新築物件増改築・再生つぶやきますだの巣ますだのま

 岬町に家を建てられたKさんは30代の会社員です。奥さん(専業主婦)と子供さん二人の四人家族。ご夫婦は、家を建てることに関して勉強熱心で、あらゆるところを廻ってみました。住宅展示場、建売住宅、工務店、設計事務所。

 大阪でも名の知れた建築家を直接訪ねて、その方と話をされたり、それは精力的に動き回りました。ある住宅メーカーに(建築家を家を建てるシステムのところ)プランと見積りを依頼されました。

 そのメーカーの見積り金額が2900万円でした。(木造二階建て・延べ坪35坪・設計料外構費も含む)
見積りが高いと感じたKさんはその住宅メーカーを断りました。

 Kさんが家を建てようと思って、色んなところを廻り始めてから1年が経過していました。同じ社宅にいた後輩達はもう何人も新しい家に引っ越していました。  
 @無料相談
 ある人の紹介で私の事務所を訪ねて来ました。
 
* 何度かお話を聞きました
   一番の問題は、ご夫婦の意見が合わない
   ・ご主人はすっきりとシンプルな家がご希望
   ・奥様は少し可愛くメルヘンチックな家がご希望

* それはプランを何度かやりながら色んな場所を見て調整していこうということになりました
 A家の見学
 すでに土地はご購入済みでしたので、現地を見に行きました。
『岸和田の家』 『松原の家』を見て廻り、その家の人達とも熱心に話をしていました。『奈良の家(移築再生)』 も見学しました。
写真の家を取壊して、新しい家を建てます。
 海に面した斜面に造成された敷地。下から見るとこうなっています。
 駅からの坂道+階段はなかなかしんどいですが、景色は最高です。設計者が足を運んだ日も綺麗な夕陽が見れました。
 B設計契約
 私に依頼することを決め、設計契約をしました。
 C話し合い
 この夫婦を相手にプランをして話しを進めるのはとても難しい作業でした。
何度かプランと打合せを重ねて、決まっていたはずのプランが簡単に奥さんの一言でひっくり返ったりするのです。たくさんプランをしてまとまりかけた時に、最初のプランが一番良いなどと言われると頭を抱えてしまいます。でも何とか粘って基本プランが決定しました。
 D基本プランの決定
 E実施設計
 模型を作り、それを見て貰い確かめつつ実施設計に入りました。

 ここで1つ気になる事がありました。
建設地は35年ほど前の開発地で、眺めは抜群ですが、敷地の形態がいわゆるひな壇になっています。
は設計者の常識で考えると、敷地が切り土と盛り土になっていて、固い地盤と柔らかい地盤の場所があり、時間がと経過すると盛り土の上の部分が下がってきます。35年くらい前だとそんなことを考慮してないだろうな?・・・と考えつつ・・・

 解体された元の家は案の定、海側に向かって6〜7センチほど下がっていました。
ここで私が尊敬し、信頼する 環境地学研究所の井上さんに地盤調査をお願いしました。
結果は敷地の2割ほどは固い地盤ですが、8割りは海に向かって断面で言えば三角形に盛り土になっていました。海にむかって下がるのは自然の摂理だと井上さんは言いました。

 基礎をベタ基礎にして、その下の部分は柱状改良を施し(土とコンクリートを混ぜて杭に近いものを作ること) 建物の重みを下の固い地盤に載せることで上の柔らかい部分が沈下しても建物は下がらない、という設計にしました。こんなケースでは本当に井上さんは頼りになります。



 キッチン、トイレ、洗面なども一緒に見て廻り、ようやく実施設計も終わりました。

 前の建物を取壊して更地になりました。
地盤調査の様子。敷地の四隅と真ん中の計五箇所で土の固さを調べます。
 F役所手続き
 これは問題なく、スムーズに手続きは済みました。
 G工事見積り
 さて、いよいよ見積もりに入りますが、Kさんは心当たりの工務店がないとのことですので、私が選抜をしました。

 1・ 大阪市内 評判の良い K建設
 2・ 堺市で定評のある  K建築工房
 3・ 泉南市 (数年前私の設計した住宅を施工してくれた) Kプロジェクト

 私が三つの工務店を選んで建築主のKさんに提案したところ、奈良の移築再生を施工した斑鳩町の工務店を加えてほしいと言われました。
私は遠すぎると大変だといいましたが、Kさんは譲りませんのでまぁ加えましょうということになり、四つの工務店に見積りを依頼しました。

