「黒死館殺人事件」は、日本探偵小説界の古典に燦然と屹立する、稀有の一大奇書である。古今東西のあらゆる奇妙と恐怖を入り混ぜたこの唯一無二の奇書は、その存在自体が覆しがたい伝説であると断言してよい。小説の一文一文からから発せられる禍禍しい異光には、一種の畏怖や後光すら感じる。冒頭からすでに、陰鬱で冒涜的な雰囲気を匂わせる。読み進む内に、悲惨や幽鬼が丹念かつ執拗に醸成されていく。まさに、何人たりとも寄せ付けない、黒暗色の魔神殿を構成する薫りである。読了する暁には、現存する異形の文字・文章を凝縮させた結晶を垣間見てしまった、という達成がある。
黒死館を論題として取り上げることは、未熟な技量を持つ私には、甚だ越権だとする感も免れない。しかし、黒死館殺人事件を研究することは、推理小説を愛する、幾百の後人の論を助けるであろう。そればかりで無く、内的理論の更なる構築を目指す学徒や、それに類する段階の読者にとっては、非常に有意義な研究であると自認する。よってここに、黒死館の解析および分析を行うものとする。
本論では小説の構成、登場人物、および登場図書などの詳細を記述する。それに伴い、処々の解釈や議論を挟んで構成する。本論の最後尾には、黒死館事件に関わる年表と図書目録を付随する。
また、本論の執筆にあたり以下のものを底本とした。
小栗虫太郎全作品は全部で九巻まで存在する。そのうちの第一巻には、小栗虫太郎の息子、小栗宣治が書いた、小栗虫太郎の簡単な年譜様の文章がある。なお、「全作品」の発行は昭和五十四年であるが、「黒死館殺人事件」が書かれたのは1935年、すなわち昭和10年である。本論内でp11のように書いてあるのは、「黒死館殺人事件」のページ数である。また、「小栗虫太郎全作品 3 黒死館殺人事件」には、初版、昭和十年発行当時のものである松野一夫の挿絵(版画)が載っている。さらに、江戸川乱歩、甲賀三郎および著者の序文もあり、それもまた初版、昭和十年発行当時のものである。
この論の牽強付会かつ早計な部分や、稚拙な文章を含めて、読者の広範な御容赦と御理解を願い、ここに前文とする。
この異様な怪事件、黒死館殺人事件を彩るのは、一筋縄では説明できない奇妙な住人達である。それらを簡単に紹介する。
本論は、黒死館殺人事件の要略と、その説明からなる。以下から黒死館殺人事件の解析を始める。
一月二十八日。黒死館でダンネベルグ夫人が毒殺されたという。探偵の法水麟太郎、検事の支倉が登場する。降矢木一族、黒死館、および門外不出の弦楽四重奏団を構成する、四人の異邦人についての大まかな説明がある。以前黒死館で起こった、三つの変死事件が語られる。探偵小説家・小城魚太郎が引き出される。
序篇からして、すでに重いヴェールを纏わせている。様々な文献から引用したと思しき文章は、全て虫太郎の想像の産物であろうが、その想像力は見るものを驚かせるのである。特にこの篇で重要なのは、算哲が持ち帰ったと言う栄光の手およびカルデア五芒星招妖術である。法水および読者は、この不吉な前兆を見て、黒死館に降りかかる死の惨劇を連想するのである。
ここで、降矢木家の簡単な家系図を紹介する。画像はクリックすると拡大したものが表示される。なお、図の点線は情人関係を示す。青枠で囲った部分は、降矢木家で発生した三つの変死事件を示す。番号は、その発生した順番である。

法水と支倉が黒死館に到着する。黒死館の概観と内部が詳細に語られる。ダンネベルグ夫人の事件現場に着くと共に、熊城が登場する。紙谷伸子が登場する。ダンネベルグ夫人の死体は、謎の発光をしている。ダンネベルグ夫人のこめかみには、降矢木家の紋章の一部が刻まれている。
ここで注目すべきは、ダンネベルグ夫人の死に様であろう。栄光と言う名の謎の発光をし、こめかみには降矢木家の紋章の一部をつくっているフィレンツェ市章の二十八葉の紋が刻まれている。ダンネベルグ夫人のこめかみという部位には、後々に続く伏線である。
ダンネベルグ夫人は、毒入りのオレンジを食べて死んだ。スタンドの中から、テレーズと書かれたダンネベルグ夫人のメモを発見する。テレーズ人形のある部屋に行く。テレーズ人形の詳細が語られる。テレーズ人形が、ダンネベルグ夫人の部屋の鍵を閉めたという。法水が、ボードの法則を語る。易介が失踪したとの報告が入る。支倉の質問箇条書きが示される。久我鎮子が登場する。
テレーズ・シニョレを生き写したといわれる、テレーズ人形の仔細は、後の黒死館に多大な影響を与える。人形が人間のそれに近すぎると、魂が宿り悪行を働くかのような描写がある。ここではテレーズ人形の即物的な面と生物的な面が語られている。その語り口にこそ、黒死館の裏側が記述されているのである。
