★★階級等級★★
☆ 海軍の保守主義
海軍は非常に保守的です。その最も顕著に現れているのが、階級等級制度です。私掠船時代から余り変わっていないので、現代(1930年現在)の他国の海軍に慣れ親しんできた人は、レミニア海軍の奇異な階級名称に戸惑います。
これでも多少は名称改正の努力がなされていますが、それ以上変えるつもりは海軍本部にはないようです。
人事制度も、いちおう陸軍並みに整えられていますが、そこには艦船の近代化に伴って否応なく変化を蒙ったと云った様子がありありと感ぜられ、変える必要の無い部分は、依然として旧態のまま温存されています。
諸外国の有力海軍、例えば大英帝國、日本國、亜米利加合衆國に比べ、艦船装備に於いて凌駕する部分がありますが、その保守主義に於いては既に完全に凌駕しており列国の追随を許しません。
海軍は志願制です。以前(19世紀半ばまで)は戰時強制徴募がありましたが、今はさすがに廃止されています。
子供の時に海軍の年少兵に志願し、若いうちに技倆を身に付け、成人する頃には立派な船乗になります。主に海岸地方の貧乏な家族の次三男以下が志願してきます。學校に行くお金がなくとも、海軍で船員資格がとれるし、十二年辛抱すればそこそこ暮していけるだけの恩給も貰えます。除隊すればまた民間船の船乗として引く手あまたで、再就職口にも困りません。特に下士や准士官になっていれば、優遇されます。商船長も夢ではありません。
普通の若者も徴兵検査の時に、海軍を志願できます。身体検査の合格基準は陸軍より緩やかで、体格の劣るものでも、目と耳さえ良ければ採用されます。そのため海軍兵は全般的に小柄です。
《五等信號兵となる資格》
小學校尋常科を卒業(11歳)すると海軍年少兵に志願できます。14歳までが年齢上限なので、時々大きな子も混じっています。(17歳になった者は大人扱いとなり、年少兵ではなく普通の海軍志願兵となります。以下の説明にある該当年齢は11歳で採用された最短モデルを示しており、実際の年少兵にはそれに3年を加えた年齢の者がいます)
身體檢査で、目がよく見え、耳がよく聴こえなければなりません。更に航空科コースは操縦士養成が目的なので、厳重な適性檢査があります。救貧院や孤児院の収容者は優先的に採用されます。 → top
鎮守府水兵團年少部全分隊ノ勢揃
《水兵團》land boy 2年間(11〜12歳)
採用されると五等信號兵五級若夫となり、先ず軍港にある鎮守府水兵團に入ります。ここでは年少兵ばかりを集めた分隊(division:陸軍の中隊に相当)の教班(mess group:陸軍の内務班に相当、食班・給養班とも云う)の一員となり、優秀な砲術兵曹(砲術科は最も軍紀厳正とされている)の教班長から2年間みっちりと海軍軍人の基本を教わり、体力を涵養します。教練では決して無理をさせず専ら滋養豊富な食事と休養を十分に与え、身體の健全な成長と海軍軍人らしい躾を目的としています。
また文官教員から普通學科も教わります。小學校高等科相当ですが、内容と水準は高く、ことに航海・兵器の実務に必要不可欠な理数科に重点を置いたカリキュラムを組んであります。年少兵の中から将来の優秀な下士・准士官・特務士官を育てようと云う目的があるので、難しい技術もすぐに理解できるよう基礎学力を身につけさせようとするからです。
2年目には五等信號兵四級若夫となり、給料も少しだけ増えます。
入團最初の躾科目
1 軍人の姿勢及衣服の着装法
2 釣床及衣嚢の取扱法
3 武官の階級及敬禮式の要領
4 水兵團規則の要領
其の後の躾科目
1 軍人の本分即ち勅諭の大旨
2 善行章條例・海軍刑法・懲罰令の大旨
3 海軍の官等及敬禮式
4 練習艦規則の要領
水兵團及練習艦での學科
運用術
第1期(艦船各部の名稱、諸帆の名稱、動静索の名稱、結紮諸法)
第2期(纏塡・纏包・巻被、滑車の帯索及其綁着法、動索通方及諸帆各部の名稱、マット及センニット編方)
第3期(錨及錨鎖の名稱、静索取付及其締方、諸帆畳括・取付・取離方・アパルヤートの上下方)
第4期(諸帆解括・絞掛・増減・伸縮及交換方、アッパルマストの上下方、各種信號法の大略)
各期通(端舟各部の名稱・漕方、帆走、測鉛線・測程線の造法、羅針の讀法・其用方、裁縫、諸旗章、信號(普通・姿勢・發光・電氣))
砲術
各期通(砲操法、銃隊操式(各箇教練から中隊教練まで)、拳銃操法、舶槍操方、舶刀操法)
普通學
各期通
讀書(内外地誌大意、國史大意、外國史大意、諸條例)
作文(習字、正書法、往復書翰文、軍用書式)
外國語(諸語綴字、諸語文法略、外國軍用語及対照)
算術(四則算補習、分數、小數、諸等、比例、開平開立、代數學大意、幾何學大意)
理學(物理學大意、星學大意、氣象學大意、化學大意)
其の他
各期通(柔軟體操、水泳)
陸戰小銃練習(右端ノ黒水兵服ハ教班長)
陸戰小銃練習2
陸戰機關銃練習
居住區(教班の檢査中)
支給の被服
食堂(1日3度ノ給養ハ滋養豊富、堅麺麭ト茶ハ好キナ丈摂レル。此ノ他ニ加給食トシテ菓子・檸檬果汁ナドガ10時16時19時ニ配給サレル)




端艇練習
《練習艦配乗》deck boy 2年間(13〜14歳)
水兵團を卒業すると、五等信號兵三級若夫として、軍港に繋留中の練習艦に配属されます。既に1年先輩の二級若夫も乗組んでおり、食班は航海科の信號兵曹・信號兵・先輩の二級若夫と一緒くたの混成です。ここで船乗りの慣習や生活の知恵、迷信など善悪取混ぜて覚え込み、潮氣を存分に吸い込みます。
訓練の方は乗組士官下士が教官・教員を兼ねており、若夫は教班に分れて専門技術の初歩を教わります。先ず甲板掃除や縄・繋留具の取扱から始って、マストの昇り方・見張り、端舟(ボート)のおろし方・漕ぎ方、手旗・發光信號・旗旒信號・信號拳銃の練習、兵器の操作、罐焚のシャベルの使い方や器械の油差し、應急訓練という具合です。艦内配置は満遍なく経験させられます。また普通學科も實業學校程度の内容に進み、乗組文官の艦内教授に加え、應援の教授が出張してきたり、こちらから上陸して教室に通ったりして、怠り無く教養を積みます。
學科 艦首ノ模型ヲ使用シテ錨鎖ノ仕組ヲ説明
砲術練習場
砲術ノ座學
艦砲尾栓部ノ説明 砲員編成 戰闘配置
陸戰行軍練習(厳格ナル砲術兵曹デアル教班長ノ指揮下、全員重装備ニテ緊張)
洗濯(右ノ老人ハ下士待遇軍属ノ洗濯夫長)
索具練習(教員ハ一等兵曹)


舶刀練習
《練習航海》
艦内生活に慣れてくる頃から、練習艦は抜錨して出港、沿海を航行して新兵教育は本格的になり、だんだん沖合に出ていって、とうとう外洋航海に移ります。無人島沖に停泊して、端舟を漕いで上陸し、陸戦隊の練習もします。また賑やかな港に入り、分隊士と教班長の引率で楽しい市内見学をします。石炭や糧食の積み込み、船体補修など、つらい仕事も経験します。
乗組の文官が實業學校程度の授業を続け、三角法や天文、地理、外国語など船乗に必要な教養をしっかり身につけます。
航海中に先輩の二級若夫は他艦に配乗が決まって次々と轉勤していき、練習艦は年末に軍港に戻ってきて、新年を迎えます。全員が新しく五等信號兵二級若夫となり、後輩の三級若夫が乗艦してきます。後輩が艦内生活に慣れる頃に再び艦は出港し、2年目の練習航海に入ります。
島嶼ニ上陸シタ教班ノ登山遠足
《配属》efficient deck boy (14歳)
1年あまりも艦上で起居していると、すっかり船乗の暮らしに慣れてきます。すると練習艦は行き交う艦船に対し二級若夫を新兵として送り込んでいきます。優秀な者から五等信號兵一級若夫に昇給のうえ、端舟に乗せて、別の艦に「転勤」させます。練習艦が所属する鎮守府の主力艦(戰艦、巡洋戰艦、装甲巡洋艦)に目端の利く年少兵が次々と送り込まれていき、すこしトロい子供は補助艦船(海防艦、輕巡洋艦、驅逐艦、各種母艦)に配乗となり、さらに成績の悪い子は、とうとう練習艦に乗ったまま軍港に帰ってきて、そこの防備隊に所属する艦艇(砲艦、二等驅逐艦、水雷艇、砲艇、掃海艇、雑役船など)に行きます。落第すれすれの者は軍港に錨を降ろしたまま動かない豫備艦船勤務となります。艦上生活に向かない(落第)とされた者は陸上勤務となります。
また特殊な職種である航空科は、1年目の練習航海を了え軍港に帰ってきて二級若夫となった途端に陸上の航空隊練習部に轉科配属となり、五等航空兵一級若夫の練習生として本格的な搭乗訓練に入ります。
