第17章 持続可能な社会と全養分施肥栽培
1.ローマクラブの提言から ローマクラブが「成長の限界」という問題を提起し、以後、さまざまな機関から「持続可能な発展」「持続可能な成長」「持続可能な社会の構築」「循環型社会」「ゼロエミッション」「ファクター4」「ファクター10」など多種多様な表現で、地下資源の枯渇による現代文明の消滅の危機が叫ばれています。 そのために、「ストックホルム会議」「ナイロビ会議」「地球サミット」「リオ+20」など様々な協議がなされています。因みに、地球サミットや先年開催された「リオ+20」は世界最大の国際会議とされています。 石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は、地球における存在量が定まっている物質であり、それを消費すればやがて消滅することは明らかです。どのように言葉を弄しても自然の摂理は変えようがありません。日々、消滅に近づいています。 
この可採年数が妥当なものであれば、今、新設される建造物は想定される耐用年数の遥か手前の時期にエネルギーの枯渇によって機能不全に陥り、廃棄される可能性が高くなります。エネルギーの枯渇による廃棄の場合には、建造物はそのまま廃墟となる可能性が高いかも知れません。 エネルギー資源の枯渇を懸念する様々な世界的な提言や協議については、枚挙に暇がないほどの情報があり、誰もがその情報に接することができます。そのため、ここでは格別、例示しません。 ただ、「成長の限界」から40年以上も経ているにもかかわらず、世界全体としては前進している形跡がみられません。「リオ+20」にしても、一部の人からは開催の前から成果が疑問視されていました。勿論、進展していないのは平均的な世界の姿であり、個別に見れば着実に前進している国はあります。
2.全養分(元素)施肥栽培 このホームページは「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」という新しい栽培の取組を提案しています。従って、地球環境サミットとか、持続可能な発展とかいう事柄とは無縁な栽培技術に関するものです。その切っ掛けは「家畜糞尿を生石灰で殺菌分解して、圃場還元する」というものであり、単なる公害防止技術でしかありません。 ところが、この汚物の浄化と処理残渣の利用の背後に、「有機物が植物に吸収されていた」というこれまでの植物学や生態系では想定されていない現象が現実に生じていました。 そして、その効果は、耕地の生産性が2−3倍に引き上げられる可能性が高いという過激なものです。何故なら、処理残渣を利用した栽培について、収量が1.9−3.5倍に増加した実施例が記されているからです。 
いまの世界の国々の食生活は、海外への依存度が高く、フードマイレージが大きな値になっています。耕地の生産性が高まれば、フードマイレージの値を小さくできる可能性があります。勿論、耕地の生産性が高いことは、食料が少ないエネルギーで生産されることでもあり、化石燃料への依存が低下します。 とりわけ、食糧は誰にとっても必要不可欠な生活の必需品であり、化石燃料への依存度が低いことが大切です。 
世界の平均で見ると、利用可能な陸地の中で最も広い面積を占める用途の一つが農地です。 農地の生産性を高める術が化石燃料への依存を下げる方法の一つです。 
この図は、世界のエネルギーの凡そを示しています。 地球の光合成で固定されるエネルギーの17%に相当する化石燃料を消費しています。 もし、この化石燃料の消費エネルギーをバイオマスで補うとすれば、地球の緑は一気に消滅し、禿山の地球となります。今のエネルギー消費量を維持することは、明らかな暴論です。エネルギー消費量を桁違いに下げた新しい生活の形態が必須です。その上で、持続系から生み出されるエネルギーによる生活の維持を模索するしかありません。 地球に到達しているエネルギーの0.1%が光合成で固定されているエネルギーと推定されています。太陽光発電の発電効率は約10%です。また、地球に到達しているエネルギーの2%が風力エネルギーに転換されているとされています。 人間のエネルギー消費で、食料のエネルギー消費は削減できません。従って、食料の生産について地場の風土による生産力を最大限に高めることが重要になります。 エネルギーは流れさるけれども、物質は循環して利用することができます。 
地球生態系では、外界から流入するものは太陽光によるエネルギーだけです。 地球系内で物質は循環して利用されています。 エネルギーが供給され続ければ、物質の循環は可能です。 