久我鎮子の特徴が語られる。法水による、鎮子の尋問が行われる。昨夜、神意審問の会が開かれたという。出席者は旗太郎、四人の異邦人、鎮子、紙谷伸子。部屋のコプト織から、水を見つける。法水と鎮子の間で、死体の発光についての問答がある。算哲が描いた、黒死館の邪霊、黙示図が提示される(松野一夫の挿絵)。
この辺りから、登場人物の紹介が始まる。黒死館において、登場人物の顔の造形が詳しく述べられているのには、理由がある。算哲と八木沢博士の間で交わされた論争に深く結びつくからである。そしてこの事こそが事件の発端であり、解決への糸口や大胆な伏線となって緊密に張られ、読者の前に登場するのである。
松野一夫が描く挿絵は、各篇の扉全てと、文章の随所に挿入されている。荒く削られた版画であり、あまり精密な画ではない。しかしその欠如が読者の想像を掻き立てるのである。挿絵の模範と言っていい。また、黒一色で刷られたその絵は、黒死館が漂わせるであろう黒暗色と、見事に合致している。幼稚さも垣間見える黙示図には、ある種の残酷さも手伝って、より褐色の雰囲気を与えている。
鎮子の尋問は続く。アインシュタインとワン・ジッターの間で交わされたという空間曲率の論争が挙げられる。昨夜、神意審問の会が行われている部屋の隣の窓が割られていた。そこで鎮子は、「Undinus sich winden」と書かれた用箋の切れ端を見つけた。算哲の日課書に、焚書の記述がある。鎮子の尋問が終わる。先のドイツ文は、ゲーテの「ファウスト」からの一句である。カルデア五芒星術の一文である。
四人の異国人が、降矢木家の養子養女となる手続きがなされていて、遺産はまだ旗太郎の下に入っていない。支倉が書いた覚書が提示される。田郷真斎が登場し、風貌の仔細が語られる。
当時最先端であったろう物理科学が語られる。ワン・ジッターなる人物はあまり記憶にないが、アインシュタインは相対性理論であまりにも有名である。虫太郎は、文学のみならず科学までをも材料として黒死館を書き上げたのである。また、探偵小説はあくまで論理的、科学的に解決を見なければならないので、トリックの創作にはある種の科学的思考も必要としたのであろう。
紙媒体という利点を生かして、エジプトの象形文字すらも登場する。今後も日本語、アルファベット以外の記号が登場する前触れである。ここでも虫太郎の博学奇書偏向の趣味が出ている。 黒死館の主題とも言うべき、カルデア五芒星術の一文がようやく登場する。これから起こるであろう連続殺人事件の幕開けを意味する。
田郷真斎の登場である。妖異な館には、相応の特徴を持つ人物が必要だと主張するかのように、ここでも特殊な風貌を持つ真斎が出現する。
内惑星起動半径を挙げて、算哲の死について真斎に尋問する。この日はディグスビイの忌斎日であり、四重奏が聞こえる。法水は、階下の礼拝堂に赴く。三人となった異邦人と、旗太郎の風貌が語られる。演奏されているのは、鎮魂歌である。鐘鳴器から倍音が発せられる。法水は、易介が殺されていると予言する。
内惑星軌道半径という科学的な説明を一転させ、惑星記号の転用を行い、黒魔術的要素を与えている。疑似科学を髣髴とさせる法水の説明は、合理を通り越して伏魔殿的である。
後半の主な舞台となる礼拝堂が登場する。荘厳かつ荘重な建築様式であり、殺人との結びつきが強い場所である。それに不可聴の鎮魂歌が加わることにより、この場面が完成されている。小説では音の描写は困難である。音楽が、他の媒体に移し変えることの出来ない、不可侵の芸術であることを示している。
旗太郎の顔かたちが記述されている。そして、算哲の顔と比較されている。この小説において、顔の描写は無二を置いて重要な文章である。大きな伏線である。何もかもを詳しく書き込んであるのではなく、木を森に隠すかのような手法が使われているのである。
警察により、鐘楼が包囲される。鐘鳴器の倍音は、理論上絶対に不可能だという。拱廊において、易介は殺されている。甲冑を着、宙吊りである。易介の喉には、二条の切り傷がある。古賀庄十郎が登場する。法水は鐘楼に赴く。鐘鳴器の鍵盤の前で、紙谷伸子が倒れている。その部屋の扉には、「Sylphus Verschwinden」と書かれた紙片がある。
易介の死に様は、西洋城郭である黒死館には似つかないような、ごく日本的なかたちである。
風と鐘鳴器の音を同調させるように、風神の紙片が見つかる。