参考(飛行一萬時間に就き事故發生頻度:機體破損10.2回、發動機破損4.5回、殉職0.7人、負傷1.1人、10年前に比べ1/20に減)(搭乗者延人員一萬人に就き:殉職0.2人、負傷0.4人、10年前に比べ半減)
航空隊練習部配属ノ飛行機操縦術修業五等航空兵一級若夫

飛行機操縦術練習生の食班(航空兵は食事が上等)
《四等兵進級》volunteer 2nd class(15〜16歳)
年少兵は練習艦を卒業すると配置が決まり、本格的な海軍生活に入ります。年少兵の配属は昔ながらの船乗の世界である航海科が最も多く、次いで航空科(専ら空中勤務者で構成、地上勤務者は他科混成)の操縦・偵察・電信となります。頑丈な體格と體力を要する機關科・船匠科や兵科には配置されません。最下級なので雑役や見習仕事しかありませんが、忙しい日課に従って暮すうちに、體に力がついてくるし、気持も慣れてきて、だいぶん余裕が出来てきます。
そして新年を迎えると五等信號兵一級若夫から四等信號兵に進級します。後から新しい一級若夫も段々配属されてきて、仕事も多少は大人じみてきます。航海分隊には、見張・信號・電信・暗號・操舵・運用と、船乗の技能に必要な職種が揃っており、乗組文官(艦内教授)の授業も続くので、ここで暮すことは即ち民間の航海學校や水産學校の生徒と同程度の實力を獲得すると同じか、或いはそれ以上なのです。
某艦配属四等信號兵ノ勢揃(全員、右腕ニ信號手旗ノ職章ヲ着ケテイル)、中列中央ハ信號員長ノニ等信號兵曹(左腕ニV字ノ等級章3本)、其ノ左右ハ先任信號員ノ一等信號兵(同ジク等級章1本)
《三等兵進級》seaman recruit(17歳)
専門とする職種が定まり、技倆を深めていくと1年で三等信號兵に進級となります。進級試驗があって、普通學の知識が成績に加えられ、序列を決める點數に加算されます。
三等兵

《二等兵進級・普通科練習生》ordinary seaman(18歳)
さらに経験を積んで1年後に二等信號兵進級となり、志願して試驗に合格すれば航海學校の普通科練習生として派遣され専門教育を受けられます。晴れて卒業して帰ってくると「普通科徽章」を腕に付け、一等信號兵進級を待つばかりとなります。
《一等兵進級》able seaman(19歳)
普通科修了者は一等信號兵に進級し、掌○○兵と呼ばれ、陸軍で云えば伍長勤務上等兵に相当する練達の古参兵で、下士不在の部署では代理を務めます。小さなフネでは、各配置の主任として活躍します。若いのに、これだけの技倆を持つことができるのは、海軍の年少兵教育制度が如何に緻密に組み立てられているかの証左となります。殊に年少の頃から扱いなれているので、電信・探測・航空機操縦など特殊技術において神技を発揮する兵も多々あり、レミニア海軍の強さは、このあたりにあると云っても差支えありません。 → top
年少兵以外の志願兵としては、20歳の徴兵檢査までに陸軍の代りに海軍を志願する者があります。年少兵に採用されなかった者も、志願の四等兵となって海軍に入ることができます。そのため年齢がまちまちで、17歳から20歳くらいまでの若者が入り混じっています。船乗見習や漁師をしていた若者が多く、さらには徴兵檢査合格で陸軍に入れられそうになったけれど、海軍ならば、あまり歩かなくてよいから志願したと云ったものぐさ者も混じっています。海賊退治目当てで、沿岸や植民地の防備隊を希望する冒険者もいます。また世の中が不景気になると、ルンペンになる代りに海軍に入り、軍艦に乗って無料で海外旅行をしようと云う若者も出てきます。
しかし最も志願者を惹きつける理由は、海軍は拿捕した船舶と同価の奨金を我が乗組員に分配すると云う昔ながらの規程が生きているからだと云います。そこで通商破壊に從事する仮装巡洋艦や密輸船の拿捕を専門とする沿岸警備の巡視艦艇に人気が集ります。職業軍人としての立身出世を目指す年少兵組は戰艦など主力艦の艦隊勤務を希望し、一攫千金を夢見る一般水兵は不審船や敵国商船の拿捕専門の小艦艇勤務を希望します。これはレミニア海軍が海賊船・私掠特許状持ちの私設海軍の集合体として発足した当初の慣習がいまだに残っているからです。
志願兵は少年時代に世間を見てきただけあって、年少兵出身者より譯知りで融通の利く人間が多いとされています。再役や下士を志願する者が多く、年少兵出身者と並んで獨特の氣風を醸し出しています。海軍に見切りをつけるのも早くて、恩給の付く12年まで服役した後は、さっさと民間に再就職してしまいます。民間船の乗組員が一番多く、変わったところでは高みに登るのが得意なので消防夫、機關科は工場の機關手、船匠科は造船所の工手、航空隊は空港の整備手・發着手などがあります。
水兵團での最初の食事:「海軍の飯は旨いぞー」と上級兵が今日を限りの大サービス
水兵團ノ機關科志願兵(石炭マミレ)
水兵團ノ志願兵(午睡時間)
志願兵の受付 (コネのある志願者に鄭重な案内をする募兵係の下士)
海軍の兵員が不足すると、海軍豫備員である民間船員を召集します。実はレミニアの海員は、海員免許を取得すると同時に海軍豫備員として兵籍に編入されてしまいます。したがって乗船も同時に徴用されると、乗組員は自動的に臨時召集となり海軍軍人として行動することになってしまいます。客船・貨物船などの商船や漁船乗組員も皆な海軍豫備員です。免状取得の等級と乗船期間に従って豫備役下士卒の階級等級が与えられ、実績に応じて自動的に進級します。戰時には、勝手に職場を離れ転職することが許されません。陸(おか)にあがっている間も待機していなくてはなりません。その代りに戰時中は海軍本部から在郷の豫備員にも該当階級給料の半額を支給されます。
今は強制徴募は廃止されましたが、それでもなお海軍艦艇の艦長艇長は戰時に海上で民間船の乗組員を現地臨時召集することができます。対象となる民間船の運航に差支えのない範囲内で、海軍豫備員たる乗組員は艦長艇長の発行する臨時召集令状を受取り、艦艇の欠員を埋めるべく移乗します。艦艇には後に正規の補充員が転勤してきますが、それまでのあいだ豫備員で間に合わせます。 → top
それでも要員が不足すると、徴兵檢査合格者から選抜して海軍に徴集します。この場合は陸軍にいきたくても、本人の希望とは関係なく海軍となってしまいます。その中から海軍に再役志願して下士を目指す者も出てきます。
まだ要員が足りないと、海軍を除隊した在郷軍人を若い順に召集します。除隊後に豫備員となって海事に関係する人材が多いのですが、実際に應召してくるのは陸上勤務適の老兵が多く、陸上機關要員の他に、長期駐留の特別陸戰隊や建設部隊を編成する時の主体となります。
海兵隊は海軍というよりは、陸軍部隊です。海軍とは全く別の徴募・教育体系を持っていますが、志願制であることは変わりません。島嶼や沿岸部の町村では、先祖代々海兵隊員を稼業とする家もあります。定員は不足気味で、誰でも入れます。その代り嚮導聯隊での新兵教育は猛烈を極め、脱落者が続出します。定員を満たそうとして、募兵官が酒場を巡回して酔っ払いを勧誘したり、浮浪者を釣り上げてきたりします。
海兵聯隊は、乗艦勤務(艦船に乗組んで、艦内警備・艦上補助砲射撃・乗組員の陸戰教練・陸戦)、軍港勤務(鎮守府、要港部の陸上警備)、在外公館勤務(外国に駐在する大公使館・領事館の館内警備)、其の他(租界・租借地・占領地の警備)に分かれており、定期的に交代するので、いろいろな珍しい外國にただで旅行できます。戰時には強襲上陸部隊として島嶼・港湾の占領や沿岸軍事施設の奇襲破壊に活躍します。
海兵隊除隊者は厳しい訓練を経てきただけあって世間に信用があり、巡査や民兵、鐵道員・郵便局員・驛逓員などの再就職口が豊富にあります。 → top
術科練習所普通科を修了した一等兵は、時期がくると下士に任官し三等兵曹(leading seaman)となります。船乗としては最も油の乗った時期で、各配置のリーダーとして率先垂範して働きます。また食班や教班の長として下級者を指導します。二等兵曹(petty officer)までは兵と同じ水兵服に兵曹の等級を表す臂章をつけるので下士と分ります。しかし一等兵曹(chief petty officer)になると准士官と同じ制服となり、職務も准士官並となります。本物の准士官になるには術科練習所高等科練習生として技倆を磨く必要があります。
つわもの勢揃:二三等兵曹も水兵服(臂章二本線が三等兵曹、三本が二等兵曹)