地球には万遍無く太陽光が照射しています。このエネルギーを活用するしか術はありません。 処が、土手や原野の雑草に当った光は、雑草しか育てることしかできません。無機栄養説に従う認識では、雑草の有機物は無駄な有機物です。早々に朽ち果てて炭酸ガスと水にならなければ、食糧となる作物に利用できません。雑草に当たる光も無駄な光と言えます。 処が、このホームページで提案する全養分施肥栽培(炭素肥料)の考えでは、雑草の有機物であっても、有機金属に固定し、炭素肥料として耕地の作物へ与えれば、食料の有機物となります。有機物の全てが食料の有機物へ転換できる経路が拓かれました。 地球の光合成の条件は同じでも、炭素肥料として有機物を作物へリサイクルすることができ、ヒトの必要とする食料の循環量が多くなります。 食料の生産性が高まれば、無駄な物流による資源の浪費は抑制されます。余剰の耕地で再生可能エネルギーを生産できます。 日本のエネルギー消費でいえば、一人当りの消費エネルギーは約80uの太陽光発電パネルで発電できるようです。勿論、太陽光発電が巧みな再生可能エネルギーの方法である、ということではありません。ほとんど人手で取り扱うことができる程度の小さな風力発電であれば、ほとんどの人が簡単に地場の風土からある程度の電気エネルギーを生産することができます。 現在、枯渇系で消費しているエネルギーを恒常的に取り出す術はないでしょう。しかし、限られた地域の中で何とかヒトの生活を維持する程度のエネルギーは風土から取り出すことができるかもしれません。 耕種農業の生産性を高めることは、風土から再生可能エネルギーを取り出す上で所望の土地を確保する上で重要です。農業は、全ての産業の中で最も広大な面積を占有しています。その生産性が2−3倍に高まれば驚くほど大量の再生可能エネルギーが得られます。何時までも生産性の低い農業を続けられては困ります。 風土が生み出す再生可能エネルギーは、その場で消費するのであれば、今の化石燃料と遜色ない利用ができます。 決定的な差は、移動体(自動車・飛行機・船)のエネルギーにできないことだけです。即ち、化石燃料が枯渇した未来の世界では、海を越えた異国の地は、火星や太陽やアンドロメダ座と等しいほどの遠隔地になっていることが予想されます。 
3.持続可能な社会についての、ネット上の提言から 持続可能な社会に対する公的機関からの様々な提言はネット上で多数確認できます。 このホームページでは、ネット上に公表されている2つの私的な資料の存在を記します。 1)森のくろつぐみ氏「環境の部屋」「省エネ住宅の試み」「エコ的生活」(ネット上のブログ)(第20章) 2)隅田勲氏「迫りくるエネルギー危機」「21世紀のエネルギーと環境(PDF)」(第20章) このホームページを記述する際に、参考にさせていただいたものです。 10年に1度、世界中から約5万人もの人が1つの都市に集まり、おそらく最も重要なテーマであろう「持続可能な社会」について協議しても、参加者が多すぎて、ほとんど成果がありません。開催期間を2倍に延長しても、その結果は同じでしょう。 上記の「環境の部屋」と「省エネ住宅の試み」には、化石燃料への依存を低減した生活を実践している記録が記されています。その意味では稀有な内容と言えます。 上記の「迫りくるエネルギー危機(ブログ)」「21世紀のエネルギーと環境」には、枯渇するエネルギーに対して豊富な資料に基づいて自給自足という解があることが簡潔に示されています。勿論、他の資源を有効活用する術も併せて記されています。 両者に共通している視点は、エネルギー資源が枯渇し、消滅する以上、エネルギー資源を必須とするグリーバルな活動に対する警鐘です。エネルギー資源が枯渇した時、その社会は確実に消滅します。エネルギー資源の消滅は、確実に到来する事態です。s このホームページとそれぞれのブログの主旨とでは相違点もあります。 このホームページでは、「有機物の植物へのリサイクル」という新しい概念に立脚しています。耕地の生産性は2−3倍に高まります。ほとんどの地域で食糧の自給が可能になります。そのために使用する新たな資源は、地場に溢れるほど存在している未利用だったバイオマスです。そして、広大な余剰耕地が出現します。新しい技術では、半導体を駆使して光の波長単位の精度の高い機器を簡単に生産でき、そして、真空断熱は簡単です。大量の地場産の農産品を真空断熱した部屋(冷凍庫)で長期間保管することは簡単です。温室で加温して周年にわたり作物を生産し続けるより、栽培適期に大量に生産して、冷凍保存して周年利用する方がエネルギー的に有利です。そして、断熱のためには分厚い断熱層であっても構いません。僅かな放熱のための冷却電力であれば、再生可能エネルギーで十分賄えます。所定の低温に維持するだけであれば、供給電力に変動があっても一向に構いません。 遠隔地との交流を望まず、地場の生活を維持するためだけであれば、化石燃料への依存の少ない形態が可能となります。 北欧の国々では、人間を含めて物流を削減することが重要との見地から、人間の交流は電話やインターネットを活用し、人間が移動して面会する愚を減らしているようなトレンドになっています。
