タカノ録 13
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★★タカノ録★★ 13 2002年11月6日 
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女風呂に入る
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 沖縄へ旅行した。

 ホテルに大浴場があって、女風呂に入った。何もトラブルは起こらなかっ
た。

 入浴時間は、朝の5時から夜11時までである。

 朝の方が人が少なかろうと思ったけれど、夜入ることにした。少しでもご
まかせるのではないかと思ったわけだが、当然照明があって、夜だから風呂
が暗いなんてことはなかった。ばかである。

 また、夜も10時をまわれば、風呂に入る人は少なかろうと思いもした。
しかしこれも大はずれで、小学生からおばちゃんまでたくさんいた。よく日
焼けしたスポーティな中学生らしき子もいたし、学生らしきグループもいた。
たぶん新婚旅行じゃないかな、という人もいた。風呂の外にそれらしき相方
がいたからそう思ったのだけれど。

 もう、手術が終わるまで、女風呂には入るまいと思っている。もう少し言
うと、決定打を浴びたのである。

 まぁまずは、とても緊張して、せっかくのお風呂なのにリラックスどころ
ではなかった、というのがある。そしてやはり、一つ間違えれば警察を呼ば
れただろうなと思っている。

 リスクが大きいことは十分に想像できた。けれど、旅行の勢いもあったし、
それに、何かより確実な形で自分が女として世間に通用することを確かめた
くなる時があるのだ。ちょうど、そういう精神状態だった。

 もちろん、虎穴に入らずんば虎子を得ず、ということもあった。(そ
ういえば、まさに虎穴に入るような心地であったぞ)

 ひとつは、自分は上半身だけならば100%女として通用するとわかった。
これは、私の上半身が華奢でバストが大きいということではない。実際はむ
しろその逆である。しかし100%通用したのだ。この現実がすごい。

 私は肩幅が広く、アンダーバスト、つまり肋骨周りが大きい。がっちりし
ている、というやつである。すごくコンプレックスをもっていた。

 女風呂には、私よりも胸の小さい女の人がいた。私よりも肩幅があるので
はないかと思うほど、肉付きのよい人もいた。おなかが段になっている人も
いた。

 私のがっちりした骨格は、そういういろいろな体格の一バリエーションに
過ぎなくなっていたのだ。

 ただし、ホルモン療法の効果なくしては、このような事態にはなりえなかっ
たと思っている。以前は、なんたって筋肉質だったのだ。ホルモン療法で、
それが今は脂肪に置き換わっているのだ。

 また、たいへん貴重な光景を目撃した。タオルで胸を隠している人がいた
こと、そして、ほとんどすべての人が、タオルで下半身を隠していたことで
ある。

 私がタオルで前を隠しても、おかしくなかった。

 大浴場には合計3回入った。それで何のトラブルもなかったのは、なんと
いってもこの慣習のおかげだ。

 「虎穴」で私は学習をした。女風呂の慣習を学習した。手術がすめば女風
呂しか入れなくなる。私はそのとき、入り方がわからなくて戸惑うことはな
い。

 良いことばかりではなかった。

 自分は<女>ではありえないことを、思い知らされた。決定的だった。

 体の違いではない。歴史の違いである。私は、自分が女として成長した歴
史を持っていないことを思い知らされたのである。

 洗い場の私の隣で学生さんらしき二人が、(こんなところでする話なんだ
ろうかと思うんだけど)男友だちとのセックスの話で盛り上がっていた。反
対側の隣では、中学生らしき3人組の、日焼けの跡が健康的だった。これか
ら成長するのだという意思が肌の中にみなぎっていた。

 私にはこんな時代はなかった。そして、やり直しはありえない。
 
 手術をしたって、男として過ごした歴史を女として過ごした歴史にとりか
えることはできない。

 私は大浴場の女風呂で、自分の決定的な運命に気がついた。

 その運命と付き合っていく覚悟を、今は決めている。とりあえず今は。

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