「虚無への供物」は、戦後の推理小説界に登場した突然変異体である。衝撃的な物語展開と奇妙な登場人物が相まって、巨大な畸型奇書を形成している。存在し得ない犯罪を追う探偵が幾人も登場し、銘々に自己主張を繰り返し、事件全体に負のイメージを与えているのである。
小説の舞台は、日本国、東京都である。時刻は、1954年(昭和29年)の十二月十日から翌年にかけてである。ここで注目すべきは、第二次世界大戦終結から九年しか経ていないということである。現代とも戦前とも言えない、独自の世界観である。
「虚無への供物」が発表されたのは、1964年(昭和39年)である。作者は中井英夫(塔晶夫名義)である。ここでの底本は、1987年発行の「中井英夫作品集 X 死 (第十巻)」である。これを元として、「虚無への供物」を読み明かす。この一大文学研究を、読者あるいは愛好者という、平凡な観点で読了してもらえると有り難い。稚拙な文に重ね、浅はかな主張であるが、それをお許しいただきたい所存である。
全ての業は氷沼家にある。それをより理解する為に、簡単な家系図をつけた。画像はクリックすると拡大したものが表示される。青枠で囲った部分は、事故などにより死亡したことを示す。

物語は、一九五四年十二月十日の、バア "アラビク(ARABIQ)"から始まる。一九五四年の事件が描写される。おキミちゃんがサロメの踊りを踊る。主人公、光田亜利夫および奈々村久生が登場する。おキミちゃんの投げた黄薔薇が、亜利夫の足元に落ちる。亜利夫と久生はいくつか言葉を交わす。今夜のサロメには、乳房がないことが記述される。
バア "アラビク"は男色酒場(ゲイバア)であった。店内の描写がなされる。アイちゃん(氷沼藍司)および氷沼蒼司の記述がある。氷沼家には、洞爺丸で不幸があったと言う。藍司の両親と蒼司の両親の四人が志望した。黄薔薇の花言葉が説明される。藍ちゃんが登場する。
おそらく、ここは笑うところであろう。連続密室殺人が発生しそうな小説の冒頭の第二節目で、いきなりゲイバーが登場するのだから。不意を衝かれた読者は、不安定に見えるこの小説に、一抹の疑問と失笑を投げかけるである。
藍ちゃんの風体が語られる。父親の名前は菫三郎という。藍司の女友達であるルナちゃんの記述がある。洞爺丸の事故の描写がある。亜利夫と久生と藍ちゃんの間で会話がある。牟礼田俊夫と氷沼家は遠い姻戚関係にあるという。藍ちゃんは、アイヌに追いかけられたと言う。
中井英夫がどこの出身かは知らないが、北海道と言えばアイヌという短絡的思考には閉口する。
ホヤウ・カムイ(洞爺湖の蛇神)の使いが来たという。氷沼家は何らかの理由があってアイヌを恐れている。曽祖父誠太郎が行ったアイヌへの迫害が語られる。そのためか、氷沼家の人間は碌な死に方をしないという。
冒頭から、洞爺丸、アイヌおよび函館大火と、北海道関連の事項が三つも登場する。日本に存在する数少ない異教の神として、アイヌ神話が取り上げられている。他の推理小説にはあまり登場しないアイヌという語を使い、この物語の独自色を出したものと思われる。
久生が口を開く。『氷沼家殺人事件』が計画されていると主張する。久生は既に探偵気取りである。亜利夫をワトソン役に見立てている。目白の氷室家には無論古代時計室などは無く、郊外の文化住宅であると語られる。藍司は、弟の紅司が与太者と変な付き合いがあるという。久生のフィアンセ牟礼田が、氷沼家の惨劇を予言したという。
この「虚無への供物」は様々な推理小説へのオマージュが見られる。古代時計室とはもちろん小栗虫太郎の作品に出てきたものである。このような傾向は今後も続く。
十二月十一日夜。亜利夫が氷室家に赴く。氷室家の場所と特徴が語られる。翌十二日、亜利夫は久生に報告に行く。久生は、未来の殺人事件について語る。殺人事件の後に推理を働かせるのは古いという。
ここでの久生の言は、「虚無への供物」の正確を端的に示している。起こっていない犯罪に対する推理、という異常な筋が登場する。
久生への報告は続く。橙二郎の仔細が亜利夫から語られる。紅司、吟作および八田皓吉の名前が語られる。氷沼家の間取りが紹介される。氷沼家では、自分の部屋を名前に因んだ色で統一している。また、氷沼家では誕生石が送られるという。二階への階段はオルガン階段である。久生は、これだけの情報で未来の殺人事件が推理できたという。
