不定期連載
笹野的映画感想記
僕が見た映画の感想を書く場です。
上映中に限らず、過去に見た作品も機会があれば書こうかな、と思ってます。
第二十一回:「サウンド・オブ・サイレンス」&「アトランティスのこころ」
・サウンド・オブ・サイレンス(2002年 監督:ゲイリー・フレダー 主演:マイケル・ダグラス、ショーン・ビーン他)
友人に薦められて見に行った作品です。単純に面白かった♪
話の根底に流れているモノは「信頼できるか否か?」「家族」「精神的苦悩と闘い」と言ったところだと思います。主人公の精神科医(マイケル・ダグラス)は大切なモノの為に家族(犯人達に誘拐された娘&自宅に軟禁状態の妻)或いは精神病患者(…だと思われている)を信じ、一方、十年前の強盗の時に仲間の裏切りでお目当ての宝石を奪われたリーダー格(ショーン・ビーン)はその宝石を奪い返すために仲間すらあっけなく見捨ててしまう。そのコントラストがそれぞれの相反するところ(医師の自己の家族を護りたいがゆえのエゴ、或いは犯人の自己の目的への愚直なまでの執着)と相まって鮮明に描かれていたと思います。家族に関しては、映画に限った事じゃないけどその時代時代で描かれる普遍的なモノで、主人公の幸せを絵に描いたような生活と、患者の、幼少時に見てしまった過酷な現実とそれでもなお繋がりを持ち続けるサマという、一見対照的ながら、根底の深く濃い繋がりを描き出すという点では、どんな環境であろうと変わらないという、何か異本的なモノの再確認という趣を感じました(大げさかな。でも今の時代では家族の繋がりという強さの意味を忘れがちですよね)。
コントラストというのもこの映画では様々な形で出ていると思います。生と死、日常と非日常、幸せと不幸せ、誠実と不誠実、情熱と冷酷…、これらを人間ドラマの中で上手く出してきてるのではないのかと感じました。ちょっと昔のサスペンス映画へのオマージュみたいのも感じられたり。ああ、僕はたまたま一回で感じられたけど、序盤から伏線がさりげなく張ってあってそこら辺も意識すると面白いかも知れないですね。若干不満というか、女性刑事が別の犯罪を追っていく内に主人公の身に起こっている危機に結びついてゆく部分の描き方がちょっと膨らませ方が足りないかな、と。でも、全体的にだれるところが無いから見て損することは無い佳作かと思います。
しかし、ここでもやはり女性がいざという時に強いのね、と感じました(笑)。娘さんも父親の影響か頭がきれるし。
・アトランティスのこころ(2002年 監督:スコット・ヒックス 主演:アンソニー・ホプキンス、アントン・イェルチン他)
原作がスティーブン・キングで、監督が「シャイン」のスコット・ヒックス、主演がアンソニー・ホプキンス…、これだけでも充分売りになると思うのになんでPRしなかったんだろう?そう思うほどいい作品でした。「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」などともひけを取らない良作だと思います。
スティーブン・キングといえばホラーかヒューマンドラマに(大雑把に言えば)分けられ、今作品は後者の部類なのですが、主人公の男性が子供時代(アントン・イェルチン。子供ながら(というのも死語だね)凄くいい役者!)に出会った老人(アンソニー・ホプキンス)との不思議な交流と、きらめくような驚きと喜びの日々、そしてかいま見える大人への現実的な道を中心に描かれています。タイトルもそんな子供時代を形容した言葉なのですが、実際見ていて、実際に自分が体験した子供時代、そしてそれを大人になって回想する子供時代と二つの近いようで一寸違うその二つの子供時代を想う主人公と見ている自分自身が微妙にリンクしてくるんですよね。楽しかった、楽しかったけど、どこか胸を締め付けられる想い出。それは、初恋の想い出とはまた違う切なさだと想うんですよ。そしてそういう想い出は自分が忘れかけたときに不意に思い出されてしまう。