紙谷伸子は失神しているだけであった。鐘鳴器室の概景が表される。紙谷伸子の失神は、鐘鳴器を弾いたことによる疲労のための失神だという。黒死館の住人達のアリバイが示される。拱廊で受け取った硝子の破片は、写真乾板の破片であった。
楽器でも通常見ることの出来ない鐘鳴器が描写される。この描写のおかげで、黒死館の特異性が直に伝わってくる。
法水たちは図書室に赴く。そこには久我鎮子がいる。法水は久我鎮子に鎮魂楽の原譜を要求する。図書室の詳細が語られ、特に書架の本についての羅列がある。法水は原譜を見る。モリエルの「タルチュフ」から、薬物室の鍵を見つける。法水たちは薬物室に赴く。続いて、昨夜神意審問会が行われた部屋を調べる。裏庭を調べる。裏庭にあった靴跡の一つに、乾板の破片が見つかる。墓地に赴く。墓地と葬龕の詳細が語られる。
この箇所(p94-95)は、著者小栗虫太郎の趣味が全開となっている。小栗は奇書、稀覯本蒐集家という面を持ち合わせていた。それが昇華して、この図書室の膨大な文献目録が登場したのであろう。圧巻である。良くも悪くも、黒死館殺人事件という小説の位置づけをする部分である。
続いて、葬龕の詳細である。これも一般的な日本家屋からは程遠い。実際、自宅に墓を持つなどと言う発想は日本では不可能なのである。住居にわざわざ葬龕を付随させることにより、死霊の付きまとうイメージを与えているのである。
法水たちはダンネベルグ夫人の部屋に戻る。田郷真斎を呼び、いくつか質問する。法水と田郷は引用の問答をする。旗太郎が登場する。残った三人の異国楽人も登場する。三人は、テレーズ人形を焚き捨てて欲しいという。ここでも法水は引用を用いて会話する。三人が去り、乙骨耕安が登場する。
真斎との、引用を互いに用いた問答は、後々への隠れた伏線として描かれる。虫太郎はこの作品で、物質的なトリックはもちろんのこと、文学からの引用とその発音、及び各種暗号から犯人を導いているからである。引用された台詞にはカタカナで発音のルビが振られているのも興味深い。これは、より正確な発音を知って欲しい、という虫太郎の意思によるものであろう。
生き残りの三人の異国人達が登場する。これほど日本の風土に似つかわしくない集団も珍しい。しかも、推測すれば彼らは日本語を流暢に喋るのである。異邦の趣が凝らされている衣装で、沈黙を伴って出現するのである。
ここでもやはり、引用による問答が行われる。その仔細は、前に書いたとおり、後への伏線である。
耕安の容姿が語られる。法水と耕安の間で薬物などの問答がある。ふたたび、小城魚太郎が引き出される。耕安が退席し、入れ違いに田郷真斎が入ってくる。法水と真斎の間で問答があり、引用の発音を語る。法水は、押鐘津多子が犯人だという。法水は、津多子が殺されているという。彼らは、古代時計室に赴く。
乙骨耕安は、ここの場面でのみ登場する。なぜか洒脱な印象を受ける。
ここで再び、探偵小説家小城魚太郎が登場する。以前出てきたのが序篇、「近世迷宮事件考察」p8の引用である。キューダビイ家崩壊、グブラー麻痺の遺伝を法水が引用している。そして今回は、好んで寺院や病的心理を扱う、といったことや、ヒステリー性無暗示後催眠現象ということも言及している。明らかな変名で著者自身(と思われる)が、主人公法水の口を通して、名前だけ登場する。わざと架空の人物をでっち上げ、その著書(もちろん存在などしない)から引用するという、手の込んだ手法をさり気無く使っている。
古代時計室にて、津多子はキャビネットの上で横たわっている。抱水クロラールである。時計室の時計の詳細が語られる。彼らは古代時計室をである。階段にある絵の光学的秘密が明らかになる。テレーズ・トレヴィーユが暗視野照輝法により出現する。
時計室は、異国の土地名が並ぶだけで作品に複雑さを与えている。時計を蒐集し保管するという部屋は本当に西洋の城郭に存在するのか、疑いたくなるような描写である。ここでは時計そのものの色形の言明は避けている。単に時計の出身などが手短に語られる。
続いて登場する奇妙な絵画も、黒死館に一抹の暗黒を投げかける。実現不可能に近い絵画は、想像の中でのみ精彩を得、死霊のように読者の脳髄に蔓延るのである。
黒死館殺人事件は、文中(p147)の「× × ×」を挟んで、大きく二つに分けることが出来る。一日目(一月二十九日、前半)とそれ以外の日(後半)である。よって、第四篇のこの部分は一月二十九日のまとめとなっている。読者の理解をより深める為であろう。ここまでの死者はダンネベルグ夫人、易介の二人。昏倒者は紙谷伸子、押鐘津多子の二人である。