久生は、橙二郎が緑司に送られるであろうエメラルドを狙っているという。吟作と橙二郎の不仲も指摘する。久生はもっと情報収集するように亜利夫に促す。八田皓吉が登場する。八田皓吉が亜利夫に名刺を渡す。久生は一人で旅行すると言い出す。
氷沼家。紅司、蒼司および藍司が登場する。紅司と亜利夫の間で、部屋の色についての会話がある。ポーの大鴉が引き出される。紅司は大長編探偵小説を構想している。『凶鳥の黒影』のことである。蒼司は二階に上がる。
氷沼家の同年代三人が一同に会する、唯一の平穏な場面である。
紅司は『凶鳥の黒影』のトリックを語る。花亦妖輪廻兇鳥なる歌舞伎仕立てするとも言い出す。
十二月二十六日。久生が帰京する。久生は電話口で、紅司が殺されることは二十年前から決まっていたという。
十二月二十二日に、紅司が風呂場で死亡する。急な心臓病だという。紅司死亡事件、および藤木田老の詳細が語られる。
事件前の氷沼家が描かれる。紅司の数式が登場する。紅司の考える密室に必要な式だという。八田は、自分が売る家には住み込んでみるのだという。紅司の部屋が描写される。藤木田老はゲイバーにいた久生のことを知っていた。
おそらく、ここも笑うところであろう。藤木田老の一人称は"ミイ"である。この老人の怪しげな魅力によって、錯誤した笑いが生まれるのである。
アラビクにいた夜、藤木田老は変装してそこに訪れていた。おキミちゃんと夜食や買い物を楽しんだという。藍ちゃんは、ラジオを聴きに自分の部屋へ行く。その後、紅司は風呂場で死亡する。風呂場は完璧な密室だったという。紅司の背中には、十字架型のみみず腫れがあった。それは鞭の痕だという。亜利夫が見た風呂場が描写される。風呂場には電気洗濯機があり、なぜか紅いゴム鞠が落ちていた。紅司の手当てをしなかった橙二郎が、嶺田医師に詰問される。嶺田医師が言うには、紅司は薬物を乱用していたという。紅司の背中の十字架痕により、事件は病死ということで片付けられることとなった。
ここでも藤木田老の発言が笑いを醸し出す。彼の使う二人称は、"ユウ"である。殺人のテンションの中にさらに張られた不謹慎である。また、紅司の死に残された倒錯的な十字架痕は、事件に被虐の光を与えている。殺人の中のさらなる異常性が発露している。また、藤木田老も久生に負けず探偵熱をあげており、これからの奇抜な展開の布石となっている。
二十七日。亜利夫、久生、藍ちゃんおよび藤木田老がアラビクに集合する。久生と藤木田老の奇妙な対決がある。彼ら四人は、紅司の死をすでに殺人事件であると思い込んでいる。彼らは事件のアリバイやトリックについて、頼まれてもいないのに勝手に語りだす。事件の時間表が提示される。久生は、風呂場に犯人が隠れていたと言い出す。
推理合戦の始まりである。起こるべくして起こった『氷沼家殺人事件』の解釈を、主に藤木田老と久生が語りだす。珍事に容易に飛びついてしまう人間の性(さが)である。あるいは、探偵となって活躍しようとする虚栄心、見栄や好奇心の発現である。事件を、他人の死を求める破戒者たちの顔ぶれである。平凡な事件を豪華な殺人事件に仕立て上げようと試みる点では、似たような発想の小説がある。
久生の推理は続く。事件直後の情景が細かく記される。橙二郎の奇行が挙げられる。十日後の一月六日に、各自の推理を発表するという算段がつく。亜利夫は、みんながこの事件をあまりにも持ち上げていることに疑問を抱く。また亜利夫は、氷沼家には千年以上前から五つの墓が用意されていると言い出す。
一月二日に、亜利夫は氷沼家を訪れていた。しかし氷沼家の誰とも話すことなく去った。一月六日、アラビクの二階。亜利夫の推理から始まる。紅司の死んだ風呂場は、飾られていた花も含めて白の部屋を構成していたという。また、東京には、目黒、目白のほかに目青、目赤および目黄という五色の不動があるという。この非合理な発端に、藤木田老は嬉しがる。先にでた『続・幻影城』が引き出される。犯人はコンガラ童子で畸型だという。その犯人は、洗濯機の中に隠れていたという。
序盤の山場とも言える、あまりにも不毛な推理合戦が遂に始まる。見世物やショウや畸型を見物し、いろいろと並べ立てる通行人となんら変わらない所業である。殺人事件を楽しんでいるかのようにも取れる。亜利夫は五色の不動という奇抜な発端を投げかける。しかし、そのトリックが陳腐であると、久生や藤木田老に酷評される。