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高等科修了で技倆の優れた一等兵曹は、上等兵曹(senior chief petty officer)に進級し士官待遇の准士官となります。優秀な人材は更に士官任用辞令を受けて兵曹長・特務中尉・特務大尉(master chief petty officer 3rd - 1st grade)と進級してゆき、なかには少佐(lieutenant commander)以上の将校になる人もあります。この間、各學校選修科特修科學生となり、専門技術に磨きを掛け、士官としての素養を身に着けます。 → top
《海軍生徒になる資格》
12歳以上になると兵學校に入学できます。現役艦長ないし提督の推薦状があって、高等小學校卒業程度の読み書き算盤ができて、面接試験・身體檢査に合格すれば先任下士である海軍生徒 land volunteer になります。と云う事は前もって出身階級が限られてしまい、推薦状を持たない者は入學がかないませんが、もともと危険の多い海軍士官は紳士階級の出来の悪い次三男坊の片付口とされているので、世間もあまり気にしません。ツテを頼って現役艦長や提督の從僕として採用され、兵學校生徒定員の空き次第、海軍生徒として籍を移します。從僕と云っても實際に乗艦するわけではなく、名簿上の就任に過ぎません。近眼になったり体力不足のため、兵學校以外の經理學校に行く者もあります。
庶民階級の出身者が兵學校に入ることもあります。年少兵のうち成績優秀者、あるいは抜群の功績のあった者(艦や艦長の危機を救ったなど)が艦長從僕に抜擢されるケースです。これは滅多になくて、前者は毎年度全鎮守府合計で數名、後者は1,000人に1人もあればよいほうです。
勇敢なる年少兵(彈藥運搬員として戰闘中に砲手全滅に遭遇、獨力で装填發砲し敵艦に致命的な損害を與えた功績により兵學校生徒に推薦され、優秀な成績を収め将校任官、後に艦長となる)
《兵學校》
兵學校では廃艦を利用した寄宿校舎で体力・学力の涵養に努め、海軍軍人としての躾を身に着けます。年に3回の募集があり、入校期ごとに、最下級生から「1號生徒」、1期修了を「2號生徒」と云うふうに呼んでいきます。標準修業期間である2年間で1號から6號まで計6期の生徒がいることになります。なかなか卒業できない生徒もいて、「10號生徒」や「13號生徒」など、2桁の號次を持つ落第生がいます。期毎に30名定員の分隊を編成し、ひとつの大部屋で起居します。自治制なので、分隊の世話係は先任生徒(6號生徒)が分隊伍長として勤めます。補佐役にやはり同じ6號上級生の伍長補2名がいます。伍長・伍長補は、ハンモックの上げ下ろしから、掃除、洗面、起居動作、礼儀作法、生活のあらゆる面を五月蝿く指導し、御飯は一緒の食卓(15人宛の食班2箇に、それぞれ伍長補が入り、伍長は6號生徒分隊に戻る)で食べます。これを大尉の分隊長が監督し、中少尉・准士官の分隊士が補佐します。不思議なことに6號生徒以外の上級生は、下級生の指導に関与しません。ただ見ているだけです。伍長を中心とした6號生徒は下級生のお尻を鞭でぶつ懲罰を頻繁に実行して、甘やかされた坊ちゃん連を鍛えあげます。しかし横暴に見える伍長連は実は成績最優秀な6號生徒が任命される職です。成績の順番に沿って1號分隊から6號分隊までの伍長が決まります。伍長の次に成績優秀な者が伍長補に同様に任命されてゆきます。7號以上の落第生は任命されません。7號以上は落第分隊に集められ、分隊の成績優秀者が伍長・伍長補を勤めます。
勉強の方は科目が細分されています。短期集中でひとつの科目は3ヶ月以内で完結し、毎週試驗を受け成績を積み重ねて單位を取ります。學科は授業に出席しなくともいつでも上級の試驗を受けられるので、自學自習してそれに次々と合格し所定の單位を取得しさえすれば、練習艦乗組の資格を得られます。しかし教練は集團訓練なので、そのために最低4ヶ月は在校しなければなりません。入校前に十分な豫備教育を受けた生徒は易々と單位を取得していき、1年未満で練習艦乗組となります。入校前に豫備教育を受けていない生徒は、入校後勤勉に勉強すれば2年で練習艦乗組となります。なかには2年以上かかる生徒もあり、4年間も在籍する猛者さえあります。中學校程度の語學と數學・理科に重点を置いた課程なので、そう難しいと云う訳ではなく、さすがに16歳くらいまでには全員が練習艦に乗れます。
兵學校生徒
《練習艦》
練習艦は兵學校生徒帆走練習艦および普通練習艦があり、1年間を近海及び外洋を遊弋して洋上訓練を行います。生徒分隊に編入され、年少兵と同様に艦内配置の殆んどを經驗する仕組になっています。乗組各科の士官・掌長・下士卒が教官・教員・助手を兼務していて共に働き、実務を懇切に教えてくれます。練習艦の教室で艦内教授が行う授業が受けられます。乗艦中に取得すべき普通學と軍事學の單位が決められていて、これに合格しないと本物の軍艦に乗る資格ができません。天文、氣象、三角法、代數、外國語、地理など實務に必要な知識は殆ど習得する仕組になっています。
《配属》
練習艦訓練を修了し所定の學科單位を取得済の生徒は、兵學校に在籍のまま現役艦艇に乗組みます。水兵服ではなく士官に準じた生徒服を着用し、袖に星の釦(ボタン)がつきます。この釦は、鼻水を袖で拭くのを防止するためです。そこでは先任下士待遇の乗組生徒 volunteer 1st class となり、本格的な士官見習勤務につきます。常務配置は上甲板士官、戰闘配置は副長傳令をはじめとする兵科分隊長の傳令です。乗艦中も艦内教授の學科授業に出席し、各科目ごとに試驗を受けて兵學校卒業に要する所定單位を取得します。
所定單位を満たして兵學校の課程を修了し卒業と認められた者は、先任准士官待遇の少尉候補生 midshipman となります。常務配置は中下甲板士官、戰闘配置は艦長・科長の傳令。候補生の呼称は最下級から始めて「1號候補生」「2號候補生」と呼んでいきます。
少尉候補生
《任官試驗》
この見習期間は「少尉候補生」が任官試驗受験資格を得れば終ります。試驗を受けるには、「乗組生徒」時代から起算して現役艦船乗組期間が2年を經過していなければなりません。受験資格を得た候補生は少尉 acting sublieutenant に進級して試驗期日が来るまで中尉代理の職務を經驗します。いよいよ受驗となりますが、試驗委員の出題には難問・奇問が多く、なかなか合格になりません。それは正確に回答できなかったせいではなく、突如の困難に直面した時の態度を観察されていて、冷静さや品位を欠く場合は落第となります。機轉が利かず度胸のない候補生は何度も落第します。そのため士官は同階級であっても年齢がまちまち、兵學校同期生であっても階級がまちまちです。士官になるのも運と実力次第で、なかなか大變です。
19世紀初頭の任官試驗
《任官》
任官試驗合格者は、兵科将校(officer)の中尉 sublieutenant になります。中尉は各種實施學校の學生となり、大尉 lieutenant の職務に必要な訓練を受けます。學校はひとつではなく、砲術・航海・機關と満遍なく巡り歩き、その都度必要な試驗に合格しなければなりません。本物の海軍士官になる前の總仕上です。これを修了した者は以降、大尉に缺員が生するごとに海軍省の進級名簿に記載された順に(中尉進級日付順、同一日付の者は功績順、同一功績の者は中尉として通った實施學校の成績順)大尉 lieutenant に任官します。平時は上級者が詰まっていて、なかなか缺員ができないので、中尉の期間が3〜4年間くらい続きます。大尉任官者の最短記録は21歳です。普通は20歳代のうちに大尉になりますが、なかには任官試驗に及第しないので30歳を超えても少尉のままと云う者もあります。
文官風に云いますと、候補生は判任待遇の雇員、中少尉は判任官ですが、大尉は同じ判任官でも高等官待遇です。
《佐官進級》
佐官の進級は抜擢進級になります。大尉任官時点からの海上勤務成績・戰闘経験・戰果の多寡により序列がつけられ、點數が同位の者は中尉時代の學校試驗の成績順になり、少佐・中佐 commander に昇任していきます。いかにも海軍らしく、陸上勤務の評価は、海上勤務の半分以下にしかカウントされません。乗艦日数ないし飛行日数には實役停年の1/3が加算される程です。同じ海上勤務でも、点数が高くなるのは「艦隊勤務」で、低いのは沿岸警備の防備隊勤務ですが、どちらが得とは一概に云えません。沿岸警備の艦艇は密輸・海賊・領海侵犯を取締る警察も兼ね、戰闘の機会多く、経験豊富な実務型士官が出来あがります。またその際に拿捕・押収した艦船・物品は海軍本部より同対価の奨金となって乗組員に一定の比率で分配されるため、小艦艇乗組員の士気は高く、気分は前世紀に活躍した私掠特許状を持つ海賊船長です。陸上勤務や参謀勤務は艦艇長より評価が低いので、志望者は余りありません。
