1973年のピンボール 村上春樹

1973年のピンボール
 1973年のピンボールは、ピンボールに関する小説である。
もちろん内容はフィクションだ。
私は、村上春樹が描こうとした世界は、現在に繋がる過去と未来についてだと思っている。
これをノスタルジックかつ素晴らしい文章力で構築した傑作小説だと思う。
そしてこの鍵を握るのが、ピンボールである。
村上春樹のピンボールに対する思い入れと知識は相当な物で、ピンボールに関する小説として読んでも一級品だろう。
また今日のような、日本でのピンボールが消滅しつつある状況を考えると、ピンボールというモチーフの示唆(暗示)するところは意味深長だ。ある意味、見事に当を得ていると言える。
小説の中に出てくる、「ギルバート・&・サンズ」という会社は架空である。
もちろん、「スペースシップ」も「ビッグ・ウェイブ」「オリエンタル・エクスプレス」「スカイ・パイロット」「トランス・アメリカ」、すべて架空の台である。
しかし、ウィリアムズの「フレンドシップ・7」、バリーの「グランド・ツアー」、ゴットリーブの「キングズ・アンド・クイーンズ」等実際に存在したマシンに関して、またピンボールのテクニックやパーツについての記述はかなり正確だ。

村上春樹は、小説を書いた当時は「スペースシップ」という台が存在することを知らなかったそうで(夢にも思わなかったらしい)、後日このマシンを購入した。
これについては、1980年に書かれた「ピンボール後日譚」に詳しい。
しかし、この話は単行本等には収録されていないようである。
「スペースシップ」購入後の話は、「ピンボール・グラフィティ」(1989年 日本ソフトバンク)のエッセイの中に紹介されている。
これは「村上朝日堂 はいほー!」という短編エッセイ集の中にも「『スペースシップ』号の光と影」、というタイトルで収録されている。


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