法水の書斎。法水、支倉と熊城は問答しあう。法水は、この事件を猶太的犯罪であると断定する。ノートに十三項目の箇条書きを行う。法水は、紙谷伸子が蝋質撓拗症であるという。ハルトの「グスタフス・アドルフス」の中に、異人四人の姓が現れる。クリヴォフ夫人および猶太人特有の虚言癖が語られる。十二宮と暗号について語られる。電話がかかり、法水がとる。クリヴォフが狙撃されたという。
第四篇までが前半だとすれば、第五編一は後半の前奏曲にあたる。ここでは、事件の要点をかいつまんで説明している。また、鐘鳴器室にあった十二宮の挿絵やフリーメイソンの暗号、さらにはヘブライ文字すらも登場し、黒死館殺人事件がいかに魔術に満ちているかが説明される。この妖しげな挿入は、虫太郎の秘密結社への愛好から発したものである。
クリヴォフ夫人は弩で狙撃され、その衝撃で窓外に投げ出され、彼女自身の頭髪により宙吊りになる。法水たちは事件発生の三十五分後に黒死館に到着した。クリヴォフ夫人が狙撃された部屋は、軍器の陳列があった。セレナとレヴェズが入室する。法水と彼らの間で問答がある。ダンネベルグ夫人が死亡した部屋、すなわち開かずの間で、紙谷伸子の尋問を行う。
開かずの間、礼拝堂、時計室、葬龕および鐘鳴器室と続いて、軍器室の描写である。奇特な部屋の存在は、まったく日本的発想からは逸脱している。それが黒死館殺人事件の魅力である。悪意を溜め込む墓石のように、一番重要な登場物である黒死館そのものの描写も念が入っている。これらの描写がなされて、黒死館が有機的な悪霊の如く振舞うのである。
開かずの間に紙谷伸子が登場する。法水は伸子を尋問する。伸子が退席し、鎮子が入室する。鎮子の口から、精神萠芽説が出てくる。さらに鎮子は、算哲が右に心臓を持っていたと語る。鎮子は退席する。法水たちの間で問答がある。
ここでわざわざ、作者は「事件の超頂点」と書いている。非常に興味深い箇所である。
算哲の早期埋葬について語られる。死んだはずの算哲は、非常に強い意志を持った亡霊としての出現が可能となる。
大階段の裏を調査する。そこで、ホルバインの「死の舞踏」を発見する。その本には、ディグスビイの書き込みがある。テレーズ・算哲・ディグスビイの三角関係が明らかになる。法水たちは階下の広間に赴く。押鐘博士と旗太郎がおり、押鐘博士の風貌が語られる。いくつか会話があった後、算哲の遺言状が公開される。法水たちは広間を出る。法水は一人で紙谷伸子の部屋に入る。会話が終わると、レヴェズの部屋に入ろうとする。
黒死館に巣食うもう一人の亡霊、ディグスビイの描写がある。主にテレーズを巡る三角関係のもつれである。このような荘厳な館には亡霊が幾らいても良いかのような場面である。
法水とレヴェズとの間で会話がある。法水は、レヴェズとダンネベルグ夫人が恋愛関係にあったと看破する。法水は、再び詩文を取り上げて解釈する。弩のトリックが明かされる。レヴェズは警察の護衛を断る。法水は部屋を出、ダンネベルグの部屋に赴く。法水は、支倉と熊城に音韻と楕円の符合を解釈する。また、地精の紙片は伸子の部屋にあるという。古代時計室の前で、津多子夫人が登場する。
ここで、先に引用された詩文の発音から、フロイト的手法を用いて解釈が行われる。この議論を受けてレヴェズは警察の護衛を自ら断る。それが、後の殺人へと繋がって行くのである。
法水は津多子を尋問する。古代時計室の鍵のトリックが明らかにされる。法水は津多子を開放する。地精の紙片が伸子の部屋から発見される。法水たちはダンネベルグ夫人の部屋に戻る。伸子への尋問が行われる。伸子はピロカルピンの中毒症状を発現する。ピロカルピンはヤポランジィの葉に含まれている。法水たちは温室に赴く。
二日後。黒死館で年一回の公開演奏会が開催される当日。法水と支倉と熊城は地方裁判所の旧館で会議を開く。法水は、クリヴォフが犯人であると指摘する。「死の舞踏」のディグスビイの書き込みを分析し、クレストレッス・ストーン(紋章のない石)を導き出す。ダンネベルグ夫人の部屋の壁爐は、紋章を刻んだ石で築かれている。
法水たちは、黒死館の礼拝堂で催されている公開演奏会に赴く。クリヴォフ、セレナ、旗太郎(提琴)、および紙谷伸子(ハーブ)が演奏している。三度惨劇が起き、クリヴォフが斃れる。
ディグスビイの残した「エホバは半陰陽なりき」から始まる書き込みを分析する。それは暗号であった。そこから、クレストレッス・ストーンを導き出す。解読は非常に複雑であり、常人には到底理解不可能な過程を経ている。黒死館の亡霊であるディグスビイの怨念めいた情感を見ずにはいられない場面である。この珍奇な暗号は無論虫太郎が創造したものであろう。