中佐 commander から大佐 captain になるのは非常に難しく、戰闘に於いて功績を挙げた者から進級していきます。
《提督への途》
少将 rear admiral 以上の階級は年功序列になり、大佐任官順による進級となります。この間、重大なミスを犯したり、成績の振わない大佐や提督は豫備役編入の形で淘汰されてしまいます。高級将校は一見のどかに見えて大變な競争社會を生き抜いています。
将校は勤続するうちに、砲術・水雷・潜水艦などと特技が分化していきます。
【兵科特務士官】master chief petty officer
下士から昇任してきた士官は、特定の専門には強いけれど、大艦全般の指揮統率や國際法規の運用、外國人の貴顕を向こうに廻しての社交には力量不足である場合が多く、そう云う外交官の任務も持つ艦長には、なかなか任用されません。陸上の官衙や教育機關で昇任するか、長く艦艇の分隊長として実質的な利益を追求するか、あるいは早々に豫備役となって民間船の士官になるか、という道を選びます。沿岸警備や通商破壊に從事する艦船に永年乗組をして数多くの拿捕奨金分配を受けた特務士官の資産は、陸上勤務の同等級の學校出の士官より格段に多いことがあります。
【航海科士官】sailing master(首席), sailing master's mate(次席以下)
航海科は下士出身の特務士官しかいません。年少兵出身者によって占められており、船乗の中の船乗として、その実力は高く、レミニア海軍のスマートな操船は航海科あればこそです。艦長といえどもフネの航路を決定する際には航海長の意見を質さなければなければならない規則になっています。艦長・副長になることがなく、いつまでも航海長 sailing master のままなので海軍に見切りをつけ、どんどん高給で民間の船長・航海士としてスカウトされていき、空きポストが早くできるため、航海科の新陳代謝は高く、従って昇任も早いのです。
【機關科士官】engineer(首席), engineer's mate(次席以下)
航海科と同じ事情で、特務士官しかおりません。こちらは体力がいる仕事なので年少兵出身者はおらず、成人前後に入隊してきた志願兵によって占められています。優秀な人物は進級試驗と機關學校學生や委託學生としての研修を重ねて提督相當の機關總監まで進級できます。
昔は帆走の補助として汽走を行ったので、機關科は乗組文官の技師とその部下の技手・機關工・火夫で編成されました。しかし艦艇が専ら汽走となり帆走が廢止されると、航海及び戰闘を左右する重要な部署として認識され、機關科員は武官となりました。自ら技術屋に徹しているので、航海や戰闘の指揮を執ることはありません。
【海兵科士官】marine officer
海兵隊も将校を専ら下士出身者によって充たしています。運と実力があれば最高位の将官まで進級できるので、野心家の若者に人気があります。そのかわり白兵戦を得意とする科なので戦死傷率も高いのが難点です。
【航空科士官】air officer
少年の頃よりの修練技倆がものを云う世界なので、年少兵出身の特務士官しかおりません。特に操縦者は神技を発揮するエースを輩出します。平時においても墜落事故が多発し殉職率は非常に高いため、進級速度が早く、運がよくて生き残っており、功績大であれば、提督相當官まで昇任できます。
参考(飛行一萬時間に就き事故發生頻度:機體破損10.2回、發動機破損4.5回、殉職0.7人、負傷1.1人、10年前に比べ1/20に減)(搭乗者延人員一萬人に就き:殉職0.2人、負傷0.4人、10年前に比べ半減)
【豫備士官】reserve officer
民間船の乗組士官は「海軍豫備員」として、戰時には海軍に召集されます。載っている船ごと自動的に海軍に編入されてしまう例が多いようです。輸送船や病院船、特務艦艇のほかに、假装巡洋艦となって華々しく活躍する船もあります。豫備士官でありながら、自分の船を武装させて通商破壊に挺身し、大活躍する人もありますが、名誉そっちのけで莫大な奨金を入手するのが目的だったりします。そのため、その臨検や拿捕の手口は非常に巧妙で、ほとんど詐欺的な手段を講じます。他国民間船に仮装して敵艦船を油断させるのは序の口で、遭難船を装ったり、ウソ信號、夜間襲撃・待伏せ・上陸掠奪・人質拉致・変装と何でもやります。 → top
傳統の海賊旗
假装巡洋艦の備砲
兵科のひとつで、専ら主砲副砲の射撃をします。砲臺(主砲・副砲・高角砲)・射撃幹部(方位盤照準装置・射撃盤)・測的(測距儀)の職種があります。
「砲臺」は、砲塔の中で筒先を目標に向け上下左右に動かし、素早く装填する砲員と、甲板下にある彈庫・火薬庫の中で彈丸と装藥の運搬・供給をする彈庫員・藥庫員・彈藥供給員に分かれています。
「射撃幹部」の約半数は、前檣楼の頂上にある射撃指揮所の中で「方位盤照準装置」に取付いています。「射撃指揮官」は装置のパノラマ望遠鏡を覗きながら砲戰の指揮をとります。「射手」は揺れる艦の上下動揺で照準が狂わないよう照準接眼鏡を注視しながら俯仰角ハンドルで常に俯仰角(砲の上下角度)を調整し、指揮官の射撃命令が出れば目標と俯仰角の一致を確認して全砲連動の引鐡を引きます。「旋回手」は常に目標に照準鏡の方位角(砲の左右角度)を旋回ハンドルで一致させます。「左右動揺手」は揺れる自艦の左右動揺のため目標が照準鏡内で左右に揺れて見えないように、横動揺望遠鏡と左右動揺ハンドルで目標の90度横方向の水平線を常に照準鏡の水平線と一致させます。照準鏡には照準線が標示されており、これをハンドルで目標に一致させます。
こうして常に目標を追尾して得た照準値(砲の上下左右角度)は、甲板下奥深くにある「射撃盤」(自働計算機)に電氣回路で常時傳達され、艦各所に配置された「測距儀」(目標の速度・距離・方位など)「測的盤」(風向・温度・湿度など)「測程儀」(自艦の速度・針路)と先程の「方位盤照準装置」から得られる数値をもとに、目標と自艦の相対位置(變距率)を割出し、その結果を元に更に射距離と苗頭(目標の未来位置)を自働算出します。こうして得られた照尺量は、「方位盤照準装置」と「砲塔」の「角度受信盤」に自働標示されます。
各砲塔の「旋回手」と「射手」は各自の水壓ハンドルを廻し「角度受信盤」の指針に砲塔の方位角を表す追針を一致させると、砲塔と砲口が動いてピタリと目標に向き、發砲電氣回路が自働接続されます。「射撃盤」に取付いている
「號令官」は發砲回路接續の標示を確認して、發砲ブザーを押します。ブザーは「方位盤射撃装置」の射手に標示され、射手が引鐡を引くと、全砲が自動的に發砲されます。號令官は射撃指揮官に指定された砲塔のみを選択して發砲ブザーを押すことも出来ます。
「射撃盤」の彈着時計員は、彈着時計装置が標示する彈着を逐次、「方位盤照準装置」の射撃指揮官に報告します。射撃指揮官は、彈着を見ながら「射撃盤」よりの照尺量を見て必要な修正を「射撃盤」の「修正手」に命じます。修正手が射撃盤に入力すると再計算された照尺量が「方位盤射撃装置」と「砲塔」の受信盤に直ちに標示されます。こうして彈着をより正確にしていゆき、遂に目標に命中させるようにします。
「測的所」は檣楼にあり、艦上各所に据えられた陸軍の砲隊鏡のお化けと云うべき巨大な「測距儀」により目標の動きを捉え、自艦との距離を計測します。
この仕組は主砲・副砲・高角砲のそれぞれについて用意されています。高角砲が副砲を兼ねる艦種もあります。また高角砲は方位盤射撃装置と測距儀が一緒になった射撃指揮装置となっています。
砲術科は上記のような仕組で動いています。射撃精度・速度を上げるためには猛訓練が要求されます。砲臺員は狭い所で重い彈藥を抱えて急速な装填や給彈をするので体力がないと勤まらず、射撃幹部・測的員は緻密さと集中力を要求されました。自ら兵科の華と喩え非常な誇りを持って訓練に励んでいます。
標的

兵科のひとつで、専ら魚雷發射・機雷敷設・掃海・水中探測をします。
機雷 水雷艇乗組員 練習用魚雷 魚雷發射菅 對水雷網