4.停滞する社会 石油の枯渇が40年後と推定され、今、新しく建設するさまざまな建物や構造物は、なかば新品同様の状態でエネルギーの枯渇を迎え、立枯れ状態になることが懸念される時期に入って来たといえます。さまざまな未来の予測を見ても、エネルギーの枯渇が現実のものとなる時期以降の具体的な展望を示すものは稀有です。 北欧の国では、約10万年後の未来の放射性廃棄物の管理を想定して、地下に巨大なトンネルを建設しています。その時まで、どのように鉄、ステンレス、電線、半導体を作り続けるのか、道路を維持し続けるのか、エネルギーをどのように確保するのか、疑問は尽きません。放射性廃棄物を収容するステンレス製容器は50年、100年という短い期間で劣化するため、それこそ、1世紀毎に新しく作り変えなければなりません。放射性廃棄物の蓄積量は既に20〜30万トンにもなり、毎年2〜3千トン分の容器を毎年更新し続ける計算です。この作業には、膨大な化石燃料の使用が見込まれます。 途上国の発展は、今でも目覚ましいものがあります。しかし、先進国とされる国々では、ほとんど時が凍結したように感じます。中には、急速に朽ちつつあるように見える国もあります。 エネルギー危機が迫る中で、世界中の誰もが新しい進むべき道を見出せない状況です。 インターネットや携帯電話で、情報は世界中を一気に駆け巡ります。膨大な情報が意味もなく廻り続けて肥大化し、そして、情報の渦の中で、現実がほぼ凍結された状態でエネルギー危機にアクセルを踏み込んで時間だけが経過しています。 「現状維持が最善の選択」ということにすれば、表面上を取り繕うことはできます。しかし、現実は、エネルギーの枯渇に向けて単にアクセルを踏み込んでいるだけに見えます。 このホームページでは、「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」という、どの地域でも利用できる新しい概念で、最も大事な食糧の生産性を2−3倍に引き上げ、多くの地域で化石燃料への負担を軽減した生活を志向できる具体的な所作を提案しています。 その術が、有機物をある種の有機金属に転換して、炭素肥料として施肥し、作物に有機物をリサイクルするだけです。その最も簡単な有機金属は、酢酸カルシウムのような低位のモノカルボン酸カルシウムです。高純度な薬品による生産も簡単にできます。また、家畜糞尿や雑草を生石灰で分解することでもできます。少量なら台所の「酢」と、グランドの白線の石灰でもできます。何れにしても、ハーバーが空中窒素を固定した高度な技術は必要ありません。原始的な工業の水準で炭素肥料はできます。 そして、「有機物の作物へのリサイクル」「カルシウムによるエグミ成分の難溶性塩の生成・除去」という明確な作用のために、炭素肥料による生産性の高い作物は、糖度が高く、エグミ成分が軽減されて、食味が大幅に変化しています。 このような有機金属化合物は、地質学的には、天然にも存在が確認されています。ただ、何分、世界で僅か18000u程度の面積しかなく、余りにも高価で貴重な土地で、土を調べることもできないほど貴重なために詳細な調査はされていません。しかし、往時の地質調査からすれば、3億年前の有機金属の地層が露呈したものとされています。 このホームページでは、太古の昔から圧倒的大多数の自然の生態系の陸上植物が「無機栄養説」で繁茂し、植物体の96%を占めるCOHの有機3元素は植物の繁茂に利用されていなかったものを、ある種の有機金属化合物を経ることで植物に有機物を付加することを可能であると提案しています。その結果、今まで利用されていない膨大な量の有機物が全て食糧生産の原料にできる途が拓かれました。家畜糞尿のエネルギーと作物のエネルギーとが所定の効率で交換できることを意味しています。 化石燃料の供給が減少した時、今目にするほとんどのものが機能不全になり、ほぼ永久に役割を終えるかもしれません。 そうであっても、ヒトが存在していれば食料の生産は最も重要な事柄として継続するでしょう。魚や鳥は素手で捉えることができません。農業による食糧生産が中心と成らざるを得ません。無機栄養説に従う自然の繁茂は、折角生産された有機物を次の作物の繁茂に付加できません。また、作物の成長は、耕地の栽培期間における当該作物の光合成量に限られます。しかし、有機金属を経る有機物のリサイクルは、朽果てるだけだった有機物を固定し、未来の作物の有機物として付加できます。このリサイクルの準備は、栽培期間の圃場という場所と時の制約はありません。この準備によって、耕地における食糧生産の半分以上を予め確保できる可能性があります。耕地で育つ作物の成長を見守るしか術がない農業から、予め人手によって未来の収穫を準備することができる農業になります。 困窮する未来において、今から備えることが望ましい稀有な事柄の一つが、このホームページで記した「有機物の植物へのリサイクル=炭素肥料」ではないかと思います。 即ち、持続可能な社会において、その基盤になる考え方の一つといえます。 周囲に溢れる不用なものを利用して、より手軽に、安く、美味しいものを生産する…という簡単な理由であっても構いません。 信じ難いことではありますが、今の農産物が、「生産性が低いために値段が高く、糖度が低く、エグミが強く、美味しさに欠け、総合すると最低最悪の状態かもしれない」という見方が有機物を植物にリサイクルする新しい考え方からは垣間見えます。 |