第15章 植物の成長の姿 この章では、植物が成長する時の様子を概観します。 そして、JP1359005号の実施例のように、対照区に比べて1.9〜3.5倍もの成長が実現していることの意味合いを概観します。
1.植物の成長の様子 栽培している作物が旺盛に成長することは誰もが願っています。作物であれば、その結果は収量・単収として表すことができます。作物だけを見ても、ダイコンやジンジンのような根菜類、ホウレン草やキャベツのような葉茎菜類、ナスやキュウリのような果菜類というようにいろいろな成長の姿があり、一概に表現することはできません。植物には、リンゴ、バナナ、ヤシのような樹木に実がなるものもあり、複雑怪奇です。ここでは、もっと簡単に植物の生長を概観します。 
このグラフは、植物が初期、中期、および収穫期まで成長した時の、その圃場における収穫物の成長量の分布を示しています。例えば、ダイコンとかニンジンのような根菜類が判りやすい例です。 圃場には、沢山の種子を播種しているために、収穫の時には沢山の作物を収穫します。この時、収穫物には大小さまざまなものが混在しており、一般的に、その成長量(例えば、重量)を計測すると上記のグラフの黒線で示した分布曲線に類似したものとなります。その分布曲線を累積分布曲線で示したものが青い線です。 耕作者は、できるだけ全体の成長が揃うように間引きをしますが、一般的には成長した収穫物の成長量には差が生じることは不可避です。 ここでは、成長量が多いほど好ましい、という植物を対象として検討します。 従って、耕作者は、植物がより大きく成長するように心がけて栽培を進めます。仮に、そうであっても、最終的な収穫物の成長量には差が生じています。広大な圃場の全収穫物が完璧に同一の成長量になっていることはほとんど考えられません。 【豊作】 原野に繁茂している雑草や木々を見る限りでは気付ませんが、作物の栽培を見ると、その年の陽気によって作物の成長量が大きく異なることが知られています。旺盛に成長する年は「豊作の年」とされ、沢山の農産物が収穫されます。反対に、寒い年は冷害で作物の成長が悪く、収穫量が少なくなります。自然の陽気の良し悪しは、原野や森林ではほとんど無関係ですが、耕作には大きな影響を及ぼします。誰もが願う豊作の時は、作物の成長量が大きくなっているときです。 【成長の推移】 作物が成長する時、上の図のように成長量が「0」の種子の状態から順次連続的に大きくなって収穫期を迎えることに誤りはありません。成長が良いこと、即ち、豊作の状態は誰もが望むことです。
2.日本の稲作を参照して 日本の稲作は、栽培技術もほぼ極限まで到達し、そして、全国的にもほぼ統一された栽培がおこなわれています。 
これは1976年から2003年までの期間の稲作の収穫量をもみの重量で示したものです。 1993年に冷害のため極端に低下しています。この単収の変動は気象変動に起因するものと考えられます。このデータを前項の図の分布曲線の幅で見れば、平均値の±15%の範囲に収穫量が含まれていると言えます。気象変動の影響を受ける度合は品目で異なるかも知れません。しかし、日本で最も広い範囲で栽培されているコメの収穫量からすれば、収穫量は気象変動で±15%程度の影響を受けることが推測されます。 このホームページが参考にしているJP1359005号に記載された実施例について、その栽培時の成長の様子を稲作と比較してみます。但し、品目が異なる栽培を比較することは通常有り得ないことであることを予めお断りします。 
このグラフにおいて、日本の稲作の標準的な成長量を1としています。そして、その±15%の範囲に単収が分布しているものと仮定しています。±15%の根拠は、上記の1976年から2003年の日本の稲作の結果に基づいています。 そして、JP1359005号の栽培例では、対照区の収量に対して1.9倍、3倍、3.5倍の収穫があったことが示されています。それらの成長量の分布曲線も±15%の範囲に含まれているようにグラフを調整しています。この実施例を其々赤い分布曲線で示しています。青い線は、それぞれの累積分布曲線です。 耕地における作物の成長にはばらつきが伴っています。稲作でも、粒の小さなコメは「屑米」として通常のコメとは異なる取り扱いをしています。 JP1359005号に示された1.9−3.5倍の収量の増加を概観すれば、通常の収穫物とは異なる領域の成長をしていることが推測されます。家畜糞尿のような腐敗性廃棄物に生石灰を添加して分解したときの生成物を使用した栽培では、収穫量が高まると同時に、食味に違いが生まれていることが指摘され、概して、美味しいとされています。
3.従来の成長と交差していない領域 おそらく、炭素肥料の効果(有機物の植物へのリサイクル)によって収量が2-3倍に高まることは、従来の成長の様子とは違った領域の成長をしているかもしれません。 もし、同じ品目の栽培で、慣行栽培が前図の黒の分布曲線の成長であるのに対して赤線で示した成長の分布曲線を示す栽培が生じた場合、それは望外な豊作と言えます。 従来では、黒の分布曲線の範囲に「凶作―豊作」が含まれ、「凶作で不味い―豊作で美味い」という状況があったとすれば、赤の分布曲線は、現実のものとは思えない水準の食味になります。 このことは、2つの意味合いがあります。 第1番目の意味合いは、炭素肥料を利用した栽培では収穫物の食味が、従来の枠を超えて変化している可能性です。食味の良し悪しは、一人ひとりの感性によるもので一概には言えません。しかし、従来の食味とは異なる領域の食味が生じている可能性があると言えます。 第2番目は、農産品に関しては、これまで産地毎にそれぞれ「美味しさ」を競う現象がみられます。しかし、炭素肥料によって2−3倍の収量の増加があるのであれば、幅広い産地の収穫物が、いずれも従来の収穫物よりも大幅に逸脱した領域に到達する可能性があります。その結果として、産地間格差が雲散霧消する方向に推移するかもしれません。食料の物流は極力最小にするのが望ましいとえいます。 |