帆船時代の射撃
最近新しくできた兵科で飛行機乗を集めた部門です。飛行機や飛行船・気球に乗る空中勤務者は全て航空科に編入されました。
【空中勤務者】aviators
飛行機乗は操縦と觀測に分かれています。
《操縦》pilot
訓練課程により戰闘機、爆撃機、偵察機、飛行船、気球の各専門があります。
《觀測》observer
偵察機に乗組む觀測士が主流ですが、觀測だけではなく、機種によっては航法、爆撃、雷撃を兼ねています。
《その他の空中乗組員》other crew
信號手、機上射手、機上整備員などは他科の所属です。信號は航海科、射手は海兵科、整備員は機關科・船匠科となっています。
《機種》plane typ
○戰闘機fighter は単座で軽快かつ堅牢、その運動性能を生かして相手機に急速接近し格闘戦を行いこれを撃退します。味方機の護衛、敵機の驅逐、哨戒・策敵のほか、強行偵察も行い、要すれば輕爆撃を行います。戰闘ばかりしているので損耗が大きく、同時に敵機撃墜多数を誇るエースも輩出します。單座水上機を使用した快速戰闘機もあります。
○爆撃機bomber は肉薄魚雷攻撃をする雷撃機(艦上攻撃機、艦攻)torpedo bomber、急降下爆撃機(艦上爆撃機、艦爆)dive bomber、遠距離を航行し大型爆彈を投下する爆撃機(陸上攻撃機、陸攻)strategic bomber に分かれています。
○雷撃機torpedo bomber は状況により水平爆撃、緩降下爆撃も行います。しかしなんと云ってもその真骨頂は一発百中の肉薄魚雷攻撃です。英国海軍より輸入したソードフィッシュや国産のミズスマシ型など3座の大型機を使い、海面を這うように接近し、大型艦艇の腹部を狙って至近距離から魚雷を発射するので的が外れることは滅多にありません。しかし突撃途中や雷撃後離脱中に被弾することが多く損害の多い兵種です。また最近では艦艇の側面装甲も厚くなり、對空射撃が充実してきたので、急降下爆撃機と共同しないと、なかなか撃沈には至りません。
○急降下爆撃機dive bomber は高高度より急速に降下してきて艦艇を奇襲します。正確な照準をもって甲板上に爆彈を投下し艦上構築物を破壊します。雷撃機と提携して大型艦を大破ないし撃沈する実力があります。急降下に耐えるよう、小回りが利くように、二座の堅牢な小型機体を使います。
○爆撃機strategic bomber は陸地の大型目標を破壊する水平爆撃機で、長大な航続距離で目標に迫り、高高度より緩降下し目標に霰の如く投彈します。敵の工廠や交通施設を打撃する戦略爆撃を行うのです。防御は針鼠の如く、防弾はことに燃料周りに重点が置かれ、少々の被弾でも飛び続ける堅牢さを誇ります。緻密な編隊を組んで敵迎撃機を寄せ付けません。単独の長距離偵察も行い、かっての海賊のように敵を悩ませます。
○偵察機scout は長大な航続距離を持ち高速ですが、そのぶん武装が少なく、敵機に遭遇するとひたすら逃走することになります。二座以上の水上快速機が使われ、たいていは三座の操縦・觀測・信號の各専門が乗組んだ構成が普通です。巡洋艦以上の艦には必ず水上偵察機が搭載されており、彈着觀測、遠距離偵察に活躍します。大作戦の時は航空母艦にまとまった偵察部隊が置かれ哨戒線を構成しますが、普段は各艦が独自で航空偵察を行っています。
○飛行艇flying boat は水上飛行機を大型にしたもので、快速、長大な航続距離、強大な防御武装、防御装甲と、海上軍用機のうち最強性能を誇りました。雷撃、緩降下爆撃、偵察、輸送と、使用範囲は広く、しかも水上で離着陸を行うので隠密性に優れています。艦隊ごとに1隊ある飛行艇隊は大型水上機母艦を持ち、修繕・休養も十分な支援態勢がとられています。
○飛行船airship は長距離哨戒用の硬式中型船を使用し、飛行船母艦を基地として、沿岸を遊弋します。重武装、長大な航続距離をもって、時として編隊爆撃にも従事します。
○気球balloon は弾着観測・見張に用いられる二人乗小型のものが多用され、水上飛行機の搭載のない艦艇が代用に携行します。
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もとは陸軍の兵科で海軍歩兵・海軍砲兵・海軍軍樂兵と云っていましたが、陸軍と海軍の分離が明確になった頃に海兵隊として海軍に編入されました。艦内警備、小火器による敵艦乗員狙撃、補助砲射撃、上陸戰闘、水兵に對する小火器・白兵教練を行いました。兵種としては輕歩兵・輕砲兵の両用で、兵器は通常の陸軍と違い、艦上や沿岸で使用しやすいものを自由に取入れています。聯隊編成で鎮守府・要港部の近くに駐屯し、そこから分遣されてきます。
今もその役割は変わらず、舷門・昇降口・前甲板・羅針艦橋・信號旗庫・艦長室・彈火薬庫・兵器庫などに番兵として立哨し、補助砲臺(機關砲・機關銃)射撃を受持ち、軍艦旗の昇降・儀杖などの禮式および軍鼓號音・信號喇叭も役目となっています。被服・装備は他の海軍兵と違い水兵服や士官服は着用せず、総て陸軍式軍装です。
上陸戰闘では、強襲を得意とし、その勇猛さは定評があります。
外國駐在公館・租界・占領地港湾の警備にも使用されます。
その軍規風紀と新兵訓練は想像を絶する厳しさで、懲罰や私刑においても他の陸海軍兵科に例のない体罰を伴った恐ろしい慣習がいまだに生きています。訓練専門の海兵嚮導聯隊からは脱落者が大勢出ますが、訓練を無事終了した兵士は精強の評価高く、獰猛な水兵も一目置く存在となります。海兵隊の将校は全員が下士卒出身者を採用する仕組となっているので、海兵卒は多少の困難に耐えていつか指揮刀を揮う日を目指し奮励します。
【軍樂隊】muzikistar, music band
軍樂隊も海兵の一兵種で、こちらは本格的な金管樂團です。儀杖に際して奏樂するので、友好國の國歌が全部レパートリーに入っています。司令長官・司令官の昼餐、外國駐在公館の儀杖・宴会、将兵の慰安、民間の要請による演奏出張など、禮式曲から流行曲まで幅広い演目を誇っています。志願者のうち試驗合格者を受入れ、樂生(兵卒相當)apprentice musician から始めて、樂手(下士相當)musician 、樂長(特務士官相當)band master 、軍樂監(少佐相當)music band inspector と階段を上っていきますが、たいてい途中で民間の樂團に移ります。海兵隊から艦隊司令部と鎮守府司令部に分遣されます。艦隊旗艦に乗組の軍樂隊員は、暗號補助員を兼ね、戰闘配置では暗號補助員・傳令・負傷兵運搬・治療所補助として活躍します。 → top
露營の食事風景(携帯口糧セットで飯盒炊爨)
海兵運送艦の居住區(下士卒は蚕棚に詰込んである)
第2艦隊勤務(南洋海域)の海兵分遣隊、これより上陸作戰に出動の為、上甲板に整列。服装は防暑仕様。

スクリューを廻す主機械を操作する機械部main machine、主機械を動かす蒸氣を供給する罐部boiler、電動機械を操作する電機部electric machinery、その他の補助機械を操作する補機部auxililiary machineryに分かれています。
【機關總監、機關監、機關士、機關工手、火夫、機關工】engineer general,acting engineer general, engineer, mechanician, stoker, operator, electrician, auxiliary mechanician
《罐部》boiler section
最も人員が多いのが罐部で、大きな艦では12基の罐を持ち、ひとつの罐に機關工手1名(汽醸下士)、火夫3名(第1焚火員、第2焚火員、炭庫員)がつき、2時間交代で昼夜練炭を焚べ蒸氣をつくって主機械に供給し推進軸(スクリュー)を廻します。罐の中には補助用もあり、これは艦内暖房・割烹などに使用する蒸氣をつくります。通常は2罐を1罐室に納め、先任の汽醸下士が罐室下士を務めます。罐そのものは3米四方の火床で、蒸氣機關車の罐を大きくしたようなものです。
汽醸下士 leading stoker は蒸氣壓計・給水計を常に監視して焚火作業を調整し、給水します。
第1焚火員 first stoker はシャベル並の十能を両手に構え約20kgの練炭をすくって焚火口から投入れます。焚火効率を上げるため炭を均等に均す(整火)のも仕事です。熟練者は炭が火床に均等に散布されるように投炭するので、艦は直ちに出力を上げられます。投炭が下手だと不燃焼となり煙突から出る煙が黒くなります。上手だと白い煙です。
