一般娯楽における洗脳の危険

皆さんはパチンコというものを知っているだろうか。
このページを訪れている人なら誰もがその言葉を知っているだろう。
なかには、私よりもその遊戯に詳しい人が居るだろう。
都市の中にあってそこで無限とも思える銀の玉を吐き出しつづける……。
そんなゲームに没頭する人も少なくないはずだ。
そして、パチンコに熱中する人は誰もがみな「自分の意志で」通っていると思い込んでいる。
果たしてこれは確固たる自分の意志なのだろうか。
そんな常識を覆す驚愕の事実を、私はある筋から入手した。
今からその顛末と、初めて知ったその事実を公開しよう。

それは、何の変哲もない休日の午後だった。
私はいつものようにメールをチェックしていた。
普段どおり、友人からのメール、企業からのDMなどが届いていた。
それらを眺めつつ、私は受信欄にある一つのメールを見た。
差出人不明の、忌まわしく凄惨なあのメールが混ざっていたのだ。
私はウィルスのことなど不審に思いながら、そのメールを見てみた。
怪しげな添付ファイルなどはなく、ごく一般的なメールの様に感じた。
しかし私の天性の勘により、「これは只者のメールじゃない…」と感じ取った。
というわけで早速、そのメールの内容を読むことにした。


* * * * * * * * * * * * * * *


……読んでから20分ほど経つだろうか。
私はまだ先の興奮を抑えきれずに居る。
何にそんなに興奮しているか。
もちろんメールの中身に対してである。
その内容が余りにも現実からかけ離れた事実だったからだ。
私はこの世の中が裏返ったような気持ちに囚われた。
それもこれも、政府のからんだ陰謀がごく自然に行われているからだ。
しかも、人間を生かさず殺さずおいしい状態にしておくという
最悪の方法という形をとって……。


そのメールを送ってきた人間からは、その後連絡はない。
ありとあらゆる手段を講じてその身元を捜したが、
このひろいネット上ではその全てが無駄だった。
今、その送り主は一体どうしているだろうか。
どうなっているだろうか。
余りにもこの国の暗部に近づきすぎたため、
そのまま闇へと葬り去られたかも知れない。
いや、もっと事態は恐ろしく、その本人すらも人格を矯正されて
廃人と成り果てているかも知れない。
いずれにせよ、彼が無事で居るという確率は少ない。


私にできることは唯一、彼が命を賭けた
この私宛のメールを全世界に公開することだ。
それによって政府の陰謀が暴かれること、
今現在の腐敗の構図が少しでも崩れること、
そして何よりも彼が少しでも浮かばれることを願いたい。
志半ばでこの世を去った「彼」に代わって、
私AWAGAKIがこの世の悪を一つ一つ排除してゆく次第である。


さて、前置きが非常に長くなってしまったが、これからが本番である
彼がその人生と引き換えにつかんだ事実を、私は公開したい。
それによって私の命がなくなってしまうかも知れないが、それは承知の上である。
たとえ私が死んでも、遺志を継いで目的を達成してくれる人間が居る、
この世の中にもまだ善意は存在している、ということを願いたい。
さらに、私の数名の同志にも、「彼」からのメールのコピーを送っている。
もしものときは同志が動いてくれるだろう。
では、待たせたが、これから件のメールを読んでもらうことにしよう。


送信者 : <不明>
宛先 : <******37@******.***.ne.jp>
送信日時 : 2001年4月10日 7:12
件名 : パチンコ店における陰謀と国家の罠について


わたくしはAWAGAKI様のウェッブページを見て、大変な感銘を受けた者です。
どのコンテンツも非常に充実しており、十分な読み応えを感じました。
特に、国家や企業のありとあらゆる陰謀に精通しており、その危険についても詳しく警告してあるという
正義感あふれる運営姿勢には強く心を打たれました。
というのも、私は身近に常にどす黒い策略や何らかの計画があり、それに関わり死んだ同志もおり、
さらには自分自身の身の危険を感じているからです。
このような同じ考えをもつ人を見つけると、全くの闇の中で太陽を見つけたのと同じ感情を持ってしまうのです。


そこで、AWAGAKI様をわたくしと同じ危機感を持つ、共通の敵を見出したものとして、
とても大切なお願いがあります。
どうかわたくしに協力してほしいのです。
わたくしがこれからこのメールに書くことを、できるだけ多くの人の目につくようにしてほしいのです。
もちろん、ウェッブページにそのまま載せて下さっても結構です。
私はつい数日前、政府の巨大な陰謀を見つけてしまったのですから……。