続いて、久生の推理が始まる。久生は、旅行に行くと見せかけて氷沼家の歴史を漁っていた。まず、誠太郎の秘密が明かされる。誠太郎と共に渡米した二人の人物が悲劇の始まりだという。その二人が日本で活躍することにより、誠太郎は"二流の人"の惨めさを味わったという。そのため、アイヌ狩りをするかのようにまで人が変わったという。誠太郎の娘である綾女の記述がある。光太郎は、世界を飛び回ったときに業を背負ったのだという。紫司朗は植物研究家であった。花の色が何で決まるかという問題を探っていた。一種類の花に三原色が揃って咲く事は無いという。
朱実の履歴が語られる。朱実はとある男性と駆け落ちして広島に店を構えた。しかし失敗。本家の遺産を狙うようになった。そして朱実は妊娠すると、生まれる前からそれを黄司と名づけ、トパーズをねだった。目白の氷室家の赤の部屋で黄司が誕生した。黄司は朱実の説得により、蒼司および紅司の兄弟となった。そして朱実が遺産の権利を主張して絶縁される。
紫司朗は、青と黄だけの色を咲かせる花は地球上に存在しないことを突き止めた。これは、黄司に対するあてつけでもあった。そして黄司は原爆で死亡する。これが氷沼家第三の業である。犯人は、原爆で死んだはずの黄司であるという。 黄司は、風呂場で紅司と密会したという。久生は風呂場の窓ガラスのトリックを説明する。
さらに、藍司の推理が語られる。藍司はあっさりと久生の説を覆す。全ては紅司の計画だという。与太者も、背中の腫れも全て計画だという。紅司の日記が出てくる。藍司は、それは贋日記だという。書き始めが十二月十日、終わりが十八日である。紅司を責めていたと思しき与太者の名前は、鴻巣玄次という。その日記の十二月十八日に、"死んだ母への手紙"が記されている。紅司は、橙二郎の招待を暴いて打ちのめす算段をしていたという。紅司は、背中に痣がある人間を用意していたという。紅司はその痣に似せる為に自分で十字架痕をつけたという。つまり、替え玉死体である。しかし、この説は皆に酷評される。
最後に、藤木田老の推理である。藤木田老は、三人の推理した犯人を批判する。まず藤木田老は、紅司が爺や(吟作)をお使いに出させたことを指摘する。蒼司、紅司、青い字、橙二郎、皓吉、玄次、Xの容疑者を挙げ、消去法で容疑者を除いていく。そして、鴻巣玄次は実在し、橙二郎と共謀していたと言う。鴻巣玄次こそが殺人者だと言い張る。藤木田老は、鴻巣玄次の犯行とトリックを語る。
全員の推理が終了する。久生は、橙二郎の子供である緑司などは存在しないという。それを受けて、藤木田老が自ら行った調査を説明する。橙二郎の息子と呼ばれている赤ん坊は、同じ産院の吉村夫妻を、金で買収した結果であった。藤木田老は、自分の推理を正しいと思い込んで、早々と犯人の処置を考えている。藤木田朗は、犯罪の物証も無いので、心理的証拠から犯人を挙げようと言い出す。『キャナリー殺人事件』(カナリア殺人事件のこと)の真似をして、麻雀をしようと提案する。
アラビクから場面は移り、亜利夫の回想となる。蒼司が、この事件をどのように思っているか考える。また、氷沼家は大きな改装が入り、いよいよ平凡な中流住宅になる。しばらくぶりに、亜利夫は氷沼家に訪れる。蒼司から、紅司が植えたと言う薔薇を見せられる。その薔薇の花びらは光るという。紅司が言うには、その薔薇の名前は<虚無への供物>だという。蒼司は、近いうちに親族会議を開くので、亜利夫にも出席して欲しいという。
二月五日、氷沼家で親族会議が開かれる。蒼司は、吟作が分裂病のため入院したのだと言う。吟作はすっかりお不動さまに憑りつかれていたという。親族会議の出席者は、蒼司、藍司、橙二郎、八田皓吉、藤木田誠、そして亜利夫の六人である。氷沼家は財政的に厳しく、そのため家を売却するほかない。PR教団との話がまとまりかけているものの、蒼司は橙二郎にこの家を買って欲しいと主張する。死人の業を、橙二郎に肩代わりして欲しいのだという。
親族会議は終わる。仕事の済んだ皓吉は、六人で麻雀をやろうと提案する。藤木田老は、亜利夫に麻雀中起こったことのメモを頼む。動静一覧表である。そしておもむろに麻雀が始まる。各一荘において、二位の者が抜けるというルールである。二荘目で、橙二郎が就寝する。途中で茶を飲む。六日の朝まで麻雀は続けられる。七荘目までまわっていた。
二月六日。橙二郎は密室となった書斎で、死亡している。
