第25章 全元素施肥栽培のQ&A
開始:西暦2014年01月25日
第25章 全元素施肥栽培のQ&A(質問と答え:順次追加します)
この章は、このホームページで紹介している「有機物の植物へのリサイクル」「炭素肥料」「全元素施肥栽培」という新しい栽培の取組について「Q&A(質問と答え)」という形式で概観します。
このホームページでは、「炭素肥料=有機物の植物へのリサイクル」という見方を取り入れると、耕地の生産性を2‐3倍に高めることができ、同時に、糖度が高まり、エグミが軽減した作物が得られることが見込まれる、と紹介しています。即ち、世界中の耕地の生産性が飛躍的に高まります。更に、この炭素肥料のための原料は、家畜糞尿や雑草という周囲に溢れるバイオマス(天然有機物)であり、ほとんどタダ同然の物質です。身近なものの活用によって、社会状況が劇的に改善されることを提案しています。
「信じ難い」ことでしょう。
1.【Q1. 植物が有機物を吸収することはできないのではないか?】
A1. ■植物は、基本的に有機物を吸収しません。約170年も前から、科学的な調査の結果、植物は有機物を吸収していません。最近の研究では、「微量ではあるが植物は有機物を吸収している」と報告されています。しかし、植物の生育を大きく促す程の「有機物の吸収」は確認されていません。
■食虫植物や従属栄養植物を例にして「植物は有機物を吸収する」とする見方もありますが、食虫植物や従属栄養植物は、単なる、学術上の奇異な種類であるということだけで、産業上の活用の術はありません。無駄な知識と言えます。
■植物の吸水経路の一つに、内皮からの吸水があり、この経路から微量の有機物が吸収されている、とする見方もあります。これは、エンドサイトーシスと言われる経路で、土壌水が植物細胞の細胞壁を辿って根の内部(内皮)まで到達し、内皮を介して吸収される経路です。基本的には、水は透過します。しかし、透過されない可溶性成分が、内皮近傍の細胞壁に高濃度に集積して、濃度拡散の牽引力が高まるために細胞内へ拡散する、という見方です。植物が土壌水を吸水する時に、土壌水に溶解していて吸収されない成分については根の細胞膜近傍(外側の近傍)で「濃縮」が行われます。即ち、根の吸水過程では、分離・濃縮が同時に進行しています。土耕では、作物の状態が吸収を許容するだけの養水分が吸収されます。ただ、この受動移送過程では、土壌水側の濃度が高くなり、細胞内側の濃度が低くなければなりません。植物が養分を吸収するからと言って、植物が養分100%の塊になるようなことはありません。
■養液栽培では、土耕のような濃度調整機能がないために、養液内のさまざまな養分について、吸水の時の養分濃度に予め調製しなければなりません。養液栽培では、常に、養液の養分濃度を適切な範囲に維持しなければならず、そのために、常時、養液の化学分析が不可欠です。
■しかし、ある種の有機金属化合物は植物に吸収されます。即ち、有機物の一部は植物に吸収されます。そして、有機化学では、いろいろな種類の有機物を相互に転換することができます。このため、植物に吸収されない有機物であっても、適切な化学操作によって植物が吸収できる有機金属へ転換することはできます。
■今までは、「ある種の有機金属ならば植物が吸収できる」と気付かなかったといえます。そして、植物が吸収できる有機物が一つ判明すれば、全ての有機物が植物へ移行できるといえます。
2.【Q2. 無機栄養説は間違いか?】
A2. ■自然界に繁茂している膨大な植物の生育は、ほとんどのものが無機栄養説に従っているものといえます。1世紀も前から、栽培条件を精密に調整して植物が土壌に存在する有機物を吸収するかどうかを調査しています。その結果、自然界の植物は、その成長に有機物の吸収を利用していないことが判明しています。自然の植物の繁茂は、無機栄養説に従っていると言えます。
■しかし、自然状態の植物の繁茂が無機栄養説に従うとしても、より旺盛な成長を求めて、有機物を施肥で補うことは吝かではありません。これまで、1世紀以上も有機物の吸収を調査していたのは、「作物の成長をより旺盛にできないか?」という目標のためです。有機物の吸収によって、より旺盛に繁茂するのであれば、この現象を活用すればよいだけです。