もしその陰謀が露見すれば、このような小さな島国の政府などは一夜にして転覆するかも知れません。
それだけ重要で危険な情報なのです。
それにこのメールも、もしかすると傍受されているかも知れません。
ということはこのメールを送信すると共に、わたくしの命も十中八九、危険にさらされます。
でもそれだけの価値のある情報なのです。
その情報を、AWAGAKI様に託そうと思います。


どうか、これからの話を嘘だと思わず、この世界の真実だということをしっかりと認識してください。
もしやすると、危機はわたくしのみならず、この国全体に降りかかってくるかも知れません。
気付いてからではもう遅いのです。
誰か一人でも気付いたときに動かないと、全くの手遅れになってしまいます。


それでは、わたくしが知ってしまった真実を、これから告白したいと思います。



結論から先に述べさせて貰います。とにかく時間がないのですから。
実は、日本全国に並み居るパチンコ店では、誰にも気付かれぬよう、用意周到な洗脳が行われています。
それもごく僅かの店、という程度ではありません。
洗脳が行われていない店を探し出すのが難しいくらい、この世の中にはびこっています。


わたくしが何故、このような事実を知ったか、その経緯をお教えする必要があるでしょう。
まず、お気づきかと思いますが、わたくしはその忌まわしき、とあるパチンコ店の店員でした……。
そのパチンコ店はとあるチェーン店で、近年かなり業績を伸ばしているのできっとAWAGAKI様も知っていると思います。
しかしここで名前を挙げても何ら意味はありません。
何しろ、わたくしの居た店だけではなく、全ての店が危険なのですから。


さて、わたくしは自分で言うのもなんですが、
わたくしは勤務態度もよく接客も上手なので、
たちまち店にとって重要な地位まで登っていきました。
徐々に、下の方では入ってこない、密度の高い情報、
例えばROMの話やブラック・リストの話などという、
人間の暗部を映し出すような会話もできるようになってきました。
そして、そのパチンコ店を辞める少し前には、つまり「その情報」を手に入れた頃には、
わたくしはその店のお金の管理もいささか手伝わされるほどになっていたのです。


このようなのが、いわゆる「いきさつ」のようなものです。
そして、仕事場に夜遅くまで残るようになって、わたくしは一つの疑問を感じ始めたのです。
もしかしたら、このパチンコ店に来るお客様の一部は、洗脳されているのではないか、と。
そう思った大元は、ある日店にきた一人の黒服からでした。


わたくしが監視カメラ室で店内を監視していたところ、店内に一人の男性が居るのに気がつきました。
その男は大柄で、スーツを着ており、しかも濃い眼鏡かサングラスのようなものを掛けていました。
もちろん、スーツは普通の格好です。
しかしサングラスのようなものはこの4月の気候にはどう考えても一致しません。
わたくしは一心にその男を注目しました。
そして、不審なのは外見だけでは無いとわたくしは判断したのです。
まず、その男は台と台の間をただ歩き回っているだけ。
ゆっくりとした歩調で、なめるように見回っています。
それも、台を見るのならともかく、台の前に座っている人間を見ているようなのです。
普通、台の前に居る人間だけを見回る人間なんて、店員くらいなものです。
しかし、その男はどう見ても関係者とは思えませんでした。
これはなにか不穏な動きがある、そう確信したわたくしは店長にすぐに報告しました。
発見からほんの五分ほどです。


わたくしは、監視カメラの部屋で店長に説明しました。
するとどういうことでしょう、店長は知ったような口ぶりで
「怪しい男ぉ?そんなの居るわけないだろ。」
と、わたくしの問いを一蹴しました。
さらに監視カメラを見てみても、そのような男はもうどこにも居ません。
と、ここでわたくしの頭の中に、一つの「考え」が浮かびました。
とても恐ろしいものですが、そう考えると全ての事柄がまるでジグソーパズルのピースのようにはまっていきます。
それは、実は店長と黒い服の男はつながっている、ということです。
店長と黒い服の間柄は、一般の社員にも、もちろんわたくしにも説明できないような闇のつながりなのでは……。
そんな恐ろしい考えが長い間、わたくしの思考を占拠しました。
そして、それを裏付けるような出来事が、いくつも起こった、あるいは起こっていたのです。
これからその証拠とも言うべき出来事を列挙します。