橙二郎の死因はガス中毒であった。書斎のストーブの栓が全開になっていた為である。氷沼家のガスのメーター・コックは故障か何かしており、閉めないことになっているのだという。メーター・コックを締めたのは八田皓吉であった。そして、お茶を入れるためにガスを使用してしまい、橙二郎を死に追いやったのは、亜利夫自身であった。藍司は、橙二郎が寝ていた書斎に、犯人が遺していったものがあると言う。
主人公である亜利夫が、図らずとも殺人者となってしまう。これは、事件の傍観を決め込んでいた人間の立場の逆転である。ともすると事件を楽しんでいた主人公が、精神的な窮地に立たされるのである。
二月七日。日記という形で、警察の現場検証が描かれる。ストーブの栓は固く、人間の手でないと動かせないという事実がわかる。書斎にかけられた厳重な鍵は、橙二郎が扱っていた薬物、毒、あるいは劇薬を保護するものだという。
警察は、橙二郎の事故を単純な過失死として処理した。橙二郎の内縁の妻である圭子が言うには、夜になると緑司の目が光るらしい。蒼司は以下のように言う。緑司という名前は、橙二郎が氷沼家の復興を願ってつけた名前であった。ただし、圭子自身の子供は死産であった。また、氷沼家の宝石は全て売ってしまい、ひとかけらも残っていない。
このことで藤木田老の推理は無意味なものとなった。そして藤木田老は東京を去り、新潟へ帰ってゆく。藤木田老は何もかも知っているという。彼は以後、登場しない。久生は風邪で寝込んでいた。久生は、氷沼家にガス殺人が出てこないわけが無いと主張する。藍ちゃんは、部屋の遺留品こそが凶器だという。
遺留品すなわち凶器は、ガス・ストーブだと藍ちゃんは言う。久生は懲りずに探偵ごっこを続ける。亜利夫は皓吉が犯人だと目星をつける。しかし久生は反論する。牟礼田が十八日の夜に帰国するという。その一日前、二月十七日に、戸塚の老人ホームS・B園で火災があり、綾女を含む九十余名が焼死する。原因は、カイロ灰の不始末であった。不思議なことに、死体が一つ多かった。
預言者・牟礼田がようやく登場する。牟礼田、久生、亜利夫、および藍司の乗る車の中で会話がある。話題は無論、S・B園の火災についてである。藍ちゃんは、氷沼家の血を絶やす為の犯行であると思っている。
目白の氷沼家に赴く。牟礼田は蒼司に、腰越にある北大路さんの別荘に行くように勧める。
二月二十八日。事件について話し合いたいということで、亜利夫、久生、それと藍ちゃんは牟礼田の家に行く。久生は探偵役を未だに降りようとしない。牟礼田は、死ぬのは橙二郎と蒼司だと思っていた。牟礼田は氷沼家の死の本質を語りだす。それは、"無意味な死"の連続である。牟礼田は、S・B園の火災は殺人であって欲しいという。さらに、犯人がいないのなら、ぜひとも創らなくてはならないと語る。亜利夫たちの探偵ごっこはそのためであると思っていたらしい。牟礼田は、S・B園一人増えた死人を、吟作あるいは藤木田老だと仄めかす。また、牟礼田から、二月五日に行われた麻雀について質問がある。途中で、藤木田老が藍ちゃんの牌の中から一枚を引っこ抜いたという。
この「虚無への供物」の、巨大で異様な主題が愈々登場する。中でも、"無意味な死"という言葉は、後々まで重く暗く響く。この伏線は、一読するだけでは気付けない。しかし、"無意味な死"という一節にこそ、事件の動機が凝縮されているのである。
彼らは、事件の経過を一通り振り返る。牟礼田は、誠太郎の真実の人生を語る。また、藤木田は事件の本質に気付いて新潟に帰ったという。八田皓吉についてはわからないという。牟礼田は、『虚無への供物』と名づけられた薔薇の方が気になるという。亜利夫は、橙二郎殺人のトリックは、書斎にあった赤い上衣の人形だという。
亜利夫の説はあっさりと否定される。久生が性懲りなく推理を語り始める。書斎にあったシャンデリアがガス孔だったと断言する。藍ちゃんが犯人だという。ただちに藍ちゃんは反論する。次第に『犯人』の存在があやふやになってゆく。牟礼田は、鴻巣玄次は存在しないと言い切る。紅司の十字架痕は蕁麻疹であり、特異なアレルギー体質に過ぎなかった。紅司の罪の意識と重ね合わせ、その十字架痕はいっそ倒錯者の証だという錯覚が必要になった。牟礼田は氷沼家殺人事件を幻として終わらせようとしている。
しかし、鴻巣玄次は実在したのである。
三月一日、本郷動坂上にあるアパート黒馬荘。他人のプライバシーに興味を持つ男、伊豆金造が登場する。彼は小心者であった。金造は鴻巣玄次の部屋に招きいれられる。そこで、ホット・ウイスキーを勧められる。金造は、それを毒入りだと思い込む。そこに、玄次の兄である八田皓吉が登場する。
