【アクアの日常あるいは平穏な日々・バイオハザード】
今回は、ちょっと甘い銀河の危機のお話。
<レベル1・感染>
合同練習が終わり、仲良くお茶を飲む3人娘とアリシアさん。藍華が子猫を救った話を披露し、灯里はすでに涙目になっています。
藍華「・・・というわけで、親猫を探し出して迷子の子猫を届けたのよ」
アリシア「藍華ちゃん、見直したわ。感動のお話ね」
灯里「藍華ちゃん、すごくいい話です!藍華ちゃんの素敵な心をみんなが知れば、ネオ・ヴェネツィア中の猫が幸せに包まれますぅ」うるうる
藍華「はいはい灯里、話に甘い生クリームつけるの禁止」
アリス「・・・」
アリシア「あ、いけない。次のお客様の時間だわ。灯里ちゃん、夕食のお買い物お願いね。二人はゆっくりしていってね」
灯里「ふえーん。涙ふいたら行ってきます・・・」ぐすぐす
<レベル2・悪寒>
5分後。藍華は上機嫌ですが、アリスは少し不満そうです。
アリス「いいんですか、藍華先輩。確か親猫は、道で偶然会ったのでは?」
藍華「いいのいいの、アリシアさんが私に感心してくれれば。大筋は事実だし、多少の脚色は許されるってもんよ」
アリス「藍華先輩、でっかい甘いです」
藍華「何よ〜、私がアリシアさんに好かれるのが不満なわけ?」
アリス「違います、灯里先輩です。あの感動ぶりはただ事ではありません。しかも『みんな知れば幸せ』だとか、何だとか。今ごろ街で、藍華先輩の素敵ぶりを吹聴しているに違いありません」
藍華「そんな大げさな・・・買い物に行っただけでしょ?」
アリス「だ・か・ら、藍華先輩は甘いんです。灯里先輩が友人作りの天才だったこと、もうお忘れですか?」
藍華「・・・確かに、灯里ならやりかねん。少し寒気がしてきた」
アリス「追いましょう。それが賢明な判断です」
藍華とアリスは、灯里の姿を追って街に出かけていきました・・・
<レベル3・増殖>
アリス「灯里先輩は、どちらへ?」
藍華「アリシアさんの話だと、郊外の市場ね。船着場に行ってみよう」
市民A「おや、そこの人。姫屋の藍華ちゃんじゃないかね?」
藍華「はい、そうですが・・・どちらさまで?」
市民A「さっき聞いたんだが、素敵な心を持った案内人だそうじゃないか」
藍華「・・・は?」
市民A「弱った子猫の命を3匹も救い、親猫探しまで奔走した姫屋の藍華ちゃん。現代に生きるヘレンケラー、心優しいウンディ−ネだって」
市民B「ああ、あの水先案内人の話ね。その少女の愛はネオアドリア海よりも深く、火星の空よりも広い、だっけか。いま街中の噂だよ」
藍華「ぎゃぴーーーっ!」
アリス「私たち用がありますので。手遅れになる前に、船着場へ行きましょう!」
<レベル4・拡大>
藍華「まったく灯里の奴!話に大甘の生クリームを塗るにもほどがあるわ」
アリス「灯里先輩の影響力はでっかい想像以上です。水先案内人より車のセールスの方が、よっぽど才能があるのでは?」
藍華「後輩ちゃん、それすっげー失礼。・・・船着場に着いたわ。何が何でも船に乗る前に、灯里を捕まえなきゃ」
市民C「あ。慈愛と友愛の素敵少女・藍華ちゃんだ」
市民D「本当だ。天使の心を持つ慈愛と友愛の素敵少女・藍華ちゃんだ」
藍華「ぎゃーーす!」
アリス「すみません、みなさん。ピンクの髪でもみ上げが長い水先案内人を知りませんか?」
市民E「1つ前の船で渡って行ったよ、穢れのない天使の心を持つ慈愛と友愛の素敵少女・藍華ちゃん」
藍華「禁止禁止禁止禁止ーーーー!」