水流の音が聞こえてくる。クリヴォフ夫人は心臓を刺し貫かれ、絶命していた。演奏会の間、レヴェズは居なかった。法水は津多子を尋問する。津多子は、本開閉器は殯室にあるという。洗手台から水は出ていた。殯室の扉を破ると、湯気が立っている。法水たちは礼拝堂に戻る。楽員たち三人と会話する。三人は出て行く。法水は、旗太郎の提琴の持ち方に疑問を抱く。法水たちは再び殯室に赴く。そこで、レヴェズは縊死している。しかし検死が行われると、レヴェズの死は扼殺であったことが判明する。また、レヴェズの死んだ部屋は密室であった。古賀庄十郎が証言する。
法水たちは殯室を出て、広間に赴く。ディグスビイおよび久我鎮子の身元の報告を受ける。法水は図書室へ入ってゆく。久我鎮子が居る。鎮子の口から、八木沢博士と算哲の間で交わされた論争についての証言が出る。論争が終結した次の年の明治二十三年に、四人の異国人が海を渡ってきた。その実体は、人間栽培の実験遺伝学であった。
法水はダンネベルグ夫人の部屋に戻る。楽壇関係者および旗太郎とセレナ夫人がおり、旗太郎とセレナは紙谷伸子を詰問して欲しいと主張する。旗太郎一同は出てゆく。法水は忘れな壷を割るように支持する。算哲の壷から発見された指紋とレヴェズの首にあった指紋は一致した。ダンネベルグ夫人の部屋の壁爐(いろり)を調べると、坑道が見つかった。
念には念を入れ、礼拝堂に備えてある殯室が登場する。死者を安置する部屋である。殯室には、積もり重なった埃に自然の造形が加えられいる。その光景は悪鬼の存在を疑う。この異常下で、レヴェズが死亡しているのである。
四人の異国人が算哲の養子となった真実の理由が明らかにされる。それは極めて悪魔的である。人間栽培という文字が躍る時点で、算哲の天才ゆえの異常性が浮かび上がる。この館にこの主人ありき、という構図であろう。
法水、支倉、および熊城は坑道に入る。それは、算哲のクリプトに続いていた。棺の中には算哲の骸骨があり、左肋骨には「PATER HOMO SUM! (父よ、吾も人の子なり)」と刻まれている。その文字は、乾板で彫ってある。また、歯の間に山雀が挟まれていて、それが早期埋葬防止装置を妨げた。ダンネベルグ夫人の部屋に戻る。法水は暗号を解き、寝台の秘密を見つけて、過去の三つの変死事件の謎を明かす。寝台は、ディグスビイの悪意であった。乾板は、算哲の遺言を映したものだと推定する。
法水は、紙谷伸子を喚び、尋問する。伸子はレヴェズから求婚されていた。法水は、一年前算哲が遺言書を封した会で、誰が一番先に退席したかを聞く。伸子は紙片で伝えると答え、退席する。神意審問会が再現される。ダンネベルグ夫人は第二視力者であった。ダンネベルグ夫人の部屋に戻ると、紙谷伸子が封筒を持ってきている。
妖異な館には欠かせない、秘密の通路の出現である。禍禍しいことに、それは算哲のクリプトに続くのである。住居空間から死に繋がる道程があるという事実は、この黒死館が設計の段階から死の館であることを示す。それを実証するかのように、算哲の早期埋葬防止装置は犯人に依って妨げられている。その驚愕は、犯人の実体が明らかになれば、大きさを増すだろう。 ディグスビイの用意した寝台の謎が明かされると、「黒死館を覆うていた過去の暗影の全部が消えた」、と描写がある。物語も終幕に近いからであろう。ここに変死という過去の罪状は流され、全て予定された怨恨殺人という決定が下されるのである。
夜中に行われる神意審問会の再現は、死者に対する冒涜すら感じられる。何しろ、使われるもっとも重要な道具が栄光の手だから。
伸子の紙片には、「昔ツーレに聴耳筒ありき。」とだけ書かれていた。法水は礼拝堂に移動する。法水は、ダンネベルグ夫人の部屋に旗太郎、セレナ夫人および伸子を呼ぶ。法水は、旗太郎がダンネベルグ夫人に人形の名前を書かせたという。また、レヴェズの死について、竜舌蘭のトリックを明らかにする。旗太郎は卓上に卒倒し退席、セレナ夫人も退席する。法水は、演奏会の時に伸子が紅玉を着けていたかと尋ねる。
翌日のちょうど二時頃、伸子が狙撃され即死する。やはり「Kobold sich mu:hen」と記されている。
さらにその翌日の午後、法水たち三人(法水、支倉、熊城)が黒死館に着くころには、伸子の葬儀が始まっている。法水は礼拝堂に家族一同を集める。ダンネベルグ事件の真相が語られる。ダンネベルグ夫人は砒食人であった。法水の口から、真犯人の名前が語られる。伸子の死のトリック、アレキサンドライトとルビーの色、および言い損ないについて語られる。ロダンの「接吻」の胴体から、乾板(算哲の本物の遺書)が出てくる。伸子の葬儀の描写がある。閉幕。
