映画撮影隊 


 冬枯れの町をぐんぐん歩く。ダウンタウンは結構起伏があって、道はゆるい上り坂になったり下りになったり。平坦な町よりも坂のある町というのは、景色が重なって美しいのである。
 そんなゆるい上り坂の湾曲した道路沿いに聖ジョージ・アングリカン・チャーチはあった。1870年に建てられたネオゴシックの可愛らしい教会である。扉を開けようとすると、足元に何十本というケーブルが這っている。小さな看板が出ててなんと 『映画撮影中』。あらら〜、すごい場面に出くわしたかも。とりあえず中に入る。と、ヒゲ面の “ギョーカイ人” という感じの男がふたり、仕事をしている。

「中は見ちゃダメ?」
 小さな声で尋ねると、男は微笑みながら
「そっとならいいよ。でもカメラはダメ。撮影の最中だからね。見せてあげる。カモン♪」
 おお〜!とってもラッキーかも。礼拝堂の扉を開けて入り口に立たせてもらう。古い教会の中にはでっかい反射板や集音マイク、数台のカメラ・・・結婚式の招待客に扮した役者たちが祈祷台の前に整列、そして取り囲むたくさんのスタッフたち。高い天井の礼拝堂内はとても明るく、つやのあるウッドワークの長椅子がとても美しい。

「花嫁と花婿は?」
 ヒゲ面の男に聞くと、
「今は式終了後のカットを撮影中で、花嫁花婿は出てないんだ」
 そりゃ残念。主役のふたりを見たかったなぁ。
「映画のタイトルは?日本でも上映される?」
「タイトルは “マイ・ファースト・ウェディング”。ラブコメディーだよ。残念ながら日本ではおそらく観られない。北米だけで上映される予定だからね」
 それもまた残念。でもタイトルは覚えておこう。そのうちレンタルビデオショップで見つけるかも知れないもんね。
「メアリー・クイーン・オブ・ザ・ワールド大聖堂の横で僕らはキャンプを張っているのさ。キャンピングカーが並んでいるからすぐわかるよ」
 ありがと♪優しいヒゲ面の男にツルをあげて教会をあとにする。




聖ジョージ・アングリカン・チャーチ. これもまたビルの谷間に


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