半透明 2題

 

其の一

 私が中学生三年生の時のこと、当時、自転車通学は禁止されていたのですが、歩いて二十分の距離が面倒で(と言うか毎朝遅刻しそうだったので)学校の近くの友人宅まで自転車を使っていました。

 夕方、家に帰る為、いつものように自転車に乗り、住宅街を走っていました。その道は両側に家が建ち並んだ幅4m道路といったところでしょうか。右前方20mくらい先に五十歳代の小柄なおじさんが立っていました。

 ある一軒の門前に立ち、ボーっとその家の二階を見上げています。特におかしな様子ではないのですが、何か変なんです。自転車をこぎながら、何が変なんだろうと考えていました。「黙って見上げているからかな?」「セールスマンかな?」「家の人が出てくるのを待っているのかな?」あれやこれや考えているうちに、そのおじさんの横を通り過ぎました。真横を通った時、横目で見た瞬間、疑問が解けました。

「あっ!この人透けてる!」

 そうだったのです。あまりにも普通の感じで気が付かなかったのですが、その人、「全身半透明」だったのです。10m位進んだところで、 恐る恐る振り返ったのですが、相変わらず黙ってその家を見上げていました。あれ、一体何だったのでしょう。

其の二

 今から十三年前の大晦日深夜、当時交際していた人と初詣に行きました。

地元の神社でも参拝者でごった返し、社への長い列は外の道路へと続いていました。私達二人もその列に並び、のろのろと流れる列の中、寒さに身をこわばらせていました。

 賽銭箱まであと五列目位にきた時、境内の両端に松明が見えました。右側の松明をぼんやりと眺めながら、「暖かそうだなぁーとか火の粉がたくさん飛んでいるけど大丈夫かなぁー」とか退屈しのぎに考えていました。

 その時、右目の下隅に私と彼女の間で何かが動いているのが見えました。何気に目だけで確かめてみるとそれは「手」でした。一瞬、何がなんだか判らなかったのでしたが、良く見ると半透明で手首から先しかない「手だけ」でした。

 映画「アダムスファミリー」に出てくる手だけの召使みたいな奴です。力を抜いてだらーんとさせた感じで、私には「女性の右手」に見えました。それが膝のあたりから二人の間をゆっくり上がってきます。

「うわぁぁー何だこれっ!」

 びっくりしました。すぐに隣の彼女を見たのですが、気付いていない様子でぼんやりと前を見ています。とりあえず良かったぁーと思いました。こんな物見てこの場でパニックになられても困ります。また目だけ動かし見てみると、その手はもう私の胸のあたりまで上がってきています。「うわー嫌だなー、困ったなーどうしよう」。あっと言う間にその手は肩口まで来ました。

 何となく「この手が二人の間を通り抜けたら、かなりヤバイ事になるな」と思い、怖かったのですが、両の目に気合を込めて「クワッ!」と睨んでやりました。

 ありがたい事に、その半透明の手はフッと消えました。自分を見られたと思い、隣の彼女が「何?」とこちらを見ましたが、「何を祈願するの?」とか適当にごまかしました。「変なものが俺たちの間にいた」なんて言ったらどうなるか判りませんから。

 私達二人はその年に別れてしまいました。別れる時、「初詣のとき見たあの手、もしかして何か暗示してたのかな・・・・」と思いました。

 新年早々、しかも神社で変なものいるんですね。