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「兎の眼」

題名:兎の眼

書誌事項:「兎の眼」 灰谷健次郎 理論社 1978年
後に、1984年 新潮文庫、1998年 角川文庫 から再刊行

主な登場人物:鉄三、小谷先生、ばくじいさん、足立先生

あらすじ:大学を卒業し、結婚をしたばかりの新米の女性教師である小谷先生と、ごみ焼却場の側に住む子供たちを主とした小学生との奮闘を描いた作品である。少し型破りだが子供想いで生徒からの信頼も厚い足立先生や、小谷先生のクラスの生徒の一人、鉄三のおじいさんで戦争経験者のバクじいさん等に影響されながら、小谷先生は成長していく。小谷先生のクラスの生徒の一人で、ごみ焼却場に住む少年、鉄三はほとんどしゃべらず、学校には来るが授業中もただ黙って座っているだけだ。その鉄三が教室でカエルを殺し、クラスメートに乱暴をする場面から物語りは始まる。鉄三はハエを飼っており、彼にとってハエは友達であった。しかしハエというのは多くの人には不潔な生き物だというイメージが強く、小谷先生も初めは鉄三にハエを飼うのをやめさせようとした。しかし鉄三は全く心を開かず、口もきかない。そこで小谷先生は鉄三と一緒にハエの研究を始めるのであった。この研究を通して鉄三は少しずつ小谷先生に対して心を開き、文字を書くことも覚える。そしてこの研究は鉄三をハエ博士とし、後に大きな成果を挙げるのであった。鉄三を含め、ごみ焼却場に住む子供達は問題児扱いをされ、多くの先生方に敬遠されがちだったが、足立先生と共に小谷先生は様々な困難を乗り越えて行く。生徒や他の先生の言葉やバクじいさんの言葉に影響され、励まされ、小谷先生は必死で生徒のことを考える。多くの保護者や先生に批判されながらも障害児をクラスで預かったこともあった。子供達はその子ときちんと向き合い、彼女をとても大切にし、友情を築いていった。子供達は子供達なりにお互いのことを思い、様々な事を経験を通して学んでいく。教師は生徒達一人ひとりときちんと向き合い、教師と生徒が一緒に一歩ずつ前進していくのである。ごみ焼却場の移転に伴い、子供達の転校問題も浮上する。子供達はこれに抗議する為に同盟休校をした。足立先生は純粋に生徒達のことを思い、ハンストまでした。この様に、生徒と先生、そして生徒の保護者が一丸となって問題解決に取り組んでいくのである。

感想:彼らの人間らしさにとても温かい気持ちになれる作品だと私は思う。この作品の中の小学校と今の私達の小学校を比べたらどうだろう。全く違うもののような印象を受ける。実際、今の学校の先生達は小谷先生や足立先生のように生徒一人ひとりのことを真剣に考え、実際に行動しているだろうか。彼等のように友達や生徒、先生と一人の人間として向き合っているだろうか。この作品の中の小学校でいじめが問題になることがあるだろうか。私はそうは思わない。この「兎の眼」という物語は、子供、教師、そして保護者のあるべき姿を私達に教えてくれていると私は考える。生徒や先生などという関係というよりも、それぞれが一人の人間として、お互いのことを思いやりながら毎日を過ごしている。そして、様々な困難もみんなが一丸となって協力すれば共に乗り越えていけるということを実感させてくれる作品である。