【アクアの日常あるいは平穏な日々・彩色パリーナ】
ARIAカンパニーの新しいパリーナの製作を依頼された灯里ちゃん。きょうはいよいよ、お披露目の日です・・・
アリシア「あらあら、まあ・・・完成したのね」
灯里「えへへー、どうですか?」ニコニコ
アリシア「うん、素晴らしい出来だわ・・・」ニコニコ
<アリシア・フローレンスの独白>
言えない。灯里ちゃんの純真で無邪気な笑顔を見ていると、私にはとても、言えないの。
これを言うくらいなら「あんたの腕前は、とっくにプリマだよーん」って言っちゃうほうが、100倍楽だと思うわ。
「灯里ちゃんが感じるままに、自由にARIAカンパニーを表現すればいいのよ」・・・
ええ、そうよ。私はそう言ったわ。
でも、私が灯里ちゃんに頼んだのは、彩色パリーナ。パリーナを作って欲しかったのよ。
ううん、間違えるはずはないわ。私は確かに、パリーナの前でお願いしたんだから。
でも・・・これは・・・これは・・・
これ、なんなのーーーーっ??????
<アテナ・グローリィの独白>
ふう。やっとお仕事が終わったわ。きょうの自己採点は、90点。声もよく通ったし、お客様の応対も完璧だったし、お皿を割るのも24枚で済んだしね。
それにしても、きょう水路で会った灯里ちゃん、ずいぶん興奮していたわ。アリシアちゃんからすごい仕事を任されたって、はしゃいでいたの。初々しくて、シングルの頃の私を思い出しちゃった。でも興奮しすぎて、頼まれたものの名前を忘れちゃうなんて、とっても私らしい…じゃなかった、灯里ちゃんらしいわ。くすっ。
でも不思議ね…アリシアちゃん、何で急にあんなものを作る気になったのかしら?
灯里ちゃんの説明だと、運河にあって、目印になって、動植物の恰好の棲み家になっているもの。
それって、間違いなく、漁礁よね。
漁礁と言えば、テトラポッドよね。あとタコの入るツボとか、カニの入るカゴとか。
目立つように旗を立てて、海中にカキやムール貝を育てる網なんかぶらさげると、利益率も上がるわよ。
うんうん、私のアドバイスは完璧だった。
灯里ちゃん、最初は首をかしげていたけど、熱心にメモをとってくれて、最後は「はひー、あれの下にこんな巧妙な仕掛けがあったなんて、私全然知りませんでしたー」って、感心していた。灯里ちゃんには、ネオ・ヴェネツィアの魅力、もっともっと知ってほしいな。
きょうは、とっても人の役に立った気がするの。だからかしら。夜気がとっても、清々しく感じる。
明日、見に行ってみよっと。じゃあ、おやすみなさい。
<アリス・キャロルの独白>
きょうはオレンジぷらねっとの買出しの仕事を頼まれて、合同練習に参加できませんでした。でも、市場で灯里先輩に偶然、会いました。ちょっと、うれしかったな。灯里先輩、アリシアさんにすごい仕事を任されたって、はしゃいでました。そういう時の灯里先輩って、でっかい子供に見えるんですよ、ふふ。
だけど、仕事の内容は、でっかい不審でした。
ARIAカンパニーの正面に、目印になる目立つ柱を立てるなんて。
「それってトーテムポールみたいなものですか?」って聞いたら、灯里先輩は、あごに指を当てて考えてから、「うん、似たようなものだよ!」とはっきり言ってました。
トーテムポールって、あのマンホームの新大陸で、先住民とかが作った奴ですよね。西部開拓村とかで、見たことあります。でも灯里先輩は、よく知らないみたいでした。
だから、私が教えてあげました。でっかい木の棒を立てるとか。ペンキで、派手な色を塗るとか。うんうん、絶対それだよ!って灯里先輩は、うなずきながらメモしていました。
高さは3〜5メートルくらいだとか。ちょっと怖いグロテスクな顔を描くとか。あと翼の装飾をつけるとか。そうしたら、灯里先輩は首をかしげながら「あれって、そういうものなの?」と言うので、「でっかいそういうもんです!特に顔は必須アイテムです!」と断定してあげました。灯里先輩は「ふーん。ネオ・ヴェネツィアには、まだまだ素敵な秘密があるんだね」と喜んでくれて、手を振って別れました。
先輩、いいトーテムポールができたら、私に一番に見せてくださいね。
あれ?
トーテムポールって、マンホームのものじゃなかったっけ。
どうして灯里先輩は、「ネオ・ヴェネツィアの秘密」なんて言ったのでしょう。
それに、ARIAカンパニーの前にトーテムポール??