第2焚火員 second stoker は投炭口の扉を開閉します。
炭庫員 coal trimmer は炭庫から練炭を運搬して第1焚火員の後の床に積みます。昔は大きな四角い練炭だったので、これを扱いやすい大きさに砕く作業もありましたが、今は海軍練炭製造所で既に手ごろな大きさに予め固められているので、その必要はありません。
作業員は時々互いに役割を交換します。罐室は焚火時摂氏40度を越す高温で、当直終了後は皆ぐったりして声もでません。当直以外の余った人員は、艦内各部署の補助員として働きます。
火夫stokers
《機械部》machinery section
推進軸を廻す主機械の運轉をします。大きな艦は推進軸3主機械3で、巡航用にはそのうち2軸2主機械を使用します。戰闘用には3軸3主機械をフルに使用します。艦橋からの命令に従って、速度の加減速をする他、機械の保守・修理もします。
《電機部》electric machinery section
發電機・電動機の運轉、電燈・變電配電の管制・保守をします。艦内電氣回路・砲臺揚彈・運彈機・昇降機など電機驅動のものを擔任します。
《補機部》auxiliary machinery section
その他の機械装置の運轉・保守・修理をします。砲塔を動かす水壓機、海水を眞水にする蒸化機、冷却装置、空氣壓搾装置、舵取機械、揚錨機などがあります。冷蔵庫・製氷機も受持で、大きな艦にはラムネ製造装置があります。
運轉員operators
電路員electricians
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破損船體の應急修理と木具製造修繕の船大工 carpenter or joiner が中心となって、これに機械仕上工 finisher、金属部品修繕の鍛冶工blacksmith、銅鑄造工 coppersmith、溶接や板金作業の鐡鈑工、配管修繕の管路工 plumberと銃砲白兵修繕の兵器工 armorer、と専門職種が揃っています。船匠科員は艦底修理や水雷回収もするので、濳水夫 diver を兼ねます。
帆船には、縫帆工sail sawyer・桶工cooper・塗工painter・造綱工ropemakerなど今では希少な職種があります。
これらを木工・金工に分けます。
以前は金工が掌砲長に所属していて、艦内で彈火薬及び火器白兵の加工などを行っていました。今世紀には完成した兵器彈火藥が工廠から供給されるようになり、また船體が鐵製となるに從って、鍛治以下の金工は船匠長の指揮下に入ることになりました。
【船匠、船匠手、木工】master chief shipwright, shipwright, joiner
艦艇の應急修理、濳水修理、消防、木工、塗装に從事します。
木工 carpenters
濳水員 diver(海に潜っての船底・船腹の點檢・修理は船匠兵の仕事です)


【鍛冶工】blacksmith
金属部品の修理に從事します。
金工場の鍛治現場


【銅鑄造工】coppersmith
銅部品の修理に從事します。
金工場の鑄造現場

【鐡鈑工】welder
鐡鈑の溶接に從事します。

【管路工】plumber
管路の修理に從事します。注排水も役目です。
【機械仕上工】assembler
鍍金・塗装・研磨など機械の仕上修繕に從事します。
【兵器工手、兵器工】armorer, apprentice armorer
火器・觀測器材・白兵の修理に從事します。
望遠鏡、計器、觀測器材などの光學機器修繕
民間船に必ず事務長(purser)が乗っているように、艦艇にも主計長 purser が乗組んでいます。艦艇の金庫番で、軍需品の調達、金銭・食料・衣服・調度品の出納、乗組員の給料支払・人事手続・文書郵便物の發受・書類整理、艦長室・士官室(佐官・大尉・特務大尉)・士官次室(中少尉・少尉候補生・生徒)・第2士官次室(特務中少尉)准士官室(准士官)の世話、給食、酒保、乗組員の娯楽主催なども仕事のうちです。主計長の部下たる主計科員がこれらの仕事を分担しますが、種々の職種に分れており、すこし複雑な構成になっています。
【主計・主帳・計算夫】purser, book keeper, store keeper
主計は經理學校を卒業した将校相當官で、艦の主計長となります。艦ごとに鎮守府よりの前渡資金を持ち、これで艦の一切の支出を賄うのですが、その財布を握っているのが主計長です。どうやって上手く艦の衣食住の面倒を見るかは、主計長の切盛りの腕次第です。主計長が、蟲の湧いた肉や堅麺麭しか配給せず、煙草や酒を缺配したので、水兵の叛亂が起きかけた艦もあるやに聞きます。出航に際しては艦船の兵器以外の貯蔵品(衣糧薪炭調度品)一切を準備し、貯蔵庫を管理し、配給を實施し、乗組軍属を掌握します。また豫算を管理し、會計帳簿を調製し、金銭物品出納(給與支払を含む)を監督します。さらに庶務・秘書・宗務・教務・入出港事務に亙る各部の面倒を見ます。
主帳は主計を補佐する下士相當者です。庶務・文書・會計の事務、給與計算の他に、兵器を除く軍需品(食糧・被服・調度品など)の出納・保守に従事します。
計算夫は兵卒相當者です。主帳のもとで、傳票整理・帳簿記入・計算・現金出納・倉庫管理など經理・補給の雑務に従事します。
倉庫事務室の主帳(帽子を被ったほう)と計算夫

下士卆1人に掛る年間經費
四等兵以下318圓(俸給74、被服費92、糧食費151)
三等兵334圓(俸給139、被服費44、糧食費151)
二等兵352圓(俸給157、被服費44、糧食費151)
一等兵388圓(俸給194、被服費44、糧食費151)
下士412圓(俸給217、被服費44、糧食費151)
【秘書・書記・筆生・使丁】sekretari, ashistant sekretari, skriban, leter knab; secretary, writer, scriber, messenger boy
秘書 secretary は艦長が任命する士官相當の乗組文官です。經理學校卒業者ではなく、民間の大學士や得業士を艦長が指名して採用します。乗組員に適当するものがあれば、引抜くことも出来ます。乗組員の人事(功績記録・教育記録・進級轉勤など人事文書の調製)、艦長書翰の發受・整理、命令書を始めとする公文書の調製・保管、秘密圖書管守など秘密を要する事務を取扱います。弘報も扱い、艦内新聞や新聞記者の應接、寄港地での折衝役をします。また艦長に随伴して副官の役目も果します。文章練達で外交慣習や國際法規に通じた気轉の利く人物が多く、艦長は轉勤の際に一緒に連れていくことができます。
書記 writer は秘書の代理をする下士相當者です。こちらは中學校・實科學校・實業學校卒業者あるいは専門學校入學檢定合格者を採用します。秘書の助手です。事務練達の者は、大尉以下が長である小艦艇に秘書の代理として乗組みます。
筆生 scriber は兵卒相當者です。年少兵や志願兵で目が悪くなったり負傷したりして兵業に適さなくなった者を任命します。また士官の推薦で給仕から轉ずる者もあります。秘書・書記の助手として速記・浄書印字印刷・書類整理・通信傳令など文書業務に従事します。書記に進級するには、陸上勤務者は中等學校の夜間部に通い、艦船勤務者は通信教育で専門學校入學檢定試驗に合格して、文筆の能力を身に着ける必要があります。
使丁 messengerは事務室給仕の役目をします。
【廚宰、從僕、給仕】steward, cabin boy, waiter boy
廚宰、主厨、廚夫、從僕、給仕は主計科員で所定の俸給を海軍から支給されていますが、士官附や士官食堂附の者はこの他に士官個人のポケットマネーや共同醵金から謝礼金がでて、大艦船になると大變に実入が良くなります。
廚宰 steward は士官食堂の給仕長で下士相當です。艦長室食堂・士官室食堂(艦長を除く佐官・大尉・特務大尉・大尉相當の乗組文官)・士官次室食堂(中少尉・中少尉相當の乗組文官・候補生)・第2士官次室食堂(特務中少尉)・准士官食堂(准士官)・文官室(乗組文官)ごとに配置されており、各食堂の食卓番・食器番・酒倉番として厨房・從僕・給仕を指揮監督するほか、酒類・輕食の調理提供、晩餐會・午餐會の面倒を見ます。
廚宰と海兵