まず、わたくしが入社してから間もない頃。
わたくしが交換所へと用事で赴くと、その扉の前方に黒塗りの大きな車が停車していました。
その中は全く見えず、フロントガラスを通してみることはなぜか
はばかられるような気持ちを起こさせました。
しかもその内、交換所から一人の男が出てきて、
横で見ている私を尻目にその大きな車に乗り込んで、
車はどこか遠くへ行ってしまいました。
今思えば、彼はとある組織の一員、若しくは例の「関係者」だったに違いありません。


次に、店内の整理で夜遅くまで店に残っていた時のことです。
わたくしの店では、先ほど言った監視カメラの映像を、3週間分ほど残しておきます。
これは防犯上の問題であって、何らやましいことはありません。
わたくしはそのビデオテープを色々と並べたりチェックしたりしていました。
するとどうでしょう。
ビデオテープが一本無いのです。
わたくしはあわてふためいて、このことをまだ残っていた店長に報告しました。
店長に、なくなっていたテープの本数と日時を正確に告げました。
しかし、その後の反応は驚くべきものでした。
なんと店長は、「いいよ、一本無くなったくらい。」と返答しました。
そのときわたくしは、バールか何かで頭をガツンと殴られたような感覚に陥りました。
わたくしの内部に湧き上がる疑問はとめどありませんでした。
なぜ、なぜ、なぜ………。
でも、店の仕事も後わずかですが残っていました。
わたくしは疑問を持ちつつ、残りの作業をこなしました。
どうでしょう、今になったらこのときの店長の言葉の意味がはっきりとわかるのです。
そうです。監視カメラから撮ったそのテープには、
紛れもなく例の黒服が映っていたに違いありません。
そしてそのテープは、店長が処分したに違いありません。


さらに、こんなこともありました。
これはありとあらゆるパチンコ店で「洗脳が行われている」と
わたくしのみならず、誰もが確信するに至るほどの、あからさまな出来事でした。
ある日、わたくしは店内放送のためのオーディオシステムをいじっていました。
そして配線などを確かめているうちに、音声のラインが見慣れない機器に繋がっていることに気付きました。
わたくしは、「一体これはなんなんだろう……」と疑問に思いつつも、
やはり仕事を続けていました。
しばらく考えたあと、わたくしは一つの結論に達しました。
その機器は、店内放送にサブリミナルを含ませる機械だ。
無論、この発想は正しい筋道ですし、サブリミナルの内容もわかりきっています。


サブリミナルは、通常人間の耳には聞こえないような、
高いか低いかどちらかの周波数を使って行われていると聞きます。
そしてその忌まわしきサブリミナルが、店内放送があの機器を通るときに
付加されるものと確信しています。
さらに、問題はいかなる言葉があの機器の中で付け加えられ、
実際に放送されているか、ということです。
わたくしは、ためしに従業時間中ずっと耳を凝らして店内放送に集中しておりました。
でもやはり聞こえません。あたりまえです。
何者にも悟られることなく遂行されるのがサブリミナルの特性なのですから。
しかしながら、善の心をもつわたくしの心の耳にはしっかりと聴こえて来ます。
邪悪な想念を伴って、響くように聴こえて来ます。
なぜなら、わたくしにはわかるからです。


これで、パチンコ店がどのような悪事を働いているか、一目瞭然とわかったと思います。
パチンコ店とは、ごく普通に生活している、何の罪もない一般人を、
欲と金にまみれたこの薄ら汚い世界に引きずり込む、悪魔の暗示の場所なのです。
そうです。何故こんなに人々がパチンコという遊戯に熱中するか。
それは、訪れた人全員が洗脳されているからなのです。
新興宗教も考えも及びもつかないような方法で、緻密な計算の元、
極悪非道な洗脳が行われているのです。
店内を充満している余りにも大きすぎる音、
お客様の目の前でしきりに明滅するLED、
何の感動もなくただノブを回す手。
ひたすらに玉の行方を追っている眼球。
気の遠くなるほど繰り返される作業。
店内に立ち込める大量の煙草の煙。
これは全て、洗脳のための道具なのです。