市民F「それよりあの感動話をまた聞かせてくれないかね、穢れのない天使の心を持つ慈愛と友愛にあふれたどこまでもピュアな笑顔の愛くるしい素敵少女戦士・藍華ちゃん」
藍華「ききききき・・・きき・・きーーーっ!」
アリス「藍華先輩、気を確かに!すみません、先を急ぎますので!あっ、その船、乗せてください!」
<レベル5・延焼>
藍華「まずい・・・灯里の素敵ウイルスがここまで大甘で凶悪とは」
アリス「前言撤回です。車のセールスより、ネズミ講か霊感商法のツボ売ったらすごいんじゃないかという気がしてきました」
藍華「絶対に止めるのよ。これ以上素敵扱いされたら、私この街に住めなくなるわ」
アリス「でっかい手遅れという気もしますが・・・最善を尽くしましょう」
船長「おや、そこにいるのは素敵少女・藍華ちゃんじゃないかね?」
藍華「な・・・なんでしょうか?」
船長「そして隣の君は、素敵少女・藍華ちゃんの心の親友でキュートな笑顔のアリスちゃんだね?」
アリス「は・・・はあ?」
船員「そうですよ、船長。オレは藍華ちゃんの話も感動しましたが、素敵少女戦士・藍華ちゃんを陰でそっと支える心の親友でキュートな笑顔と摩訶不思議なネオエーゲ海色の瞳がまぶしいゴンドラ愛一筋に生きる無垢な奇跡の天才ウンディーネ素敵んぐ美少女戦士・アリスちゃんの話も、猛烈に感動しました!」
アリス「あ・・・あの脳内生クリーム素敵変態っ!何を吹聴しとるんじゃあああ!」
藍華「落ち着いて、後輩ちゃん!で、その話をした生クリーム、じゃなかった水先案内人は今どこに?」
船長「次の船着場で降りて、市場に行くって言ってたな。あ、サインくれないかな、1点の穢れもない子猫のような天使の・・・」
藍華「降ります!すぐ降りますから、後にしてください!」
<レベル6・猛威>
藍華「市場までが勝負よ!あそこで素敵ウイルスをばらまかれたら、半日でネオ・ヴェネツィア中の市民が生クリームゾンビになるわ」
アリス「前言撤回です。もはや霊感商法のレベルではありません。旧第三帝国の宣伝相が天職というべきです!」
藍華「あれ?あの人だかり、何かしら」
アリス「・・・みんな、こっちを見ています。でっかい嫌な予感がします」
記者A「あ、素敵藍華ちゃんと心の親友アリスちゃんだ!」
記者B「月刊ウンディーネです。臨時増刊号でインタビューを・・・」
記者C「テレビアクアです。あす午後2時の特番で生出演枠が・・・」
市民G「素敵だあ〜。藍華ちゃ〜ん」
市民H「手を握れ〜。藍華ちゃ〜ん」
藍華「だああああ!取材は姫屋を通してください!道を開けて〜!」
晃「あれ、藍華。どうしたんだ?息せき切って走って」
藍華「あ、晃さん!灯里を見ませんでしたか?」
晃「ついさっき会った。藍華とアリスの話をしていたぞ」
アリス「何を吹き込まれても信じないでください。危険です!」
晃「いや・・・いい話じゃないか。噂なら、3日もすれば収まるさ」
アリス「晃先輩、でっかい甘いです。素敵ウイルスは光速を超えます。3日も経ったら太陽系はおろか、銀河系中の精神が生クリームに埋もれてゲシュタルト崩壊するんです!」
晃「生クリームで・・・銀河が・・・ゲシュタルト崩壊」(絶句)
藍華「あっ、灯里いた!市場の手前、公園のベンチ!」
アリス「急ぎましょう、藍華先輩!」
晃「いや待て、そんな・・・あーあ、行っちまった」
<レベル7・決壊>
藍華「灯里ーーーっ!ぜいぜいぜい・・・」
灯里「あ、藍華ちゃんにアリスちゃん。どうしたの?」
アリス「ぜいぜい・・・灯里先輩、さっきの猫話なんですが・・・」
