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判例
夫婦関係調整事件
東京家裁 昭四八 (家イ) 一九六二号
昭四八・一〇・一八審判
住所 東京都大田区
申立人 佐々木考子 (仮名)
国籍 アメリカ合衆国
相手方 タツオ・ハマダ (仮名)
主文
@申立人は相手方と離婚する。
A当事者間の長男ジョン・ノブオ・ハマダの親権者は、母である申立人と定める。
B養育料として、昭和48年4月から同人が満21歳に達 する月まで1ヶ月金40000円宛、毎月末日限り,○○銀行○○支店の申立人名義の普通預金口座に振り込んで支払うこと。
C当事者双方は、以上により本件離婚に関する一切の紛争を解決し、互いにほかになんらの名目を持ってしても、財産上の請求をしない。
理由
(事実)
申立人は、主文同旨の調停を決め、申立理由として、次の通りのべた。
1相手方はアメリカ合衆国カリフォルニア州で出生した日系人で、一時戦時中日本に来て、日本の学校を卒業し、昭和35年1月8日日本人である申立人と結婚し、申立人の戸籍にその届出をするとともに、教会で挙式の上アメリカ領事間の認証を得た。相手方は申立人と婚姻して1ヵ月後に、申立人を伴ってアメリカに渡航し、ジャパン・○○・コーポレーション(○○会社関係の会社)のロスアンゼルス支社員(現在福社員)として勤務し、申し立て人は昭和44年6月ごろまでアメリカで相手方と同居していた。
2申立人は相手方とアメリカで同居中、相手方の両親とは不和で事毎に葛藤を生じたが、相手方はそれを調整しようとしなかった。そして、相手方は夜遅く、帰宅して申立人と話をする機会も少なく、金遣いが荒く、生活費も十分に渡してくれないので、申立人も昭和35年3月頃から夫と同じ会社の事務員として働いていたが、生活が苦しかった。
3そこで、申立人は、相手方と同居するのに耐え難くなり、昭和44年6月頃に帰国し、現住所に居住するに至った。相手方は仕事の都合で一時わが国に滞在するので、その間に離婚の調停を求める。
C申立人は1960年12月1日相手方の子として、ジョン・ノブオ・ハマダを出産したが、申立人が相手方と別居するに際し、右ノブオを伴って、わが国に帰国した。右帰国する際、相手方は、ノブオの監護につき、申立人に任せ、現在申立人と同居の上、近くの○○小学校に6年生として、通学している。申立人は最近まで料理店を経営していたが、これをやめて店舗を売却し得た代金で生活しているが、近日中に会社事務員として勤務する予定である。現住所は借家で、六畳二間、台所風呂場で、長男との生活のためには十分である。
相手方は申立人の本件申立および主張事実を認めた。
(当裁判所の判断)
@当事者双方の尋問の結果によると、当事者双方は、本件離婚および子の親権者、監護費用の一切の紛争につき、わが国の家庭裁判所(さらに、東京家庭裁判所)で行う旨合意が成立していることが認められる。離婚等に関する国際裁判管轄権の合意は正当であるから、それにより、わが国に国際裁判管轄権があり、また、右合意に基づき当裁判所に国内裁判管轄権も存在する。
各公文書で公文書で職務上真正に作成されたものと認められる申立人の戸籍謄本、婚姻証明書、パスポート、および、申立人、(第1、第2回)、相手方各尋問の結果総合すると、申したて人の主張に事実が認められる。
離婚の準拠法について見るのに、法例第16条により離婚原因発生当時の夫の本国法である相手方の本国法すなわちアメリカ合衆国によるべきところ、同国は地方によりその法令を異にするので、法例27条第3項により、カリフォルニア州離婚法によることになる。しかし、他方アメリカの全集を通ずる抵触法原則第1リステートメント(1934年)第135条によると、「法廷地法は、離婚の権利を支配する。」とし、その注釈では、法廷地は当事者の双方または一方の住所によるとしていた。その第2リステートメント(1971年)第285条によると、「訴提起の時に住所のある修の地方法が離婚の権利を判断するために。適用される」とあり、その注釈では、住所は配偶者の一方の有する住所で足りるとしている。第1リステートメント第28条では「夫と別居した妻は、その別居の時に住所のあった州の法令のよれば、遺棄罪に当たらない限り、夫と別の住所を所得できる。とし、同条の注釈dによると、「婚姻関係が破綻している場合、妻が有責な当事者であってなお妻は妻自身の別個の住所を所得できるであろう。」とする。
妻の住所の所得については、普通法の施行されているアメリカ国内の州間では法廷地法による(第2リステートメント第13条)が、法条を異にする国の間ではこの原則によらない(同条注釈)。妻の所得する住所はアメリカ法上の選択住所ではあるが、第2リスレートメント第15条によると、
「(@)選択住所は、住所を変更する能力のある者によって、所得されるであろう。」
「(A)法的な能力に加え、選択住所を所得する必要がある。こと
(a)第16条で述べるように、物現的に現在していること。
(b)第18条で述べるように精神的な意図有すること。」
「(B)特定の場所において物現的に現在しているとの事実は、精神的意図の要件と同時に存在しなければ。ならないそれらが両者と、もに存在し法的能力の用件がある場合、住所の変更がその場所にされる。」