從僕 cabin boy は、各士官・特務士官・准士官・乗組文官に1人宛付いている卒相當者で、掃除・洗濯・着替・靴磨・傳令・その他雑用と、居室での士官の身の廻りを世話します。從卒・從兵とも云います。從僕は、気転が利いて、武器の取扱もでき、海軍生活に詳しくないと勤まらないので、優秀な先任年少兵を輪番で兼務させます。從僕當番は任期が一ヶ月單位で、勤務成績に大幅な加算を得られます。また海軍からの給與の他に、主人たる士官のポケットマネーから謝金が出ます。裕福な士官は、自分の從僕がいつもこざっぱりしているように謝金に被服洗濯代を加えたり、時には身丈にぴったりあったスマートな水兵服を誂えてやったりします。從僕は主人の士官が勤務中は閑なので、優雅な暮し振りです。
士官室士官の從僕は、主人が氣に入り、同時に從僕本人も希望すれば、何度も任期を更新して長く勤められます。そうすると從僕は本業の水兵修業に遅れをとることになるので、主人は真剣に從僕の身の振り方を考えてやらなければならなくなります。そのため余程あちこちに縁故のある士官でなければ、長く年少兵を從僕にしておくことは難しいのです。しかし有力な士官は、從僕に暇を作って勉強させ上級の學校に入れて、海軍よりも有利な職業に就かせる算段ができます。特に兵科の副長クラスになると艦長となった時には転任先に從僕を伴っていくことができます。
艦長從僕は掌砲長と同様に、艦長が転任の際に伴っていくことができます。年少兵のうちで、艦長や艦の危急を救った者や、優れた成績の者は、艦長専属の從僕に抜擢任命し、兵學校に推薦して将校への道を歩ませます。
また艦長と提督は、懇篤な知己の子息を引受けて艦長ないし提督の從僕とした後に、定員に空きができ次第、兵學校生徒となるよう推薦する権利を持っています。この場合の從僕は兵籍に登録されているだけで、実際に乗組員となるわけではありません。このため艦長と提督は書類上は二名の從僕(一人は乗組年少兵で実際に身の回りの世話をする、一人は名目上の乗組員で兵籍に載っているけれど入隊していない)を持っており、実際のところ紳士階級の大勢の次三男が有力者のツテを頼って艦長の從僕になろうと順番待ちをしています。艦長や提督は有力者の子弟を從僕として引受けると、たいへんに有利な縁故を得ることになります。それは重大なミスをしても豫備役編入を免れ、或いは豫備役編入の半給将校となっても機會があれば現役復帰が叶うと云った類のものなので、あだや疎かにはできません。
給仕 waiter boy は軍属の私傭乗組員(雑卒待遇)で、食堂のウェイターです。裁縫・洗濯の軍属が乗組まない艦では給仕の中から掃除洗濯や裁縫専門の者もあらわれて、なかなか繁盛します。海軍からの給與の他に食堂メンバーから謝礼金がでます。
【洗濯夫長、洗濯夫】laundery manager, washerman or laundryman
洗濯夫長 laundry manager(下士待遇)、洗濯夫 washerman(卒待遇)は軍属で、准士官以上の從僕が持ってくる洗濯物を有料で引受けます。士官は國際外交も仕事のうちで、いつ外國艦船や寄港先の社交界に招待されるやも知れないので、日頃から服装に五月蝿く、たいへん繁盛します。また料金を出せば、下士卒の洗濯も引受けます。水兵は洗濯代を出すほど給料を貰っていないので自分で洗濯します。専ら兵曹クラスが利用します。
艦内洗濯室のアイロン係洗濯夫
【縫工長、靴工長、縫工、靴工】tailor, shoemaker, apprentice tailor, apprentice shoemaker
縫工長 tailor(下士待遇)、靴工長 shoemaker(下士待遇)、縫工 apprentice tailor(卒待遇)、靴工 apprentice shoemaker(卒待遇)は軍属で、やはり准士官以上の被服・靴の繕い物をします。また衣糧長から頼まれれば、備蓄被服の加工も請負います。大きな艦にしか乗っていないので、小艦艇の乗組員は自分で繕い物をします。水雷艇や掃海艇、潜水艦などは、服装に構わず皆ボロボロの服を平気で着ています。
【酒保長、酒保助手】canteen manager, canteen assistant
酒保長 canteen manager(下士待遇)は軍属で、甘味品・日用雑貨などを有料で供給します。各班の當番が酒保の窓口に行列して酒保助手 canteen assistant(雑卒待遇)に注文傳票を渡し、品物を纏めて受取ります。酒保は傳票を主計科の經理室に廻し、各員の給料から代金を差引いてもらいます。現金取引はありません。士官・准士官は所属の各士官室單位で同様に購入します。兵員の班は早く行列に並ばないと人気の品物が完売品切となったりするので當番は大變ですが、士官室用のものは人数分を別に取置いてあります。
【軍属の戰闘配置】
軍人のうちに入る廚宰・從僕は、彈藥運びなどの戰闘配置につきます。軍属は軍人扱ではないので、志願しない限りは戰闘配置はありませんが、たいてい義勇兵に志願をして彈藥運びや看病員などの配置を持っています。愛國の為でもありますが、そうしておくと拿捕賞金の分配資格ができるからです。
【主厨長、主厨、廚夫】master chief cook, cook, assistant cook
主厨長 master chief cookは、艦隊司令部、鎮守府、要港部で雇う特務士官相當の軍属で、定評のある客船やホテルの料理長から高給で引抜きます。専用の厨房と食糧貯蔵庫を持ち、前渡資金で材料を仕入れ、自分で人選した助手 assistant cook(下士待遇軍属)を指揮して、調理の腕を揮います。艦隊は外國寄港が多く、その際に艦隊司令官招待の晩餐・昼餐会を催すので、味にうるさい賓客を唸らせる腕の良い料理人が是非とも必要となります。また艦隊司令官、鎮守府司令長官、要港部司令官は、海上勤務で日頃ろくなものを食べていない艦長・高級士官を順番に會食に招待するのも仕事のうちです。
主厨 cook(下士相當者)は、廚夫から進級してきた海軍育ちの料理人です。艦内各食堂厨房と兵員烹炊室で調理の指揮をとります。
廚夫 assistant cook(兵卒相當者)は主厨の下働きです。1人の廚夫で50人の乗組員の三度の食事を調理するので、重労働です。主計科に入ると、全員が先ずこの配置になります。それから適性に応じて計算夫や筆生に転じます。そのまま廚夫に留まる者もいます。廚夫の中には、製麺麭や精肉を専門とする者もあります(造麺夫 baker, 屠夫 butcher)。艦長が購入した家畜を乗艦させて、乳や卵を採り、屠殺して精肉しましたが、これらは専ら艦長と食卓を供にする高級士官や訪問客用で、下級士官・准士官・下士卒の口には入りません。
小艦艇では士官食堂といえども手の込んだものは出来ません。潜水艦や水雷艇などでは、艦長・将校・下士兵ともに一緒くたに同じ食事(主に罐詰と乾物の料理)をします。
士官食堂厨房
軍醫 surgeon は、傷病者の診断・治療、乗組員の健康管理、衛生指導、入港時の檢疫事務などが仕事です。昔は理髪師・外科醫が同一の同業組合に所属しており、両方を兼業するのが通常でしたのから、その時代からの慣行で、調髪も軍醫科の担当です。
診察室sickbay
【軍醫】surgeon, assistant surgeon
将校相當官です。醫學専門學校ないし醫科大學醫學科卒業の醫學生が修業中に、海軍委託生徒となって生活費・學費の全額給費を受け、外科醫學得業士ないし全科醫學得業士の資格を得た場合、卒業後数年間を海軍軍醫として勤務する義務を負います。海軍軍醫學校で少軍醫候補生 acting assistant surgeonとして数ヶ月の講習を受け、乗艦練習もします。たいてい義務服役年限が終わると、さっさと給与の良い民間に出てしまったり、爪に火をともして貯めた給料を元手に大學に入ったりするので、海軍に残る者は余りおりません。
【藥劑士】pharmaceutist, assistant pharmaceutist
将校相當官です。軍醫と同じく藥學専門學校ないし醫科大學藥學科の生徒が修業中に、海軍委託生徒となって生活費・學費の全額給費を受け、藥學得業士の資格を得た場合、卒業後数年間を海軍藥劑士 pharmaceutist として勤務する義務を負います。海軍軍醫學校で少藥劑士候補生 acting assistant pharmaceutist として数ヶ月の講習を受け、乗艦練習もします。たいてい海軍病院藥劑部勤務です。義務服役年限が終わると、貯めた給料を元手に藥局を開業したり大學に入ったりするので、海軍に残る者は余りおりません