 三週間後、公平を期するために同じ日に見積りを受け取りました。

結果は
 1・K建設  2600万
 2・K建築工房 2600万
 3・Kプロジェクト 2300万
 4・Y建築 2000万          

さすがに私もこの見積りをみて驚きました。35坪の家で600万円の差です。
建築主も驚いた様子でこの差を理解できるように説明してほしいと言われました。

1の工務店  評判が良く、テレビに出演したりもして仕事に困っていないので、儲けを圧縮してまで仕事が欲しくない、現場が遠いから
2の工務店  ここも仕事は充分に抱えているので、利益の薄いものを無理に取りに行く必要はない
3の工務店  現場に近く、小規模なところなので充分やる気はあったでしょうし、それなりの見積り金額が出ています。

4の工務店が何故安いのか?
 この工務店は大工さんの集団で、15人全員が大工さん。代表者が一人で打合せ・見積り・図面書き・現場の指示をこなしているので他の工務店に比べると経費が極めて少ない。しかも事務所は自宅の二階。そして木材、建材ほか 安く仕入れる事が出来るルートを確保している。

* しかし、代表者がとても忙しく走り回っているので、たまに打合せしたことを忘れたり、現場の職人さんに指示が伝わっていなかったりすることがある。その負担が監理者とか建築主にかかる・・・ 斑鳩の工務店と一緒に仕事を進めて行くときに注意することは、代表者に伝えたことを大工さんにも設備やさんにも自分で伝える、そうゆうことを監理者がやる、すなわち私の仕事が増える。
 しかも私の設計料は工事費の10パーセントですので仕事は増えるし設計料は減るという矛盾がありますが、そんな事を言ってたら住宅の設計なんかできません。

 そういったことをKさんに説明しましたら、やっぱり600万円の差がありますので斑鳩の工務店にやってもらいたいということになりました。
 H工事請負契約
 ということで、斑鳩の工務店と請負契約を交わしました。
 I工事着手
 地鎮祭をしました。
住宅メーカーなどでは、地鎮祭をしないところもありますが、Kさんのご希望により、テントや砂や竹は工務店に用意してもらって、神主さんは近くの神社から来てもらいました。

→皆さん 一寸おめかしをしています。
 *地縄  地鎮祭が終わってから、工務店の人に建物の位置に地縄を張ってもらいます。
     そしてKさん夫妻に建物が図面の位置でよいかもう一度確認して貰います。
     ご夫婦の要望で北側(海側)の庭を30センチ広くしました。

   建物の位置が決まりましたのでいよいよ基礎工事です。その前に柱状改良をしてベタ基礎を施工します。

 
*柱状改良 直径50センチ長さ1メートル〜4メートルの杭状のものを20本施工しました
*基礎工事
 平均的な二階建ての基礎
   コンクリートの厚み15センチ
   鉄筋13ミリ@150〜200

 この建物の基礎
   コンクリートの厚み20センチ
   鉄筋13ミリ@200(ダブル)
    ダブルとは二層に配筋することです。

 地盤を考慮して平均的な建物より強めの基礎にしています。
 いよいよ図面の基づいて木材を刻んでいきますが、ここでまたKさんからご要望がありました。

 『何本か古材を使ってほしい』

 大工さんの手間が増えることになるので、工務店に聞くと『いいですよ』とあっさり言ってくれたので、奈良の家でお世話になった美山町の木村棟梁に古材を貰いに行きました。Kさんのご家族、工務店、私とでかやぶきの里、美山に出掛けました。


→美山町の萱葺き民家
 工務店の工場に運び込まれた古材達。Kさんは工場にも足を運んで、どこにどの材料を使うか三者で相談しながら選びました。 埃を落とす作業も手伝ってくれました。
 J上棟・中間検査
2004.11.16
 さぁ 長く設計稼業をしていても上棟はわくわくします。基礎と土台しかないところから、1日か2日間で家の形があっという間にできあがります。Kさん希望の古材も何本か組み込まれています。
 棟札には上棟年月日、施主名、施工者名、設計者名が記されています。出来上がった家の小屋裏などに保管されます。

 上棟式 10年20年前は上棟式は派手にやっていましたが今の大工さんは殆ど車で現場に来ていますので、ビールかジュースで乾杯をして簡単に済ませることが多くなりました。


 中間検査
  ここでは一般検査機関と住宅性能保証と二つの検査を受けました。これも簡単に合格しました。 一見してこの家が強いのは検査をする人にはわかるようです。それは何故か?

