植物が有機物を吸収する/収量が2-3倍に高まる炭素肥料、17種全元素施肥栽培という考え方

第9章 自然の保存則から見た栽培


西暦2014年01月04日

無機栄養説は、「エネルギー保存則」と「質量保存則」を忘れていたかも知れない。

第9章 自然の保存則から見た栽培

この第9章では、今までの栽培において、「何か、忘れていたこと」を記します。

多くの産業では、金銭の収支ばかりでなく、エネルギーや物質収支を綿密に検討しています。

化学コンビナートではいろいろな工程における温度と熱の推移を精査し、巧みな加熱・冷却を行い、最も少ないエネルギーで原油から多様な製品を生み出しています。そして、使用された物質が遺漏なくそれぞれに価値のある物質へ転換されていることを確かめるためにも物質収支が確かめられています。

機械産業においても、投入した原材料がどの程度製品に転換され、どの程度廃材となるかを綿密に計画して、無駄のない生産をしています。


1.無機栄養説に従う露地栽培

自然界にはいくつもの法則や摂理があり、人為的に変更できないことが多々あります。その自然の法則や摂理には、素粒子のような小さな領域での挙動を規制するものや、巨大な空間や質量での挙動を決定するものや、いろいろあります。

このホームページでは、エネルギー保存の法則質量保存の法則という簡単な自然の摂理について取り上げます。

これまでの栽培では、無機栄養説に従い、想定される収穫量や土壌の化学分析に基づいて施肥設計をし、そして、実状に則した肥培管理を計画します。この栽培の計画の過程において、エネルギー保存の法則や質量保存の法則を検討することは含まれていません。

しかし、収穫される作物にはエネルギーが含まれており、応分の必須養分元素も含まれています。自然の営みはすべて自然の摂理に従っています。より多くの収穫を望む場合には、より多くのエネルギーを作物に与える必要があり、より多くの必須元素を与える必要があります。そして、作物は、その刹那においてリービッヒの最少律に従って成長し、その刹那の成長が積算されたものが、最終的な収穫における作物の姿です。

この図は、小さな種苗が大きな作物に成長する時の、質量とエネルギーの変化を図示したものです。野菜であれ、穀物であれ、果物であれ、農産物を食べれば摂取カロリーが加算され、農産物にはエネルギーが含まれています。勿論、必須養分元素も所要量だけ含まれています。大きな成長体には、多量のエネルギーと多量の質量とが含まれています。そして、種苗にも、それぞれエネルギーが含まれ、質量が含まれています。

従って、栽培期間において、この種苗はエネルギーと物質とを外部から獲得して成長体となります。

今の無機栄養説に従う栽培では、土壌分析、過去の栽培実績に基づく目標収穫量および収穫量当たりの所要の必須養分元素量などを勘案して、NPK等無機14元素の施肥量を決定します。多くの場合には、NPKの施肥が主体となり、微量要素についての施肥は稀かもしれません。

従って、「COHの有機3元素」の施肥は想定していません。

また、「エネルギー」については、検討対象ではありません。

即ち、「COH」と「エネルギー」とは、無機栄養説の栽培では除外されています。

この場合の露地栽培では、耕作者が主体的に関与できる部分は耕地の整備と無機養分の施肥だけです。太陽、炭酸ガス濃度、温度等はその風土の自然条件に従います。

このような栽培では、作物が得る化学エネルギーは、太陽と大気と気温の自然条件に委ねられています。

また、COHの有機3元素の獲得も、自身の光合成によって決定されるため、エネルギーと同様に自然条件に委ねられています。

作物の生長は、リービッヒの最少律に従います。この時の、いろいろな要因の中で一番低い水準に「エネルギー」や「COH」があった場合には、耕作者は為す術がありません。

多くの場合、少しでも多くの収穫を期待し、好天で豊作になっても肥料切れとならないようにと、「そっと、NPK化学肥料に手を伸ばす」のではないでしょうか。しかし、作物の生長は冷酷な自然現象であり、リービッヒの最少律が厳格に当該作物の成長を決定します。


2.炭素肥料による全養分(元素)施肥栽培

このホームページでは、有機物を植物へリサイクルする新しい考え方の栽培の取組を提案しています。有機物にはCOHの有機3元素が含まれているために、必須養分元素の全てを施肥することができ、そして、有機物にはエネルギーが含まれています。

この新しい考え方の栽培を次の図で概観します。

炭素肥料は、有機金属化合物で、例えば、酢酸カルシウムのような化学物質です。家畜糞尿に生石灰を混ぜて撹拌すると10分ほどで殺菌が完了し、その時に多量の酢酸カルシウムや他の有機酸カルシウム塩が生成します。その種種雑多な生成物を含んだものを用いることができます。勿論、純粋に高純度の化学薬品を利用して、最初から最後まで衛生的な環境で生産することもできます。このような有機金属化合物の有機分の部分にCOHの有機3元素が含まれています。そして、有機金属化合物の有機分はエネルギーを持っています。土壌のカビや微生物に分解されない有機金属化合物は、土壌の無機養分と同様に土壌水によって作物の根の近傍に集められ、作物の内部の当該化学種の濃度と土壌側の濃度との塩梅で、適宜作物体内へ取り込まれます。

