イエスというファシスト

序論

本論においては、2000年前の宗教家であるイエスを分析する。そして、その結論を「イエスはファシストであった」と結ぶ。そのための証拠・論拠を、新約聖書と、同時代の覇権国家であるローマの歴史、そして現代におけるファシスト=ヒトラーの人生から挙げる。

参考文献など

ヒトラーおよびローマについての書物は山ほどあり、ここに記される事実はいかなる参照にあたっても一致する。ローマの歴史書としては、「中公文庫1068 ローマの歴史 モンタネッリ」を参考とした。
また、新約聖書はやはり数多くの訳本が存在する。そのうち、ここで引用するのは、「講談社学術文庫318 新約聖書 共同訳・全注」である。共同訳というのは、キリスト教二大宗派であるカトリックとプロテスタントが共同して訳した、ということを表す。この聖書では、登場人物の名前はローマ読みされている。例えば、イエスは「イエスス」、使徒であるマタイは「マタイオス」などである。本論では、参考文献にしたがって、人物名をローマ読みとする。

1.当時のユダヤ人国家について

ここでは、ヘロデ王が在位した前37年頃のユダヤ地方が、第一次世界大戦敗戦後のドイツに似ていることを論証する。
当時のユダヤ人国家は、宗教国家であった。ここで、軍部・政党の影響力と宗教の階級を考察してみる。当時はローマが絶頂期に達しようという時期、すなわちカエサルの後継者アウグストゥスから始まるローマ帝政期の直前である。
また、ヘロデ王の在位の前、前63年に、ローマのポンペイウスによりユダヤ地方はローマに併呑されている。そして西暦4年、ヘロデ王が没し、ユダヤ地方は三分割されている。ポンペイウスによる武力占領と、ローマとユダヤ地方の均衡を保っていたヘロデ王の没後三分割は、まさしく敗戦国への仕打ちである。当時がいかに古代であれ、社会情勢に混乱が生じるのは間違いない。
ユダヤ地方における宗教指導者は、現代でいう政党の長のような役割を果たした。それは、ユダヤ人国家が表面上は宗教国家であることに起因する。宗教指導者層、つまり国家運営部は、金銭的なランクで形成され、現代となんら変わることが無い。彼らは、フランスでいうブルジョアジー、あるいは地元の大地主、または経典研究に没頭する学者群である。その下部に熱心党と呼ばれる、いまでいうプロレタリアート集団が属する派閥が存在した。
このヒラエルキーの中で、現代の政策の替わりに神を論じ、民衆の人気を得るという行為は、現代における政党活動となんら変わりが無い。そして、イエススは熱心党の人間を信者に、つまり現代の党員としたのである。熱心党達が、社会の底辺を支える人間であることを忘れてはならない。つまり、戦争で荒廃した国家において、失業にさらされる一番被害の多い人間達である。
以上のことを総論すると、当時のユダヤ国家は敗戦国に見られる破綻状態を示していたことが伺える。

2.イエススの宣伝活動

ここでは、イエススの行った行為が、ゲッペルスなどの唱える「宣伝活動」であったことを論じる。 前記の新約聖書によれば、イエススは大衆の前で幾度も演説をした。その行動は、ヒトラーが行った「集会」と酷似する。そしてそれは、当時の宗教=政治活動としては白眉であった。その演説とは山上の垂訓などを指す。2000年も前に演説したことがそのまま聖書に述べられているとは考えにくいが、イエススが大衆に向かって演説を垂れたことだけは事実であろう。マタイオスの福音にも、ごくわずかであるが訳本によって全く逆のことが述べられている箇所も存在する。例えば、マタイオス21:28である。
また、イエススの起こした奇跡は、現代で言う軍事的勝利に値する。ある政治指導部がその優秀性を宣伝するには、いかなる国家においてもそれが一番有効である。そして、その類推から、宗教国家の指導者あるいはそれを狙う集団は、「奇跡」を演じるのが効果的である。
さらに、イエススには12人の使徒が存在した。彼らは、現代でいう政党のブレーンである。宗教的な布教活動もさることながら、集団を支えるには資金の調達、行動予定、宣伝内容を決定するブレーンの存在が欠かせない。
あと、聖書の冒頭に述べられる、アブラハムからイエススに渡る系図の存在である。これは、自分の先祖がアブラハムであることを示し、イエススが国を統治することに正当性を持たせるものである。古代の王権国家では、自分が王の嫡子である、先祖が王であるなどの理由によって、国家の統治に正当性を持たせていた。これと同様のことである。
最後に、イエススが宗教活動を始めた時期のユダヤ地方には、「預言者」が氾濫していた。これは現代でいえば政党の乱立ということにあたる。イエススが他の活動家を指して「偽預言者」と呼んでいるのは、その政党への攻撃ということになる。
以上が、イエススの行った宣伝活動である。ここで一番重要なのは、大衆の全面でなにがしらの演説を行ったということである。そして、それがヒトラーの「集会」と酷似することである。