【看護長、看護手、看病夫、剃夫】master chief sickbay steward, sickbay steward, sickbay attendant, barber
看護長 mster chief sickbay steward(特務士官相當者)は、海軍病院看護科の監督です。
看護手 sickbay steward(下士相當者)は、軍醫及び藥劑士の助手として診断・治療の補助および患者看護をします。海軍病院看護術練習所普通科での修業が資格要件となります。本業の看護・治療助手のほかに、藥劑師助手・衛生檢査助手・X線器助手なども兼ねて、豊富な知識と技能を要求されます。軍醫の乗艦しない驅逐艦・潜水艦など小艦艇では、軍醫の代理として應急處置・治療もしなければなりません。
看病夫 sickbay attendant(卒相當者)は、患者看護の補助と雑役をします。
剃夫 barbar(傭人待遇軍属)は艦上で開業する理髪師で、乗組士官の共有金で私傭する軍属です。海軍士官は國際外交も仕事のうちなので、身だしなみを必要とします。その調髪と髭剃を有料で請負います。
海軍患者統計より
兵員千人に就き新患者發生數(外因533、腸炎96、急性氣管支炎29、其の他呼吸器疾患29、胃炎22、黴毒17、肋膜炎14、風土病12、盲腸炎12、赤痢11、チフス7、慢性氣管支炎6、肺結核6、其の他結核3、脚氣3、脱腸2、流行性感冒2、肺炎1、マラリア1、腎臓炎1) → top
【技監・技士】
技術士官と呼ばれ、士官相當です。
造船・造兵・造機は工科大學卒業者が修業中に、海軍委託生徒となって生活費・學費の全額給費を受け、工學士の資格を得た場合、卒業後数年間を海軍技士として勤務する義務を負います。海軍機關學校で少技士候補生 acting assistant engeneerとして海軍士官の身のこなしを学び、乗艦練習もします。軍醫や藥劑士と違い、海軍で軍艦・艦砲・推進機關を設計する為わざわざ大學に入ったのですから、優秀者が競走して志願して来ます。大學の軍事工學の諸講座の教授は海軍技監を退役した人が占めています。
水路科は専ら水路部に於いて海圖調製に専念する士官待遇の専門家です。現在、本土沿海の海圖は完成しており、南洋・遠東方面の調査を行っています。測量の他に、天體・氣象・暦法も扱います。
工作艦乗組の技監

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秘書部secretaries
【秘書】secretaries
(主計科の項にて説明済)
教授部professors
【艦内教授】seaman's schoolmaster
乗組の候補生・生徒・下士卒に必要な教養科目を教授する士官待遇の文官です。得業士を採用しています。
【教授】professor
海軍の諸學校で教養科目の授業を擔任する士官待遇の文官です。大學士を採用しています。
宗務部 chaplains
【輔祭】assistant chaplain
乗組の士官待遇の聖職者です。いったいに迷信深い船乗は、お坊さんを船に乗せるのを嫌うので、戰闘艦艇には姿を見かけません。定員さえ設けてありません。大きな特務艦艇には軍属や上陸部隊などが何百人と乗組むので、聖職者に日曜日ごとの禮拝や身上相談などをしてもらうために、定員を設けてあります。
しかし海兵隊の輔祭は聯隊附・大隊附從軍僧侶として常に隊と共にあり、大隊長を補佐して陸軍の從軍僧以上の活躍をします。殊に在外公館には警備の海兵隊と共に必ず派遣されています。戰場では通譯・翻譯・宣撫・軍使・埋葬指揮・戰場掃除など重要な役割を果たし、なくてはならない存在です。
【司祭】
各級司令部に所属する佐官待遇のお坊さんですが、縁起担ぎの提督が乗艦させないので、主に陸上の軍港・要港で海軍教會や海軍墓地の管理をしたり、日曜礼拝を主催します。
海兵隊の司祭は旅團附從軍僧侶として常に隊と共にあり、輔祭の指揮を執り、旅團長を補佐します。
【司教】
艦隊や鎮守府の從軍僧侶の監督官です。将官待遇で、僧侶の人事や勤務を監督します。
【大司教】
海軍の從軍僧侶の總監督官で将官待遇です。
【宗務部嘱託】
司祭以上に附属する見習僧侶で、輔祭候補生と云ったところです。名家の子弟が教會への寄附と有力者の紹介により手に入れる地位で、軍人に向かない子が厄介払いされる先です。上品で体裁が良いので人氣があります。
しかし海兵隊に配属されると戰場に出る可能性が高くなり、酷い目に遭います。隠れた才能がある者は、頭角を現し親も見違えるほど成長します。
【宗務部雇員傭人】
「從者」は准士官・下士待遇の俗人(僧侶籍に入っていない)で、僧侶の護衛・補助をします。廚宰と秘書と警護巡査を一緒くたにしたようなもので、昔は僧兵として武装していました。「從僕」は兵卒待遇の下働で、成績が良いと從者になります。僧侶は從者も從僕も自分で採用し、転任の際には一緒に連れて行く事ができます。
【聖歌手】
教會で聖歌を合唱したり、祭儀の手助をする役目の雑卒待遇の子供です。主に海兵隊に配属されており、聖歌手としてよりも「笛手兼補助鼓手」として使用されます。艦船や在外公館など海兵分遣隊のあるところには必ずいて、13歳頃になると鼓手になります。鎮守府教會には歌唱訓練を受けた専属の聖歌隊が詰めています。
海軍鎮守府教會聖歌隊(特別仕立の一張羅を着こんでゐます。日曜禮拝で歌唱する他、軍樂隊と同様に有料で出張歌唱もします)
技師・技手・工員
【技師、技手、職工】engineer, subengineer, artisan
海軍では間に合わない技術者を軍属として乗組ませることがあります。特務艦艇には多用な職種の技術者が鎮守府から派遣されて乗組んでいます。
「見習職工」は試驗を受けて採用される雑卒待遇の傭人です。勤務に就く傍ら「見習職工教習所」で午前中3年間(優秀者は更に1年間の補習科で勉強)の工業學校程度の教養を学習し、「職工」に昇格します。熟練工になると「伍長」となり、3〜5人の職工を指揮し、作業の主力となります。伍長の古手となると、「組長」になって、30〜70人の同職組を指揮します。「工手」は「組長」の優秀者がなり、各組の作業を組合せて職場の指揮をとります。「工長」は昔は「特務工手」と云い、准士官待遇で、工場の工手以下、現業員の人事を擔任します。
「技手」は「見習職工教習所」の修了者が試験を受けて合格すると、「海軍技手養成所」の生徒となり、高等工業學校程度の勉強をして就任します。士官待遇で、工場や試驗所・研究室の幹部として、技師を助け働きます。
「技師」は技手の古手がなり、佐官待遇で、工場主任(工場長)や試験室主任として活躍します。勅任(提督)待遇の技師もあります。
法務科
【法務官】
海軍の判事・檢事です。海軍省法務局長に勅任法務官(将官待遇)がおり、その指揮下に艦隊・鎮守府・要港部など軍法會議のある所轄に法務官(佐官待遇)が勤務しています。犯罪捜査を行い告訴を行う檢事、起訴すべきか否かを判断する豫審判事の役目を分擔し、軍法會議には軍人の判士長・判士と共に、判士の一人として加わり裁判官の役目を果たします。
高等文官試驗司法科合格者が志望して任に就きます。
【法務官補】
尉官待遇の法務官見習ですが、法務官と同じ役割を果たします。
【法務官試補】
なりたてホヤホヤの研修生です。
【録事】
法務官に附属して、記録をとり、書類を整える書記官です。高等文官試驗の合格者ではないため、法務官の代りは出来ません。
【警査】
執達吏の一種で、令状の送達や軍法會議の警備を擔任します。時には憲兵隊と協同して逃亡被疑者の逮捕・勾引を行います。
【典獄】
海軍監獄の長で、佐官待遇です。
【典獄補】
典獄を補佐し、分擔して實務を取仕切る、尉官待遇の監獄官です。
【看守長・看守・押丁】
囚人を監督し、刑を執行します。看守長は尉官待遇、看守は下士待遇、押丁は見習看守で、卒待遇です。
入獄者數
未決監(入365、出370、年末残留17)既決監(入281、出269、死亡1、年末残留156) → top
【潜水艦乗組員】submarine crew
潜水艦練習所を修了した各科の兵員が乗組みます。 → top
ハッチを開いて新鮮な空氣を吸う。潜水艦司令塔内部より見た昇降口
ヘマな潜水艦乗組員