★自然界の鉄や銅は酸化物です。しかし、現代社会では鋳鉄・鋼・銅線のような不自然な状態のものに変えて利用しています。自然界を克明に調査した結果が「無機栄養説」に従っていても、生産性を高めるために「有機物を補給」しても構いません。
3.【Q3. 有機物の施肥は今でも堆肥で行っているが?】
A3. ■堆肥や腐植のような今までの有機物の施肥では、植物に有機物は吸収されていません。今までの有機物の施肥は、例外なく、土壌微生物の生分解作用によって炭酸ガスと水に分解されるだけです。堆肥、腐植のような従来の有機質資材は、生分解を受けた後に無機養分を開放するための資材であり、施肥した有機物が作物に取り込まれることはありません。
4.【Q4. カニがらのような有機資材は?】
A4. ■有機質資材の原料に特色がある栽培であっても、結局は、無機栄養説に従う栽培であり、最終的に作物が吸収するものは「無機養分」に限定されてしまいます。カニがらばかりでなく、全般的に有機物を活用できないのは勿体無いように見えます。
■原料に特色のある資材が「優れている」とする見方は、その原料を発生している人の見方であり、概して、「廃棄物がより高く販売できたら都合が良い」という事情がある場合があります。一般論として、自然の摂理の下で、当該原料が優れている、というものは少ないようです。
■「原料に特徴がある」「分解者(菌や微生物等)に特徴がある」「栽培の取組に特徴がある」というように、いろいろな側面で特異性を表現している事例が多数あります。豊富な原料を有するものは、概して原料の特異性に着目しています。特定の原料を持たないものは、分解者の特異性に着目する例が多いです。原料や分解者に特異性がない場合には、概して、栽培の取組についての考え方に特異性を持たせています。
5.【Q5. 全元素施肥から見て、有機栽培はどのように見えるか?】
A5.■全元素施肥では、NPK化学肥料による慣行農法に炭素肥料COHを加える栽培を推奨しています。NPK等の無機養分の施肥として化学肥料を推奨しています。NPKが十分安く、十分な量が入手でき、且、製品が安定しているためです。従って、堆肥や腐植やその他の有機質資材を使用することはありません。そのような栽培から見れば、有機物を持ちながら生分解させるだけの有機栽培は「勿体ない」といえます。堆肥や腐植や他の有機質資材の原料は、必ず、天然の有機物であり、その天然の有機物から直接有機金属化合物を調製することで、有機物を作物に付加できます。

有機農業では、左側の仮想線(2点鎖線)で示した分解者によって無機化される有機物の部分が、完璧に無駄になっています。
■なお、NPK化学肥料は、それぞれ無機原料から調製されるので、「原料の有機物が勿体ない」ということはありません。
6.【Q6. 有機金属(炭素肥料)にできる原料は何か? 】
A7. ■原理的には、全ての有機物が炭素肥料へ転換できます。家畜糞尿、雑草、食品加工残渣、樹木、紙など幅広い有機物が炭素肥料へ転換できます。
■但し、原料の主要成分によって化学操作が異なります。このため、一般的には原料の有機物の100%が炭素肥料へ転換される訳ではありません。原料に含まれるいろいろな成分を分離してから、その成分毎に化学操作をすれば、高い割合で炭素肥料へ転換できます。
■一般的には、原料の主成分を見極めて、原料の種類に応じた化学操作が選定されます。その化学操作によって炭素肥料へ転換できない有機物が炭素肥料へそのまま移行することもあります。むしろ、それが一般的です。
7.【Q7. どの原料が経済的か?】
A7. ■それぞれの地域の状況で最適原料は変わります。一般的には、家畜糞尿が適しています。家畜糞尿を生石灰で分解処理する方法です。その理由は、家畜糞尿は殺菌しなければ汚物として迷惑な存在です。どのみち殺菌されるものであれば、生石灰で殺菌分解するのが合理的です。家畜糞尿には、多量の病原菌が含まれており、未処理で周辺に拡散すると甚大な被害となります。一般的には、短い時間での汚染が問題と思われますが、違います。問題が表面化するまでに時間を要する事案ほど、問題が長期間にわたり、ほとんど処置なしとなることがあります。