冒頭で主人公が、その子供時代の友人の死を宣告されたときのように。でも、それはきっと悲観的な事ばかりではなくて、繋がった想い出はまた新たな想い出と何処かで繋がってゆき、それが新たな想い出として、大切な思い出として構築されてゆく。それを感じさせるのがラストシーンだったと思いました。失うことを怖れちゃいけない。失うことは辛く悲しいけど、それを乗り越えて新たな世界を歩いて行かなければいけないのだから。そしてその時に初めて失ったモノを良き思い出として受け入れられるのだと、そう伝えて貰ったような気がします。
最後に。いい役者さんというのは、その世界の中で「演じる」と言うより、その世界の中に「存在している」事が出来る人なんじゃないのかなぁ、とちょっと思ったりした今日この頃です。なんか概念的な書き方で申し訳ないですけど。
第二十回:「ロード・オブ・ザ・リング」
・ロード・オブ・ザ・リング(2002年 監督:ピーター・ジャクソン 主演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リブ・タイラー等)
原作は昔読んだ記憶はあるのですが、ほとんどうろ覚えとも言いにくい程度の記憶なので(大まかなストーリーと登場人物程度)、実質初体験のような感じで望めました。
約三時間の作品なんだけどそれを感じさせない出来!物語の背景や種族の特徴を簡潔に的確に伝えつつ、ストーリーの流れがだれることが無く展開していく手法は正直驚きを禁じ得なかったです。物語の基点となる指輪の恐ろしい力とその魅力をしっかりと伝え、それでも、その力に打ち勝つために葛藤を感じながらも突き進む仲間達の姿がしっかりとした芯になってるんですよ。それにあらがう闇の勢力の恐ろしさもまたしかりです。行く先々で肉体的にも精神的にも追いつめていく姿はこの長いストーリーの彩りをしっかりとかたどっています。
個人的に興味深かったと言うか、なるほどと思わせられたのは種族の描かれ方です。特にホビット族なんかはその生活習慣まで息づかいが聞こえるモノでした。また、何処か僕自身の頭の中で誇張されて描かれてたホビットたちがリアルに突きつけられたのはちょっとしたカルチャーショックでした(言い過ぎかな?)。逆にドワーフ族なんかはもろ!って感じで嬉しくなりましたね。人間達もガンダルフやアラゴルンなどカッチョイイ!ってかんじ。小説とはまた違った形でキャラクター達は魅力的に命を吹き込まれたと思います。
でも、やはり主人公のホビット、フロドの存在感は欠かせないと思います。ピュアで優しく、素直に臆病さを隠すこともなく、でも勇気という剣や魔法をも乗り越える武器を持つ彼は見てて感動すら感じました。殺伐としかねないこの話にこのキャラを主人公にすえた原作者のトールキンの慧眼は時を越えた今でも通じる何かを感じます。そして、それを誠実に伝えようとする監督の意志もまた感じられました。
映画は次回への大いなる予告へ繋がる終わり方をしてます。既に三作目まで撮り終わってるらしいので早く続きを見たい!でも、楽しみは取っておくモノだしね(笑)。
…あまり賛辞ばかり書くのは良くないのはわかってるけどね。でも、ここは批評をするコーナーじゃないし、カンベンね。なるべく誉めるにしても間違ったほめ方をしないようにこれからも気をつけますからこんなんでも良かったらこれからもご愛読宜しくです。
第十九回:「パコダテ人」
・パコダテ人(2002年 監督:前田哲 主演:宮崎あおい、大泉洋、萩原聖人等)
舞台(函館)はもちろんキャストから主題歌(whiteberry)まで北海道関係で占められた作品です。
ストーリーとしては、ある日突然しっぽが生えてしまった女子高生と平凡な市職員を軸に騒動が巻起こるという、そんな感じですが、ちょっと大げさなまでにドタバタが繰り広げられるのが鼻につくところもあるけど、個性豊かな登場人物と映像の雰囲気で比較的見やすい感じにまとまってると感じました。
