番外ストーリーT
| 真壁直樹SP短編 |
まえがき
このお話は、その後の恋愛事情ではありますが、前のお話とはまったく異次元のストーリーです。
お嬢さまと真壁が恋人になって間もなくの頃の設定で、お嬢さまはまだ高校生です。
公式で配信されたSPデート真壁編のすぐあとぐらいのつもりで書きました。
恋人同士の他愛のないやりとりをお楽しみいただければ幸いです。
| 恋人たちの幸せランチ |
「ごめんね、ちょっと遅れる…」
「え?もしかして俺は1時間待ちか?」
「っ!?…約束の時間て…12時だったよね?」
「12時だったよねって、もう12時だろ…。」
「あ・うん…それはそう…ごめんなさい。」
「もう、今日はやめるか?」
「えぇっ、でも、もう途中まで来てるよ?」
「あとどのくらいなんだ?」
「えっとね…12時15分に駅につくみたい…」
「ふーん…」
「ごめん…怒ってる?」
「………待っててやる。」
「ホントにごめんね…」
(あ…一方的に切られた…まずい、怒ってる。)
その日は、休みの彼に誘われての公園ランチデート。
外出先から電車で直接現地へ向かって、そこで落ち合うことにしたのはいいけれど、
少し出遅れてしまったあたしは、移動の途中で彼に連絡をして、
もうずいぶん前から彼がそこにいることを知った。
『うぅ…そうはいっても、15分くらいの遅れはそれほどの重罪ではないようにも思うけれど、
時間に厳しい人だからしょうがないか…こっちが悪いんだし、とにかく謝るしかないよね…』
ようやく待ち合わせの公園の最寄駅に着いて、改札の外に飛び出す。
そして、公園に向かって走り出したそのとき…
「あっ…あれ?」
すれ違った見覚えのある長身に気づいて振り返ると、そこには苦笑いの彼がいた。
「そんなに走らなくていい。」
「迎えに来てくれたの…?」
(さっき15分に駅に着くって言ったから…?)
そんな彼の気持ちが嬉しくて、自然と笑顔がこぼれる。
「まったくこのお嬢さまときたら…執事のときならいくらでも遅刻につきあうけどな、恋人ではそうはいかないぞ。」
「ごめんね、なんだかずいぶん長く待たせたみたいで…」
「ん…それはもういい。なるべくいい場所をとりたかったら、早めに来てたんだ。」
表情を緩めてそう言った彼の、柔らかい笑みにホッとする。
「いい場所って…そんなに混んでるの?」
「手軽なピクニックエリアだから、週末の昼はわりと混むんだ。」
彼に案内されて着いたところは、単純なピクニック以上の場所だった。
テラス席のようにテーブルとイスが木陰に配置され、その金属製のイスには
彼が用意したらしい新品のタオルがきちんと敷かれている。
周りのテーブルは、家族連れや女子会、カップルなどで埋まって賑わっていた。
彼が早くからここに来ていた理由がようやくわかる。
『あたしのために、景色が見渡せるテーブルを確保してくれてたんだ…』
「さぁ、そこ座って…」
そう促されて席につくと、彼が持っていたバッグから、お皿やおはし、そして手料理におしぼりまで出てきた。
「こんなに色々用意してくれてたなんて、全然思ってなかった…」
「だろう?驚かせようと思って、朝から色々準備してたんだ。」
私が想像してたピクニックは、おにぎりとかサンドイッチとかそんな簡単なものだったのに、
タッパに入れられた料理の数々は、手間ひまのかかった本格的なものばかり。
「ありがとう…せっかくのお休みに、時間かけて、こんなに用意してくれて…。
それなのにいっぱい待たせちゃって…ごめんなさい。」
彼の気持ちが嬉しいのと、そんな彼を待たせてしまった罪悪感とが心の中で交錯し、
やがて、この幸せと、そんな彼を大事にしたいという思いが強くなる。
「ほら、食べよう。」
「あ・うん…いただきます。」
彼がさりげなく料理をお皿に取り分けてくれる。
「!!…すっごく美味しい!」
「当然だな…俺を誰だと思ってる?」
「さすが真壁さん…」
「直樹…」
「あ・えっと…な・直樹さん…」
「そんなに照れなくてもよさそうなものだが…?」
「照れるよ…やっぱり…」
「まぁ、少しずつだな…」
「うん…」
私たちの幸せなランチタイムは、穏やかな木漏れ日とそよ風に包まれて、ゆっくりと流れていった。。。
Fin