■フランスの国土の30%以上が、畜産排せつ物による地下水汚染で地下水を飲用できない地域です。このような地域では、「水を煮沸殺菌して飲用する」か「安全な地域で生産されるミネラルウオーターを飲用する」かしています。その土地の水を飲用できない土地は死の大地です。この40年間程度のモータリゼーションの間は飲用水の物流が形成できますが、燃料が枯渇した時、この大地は死の大地となります。地下水から家畜排せつ物の雑菌が消えるまでに要する期間は予測する手法が存在しません。汚染が顕在化するまでに要した期間以上の期間が必要と思われます。
■このため、地下水を健全に維持するには、子のような機会を利用して家畜糞尿を完全殺菌しておくことが望ましいといえます。
8.【Q8. なぜ、炭素肥料は有機物を植物へ供給できるのか?】
A8. ■植物の物質吸収は、当該物質が細胞膜を透過するかどうか、につきる。これは、生命現象ではなく、物理的な現象に過ぎない。たとえ、植物にとって具合の悪いことでも、物理現象で有れば進行してしまう。植物にとって「毒」ではあっても、甘んじて吸収してしまう物質もある。これは人間でも同じです。
■「リン脂質の2重膜」である細胞膜を透過できるか否か、でしかない。■細胞膜を透過しにくい物の性質は判っている。★分子量が大きい★水に溶けない★電荷を帯びている等の性質が関係している。■また、水のように自由に細胞膜を透過できる物質でも、条件が整わなければ吸収されない。■植物に吸収される物質は、土壌水側が高濃度で、細胞内が低濃度でなければ受動輸送は生じない。■このような関係で、透過しやすい性質の物質が、土壌側で高濃度になり、細胞内が低濃度になれば透過の可能性が生まれる。■ある種の有機金属化合物は、水に溶け、電荷を持たない成分があり、分子量が小さく、そして、生分解作用を受けないので土壌水側に長く留まり、高濃度状態になる。そして、濃度差で細胞膜を透過する。■そして、細胞に移行した後、他の物質と反応して消耗すると、濃度が低下する。透過物質の濃度が低下すると、細胞膜における透過現象が継続して進行する。■例えば、酢酸カルシウムのような有機金属がその性質に適った有機化合物であった。■酢酸カルシウムは、家畜糞尿に生石灰を作用させた時の主要な生成物だった。これは偶然の結果に過ぎない。
9.【Q9. 有機物が植物に吸収される現象はいつから知られたか? 】
A9. ■1980年にJP1359005号が提案された時から生じていた現象と言える。しかし、この時点での認識は「土壌改良材」というものであった。即ち、「植物による有機物の吸収」という見方は見られない。植物が生育している土壌環境を整えて生育を促す、という見方に止まっていた。■しかし、この具合の良い現象が、栽培品目、栽培土壌に拘らず発現し、さらに、耕作者がNPK化学肥料の代金を遥かに上回るこの土壌改良資材を土壌改良後も毎作使用し続ける異常な事態が続き、「土壌改良」ではない現象の存在を検討したのがこのホームページといえます。★有機酸カルシウムが植物に吸収されている、とのことで見直すと、千年弱の前から知られていた、世界的にも著名なワインの栽培土壌でも、天然の環境で同じ現象が生じていたと推測されます。この地質は、地球上で18000u程の面積しかなく、約三億年前の地層が露呈したもので、有機物と石灰とからできた土壌とされていました。フランス・ブルゴーニュ地方の村に見られる地層です。■最近の「葉面散布剤」「液肥」では、『有機酸カルシウム』を含有する資材が多数販売され出しました。■なお、有機金属の金属成分としてはカルシウムではなくマグネシウムとすることもできます。但し、原料の存在量としてはカルシウム(炭酸カルシウム)が圧倒的に普遍的で安価です。
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