主人公を演じる宮崎あおいちゃんは普通ならあり得ない状況に遭遇してしまった女子高生を気負いすぎずに演じていたと思います。恋を抱いている男の子とのエピソードや家族との衝突と理解、現状を楽しもうと模索する姿とか、ね。道内では知らぬ人が少ない大泉さんも普段とは一寸違う市職員をエンジョイして演じていたし。
ただ、敢えて言うならば、TVドラマにプラスアルファしました、という域に留まっちゃったかな、とも感じました。舞台を限定した分観光ビデオ的に捉えられかねないところは避けられていましたが、全国的にコレを上映するとなると厳しいところがあるかも知れません。道内ではおなじみの人達が多数出演してるから道内では面白がれるかも知れませんが、ね。
ちょっと厳しい言葉が続きましたが、この世界観をすんなり受け入れられれば面白い作品だと思います。僕個人としては結構好きな感じでした。もっと自分達の住んでる所に目を向けて行くことが映画にも必要だと思いましたね。
第十八回:「WASABI」
・WASABI(2002年 制作・脚本:リュック・ベッソン 監督:ジェラール・クラヴジック 主演:ジャン・レノ、広末涼子等)
皆、この映画の先入観としてあったのは「日本が舞台の『レオン』」(これは僕も正直見る前は思いました)とか、「広末の会見での涙」とかだったんじゃないかな。
でも実際の所、最近のベッソンプロデュース作品に見られるような感じでコミカルな演出の多さとか、元来持つ孤独な主人公が人とふれあうことで温もりを取り戻してゆく感じがいかんなく発揮された作品だと思いました。監督こそ違うけど、主演のジャン・レノと言い、音楽のエリック・セラといいベッソン色が強い感じで個人的には安心できた感じですね(それも善し悪しがありますが…)。
ワイドショーとかでも取り上げられた広末ですが、実際作品の中の広末は堂々とフランス語と日本語を巧みに織り交ぜて演技してました。それもかなり自然にフランス語での演技が出来たのには驚きすら感じましたね。で、(映画を見た人なら判ってもらえると思うけど)演じてるキャラクターがかなり起伏の激しいキャラだから大変だったと思いますね。“あの”涙は役柄にのめりこんだせいでの感情の起伏の激しさから生まれたモノだと今では解釈してますけど。
ただ、一方では少し小粒な映画に感じてしまうのもしょうがないかなって気もしますね。でも、規制の厳しい日本であれだけの撮影を挙行出来ただけでもそれはそれで意義のある作品だったと感じました。広末×ベッソンの取り合わせもまた見てみたいと思いますし(やはり女性を磨く人だと思います、ベッソンって)。
あ、そうそう。作中に日本のアーティスト二組(鬼束ちひろ,Puffy)の楽曲が使われてるんですが、その使われどころもチェックしてみるのも面白いですよ(上映は終わってるだろうからDVDがでたときにでも、ね)。
第十七回:「ラン・ローラ・ラン」
・LOLA RENNT(1998年独 監督:トム・ティグヴァ 主演:フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライプトロイ他)
舞台は夏のベルリン。午前11:40。ローラの元に掛かってきた電話からお話は始まります。受話器から聞こえる恋人・マニの切迫した声。「20分以内に10万マルク用意しないとボスに殺される。」「お金はどうにかするから、そこで待ってて!」
転がしようによってはサスペンスにもラブロマンスにもなる設定を、スラップスティックに持ってったこの映画。3つの結末が用意してある内容といい、その3つの話に絡み合うキャラや背景を追ったズ○ット並に凝ったカメラワークといい、一歩間違えれば「遊びすぎ」な内容ですが、実にどうして過不足ない演出でとても楽しめました。ノリ的には「いこかもどろか」に近いんじゃないですかね。頼りない上に考えなしな男と、状況打破に必死に駆けずり回る女。どこの世界も女性の方がパワーありますなあ。