灯里「あー、あの話!私感動しちゃって、あっちこっちで話しちゃったよ。みんな感動にむせび泣いていたよ。よかったね、藍華ちゃん」
藍華「ごめん、灯里!親猫を探したって話、あの部分ウソなの。後生だから、もう誰にも話さないで。お願い!」
灯里「そうなんだ・・・でも子猫を救ったのは事実だし、いい話じゃないかな」
アリス「よくありません!・・・いえ、灯里先輩も悪気はないんですよね。もう十分です。この辺で止めてください」
灯里「うんわかった。そうするよ」
藍華「間に合ったー。生クリーム銀河の危機は避けられたようね」
灯里「なんの話?あ、さっき投稿したのを最後にするね」
藍華・アリス「・・・え?」
街頭ラジオ「地球火星高速通信です。今さっき届いた、大感動のメールを紹介しよう!ネオ・ヴェネツィアのピュアな素敵少女戦士藍華ちゃんと、その心の親友でゴンドラ愛一筋に生きる美少女戦士アリスちゃんの、甘〜いハートフルストーリーでトゥギャザーしようぜ!」
藍華・アリス「間に合ってねえええええええっ!!!」
灯里、なぜルー大柴51世の番組に投稿?
<レベル0・終息>
3日後。晃さんの予想通り、藍華とアリスの話はぱったりと出なくなり、2人に会っても気づく人はいなくなりました・・・
アリス「すごいです、晃先輩。どうして予想できたんですか」
晃「私も最初は心動いたけどさ、よく考えれば他愛のない話じゃん」
藍華「じゃあ、何であんなに噂になったんです?」
晃「それは灯里ちゃんの人柄じゃないかなあ。純粋な灯里ちゃんが熱心に話すのを聞いて、周りがその気になっちゃったわけよ。多分、話に生クリームをつけたのは、灯里ちゃんじゃなくて、感動した人たちじゃないかな。ほら、いい話って、人に感動を伝えたくて、つい大げさに話すじゃない」
藍華「それってひどいです。いくら悪意がないからって・・・」
晃「でも、藍華がアリシアに気に入ってもらおうとしたのと同じじゃない?」
藍華「確かに。悪かったのは灯里じゃなくて、私なんですね・・・」しょぼん
晃「藍華は悪くないさ。一種の乙女心だね。私だって、人にわかって欲しくて、つい受けのいい話をすることもある。ま、私にも甘い乙女の心が残ってるってことかね」
<レベル8・第2波>
灯里「晃さん・・・今の話、私、大感動です」うるうる
晃「・・・げ?いつから聞いてたの?」
灯里「さっきです。クールで厳しい晃さんが、実は甘いオトメな心の持ち主だなんて。みんなに知って欲しい話です!」ぴゅ〜〜〜〜〜〜〜
晃「あ!こら待て、灯里ちゃん!」
藍華「まあまあ、晃さん。5分待ちましょうよ。ね?」
アリス「そうですよ。私たちも5分後スタートでしたから」
晃「こら藍華っ、アリス!羽交い絞めにするな!離せっ!」
市民I「あ、姫屋の晃さんだ!クールで厳しく見えて実はオトメでおセンチな甘〜い純情妖精さん、なんですってね!」
晃「おいっ、まだ1分経ってないぞ!どういうことだ、説明しろ!」
アリス「灯里先輩の怖さを知ってください、先輩」
記者D「月刊ウンディーネです。3大妖精の晃さんが乙女ぶりっ子にイメチェンって話、本当ですか?来月の臨時増刊号で特集を・・・」
晃「もういい!あの桃色生クリーム妄想悪魔を捕まえて、即刻ネオ・アドリア海にたたきこめ!離せ藍華、すわーーーーっ!!」
幸か不幸か晃さんは有名人だったので、宇宙で噂が終息するのに2か月かかりました。銀河の歴史がまた1ページ。
(2007年11月)
●ぷに絵
![]() |
ゴンドラ通りまー・・・あれ? |