場面は一転する。実在と不在の境界を彷徨っていた鴻巣玄次が、唐突に出現する。さらに、皓吉がその義兄であることも明かされる。
金造は皓吉の登場を奇貨と見て、玄次の部屋から脱出する。玄次と皓吉は口論を始めたらしく、興味を持った金造は忍び込み、様子を伺う。鴻巣玄次は、親を殺したらしい。鴻巣玄次の本名は川野元晴、皓吉の実名は広吉という。口論の途中、玄次は毒を飲み、死亡する。亜利夫ら事件関係者は、これが第三の密室殺人としか思えなくなっていた。玄次が死亡した際の状況が語られる。
八田皓吉の供述である。皓吉は事件の日、事務所に匿名の電話が来たので黒馬荘に行ったのだという。皓吉は、「毒飲んだあ」と叫んでから部屋の外に出たと主張する。続いて、伊豆金造の供述である。小心者である金造は、警官を前にしていよいよ尊大な口調になっている。目撃者の証言では、とよ婆さんのものが一番信じられるらしい。また、玄次(川野元晴)の両親である川野夫婦の死亡状況が詳しく語られる。
鴻巣玄次すなわち川野元晴の素性が詳細に述べられる。元晴は絵描きに興味をもった。しかし父親が具材を買ってくれないので、文房具屋で万引きをした。松次郎は厳しく折檻した。また、現在の元晴の人形絵師は見入りのある職であり、実家に金の無心などにはいくはずも無い。
松次郎の本当の死因は、縊死の上に絞死を重ねたものであった。
三月七日、亜利夫たちは牟礼田の家に集まる。藍ちゃんは家出したという。ルナちゃんこと月原伸子が登場する。それらを含めて、久生や牟礼田の推理が展開される。牟礼田は、『凶鳥の黒影』における第四の密室殺人を先に作り出そうと言い出す。牟礼田の書いた殺人日暦が示される。殺人事件が多発していることを挙げる。また、黒馬荘の部屋には第四次元の出入り口があるという。
ここで、未来の犯罪を先取りするという、奇抜な発想が登場する。
牟礼田は推理する。皓吉はゴーレムだという。また、殺人現場を見に行こうと提案する。次に死ぬのは皓吉、それも他殺であり、氷沼家の書斎であるという。
三月十三日。皓吉は管理の為、氷沼家に住んでいる。牟礼田は放火暦を取り出す。放火は氷沼家殺人事件に深い関わりを持つという。亜利夫たちは現場検証に赴く。紅司が死んだ際にかけた、皓吉への電話が話題に上る。
三月十三日の日記。現場検証の続きが語られる。続いて、三月十七日の日記。事件は現実と非現実の二重映しなっているという。さらに、三月十九日の日記。皓吉が書斎を"黄色の部屋"にするという。牟礼田が言うには、二十一日に第四の密室殺人が幕を開けるという。それは小説の形式で書くという。題は『凶鳥の死』である。亜利夫は、牟礼田が何を喋っているのかわからなくなる。
三月二十一日。皓吉、亜利夫、久生、牟礼田が登場する。氷沼家の黄色の部屋を見せてもらう。久生たちは氷沼家を出て、ロバータで会話する。牟礼田は、捜査線上には浮かんでこない第三の男の存在を仄めかす。亜利夫は、皓吉の背後にいる黒幕が黄司だと指摘する。
牟礼田は、黒馬荘の玄次の向かいの部屋に住んでいた浜中鴎二こそ、黄司だという。久生がおもむろに推理を語りだす。さらに牟礼田も語りだす。一向は黒馬荘に向かう。一行が着くと、片方だけの黄色の靴下がある。牟礼田は、不動と薔薇と犯罪を元にした犯罪方程式を導き出す。f(不動・薔薇・犯罪)=0 である。
亜利夫たち三人は目黄不動に赴く。そのころ、氷沼家に藍ちゃんが出現する。藍ちゃんは黒馬荘に住んで、皓吉のトリックを暴いたという。皓吉は朱実の取り巻きの一人であったという。黄司は皓吉の子供だという。皓吉と黄司は共謀していたとも指摘する。藍ちゃんが黒馬荘のトリックを一通り言い終える。すると、おキミちゃんこと氷沼黄司が白痴じみた微笑をたたえ、登場する。
死んだとばかり思われていた黄司の登場である。これこそ、現実の非現実の境界である。読者も知らぬ間に、奇妙なワンダランドが堂々と出現する。この第四章は、著者の奇計と策略に満ちている。
亜利夫たちが、おキミちゃんが黄司だと気づく。ノックスの『探偵小説十戒』第一条の"真犯人は話の最初から登場していなくてはならない"という条件にも合致する。また、黄司の協力者としてお花婆あが挙げられる。アラビクの二階で行われた推理くらべは、お花婆あに録音されていたという。S・B園で増えた死体は、お花婆あのものであると牟礼田は促す。亜利夫たちはアラビクに赴き、おキミちゃんとお花婆あの居所を探る。二人とも行方知れずになっていた。
