼育規模になれば、「産業廃棄物」となります。しかし、有機物を植物にリサイクルする経路が新たに開拓されると、これらの排泄物に含まれるエネルギーは食糧生産に付加され、そして、そのようにして生産された耕種農業の産物は、概して美味しいため価値の評価が高まります。収量の上昇と収穫物全量の単価の高まりを勘案すると、今までの主体である肉乳卵による価値の創造と、排泄物による価値の創造とでは、ほとんど同等か、むしろ、後者が大きくなる事態も予想されます。 
【バイオマスの利用の形態】 天然由来の有機物資源であるバイオマスは、家畜糞尿・し尿・雑草・食品残渣・木材・紙などいろいろなものがあります。当ホームページが提案するある種の有機金属化合物を経由して有機物を作物に与える見方をする栽培において、これらのバイオマスの有機物を利用することができます。炭酸ガスから有機物を生成することは植物の光合成が安く、便利です。格別な所作をしなくても有機物は合成されます。今の化学技術を利用すれば、それぞれのバイオマスの原料に応じた化学操作によってある種の有機金属化合物を調製できます。一番簡単な有機物としては低位モノカルボン酸への転換です。また、金属としてはアルカリ土類金属のひとつであるカルシウムが便利です。ほとんどの国や地域において岩山が石灰岩であったり、和僅かな表土を取り除くだけで、その地下には膨大な石灰岩が堆積していたりして、資源の入手に困難性がありません。 バイオマスを工学的なエネルギーの利用に供した場合には、その価値はあまり大きなものではありません。炭素肥料を経由して食料生産に供することで、然るべき化学操作に要する負担に見合う大きな価値を創造できる可能性が生まれます。このことは、炭素肥料の原料が家畜糞尿以外にも存在し、何れも、ほとんど未利用状態で近隣に存在していることを意味しています。 |