 例・柱の大きさ
    平均的な家  管柱 10.5センチ角  通し柱 12センチ角
    この家     管柱 12センチ角 通し柱13.5センチ角 大黒柱18センチ角

   柱の断面積を比べてみると約1.3倍です。
   しかもこの家の柱は全てヒノキを使っています。最近良く使われる杉と比べると圧縮強度で1.25倍の強さです。
   単純計算すると 1.3×1.25=1.625

  となり、平均的な家よりも柱一本の強さが1.6倍強です。
  現場を見慣れている人達にはこの家がとても強いことが体感的に判断できるようです。 
 K内装工事
荒壁(厳密には内装工事とは言えませんが)
 Kさんが外壁を杉板張りにしたいと希望された事もあり、私の好きな昔ながらの荒壁にしました。外は荒壁の上に焼き杉の板張り、内装は中塗りの上に漆喰塗りとしました。



→竹小舞。荒壁の下地です。
 
 内装工事の期間もKさん夫婦はとても熱心で、毎週土曜日にご家族四人でおみえになります。工務店の代表者、大工さん、設計者も土曜日には集合します。Kさんご夫妻もたくさん意見を出されて、実現しました。

     ・洗面台は工務店の材料置き場で見つけて、お願いして使った杉板で厚さ6センチのもの
      ・堀コタツの追加
      ・玄関戸は私が大阪の住吉の蔵(80年前)の戸を譲り受けてきました
      ・玄関の土間は土のタタキという 昔の農家の土間を再現しました。左官屋さんの指導の元、ご家族皆で一日作業です。
      ・キッチンの食器棚作り (大工さん+Kさんご夫婦)
      ・二階のトイレの壁に貝殻を埋めました (左官屋さん+奥さん)


 →住吉の蔵が解体された時にとっておいた玄関戸。
棟梁。たくさん無理を聞いてもらいました。
 L完成検査
 ・検査機関の竣工検査は簡単に合格しました。
 ・設計事務所の検査、建築主の検査といっても毎週現場に来て、その都度打合せをして行きますので、特に修正箇所はありません。

 Kさんご夫妻の喜びようは尋常ではなく、その喜びを施工者、設計者に素直におおらかに示してくれました。家を造るものにとってこれに勝る喜びはありません。
 M建物の完成・引渡し
 とても喜んで貰えたので、引渡しをする前に完成見学会を催しました。近所の人達、Kさんの友達、会社の同僚、たくさん来て頂きました。


→工務店の代表者、棟梁、Kさんも和気藹々。
 N引越しの後
 何度かお邪魔しましたが、手直しは建具(木製建具)の調整くらいで、いつお伺いしてもいまだに喜んでくれていまして、帰りの道すがら私はいつも幸せな気持ちになります。

→竣工した建物はコチラ 『岬町の家』   →このページをご覧になった『岬町の家』の施主からお便りを頂きました      

最後に・・・

  ■全体の工事費
    最初にKさんはある住宅メーカーにプランと見積りを依頼しました。
    結果は  2900万(木造二階建て・延面積35坪・設計料、外構費含む)
    今回実際にかかった費用 2500万(木造二階建て・延面積35坪・設計料、外構費含む)

    さらに、住宅メーカーの仕上げよりも良質で価格の高いものを使用しています。
    例えば  住宅メーカー
             外壁 モルタルの上吹きつけ仕上 
             内壁 プラスターボードの上 クロス貼り
          実際の工事
             外壁 荒壁の上 焼き杉板
             内壁 荒壁・中塗り・漆喰塗り仕上げ

 そして何よりもこれから育っていく子供たちのために自然の材料を使っています。
 岬町の家の新築工事は、Kさん家族にとっても、施工者、設計者(Kさんに喜んでもらい、とても感謝してもらった)にとっても素晴らしい成果でした。 



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