場面は再び氷室家に移る。黄司と藍司の間で会話がある。 場面は移り、亜利夫たちである。亜利夫、久生、および牟礼田の三人は目黄不動に辿り着く。牟礼田は、藍ちゃんを囮にして黄司を捕らえようとしていた。しかし牟礼田はそれは失敗したかもしれないと発言する。 黄司は、藍ちゃんと黄色の部屋を使ったトリックを創作中である。そして、黄司により皓吉が殺される。そして、死体エレベータが完成する。
牟礼田が指摘するには、バア"アラビク" でおキミちゃんが踊ったときに、照明の色で殺人を予告していたという。亜利夫と久生は腰越まで蒼司を見舞いに行き、牟礼田は警官を引き連れて氷沼家へと行く。牟礼田と警官たちは氷沼家へと突入する。逃げ場を失った黄司は赤の部屋に逃げ込み、そこで服毒自殺してしまう。藍ちゃんは無事であった。
なんら違和感なく、劇中劇めいたものが出てくる。大半の人間は、筆者が用意したこのトリックに嵌ってしまうのである。この小説に於ける、一つのクライマックスである。どこまでが『凶鳥の死』で、どこまでが本筋かは容易に判断できかねる。しかし読んでみると、四章のこの部分までがそれに該当する。
三月二十七日。亜利夫、久生、藍ちゃん、および牟礼田が、『凶鳥の死』の批判をしている。黒馬荘で見た黄色の靴下は、牟礼田が黄司の存在を促す為に、買っておいたものだという。さらに、黄色の部屋を作るように皓吉に促したのも、牟礼田であった。牟礼田は、氷沼家の悲劇を悲劇らしく終わらせる為に苦労しているという。牟礼田は、『凶鳥の死』で重要な点は、黄色の部屋が密室ではない密室ことであるという。牟礼田は死体エレベーターのトリックを語りだす。ここで、紅司が生前に提示した数式が登場する。牟礼田は、向島へ花見に行こうと提案する。雪、月とくれば残るのは花だからである。そこで驚くべき真相が明かされるという。
四月五日。亜利夫、久生、藍ちゃん、および牟礼田は花見に来る。前回の推理の続きを行う。牟礼田は、なぜ黄色の部屋が密室出なかったかを講釈する。ひとしきり藍ちゃんは話すと、その場から去ってゆく。残った三人は、藍ちゃんが犯人では無いかと疑いはじめる。続いて、久生もどこかへ行ってしまう。亜利夫と牟礼田は吟作のいる精神病院へと向かう。
吟作のいるS――精神病院。医師との間で、薔薇の話をする。病院には薔薇園があり、患者の手に依って栽培されている。吟作が登場する。彼はすっかり気ちがいになっていた。吟作の持っていた経文『仏説聖不動経』に、犯罪方法が書かれている。六月十八日、S――精神病院は漏電により火災、吟作を含む二十名に近い焼死者を出す事となる。
四月十一日。亜利夫が、久生からの呼び出しを受ける。久生は何もかも解ったという。シャンソン喫茶"モン・ルポ"で会う。久生は、藍ちゃんが事件のたびに歌っていたシャンソンが、事件の鍵だという。十二月二十二日に、藍ちゃんの部屋のラジオでかかっていた曲は、放送されたものと違う。藍ちゃんは、事件のたびに犯罪に相応しいシャンソンを歌っていたという。
久生は、『凶鳥の死』に隠された筋書きおよび"第四"、"第五"の二つの密室を説明し始める。黄色の部屋の真実が明らかにされる。
目白の氷沼家に着く。さらに久生は、紅司の死のトリックをも説明する。藍ちゃんが胴体に縄を巻きつけて二階からぶら下がり、風呂場を覗いている。氷沼家の鈴を鳴らすと牟礼田が出てきて、ロバータで待てという。久生はさらに推理をぶち上げる。すると牟礼田がいつの間にか登場している。紅司は、風呂場でワンダランドを見つける手はずだったという。亜利夫たち三人は黒馬荘に赴く。とよ婆さんにおキミちゃんの写真を見せる。それは浜中鴎二の弟だという。
四月十七日。蒼司、藍司、亜利夫、久生、および牟礼田がいる。特に進展も無いまま、亜利夫ら三人は氷沼家を出る。が、久生は藍ちゃんを追い詰める為に氷沼家へと取って返す。亜利夫もそれに続く。
氷沼家。蒼司、藍司、久生、および亜利夫の四人が昔の"青の部屋"で介する。そこで久生は、藍司を犯人として告発する。『凶鳥の死』を引き合いにして、藍ちゃんのトリックを暴いてゆく。それに藍ちゃんは反論する。そして藍ちゃんは、蒼司こそが犯人だと言い出す。
