| 今から十七年前、私が中学二年の夏。当時私の仲のよい友達5人位で花火が流行っていました。 学校の近くのグランドに、いつも夜の八時位に集合します。花火といっても手に持つ花火ではなく、「ロケット花火」を敵味方に分かれ投げ合うのです。ロケット花火に火をつけて飛び出すギリギリまで手に持ち、相手めがけて投げます。タイミングがずれると方向が定まらなかったり、投げたとたん爆発したりして結構難しいものでした。 そんなくだらない事を毎日のようしていたのですが、その日はさすがに飽きてきたのか、ちょっと違うことをしよう!と言うことになりました。グランドは敷地の半分を潰し、マンションを建築中で、ちょうど工期半ば位、コンクリートの外観も済み、後は設備や内装工事をする状態でした。窓などはまだ嵌っておらず、夜見ると板チョコのように見えました。その建設中のマンションめがけロケット花火を飛ばし、誰が一番高くまで飛ぶか競争しよう!と言うことになりました。私は5人中4番目に投げることになり前に投げた人のを目で追っていました。ロケット花火は確か六階の真中の部屋あたりに飛んで行き、窓枠にぶつかりそうになっていました。 ロケット花火が飛んで行く方向に人がいました。工事現場の作業員のようでしたが、作業服などは着ておらず、白地にグレーっぽい横縞の長袖ポロシャツとグレーのスラックス姿で、痩せ型の40半ば位の男でした。部屋の中を横切る形で、大股でゆっくりまっすぐ前を見て歩いています。ロケット花火はちょうどその男めがけ飛んで行きました。 私は「ヤバイぶつかる!」と焦りました。その男のすぐ側でロケット花火は爆発し、私は 「ダメだ!」と一瞬目を瞑ってしまいました。意外な事に、その男は何事も無かったように悠然と前を向いて歩いています。「あれっ?」その時私が最初に思ったことです。「何でだろう?」怒られると思ったのですが反応さえ示しません。そのまま悠然と歩き、柱に隠れて見えなくなりました。出てくるのを待ったのですが何処にも現れません。 その間ほんの数秒だと思うのですが、友達のはしゃぐ声で我に返り「あの男何だろう?」と皆に聞きました。ところが逆に何の事だと全員に聞き返され「今花火が爆発したところを歩いていた男だよ!」と私が言うと誰一人そんな人は見ていないとの事でした。私を含め五人全員同じ所を見ていたのに、私一人だけ違うものを見ていた事になります。はじめは、冗談を言っているのだろうと笑っていた友達も、私の真剣な表情を見て全員怖くなってしまい、その場から我先にと逃げ帰りました。 未だにあの人はなんだったのか、どうして夜の誰もいない工事現場を歩いていたのか、何処に消えてしまったのか分かりません。不思議なおじさんでした。 余談かも知れませんが、そのマンションが完成した2年後、住人の医師が看護婦を自分の部屋で殺害し、死体をバラバラにして東京湾に捨て、逮捕される事件が起こりました。新聞、テレビのニュース等で随分騒がれたので覚えている方もいるかと思います。その殺人があった階は偶然かもしれませんが・・・もうお分かりですよね。 そのマンションは今でも品川区のJR駅前に建っています。 |
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