そして、先ほど話題の中に何度も現れた黒服の男。
これこそ、洗脳を影で牛耳っている悪の組織の手先に違いありません。
彼らが支配下においた店を一軒一軒回り、その洗脳の効果を確かめているのです。
そして、彼らはもう一つ仕事があると思います。
それは、事実を知ってしまったものの始末です。
言うこともはばかられるような仕事の主なのです。
AWAGAKI様、あなたにはわたくしの言わんとしていることが判ると思います。


その組織はパチンコ店や、他の遊戯施設、あるいは全国各地にあるデパートメントから、
徐々に国民を洗脳してゆくことと思われます。
手始めに、パチンコ店という生贄が選ばれたのだと思います。
そして、それは度重なる成功を収めています。


見てください。


どこの世界に、パチンコに呆けて我が子を死なせてしまう親が居るのでしょうか。
一体どこに行けば、汗水たらして働かずに、阿呆としてパチンコを続ける大人に会えるのでしょうか。
これは全て、あのどす黒い陰謀のせいです。


このままでは、国民全てが洗脳されてしまうまで、そう時間はかからないと思います。
AWAGAKI様、わたくしはすでにそのパチンコ店を辞めており、
この事実をできるだけ多くの人に知ってもらうための行動に、すぐにでも移りたいと思います。
そのとき、同志とも言える仲間が居ることは、決して悪いことではありません。
むしろ心強い限りです。
それも、AWAGAKI様のように、このような巨大な陰謀のなんたるかを熟知し、
その裏の裏までをも詳しく知っている方なら、なおさらです。


こうしている間にも、わたくしに残された時間は減っていきます。
なぜなら、パチンコ店から始まる巨大な陰謀を知ってしまったのですから。
あの黒服の男の一団がわたくしを処分しに来るのも、そう遠い未来のことではありません。
わたくしはこれから地下に潜り、できるだけ多くの仲間を集め、
力と時間の許す限り、抵抗活動を続けていきます。


たびたびお願いして本当に申し訳ありませんが、
どうかこの真実を多くの人々に知ってもらえるように、
できるならAWAGAKI様のウェッブページに、是非とも公開してください。
本当にお願いします。
わたくしがもし近日の内に居なくなってしまえば、
この事実を知るものは誰もいなくなります。
そうなればこの国がどうなるか、AWAGAKI様にはお分かりでしょう。


長い文章でしたが、これで終わりにしたいと思います。
実につたなく、判りにくい文章だとお思いでしょうが、
そこはどうかAWAGAKI様の寛容な心で受け止めてください。
わたくしの命はこれからどうなるか、全くわかりません。
もしも生きているようなことがあれば、また連絡をしたいと思います。
それでは。



彼からのメールはここで終わっている。
どうだろう、伝わっただろうか、彼の主張が。
事実の伝播のみに自己の生きる道を見つけ出した、
実に崇高な人間だということが行間からひしひしと伝わってこないだろうか。
私AWAGAKIはこの文章を読んで、とてつもない衝撃と感銘を受けた。
私が毎日のように感じていた不信感や疑念というものを、
物の見事に解説してくれたからだ。


そう、やはりそうだったのだ。
私は驚きを隠せない。
やはり巨大な組織による洗脳というのは既に現実のものとなっていたのだ。
しかも、こんな身近な遊技場で……。


先ほど述べたが、私の友人にもパチンコをたしなむ人はいる。
しかし彼らが洗脳されつつあるとは、とても思えない。
その友人達は、私から見ても、外見も中身もどこも変化していないように見えるからだ。
ここに来て、私AWAGAKIは考えを新たにしなくてはいけない。


パチンコ店に赴く者があんなにも多いのなら、
ただ道を歩くだけでもある種の危険が付きまとうはずだ。
また、私の友人の中にもパチンコ店に行っているものが居るので、
彼らにも十分気を払わなくてはならない。
さらに、私の住居の近くには三軒ほどのパチンコ店があるが、
その店舗の前をとおりすぎるときは慎重にしなくてはいけない。
何しろ、その中は洗脳の嵐が吹き荒れている。
店内に居る人間も危ないが、前を通り過ぎている私も、洗脳される危険があるのだ。


前記のメールを送ってくれた彼には、非常に感謝すると共に、
これから共に、その陰謀に対して、抵抗する。
この考えは、私のみならずこの国全員の未来を明るくするものだ。
もし、もしも、このメールを書いたあなたが生きているのなら、
もう一度でも私にメールを送って欲しい。
そのときには、共に戦う仲間が一人でも増えることになるのだから。

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