とし、同第16条では、「その場所に選択住所を所得するためには、人は物理的にそこに現在しなければならない。しかし、特定の生活の本拠である家の形成はこの住所を所得するために必要ではない。」とし、同第18条では、「その場所に選択住所を所得するために、人は少なくとも当分はその場所に家を作。る意思を有」しなければならないとし、同第12条は、「家とは、人の生活の本拠で、家族の社会的民的生活の中心となる場所である。」とする。
そして同第10条は「この主題であるリステートメントの原則は、アメリカ合衆国の一以上の州に於いて要件として事件に適用され、一以上の外国との間において要件として一般に事件に適用される。しかし、特定の国際事件において州際事件で到達したところとは異なる結果を生ずる要因もあるであろう。」とする。
本件に於いて、当事者双方婚姻は前記認定事実によると、破綻状態にあるから、前記説示により、妻である申立人は夫である相手方とは別個の住所を選択所得でき、前記認定の事実によれば、申立人は肩書地に現に住所を定め、当分の間はそこに家を作る意思を有するものということが出来るから、肩書地にアメリカ法上の本件離婚の準拠法は、申立人の住所地法であるわが国の法令によるところになり、わが国の法令によるところになり、わが法例29条により反致が成立し、本件離婚の準拠法は、わが国の民法によることとなる。前記認定の事実によると、当事者間の婚姻関係はには、相手方が妻と姑の間の不和を調整する努力をしなかった協力義務違反、生活費をださなかった扶助義務違反があり、すでに婚姻は破綻し、その破綻は右婚姻義務違反によ生じたもので、将来婚姻関係を回復する
可能性も存在しないといえる。よって、申立人は相手方に対し、民法第770条第1項第5号の離婚を継続しがたい重大な事由に当たる場合として、離婚を請求することが出来、申立人の本件離婚の申し立ては理由がある。
2次に、子ノブオの親権者の指定についての国際裁判管轄権についてみると、わが国国際私法上の住所概念による子ノブの住所は、わが国にあることは前期認定事実から明らかである。そして、後述のように、この準拠法はわが民法である。このように、わが国際私法上の住所概念によるこの住所がわが国に存在し、わが国の法令がその準拠法となり、わが国の裁判所が子の監護につき決定すべき権限を有する場合には、子の監護に関す国際裁判管轄権はわが国あると解するのが相当である。
子の監護関する準拠法についてみると、法例第20条により父の本国法、すなわち、アメリカ合衆国法により、同国は異法地域であるから、法例第27条第3項により、カリフォルニア州法によることになる。ところで、同国の全州を通ず抵触法原則である第1リステートメント(1934年)第146条によると、「離婚その他の方法によ両親の法的な別居の際の子の介護は、子の住所のあ裁判所がいずれか一方の親が行う旨定めることが出きる。」とし、同第22条は、「子は同居の親と同一の住所を有する。」とし、その注釈dによると、両親が別居し、監護権が法的にいずれの親にあるかまだ定められていない場合には、子の住所は同居する親と同一である(第2リステートメント第10条)。
本件に於いて前記認定事実によると、申し立て人と相手方は別居し、子ノブオの別居後の監護につきいずれの親が行うか法的に定められていないから、前記説示に従い、同居の母である申立人と同一の住所であリ、したがって、アメリカ法上の子の監護の準拠法によれば、日本国法となり、わが法例第29条により反致成立し、準拠法はわが。民法となる。
ところで、わが民法第819条にいう離婚の際の子の親権者指定は、民法第766条にいう離婚の際の子の監護者指定のほか、子の財産管理者の指定をも含むと解されているところ、子の財産管理者指定の準拠法は、法例第20条により、父の本国法すなわちアメリカの本国法で、法例第27条第3項によりカリフォルニア州法によることになる。しかし、アメリカの全州に通ずる抵触法原則リステートメントには、この点に関する直接の原則が見当たらない。
そこで、この財産管理権の内容をどのように解するかによって準拠法を異にすることになる。すなわち、子が不動産又は多額の財産を所有している場合には、財産を中心とし、その管理処分行為の権限に関する準拠法として、第2リステートメント第9章でいう場合、主として、財産所在地の法廷地法(たとえば、第226条、第230条、第355条など)によることになり、子の財産が少なく、他方の親から送られる養育費および子の身の回り品を管理処分するなどの子の監護に密接不可分財産の管理処分に関しては、財産管理者の指定もまた子の監護に関する準拠法に従うべきものというべきである。本件では、子ノブオに不動産又は多額の動産などの特に見るべき財産もないことが、申立人尋問の結果から認められるから、子の監護の準拠法によるべきであり、子の監護の場合と同様にわが民法が準拠法となる。また、養育費の準拠法も、同様に、わが民法であると解される。
前記認定の事実によると、子の福祉のためには、子ノブオの親権者を母である申立人と定めるのが相当である。そして、子ノブオの養育費の支払いに関しては、主文第3項の通り当事者間に合意が成立しており、その合意も相当である。また、主文第4項の条項についても合意が成立し、相当である。よって、家事審判法第24条により、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、調停委員前川義一、同佐藤光子の意見を聞いた上、主文の通り審判する。
(家事審判官 高木積夫)
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