黒死館殺人事件の閉幕は、犯人が逮捕されるという通常のカタルシスからは逸脱している。犯人は逮捕されないからである。あくまで変終止を求める虫太郎の趣味であろう。
読者の分身たる主人公・法水麟太郎は、事件に対して非常に細かいトリックを解き明かすだけかのように思える。何しろ、最終的には犯人を逮捕しないのだから。しかし、一介の探偵にそこまで英雄的な演技をさせると、物語全体が作為的になり、締りが悪くなるのである。ワトソン役である熊城は、おそらく読者の感情と一致する。それは、法水が突飛な引用をしたときの反応である。彼は、いちいち驚いてくれるのである。これは心理的に正しい。
深く描かれているのは、なんといっても黒死館そのものである。怪異の粋を凝らしたと思しきこの西洋建築こそ、この物語の真の主人公ではなかろうか。重苦しい黒色を身に染みさせている。まるで、暗躍する殺人者を援護するかのようである。数多の引用を連ねて、この不気味な舞台を用意できたからこそ、黒死館殺人事件という一大建築が可能だったのである。
黒死館殺人事件は、年表を追わないと理解できない部分が多々ある。それは文中にちりばめられていて、一読で了解するのは困難を極める。よって、ここに黒死館殺人事件の簡略な年表を付す。また、事件そのものは一月二十七日から二月三日までの八日間で完結する。
| 西暦 | 和暦および月日 | 事柄 | 時刻の記載頁数 |
|---|---|---|---|
| 1852 | 算哲(当時は鯉吉)が原籍校に差し戻される。 | 5頁、マンチェスター郵報。 | |
| 1870 | 明治3年 | 算哲渡独。 | 6頁、東京新誌第四一三号 |
| 1884 | 明治17年 | 黒死館起工。 | 6頁、東京新誌第四一三号 |
| 1885 | 明治18年 | 黒死館建設。 | 2頁。 |
| 1886 | 明治19年 | 帰国の船中にてテレーズ・シニョレ死亡。 | 6頁、東京新誌第四一三号 |
| 1888 | 明治21年 | 客船からディグスビイ投身自殺。 | 266頁。 |
| 1888 | 明治21年 | 算哲と八木沢博士との論争。 | 7頁、および267頁。 |
| 1890 | 明治23年 | 黒死館の内部を算哲が大改修する。 | 7頁。 |
| 1890 | 明治23年 | 四人の異国人が黒死館の住人となる。 | 267頁。 |
| 1896 | 明治29年 | 第一の変死事件。伝次郎、神鳥みさほ死亡。 | 7頁。 |
| 1902 | 明治35年 | 第二の変死事件。筆子、嵐鯛十郎死亡。 | 3頁、7頁。 |
| 1915 | 大正4年 | 旗太郎誕生。 | 7頁。 |
| 1931 | 昭和6年3月12日 | 算哲が遺言書を作成する。 | 209頁。 |
| 1931 | 昭和6年3月(4月26日) | 第三の変死事件。算哲死亡。 | 7頁には3月とあるが、56頁には4月26日とある。 |
| 1932 | 昭和7年1月27日 | 黒死館にて、神意審問会開かる。ダンネベルグ夫人殺さる。 | 21頁。 |
| 昭和7年1月28日朝 | 法水の家に支倉検事が訪れる。 | 年については3頁の、旗太郎が17歳であるという記載より逆算。 | |
| 同日午後2時30分 | 鐘楼封鎖。易介殺さる。 | 68頁。 | |
| 同日 | 鐘鳴器室にて紙谷伸子失神。 | 78頁。 | |
| 同日午後8時 | 押鐘津多子が抱水クロラールにより殺されかかる。 | 140頁。 | |
| 昭和7年1月29日 | 法水は終日書斎に籠もる。 | 147頁。 | |
| 昭和7年1月30日朝 | 易介の死因発表。 | 148頁。 | |
| 同日午後2時40分 | クリヴォフ夫人襲撃さる。 | 177頁。 | |
| 同日午後3時15分 | 法水ら黒死館に到着。 | 178頁。 | |
| 同日午後5時30分 | 大階段の裏を調査する。 | 204頁。 | |
| 昭和7年1月31日 | 238頁。 | ||
| 昭和7年2月1日午後6時 | 黒死館での公開演奏会。クリヴォフ夫人殺さる。レヴェズ縊死(扼殺)体発見。 | 日にちは238頁、時刻は248頁。 | |
| 同日午後11時30分以降 | 神意審問会の再現。 | 時刻は277頁。 | |
| 昭和7年2月2日午後2時頃 | 紙谷伸子が銃撃され死亡。 | 288頁、および時刻は289頁。 | |
