子供が結婚し同居するため、今住んでいる家を増築したい。台所や浴室などの老朽化や使い勝手が悪いため、新たにその部分を増改築したい。
このような場合には注意が必要です。
建物の耐震性や住環境を一定レベル以上に保つという目的で、増築部分だけでなく既存の建物部分にも建築基準法の規制が適用されます。
既存不適格建築物とは・・・
既存不適格建築物とは、建物を建築したときには建築基準法の基準に適合していたが、後の法改正によって改正後の基準に適合しなくなったものを言います。
昭和56年6月に政令が改正され、新耐震基準がスタートしました。これにより建物に求められる構造耐力の基準が大幅に強化されました。また、平成12年6月の改正では、耐力を高めるための検討方法や各部の構造がより明確化されました。
したがって、昭和56年6月より前に建てられた建物は現行法の構造規定に適合しておらず、既存不適格建築物になっていると言えます。(そもそも建てられた当時から違法建築だったり、増改築をした際に違法建築になってしまっている建物が相当あります。)
また、昭和56年6月以降に建てられた建物でも、建築確認申請や役所の完了検査を受けておらず、確認済証や検査済証が発行されていないものについては、既存不適格建築物と同様の扱いになると思います。
どうすれば増築できるのか
原則、既存不適格建築物に増築はできないのですが、法律により緩和措置の条件が定められています。
・建物をつながない場合
増築部分を完全に独立した建物として建てます。
この場合、相互の行き来はいったん外部に出なければならないので使用上不便ですが、既存建物については現行法(構造耐力や室内環境の規定)の適用対象にはなりません。
(ただし、建ぺい率や容積率の規定は既存部分についても対象になります。また、それぞれの建物の屋根の軒先が平面的に重なっている場合は、くっついているとみなされますので要注意です。)
・建物をつなぐ場合
(緩和措置の条件について、条文が難解で解説書を読んでもわからないところが多々あります。私なりの解釈で書いてありますのでご了承願います。)
Ⅰ.既存建物と増築部分を構造上一体とする場合
①既存部分も含めて建物全体を耐力壁を釣り合いよく配置するなどの規定に適合させる。
②構造計算によって安全を確かめる。
③既存部分の基礎を補強し、その他の部分については現行の仕様規定に適合させる。
いずれの場合も既存建物の詳細な図面が残っていれば、それに基づいてなんとか安全性の検討はできますが、図面がない場合は建物の構造を確認し、耐力壁(筋交いなど)を施工するために、いったん壁、床、天井などの仕上げを撤去し、ほとんど骨組みだけの状態にしなければならず、工期も工事費も嵩みますので、あまり現実的とはいえません。
Ⅱ.既存建物と増築部分を構造上分離する場合
筋交いによる既存部分の補強(実例)(構造上分離する・・・・・基礎、柱、梁などの構造躯体が既存と増築部分でそれぞれ独立した構造になっている状態。)
増築部分については現行の仕様規定に適合、または構造計算で安全を確かめます。
既存部分については以下の方法があります。
①~③はⅠの場合(建物を構造上一体とする場合)と同じ。
④耐震診断基準に適合させる。
全部合わせて7通りの方法があります。既存建物の状況にもよりますが、工事費のことを考えると、④の既存部分を耐震診断基準に適合させる=耐震改修をする方法がいちばん現実的ではないかと思います。
Ⅲ.増築部分の面積が小さい場合
増築部分の床面積が、既存部分の延べ面積の1/20以下かつ50㎡以下の場合は、増築部分が現行の仕様規定に適合していれば、既存部分の構造耐力規定の確認は必要ありません。
ただし、既存部分の構造耐力上の危険性が増大しない(現状維持)ことを示す必要はあります。
(たとえば一部の柱や耐震壁などを撤去した場合などは、この要件にあてはまらなくなります。構造体はあくまでも現状維持です。)
ご注意ください!
既存建物に増改築を考えている方は、以上のような法規制があることを理解した上でプランを検討して下さい。
窓の取替え(実例)このページでは構造耐力規定を中心に説明をしてきましたが、防災や室内環境についての規定はほとんど緩和されません。
既存建物の窓の位置や大きさが規定に合わないため、窓を着け替える工事が必要になることもあります。
床面積の規定などについても同様で、例えば敷地内にアルミカーポート(建築物扱いになります)を建てる場合などは建ぺい率オーバーになってしまうことが多々あります。
業者の中には、法的な知識の乏しい者が少なからずおりますので、打合せの後、設計図面ができても、確認申請の段階でそのプランでは建築不可になってしまったということにもなりかねません。
また、確認申請をせずに建物を建てたり、申請内容と違った建物を建てたりした場合は、設計、施工業者だけでなく、施主にも同様のペナルティーが科せられますので十分に注意して下さい。
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