物語はローラやマニだけではなく、疾走するローラとすれ違う人々も3つの人生模様が用意されています。私的には最初にローラとすれ違ったおばさんの人生が一番波瀾万丈だったように思います。それこそ主役の二人以上にね(笑)
(的場知己)
第十六回:「バンディッツ」
・バンディッツ(2001年 監督:バリー・レビントン 主演:ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソーントン、ケイト・ブランシェット他)
(始めに、僕が見に行ったのは試写会での事だったのでもしかすると内容(編集とか)が実際の上映時と変わるかも知れません)
見終わって先ず感じたのはユーモアに溢れた痛快なシナリオの良さでした。
ブルース・ウィリス演じる考えるより行動派で、女好きのジョーとビリー・ボブ・ソーントン演じる頭脳派だけど気が何処か弱く神経質すぎるテリーの二人の脱獄囚が行く先々で銀行強盗を重ねて行くんだけど、その方法が(こういう言い方は不謹慎かも知れないけど)洒落っ気があって、お見事な手口…とも言えるし、無茶苦茶(笑)とも言えたりして。それをサポートするスタントマン志望の友人がまたいい味だしてるんだなぁ。アクは強いが絶妙のチームワークで。で、そんなメンツをかき回す主婦役のケイト・ブランシェットがまた感情の起伏が激しいキャラで彼女の序盤の活躍を見るだけでも笑えます。
一応この映画はクライム(犯罪)モノと分類して良いとは思うけど、主演以外の登場人物も良いキャラしててコメディ的要素も強いし、ユニークなのが結果的に誰も(肉体的に)特別傷ついてないんですよね。この手の映画って誰か彼か死ぬヤツが出るって思いがちですが…これは見て貰った方が良いかも知れませんね。その最後の大仕掛けと共に。
なかなか見応えがある楽しい娯楽作品になってると思いますよ。しかし、ブルース・ウィリスって色男として向こうでは認識されてるんですね(笑)。
第十五回:「オー・ブラザー!」
・オー・ブラザー!(2001年 監督・脚本:ジョエル・コーエン 制作・脚本:イーサン・コーエン
主演:ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン他)
コーエン兄弟作品を見るのは、「ファーゴ」以来でした。
一件地味な映像に見えるのですが、引き込まれる何かを感じさせる魅力は、前回の時と同様でした。それは何かと言われると、先ず、全編に流れるアメリカの人達には深く染みついているだろう音楽(ブルース・カントリー・ゴスペル等)の素晴らしさとそのストーリーとの絡みの必然性の濃さであったり、登場人物の個性があって一寸お馬鹿ででも憎めないところだったり、そして何と言ってもストーリーそのものの面白さだったりするのです。物語は簡単に話すと、かつて強奪し隠して置いた大金を、ダムの建設で埋もれてしまう前に掘り起こすために脱獄した三人の囚人達の珍道中を描いたモノです。その三人が良いキャラしてて、口は上手くてでも何故か妙に髪の身だしなみにはうるさく、追われてる身にもかかわらずお気に入りのポマードで整えた髪型を護るために夜にはヘアネットで頭を包むの(ジョージ・クルーニー。彼がこんな二枚目半のキャラが出来るのも予想外!)とか、文句が多いけど一寸感動屋なのとか、妙に迷信深くおっとりしてるのやらで、その三人を見てるだけで飽きない感じでした。舞台設定がまだ古い頃の南部アメリカだから当時の世相とか(人種差別とか迷信深いところとか)が余計に話を面白くしてるんですよね。「んなあほな!」と笑っちゃうくらい一寸誇張されてるところもある一方、妙にジーンときてしまうところもあったりして。ホント人間が上手く描かれている作品だと思いました。
ちょっとしゃれてて、でも良い意味で泥臭さもある作品でした。個人的にはかなりのオススメです。
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