藍ちゃんは、浜中鴎二こそ蒼司だという。さらに、亜利夫が蒼司からもらった皓吉の名刺にはトリックがあるという。住所と電話番号の場所が一致しないという。それを利用して、蒼司は氷沼家の隣にいたという。さらに、電話に出たのはおキミちゃんだという。ここで、紅司殺しのトリックを亜利夫が語りだす。
亜利夫は、紅司が死んだ風呂場の密室は、洗濯機を使えば容易に構築可能だという。亜利夫は、蒼司に聖不動経の経文を見せる。それには、蒼司がしたことの全てが書かれているという。そしてそれに沿って、氷沼家に火をつけて風呂場で自殺するなら、この事件の起承転結が着くと言い出す。
蒼司は、殺人者としての本性を表に出す。蒼司が手を下したのは、橙二郎ただ一人である。また、庭にある薔薇は光るわけでもない、普通の薔薇である。蒼司が紅司の事件の真相を語る。
蒼司は、続いて橙二郎、および鴻巣玄次の事件も語る。
蒼司が事件の動機を語る。紅司および藍司は洞爺丸の事件の後、それぞれ倒錯の空想世界へと入り込んでいった。しかし蒼司はそれが出来なかった。やはり洞爺丸の非人間的悲劇が殺人への衝動となっていた。そして、蒼司は亜利夫と久生を非難する。蒼司の考えるお化け、あるいは虚無の正体が語られる。どんな残忍な事件でも、当事者で無い限りは見世物にごく近い。全てを語りつくすと、蒼司は氷沼家から立ち去る。
五月某日。その年の前半に起こった事件が語られる。牟礼田はパリに帰るという。紫雲丸の事件が語られる。
久生は、まるで蒼司を実験動物に扱ったかのような牟礼田に対して、糾弾する。牟礼田は、今の日本には純粋な悪、悲劇らしい悲劇が必要だと主張する。それが人間の秩序の回復に繋がるという。
亜利夫は、この事件のことを小説にするという。藍司は、倒錯の世界から完全に解き放たれていた。牟礼田は、蒼司をパリに連れて行くという。
ここで、小説の結尾が書き出しに結びつくという円環的な手法が用いられている。「ドグラ・マグラ」へのオマージュであろうか。
「虚無への供物」は、奇書として讃えるに相応しい内容である。外国的な雰囲気を持ち出さず、日本的な情感のみで話が進む。起こっていもいない事件の犯人を捜すなど、滑稽な部分も含まれており、読者を十分に楽しませてくれる。中でも白眉なのは、41節から始まると思われる「凶鳥の死」であろう。そもそも小説は空想的である。その中にごく自然に劇中劇めいたものが登場することで、読者を活字の混沌の中へと導くのである。非常に上手い手法である。
また、歴史的事実が巧妙に操られ、物語の中へと溶け込んでいる。外国からの概念の輸入でなくとも、ドメスティックな事件や発想だけで、殺人事件が見事に構築できるという好例である。
殺人の動機も甚だ巨大である。無意味な死への供物が、その中心にある。無意味な死を払拭する為の供物、それが殺人であり死体である。この異常とも言える動機は、普通考えられる金銭や怨恨などからはかけ離れている。「虚無への供物」という舞台でのみ存在しうる動機である。その動機と、主人公達の探偵ごっこが相乗している。見物人のごとき探偵役たちと、推理小説の読者を見事に合致させているからである。
「虚無への供物」が成したこのような偉業は、後の推理小説界にまで大きく影響し、遠く語り継がれるであろう。
虚無への供物を年代順に把握するのは容易である。しかし、物語をより明確に示す為に、ここに年表を付す。
| 西暦 | 和暦 | 事項 |
| 1934 | 昭和九年三月二十一日 | 函館大火。光太郎死亡。 |
| 昭和十年十一月 | 黄司誕生。 | |
| 1945 | 昭和二十年八月六日 | 広島に原爆投下。朱実ら三名死亡。 |
| 1954 | 昭和二十九年 | 洞爺丸事故。紫司朗および菫三郎ら四名死亡。 |
| 1954 | 昭和二十九年十二月十日 | バア "アラビク" にて物語が始まる。 |
| 十二月十一日 | 亜利夫が氷室家を訪れる。 | |
| 十二月十二日 | 亜利夫は久生に氷沼家の報告をする。 | |
| 十二月二十二日 | 紅司が風呂場で死亡する。 | |
| 十二月二十六日 | 久生が帰京する。亜利夫は久生に事件の報告をする。 | |
| 十二月二十七日 | 亜利夫、久生、藍ちゃんおよび藤木田老がアラビクに集合する。 | |
| 1955 | 昭和三十年一月六日 | 亜利夫、久生、藍ちゃんおよび藤木田老がそれぞれの推理を披露する。 |
| 二月五日 | 氷沼家で親族会議が開かれ、その後麻雀となだれ込む。 | |