なんだか、でっかい嫌な予感がします・・・
<藍華・S・グランチェスタの独白>
きょうの合同練習、灯里はずっと、心ここにあらずって感じだったの。「注意力散漫禁止!」って注意してあげたら、アリシアさんから何やら、大事な仕事を任されたんだって。私が「困ったことがあったら、遠慮なく相談してよねー」って言ったら、「怖い顔を描きたいんだけど、思い浮かばないの」だってさ。
アリシアさんがなんで、そんな絵を描く仕事を灯里に託したのか、よくわからない。でもアリシアさんですもの、きっと深い意味があるのよ。しかも「感じるままに、自由に表現すればいい」って言われたそうよ。さすがアリシアさん、芸術にも理解があるのね!カーニヴァルの新しい被り物の準備とか、何か楽しいことを考えているのに違いないのよ。うんうん。
それでも灯里、自由って言われたせいで、かえって迷っていた。だから私、灯里に助言してあげたの。
「怖い顔なんて、晃さんの顔をそのまま描けばいいじゃない」って!あははははは!
そしたら灯里、なんだかすごく納得していたわ(おいおい)。
2人でスケッチブックに似顔絵描いて、一緒に大笑い。まるで画用紙が「すわーっ!」て叫んでるみたいだったな、ぷぷぷ。灯里の絵なんか、晃さんの眼が三角で、舌出して、おまけに翼まで生えてて。でも特徴はしっかりつかんでるから、もう大ウケだった!でも、なぜかグロテスクな方がいいらしいのよ。よくわかんないよね、灯里って。
灯里、別れ際に「とっても参考になったよ、藍華ちゃん」って喜んでくれたな。あれでいいなら、お安い御用よ。あと、これからペンキで描かなきゃ、とか言っていたな。
・・・ペンキ?
なんでペンキなんだろ。
あした、ARIAカンパニーに行ってみよう。それでヘンなことだったら、やめるように忠告しないと。間に合えばいいんだけど・・・。
<晃・E・フェラーリの独白>
きょうの灯里ちゃん、なんか元気なかったな。
いや、サン・マルコ広場でばったり会ったんだけどさ。スケッチブックを見つめながら、珍しくため息をついていた。話を聞いてみたら、どうやらアリシアから何かの工作を頼まれたらしい。「上のデザインは決まったんだけど、下が決まらないんです。私って色彩のセンスがないし・・・」って、落ち込んでいた。
何を作るのか聞いてみたら、「名前は忘れましたが、ARIAカンパニーの前にあるあれです」とか言って、絵を描いてくれた。細長い円柱形で、青と白の縞模様がナナメに何本も入っていて。一発で、ピンと来たね。そりゃ、理髪店の前で回っているあれだろー!!あー、私も名前は知らないな。
で、色はやっぱり赤を入れたほうがいいって、アドバイスしたよ。あと、くるくる回転させて、中から光を出さなきゃって。そうしたら灯里ちゃん、なぜかすごく驚いていた。「回して光らせなきゃ、ダメですか?」って。そりゃダメに決まってるじゃん!光らなくて止まってたら、それは本日休業っていう意味なんだぜ。
灯里ちゃん、最初は首ひねってたけど、「はへー、ネオ・ヴェネツィアって、そういうものなんですか。また1つ新しい素敵を発見した気分です」って、最後は元気を出してくれた。私も冗談交じりに「完成したら、派手に光らせて回してくれよっ!」って、景気づけしておいたよ。
・・・待てよ。アリシアがなんで、理髪店のあれを、灯里ちゃんに作らせるんだ?それにARIAカンパニーの前に、理髪店なんてあったっけ?
明日ちょっと寄って、様子を見てみるか・・・。
<ウッディーの独白>
きょうは久しぶりに、灯里ちゃんに会ったのだ。
灯里ちゃんが、スキップしながらサン・マルコ広場から帰るところを、エアバイクで見つけたのだ。それで「うおおおい、灯里ちゃあああん!」って空から声を掛けたら、「わあああい、ウッディーさあああん!」って、倍くらい大きな声で返事をしてくれたのだ。そしたら、路地のアパートの窓から「うるせええっ!」って怒鳴り声と、植木鉢と生ゴミとスリッパとテレビが雨のように降ってきて、二人で懸命にかわしながら、路地を逃げたのだ。
で、空き地で話を聞いたのだ。そしたら灯里ちゃんは、「アリシアさんに頼まれたあれの、設計図ができたんです!」って、笑顔で画用紙を見せてくれたのだ。細長くて、極彩色で、羽があって、顔まで描いてあって。すごい力のこもった、ペットボトルロケットの設計図だったのだ!