| 昭和7年2月3日 | 紙谷伸子の葬儀。法水は礼拝堂に関係者を集め、真相を暴く。 | 289頁。 |
黒死館殺人事件の真髄は、主に法水の口から語られる膨大な文献の量にある。それら文献が縦横に活躍し、黒死館独特の調子を発しているのである。それらの文献をここに列挙してみた。
| 篇 | 番号 | 著者 | 文書名 | 読み方 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 序篇 | 一四一四年聖ガル寺発掘記 | ||||
| 寺門義道 | 紋章学秘録 | ||||
| マンチェスター郵報 (1852.06.04) | |||||
| ブーレ写本のウイチグス呪法典 | |||||
| ワイデマール一世触療呪文集 | |||||
| 希伯来語手写本猶太秘釈義法 | |||||
| ヘンリー・クラムメル | 神霊手書法 | ニューマトグラフィー | |||
| 編者不明 | 拉典語写本カルデア五ぼう星招妖術 | ||||
| 田島象二 | 東京新誌第四一三号(M19.02.09)「当世零保久礼博士」 | ちょぼくれはかせ | |||
| 降矢木算哲 | テュードル家黴毒並びに犯罪に関する考察 | ||||
| 小城魚太郎 | 近世迷宮事件考察 | ||||
| ファロウ | ハートフォード福音伝導者 (1901.02) | ||||
| 第一篇 | 一 | カブリエル・マックス | 腑分図 | 複製画 | |
| ジェラール・ダビッド | シサムネス皮剥死刑の図 | 複製画 | |||
| ド・トリー | 一七二〇年マルセーユの黒死病 | 複製画 | |||
| 二 | アヴリノ | 聖僧奇蹟集 | |||
| 三 | |||||
| 第二篇 | 一 | グリム | 古代独逸詩歌傑作について | ||
| ファイスト | 独逸語史料集 | ||||
| ゲーテ | ファウスト | ||||
| ヴァンダイン | グリーン殺人事件 | ||||
| 二 | マームズベリー卿 | ジョン・デイ博士鬼説 | |||
| エディントン | 空間・時・及び引力 | ||||
| ミュールマン | 老年の原因 | ||||
| ダビデの詩篇第九十一篇 | |||||
| 三 | |||||
| 第三篇 | 一 | ペッパー | 類症鑑別 | ||
| ネゲライン | 北欧伝説学 | ||||
| 古代丁抹伝説集 | パムペピソウ | ||||
| メールヒェン | 朦朧状態 | ||||
| コンスタンスケント事件 | |||||
| ペンクライク編纂 | ツルバール史詩集成 | ||||
| キイゼヴェッテル | 古代楽器史 | ||||
| 史家ヴィラーレ | ニコラス・エ・ジャンヌ | ||||
| シュレーダー | 生体磁気説 | レーベンス・マグネチズム | |||
| 二 | プリニウス | 万有史 | |||
| ライデン古文書 | |||||
| ソラヌス | 使者神指杖 | ||||
| アウフレヒト | 愛経 | カーマ・ストーラ | |||
| 生体解剖要綱 | ヴィヴィセッション | ||||
| ハルトマン | 小脳疾患の徴候学 | ||||
| 倫敦亜細亜教会 | 孔雀王 経 | ||||
| シャム皇帝勅刊 | 阿叱 経 | アウナンティ | |||
| ブレームフィールド | 黒夜珠吠だ | クルスナ・ヤジュル・ヴェイダ | |||
| フロウベルガー | フェルディナンド四世の死に対する悲嘆 | ||||
| ヴェザリオ | 神人混婚 | ベネエ・エロヒイム | |||
| ライツェンシュタイン | 密儀宗教 | ミステリエン・レリギオネン | |||
| デ・ルウジェ | 葬祭呪文 | リチュエル・フュリアレイル | |||
| 歴代三代記 | |||||
| キイゼヴェター | スフィンクス | ||||
| ウェルナー大僧正 | イングルハイム呪術 | ||||
| ヒルド | 悪魔の研究 | エチュード・スル・レ・デモン | |||
| コルッチ | 擬ようの記録 | レ・グラフィケ・デラ・シムラツィオネ | |||
| リーブマン | 精神病者の言語 | ||||
| パティニ | 蝋質ぎょうよう性 | ||||
| フランシス | 死の百科事典 | ||||
| シュレンク・ノッチング | 犯罪心理及精神病理的研究 | ||||
| グアリノ | ナポレオン的面相 | ||||