| 二月六日 | 橙二郎が死亡している。ガス中毒である。 | |
| 二月十七日 | 戸塚の老人ホームS・B園で火災、綾女を含め九十余名が死亡。 | |
| 二月二十八日 | 亜利夫、久生、藍司、および牟礼田が事件について語る。 | |
| 鴻巣玄次の両親の絞殺死体が見つかり、玄次は指名手配される。 | ||
| 世田谷で大火、昭和女子大などを焼く。 | ||
| 三月七日 | 亜利夫たちは牟礼田の家に集まる。 | |
| 三月十三日 | 亜利夫たちは現場検証に行く。 | |
| 三月十九日 | 牟礼田が"黄色の部屋"を使った第四の密室殺人を書くという。 | |
| 三月二十一日 | 亜利夫、久生、および牟礼田は現場検証に赴く。 | |
| 三月二十七日 | 亜利夫、久生、および藍ちゃんは『凶鳥の死』を批評する。 | |
| 四月五日 | 亜利夫、久生、牟礼田は花見に赴く。 | |
| 四月十一日 | 亜利夫らはさらに推理を重ねる。 | |
| 四月十七日 | 蒼司のアンバースデイ・パーティーが開かれる。 | |
| 真犯人の告発が行われる。 | ||
| 五月某日 | エピローグ。 | |
| 六月十八日 | S――精神病院から出火。吟作を含む二十名ほどが焼死。 |
戦後日本の探偵小説変異体だけあって、実に様々な書物が引用されている。それは「虚無への供物」という物語を見事に彩っている。よって、ここに関連図書目録を付す。
| 節 | 作家 | 作品 | 探偵 | 備考 |
| 5 | 久生十蘭 | |||
| コナン・ドイル | 隠居した絵具商 | |||
| 6 | 白の女王 | |||
| 7 | 王様の使者 | |||
| 9 | エドガー・アラン・ポー | 赤き死の仮面 | 青・紫・緑・橙・白・菫・黒。 | |
| エドガー・アラン・ポー | アッシャー家の崩壊 | |||
| エドガー・アラン・ポー | 大鴉 | |||
| 13 | ルイス・キャロル | 鏡の国のアリス | ||
| ルイス・キャロル | 不思議の国のアリス | |||
| ノックス | 探偵小説十戒 | |||
| 14 | ボートルレ | |||
| アガサ・クリスティ | エルキュール・ポワロ | |||
| ヘンリ・メリヴェール卿 | ||||
| ヴァン・ダイン | 探偵小説二十原則 | |||
| 江戸川乱歩 | 続・幻影城 | この本に含まれる"密室トリック集成"が引用される。 | ||
| 江戸川乱歩 | 化人幻戯 | |||
| 江戸川乱歩 | 影男 | |||
| 15 | ディクスン・カー | 三つの棺 | ||
| 16 | コナン・ドイル | 四つの署名 | ||
| ドドネウス | 薬用植物史 | 紫司朗の蔵書。 | ||
| ディレニウス | 苔の歴史 | 紫司朗の蔵書。 | ||
| リンネ | ゲネラ・プランタルム | 紫司朗の蔵書。 | ||
| 18 | オルダス・ハックスレー | 知覚の扉 | ||
| 19 | 僧正殺人事件 | |||
| スタインベック | エデンの東 | 映画の主演はジェームス・ディーン。 | ||
| シェイクスピア | ハムレット | |||
| 20 | 泥棒日記 | |||
| 蛭川博士 | ||||
| キャナリー殺人事件 | フィロ・ヴァンス | カナリア殺人事件のこと。 | ||
| アクロイド殺し | ||||
| 角田喜久雄 | 怪奇を抱く壁 | |||
| ヴァレリー | 失われた美酒 | 虚無への供物、オフランド・オゥ・ネアン。 | ||
| ミドウィッチ・カックー | ||||
| 27 | 赤毛のレドメインズ | ピーター・ガンス | ||
| チェスタートン | 死体を隠す為に戦争を起こす将軍の話。 | |||
| 30 | 黒死館殺人事件 | |||
| クロフツ | ガスを用いた密室殺人。 | |||
| 34 | スイフト | ガリバー旅行記 | ||
| 36 | ユダの窓 | |||
| 38 | ガストン・ルルー | 黄色の部屋 | ルレタビーユ | |
| 43 | 横溝正史 | 真珠朗 | ||
| 46 | レエモン・アツソオ | 詩。 | ||
| 47 | 夢野久作 | ドグラ・マグラ | ||
| 53 | 江戸川乱歩 | 影男 | ||
| 59 | ヘッセ | デーミアン |