このようにして、炭素肥料の吸収で、「有機エネルギー」と「COH有機3元素」が作物に供給されます。

また、光合成によるエネルギーの獲得とCOH有機3元素の獲得は従来通りに行われます。

エネルギーについては、光合成由来のエネルギーと炭素肥料由来のエネルギーとが合算されてエネルギーの獲得量となるものと推測されます。

また、COHの有機3元素については、同様に光合成由来のCOHと炭素肥料由来のCOHトが合算されます。光合成由来のCOHはC6H12O6という厳密な元素比率でもたらされます。しかし、炭素肥料由来のCOHは、元素比率は炭素肥料の成分によって違いがあります。

下の図から明らかなように、炭素肥料による黄色のエネルギー、水色のCOHの補給は、無機栄養説の施肥では補うことができない部分を補っています。

しかし、これはあくまでも構図の上から概観される「定性的な事柄」にすぎません。

しかし、このような炭素肥料(有機物のリサイクル)の考え方はJP1359005号を切っ掛けに想到したものであり、JP1359005号の実施例では、慣行栽培である対照区と比較して1.9〜3.5倍の収穫量になっているので、強ち、悪い考え方ではありません。

他の章と重複しますがJP1359005号に記載された実施例の対照区と試験区(当該発明の区)を比較したものを次に示します。

また、次のグラフは、白菜を鉢に播種して、その初期の成長の推移を比較したものです。炭素肥料を施肥した栽培が成長速度が大きいことが判ります。このような栽培の比較は、物差とグラフ用紙を使える学童であれば、簡単に体験できる比較試験です。成長に2倍程度の差があれば、その差の検出は極少数の栽培個数で検出できます。なお、この図で本葉の面積とあるのは、「本葉の長さ×本葉の幅」で算出される値を示したものです。播種後35日を経過したときに、本葉が増えて計測は止めています。


3.リービッヒの最少律と自然の保存則

植物が成長する時には、光・温度・水分・肥料等のいろいろな要因が関与し、その中で一番低い水準にある要因によって成長の速度が規制されていることは誰にも理解されています。

そして、小さな種苗が大きな作物に育つためには、必須養分元素が増加し、エネルギーが増加していることも誰もが理解しています。

そうであれば、他の多くの分野で導入されているエネルギー収支、物質収支を栽培に適用することに不自然はありません。

処が、これまでの栽培では「エネルギー収支・エネルギー保存則」「物質収支・質量保存則」という自然の保存則を含めた栽培の取組はあまり見聞しません。

そして、現代農業は「無機栄養説」に立脚しています

これまでの栽培では、専ら、NPK等無機14元素を施肥するしか術はありません。この栽培の様子を前図のように概観すると、聊か片手落ちのように見えます。

自動車の4つの車輪のうち、1輪だけを額に汗して全力で廻し、他の3輪がウオーム歯車でしっかりと道路と噛合ってゆっくり気ままに回転しているようにも見えます。

勿論、「エネルギー保存則」と「質量保存則」とが無機栄養説の栽培に不足している視点の全てではなく、植物の生育にはまだ不明な数多の事柄が関与しているものと思われます。そうであっても、この二つの自然の保存則を検討に加えることで、今の生産性を高めることができる可能性があります。

JP1359005号の実施例では、対照区に対して1.9〜3.5倍程度の収量の上昇になっており、この飛躍は、大昔の科学的な思考が存在しなかった農業から、リービッヒやハーバーによって無機栄養説に従う栽培の実施が可能となった時の飛躍に等しい大きな飛躍かもしれません。

ハーバーが編み出した空中窒素の固定の化学操作に比べれば、家畜糞尿や雑草を原料とする炭素肥料の製造は「原始工業」と揶揄されるほど困難性の低い化学操作です。

簡便に生産できる炭素肥料で、COHの有機3元素とエネルギーとの要素を補充できるのであれば、強ち、無駄な所作ではないかもしれません。


家畜糞尿・雑草・食品残渣・その他のバイオマスというように身近に大量の原料があり、地球のどこにでも石灰岩の分厚い堆積層があり、簡単な操作で炭素肥料を生産することができ、炭素肥料を利用すれば耕地の生産性は2−3倍に高まるにもかかわらず、エネルギーの保存則や質量の保存則という簡単な自然の掟を顧みることなく栽培に取り組んでいたために、生産性が低く、不味いものが生産されていたかもしれません。



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