それで私は感心して、「どうやって飛ばすんだい、灯里ちゃん?」って聞いてみたのだ。そしたら灯里ちゃん、なぜか「えーっ、飛ばすんですか??さすがにシルフの人の言うことは違いますねー」って、びっくりしていたのだ。ペットボトルロケットは、シルフでなくても、飛ばすものなのだ。でも、灯里ちゃんは、そんなお茶目なところが、いいところなのだ!
でも空を飛ばす指導なら、お手の物なのだ。中段に水圧をかけて、上段を飛ばす方法を教えてあげたのだ!灯里ちゃんはすごく感心して、熱心にメモをとってくれたのだ。「結構重いから、どのくらいの水圧がいるのかな・・・」って、頭を悩ませていた。どうやら灯里ちゃんの作るペットボトルロケットは、浮島まで届くくらいのすごい奴らしいのだ!
しかも海に置くらしいので、私は海水を噴出するロケットポンプの入手先を教えてあげたのだ。そしたら灯里ちゃん、すごく喜んでくれて、「明日、見にきてくださいねー」って、手を振ってくれた。なんだか明日が、とっても楽しみなのだ・・・。
<舞台は再び、ARIAカンパニー>
アリシア「・・・」
晃「おーい、アリシア。ちょっと様子を見に来たぞ」
アリシア「あ、晃ちゃん!それにみんなも・・・ああっ、こっちに来ないで!」
アテナ「なに落ち込んでるの、アリシアちゃん。それより灯里ちゃんが作っている、素敵な漁礁を見せてよ」
アリス「アテナ先輩、でっかい大ボケです。灯里先輩が作っているのは、トーテムポールですよ」
藍華「トーテムポール?カーニヴァルの被り物じゃないの?」
晃「なんで灯里ちゃんが被り物を作るんだよ。灯里ちゃんが作ってるのは、理髪店で回転するあれだよ」
ウッディー「そんなことより、早くペットボトルロケットの発射を見せて欲しいのだー」
アリシア「ああ、それで・・・」
全員「・・・ひょっとして、違うの?」
灯里「あ、みんな来てくれたんだ!みんなのアドバイスのお陰で、とっても素敵なものができたよ!」
アリス「あの、灯里先輩・・・お取り込み中申し訳ございませんが、先輩はいったい、何を作ったのでしょうか」
灯里「ああ、きのうは名前思い出せなくてごめんね。はい、これがARIAカンパニーの、新しい彩色パリーナでーす」
全員「彩色・・・パリーナあああああっ???」
アテナ「高さ5メートルって・・・パリーナにしては、ちょっと大きすぎるんじゃない?」
晃「途中いたるところにタコが棲みついているぞ・・・そんで一番上に大漁旗が」
アリス「その旗の下にある、凶悪で禍々しくて羽の生えた、晃先輩とおぼしきグロテスクな首は、なんなのでしょう?」
藍華「しかも中がピカピカ光って、くるくる回っている・・・すっげえ不気味」
灯里「みんなが教えてくれたネオ・ヴェネツィアの素敵な魅力が、いっぱい詰まってるんだよ!」
アリシア「これが、ネオ・ヴェネツィアの魅力・・・」
灯里「そして仕上げは、この晃さんの光る首。飛ぶんですよー。3、2、1、ファイアー!」
ぱしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
ウッディー「晃さんの首行灯が、あかつきんのいる浮島に、消えていったのだ・・・」
アテナ「まるで・・・地対空ミサイルね」
灯里「なお晃さんの首は、下から自動で再装填されまーす」
藍華「首、まだあるのか?!」
ういいいいいいいいん。
くるくるくるくるくるくる。
ぱしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
灯里「この装置はプロトタイプなので、まだ8連発までなんですよー」えへへー
アリス「私 マンホームの科学技術力をナメていたのかもしれません」
アリシア「・・・私は、何も見ていないわ。何も見ていないのよ・・・」orz
・・・灯里の彩色パリーナを応用した次世代型地対空ミサイル「晃」(8連装)が、パトリオットに代わってネオ・ヴェネツィア防衛軍に正式に実装されたのは、その翌年のことである。
(2009年7月)
●ぷに絵
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次世代型地対空ミサイル「晃」。 |
●おまけ小話1
灯里「この彩色パリーナはこれからもずっと ARIAカンパニーと共にここに在り続けるんですね」
全員(今晩中に撤去だ、ボケ!)
灯里「ということはですよ・・・ネオ・ヴェネツィアで地対空ミサイルを見るたびに、今日のみなさんに逢えるってことですよね!」
藍華「もう何言ってんのか、わかんねーよ」
●おまけ小話2
アイ「この不思議な彩色パリーナの残骸はなんですか?」
アリシア「ああ、それ・・・私の見知っているこの彩色パリーナは、私の預かり知らぬ水先案内人が遺したもの」う・ふ・ふ
アイ「アリシアさん。なんか消したい記憶でもあります?」