| カリエ | 憑着及殺人自殺の衝動の研究 | ||||
| クラフト・エーヴィング | 裁判精神病学校教科書 | ||||
| ボーデン | 道徳的ギ患の心理 | ||||
| マイアーズ | 人格及その後の存在 | ||||
| サヴェジ | 遠感術は可能なりや | キャン・テレパシイ・エキスプレン | |||
| ゲルリング | 催眠的暗示 | ||||
| シュタルケ | 霊魂生殖説 | トラデュシアニスムス | |||
| フィンランド古詩 カンテレ | |||||
| バラモン音理字書 サンギタ・ラスナラカ | |||||
| グルドン詩篇 | |||||
| グラムマチクス | 丁抹史 | ヒストリア・ダニカ | |||
| ワグネル | パルシファル | 音楽 | |||
| レッサー | 死後機械的暴力の結果に就いて | ||||
| モリエル | タルチュフ | ||||
| クニッパー | 生理的筆蹟学 | ||||
| マーロー | ファウスト博士の悲史献 | ||||
| ロスコフ | Vceks-Buchの研究 | ||||
| バルト | ヒステリー性睡眠状態に就いて | ||||
| ウッズ | 王家の遺伝 | ||||
| チルダース | 呪法僧 | ||||
| 摩訶婆羅多 | マハープラタ | ||||
| 羅摩や那 | ラーマーヤーナ | ||||
| ロッジ | レインモンド | ||||
| ボルマン | 蘇格蘭人ホーム | ||||
| 妖異評論 | |||||
| 三 | ポープ | 髪盗み | |||
| シェイクスピア | ハムレット劇中劇「ゴンザーゴ殺し」 | ||||
| ミルトン | 失楽園 | ||||
| レヴェンスチイム | 迷信と刑事法典 | ||||
| グスタフ・ファルケ | 樺の森 | ダス・ビルケンヴェルドヘン | |||
| デーメール | 沼の上 | ユーベル・デン・ジュムフェン | |||
| ハンス・グロス | 予審判事要覧 | ||||
| アッペルト | 犯罪の秘密 | ||||
| 第四篇 | 一 | ヤンレッグ | 病的衝動行為に就いて | ||
| ジャネー | 験触野 | シアムエステ ジオメトリック | |||
| クレビエ | 筆蹟学 | ||||
| ドルムドルフ | 死仮死及び早期の埋葬 | ||||
| 二 | ハルトマン | 生体埋葬 | |||
| 第五篇 | 一 | アナトール・ルブラ | ブリトン伝説学 | ||
| ガウルド | オールド・ニック | ||||
| シェラッハウヘン | シュアルツブルグ城 | ||||
| ゴルトフェルト | 猶太人犯罪の解剖的証拠論 | ||||
| モッソウ | 疲労 | ディ・エルミュズング | |||
| ハルト | グスタフス・アドルフス | ||||
| ミッシネー・トラー経典 | |||||
| シュテルン | 供述の心理学 | ||||
| 二 | グロース | 古代軍器書 | |||
| レナウ | 秋の心 | ヘルブスト・ゲフュール | |||
| 第六篇 | 一 | メリー・ゴドウィン | フランケンシュタイン | ||
| フリッツ・シュルツ | 精神萌芽説 | プシアーデ | 学説 | ||
| メーキンス編纂 | 南亜戦争軍陣医学集録 | ||||
| 二 | ホルバイン | 死の舞踊 | トーテン・タンツ | ||
| カイゼルスベルヒ | 聖ウルスラ記 | ||||
| 第七篇 | 一 | マキァヴェリ | Discorsi (陰謀史) | ||
| ハンス・シェーンスペルガー | 予言の薫? | ワイサゲント・ローホ | |||
| マリエンバートの哀歌 | |||||
| ゴールトン | 人間能力の考察 | ||||
| 二 | アベルス | 犯罪現象学 | |||
| リッテルハウス | 偶発的犯罪に就いて | ||||
| 第八篇 | 一 | シェークスピア | ジュリアス・シーザー | ||
| フォン・ホフマン | 法医学教科書 | ||||
| ピデリット | 擬容と相貌学 | ||||
| リシュリュウ省機密閣史 | |||||
| 二 | |||||
| 三 | ロダン | 接吻 | |||
| グーリュ、ブロー | 人格の変換 | ||||
| ハルピン | 愛蘭土星学 | ||||
| グイド・ボナットー | 点火術要論 | ||||
| ヴァザリ | 祭礼師と謝肉祭装置 |