3.エルサレム入城について

マタイオスの福音で述べられるエルサレム入城は、クーデター行為であることを論じる。この場面の描写は、マタイオスの福音21章からである。
イエススはユダヤ地方各地で群衆の人気を集めた後、エルサレムに入城する。ここはユダヤ地方の政権最高機関であり、現代の国会などに相当する。その入城の仕方とは、民衆を引き連れて大勢の力で半ば強引に、といったものであった。そして、入城後は商人や神官といった、旧指導者層を排斥している。この商人は先ほどのブルジョアジー階級、神官はサドカイ派の連中である。
また、イエススが王座に就こうとしていた論述も、聖書に見られる。マタイオス20:20、ヤコボスとヨハンネスの母の願いである。ヤコボスとヨハンネスは12使徒であり、兄弟である。彼らがイエススのブレーンであれば、イエススが王座に就いたとき、彼らは政権の上位を占めるであろう。その母の言は以下の通りである。「王座にお着きになるとき、わたしの息子二人が、一人はあなたの右に、一人は左に座れることを約束してください」。この言に対してイエススは反論している。が、普通の人から見ればイエススのエルサレム入城はあからさまなクーデター行為として映っていたのである。
さらに、イエススが単に荒廃した人心の回復を願うだけならば、わざわざエルサレムの城を占拠する必要などない。ここには、宗教家よりむしろ政治家としてのイエススがある。
以上が、イエススの行ったエルサレム入城の全貌である。なお、イエススの革命政権の描写は、マタイオスの福音26:46まで続く。26:47からは、ユダスの造反・裏切りによる逮捕・処刑である。

4.謀略・そのほか

イエススに洗礼を施したヨハンネスと、イエススを裏切ったユダスについて述べる。彼らが宗教家であると共に、いかに政治に関わっていたかを述べる。
まず、洗礼者ヨハンネスである。彼は「サロメの踊り」によって謀殺された。これは、ヨハンネスがイエススに政党を譲った張本人だからである。洗礼者ヨハンネスの影響力は、現在で言う古参の政治家同様、大きかった。その後ろ盾があるイエススは政治的・宗教的に成功した。これは現代の政治においても、容易に類推可能な事実である。
次にユダス。これは、イエススが王座についてもさっぱり恩恵が降りかからないので、イエススを売ったのである。現代でも、政治的ブレーンであることに対する地位が得られなかったら、指導者を売る。
以上より、当時のユダヤ人社会がいかに政治的であるかがわかったと思う。宗教的色彩の強いこれら二人の人間の挙動も、政治的観点から見ると理にかなったものとなる。

結び

以上四つの理由から、本論ではイエススはファシストであると論じた。イエススのその行動自体は、ファシズムというコードを使うと容易に解釈可能である。
本論では、宗教的な論題を聖書のみで論じるのではなく、歴史的観点からも複合的にイエススを論じている。これは、同一の事柄を違う側面から分析するという手順の、一例であり練習である。一つの事柄を一つの側面のみからしか見ないというのは、危険であり誤謬も多く含まれる。そこには間違った理解が生じる可能性すらある。その危険を回避するために、このような手順はいかなる問題解決の場合においても必要である。
ここでは、なぜイエススの言動がそれほど民衆を惹き付けたのかは論じていない。その論はまた別の機会に譲る。

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