●作品(交響曲)
属性画像
指揮者(佐渡裕)画像写真掲載予定
CDジャケット裏面画像写真掲載予定

交響曲第3番「カディッシュ」

第1楽章第1部 祈り 
    第2部 カディッシュ1 
第2楽章第1部 ディン・トーラー 
    第2部 カディッシュ2 
第3楽章第1部 スケルツォ 
    第2部 カディッシュ3 
    第3部 フィナーレ 


 カディッシュ(Kaddish/Qaddish「神聖化」)という言葉は、どこのシナゴーグでも、死者の追悼のために歌われる祈りを意味している。だからこの言葉は世界のユダヤ人すべてにとって深い感動的な意味を持っているといわれている。しかし、この追悼の祈りには全体を見合わせてもいわゆる「死」という言葉は唯の一度も現れず、逆に「生」(chayei或いはchayim)という言葉が3度も用いられているのである。つまりカディッシュは基本的に哀悼の念や苦悩を表明する挽歌というより、神の栄光に感謝する頌歌なのである。
 レナード・バーンスタインの第3交響曲《カディッシュ》は、作曲中の1963年11月23日、 ケネディ大統領 が暗殺されたところから、完成後「レクイエム」として「ジョン・F・ケネディの愛する思い出のために」捧げられたが、やはり本質的には、哀悼の念の表明のための作品というより、伝統的な「カディッシュ」同様、神の栄光への感謝であり、さらに言えば「死」ではなく平和への祈りという性格をもった作品なのである。
 しかも、レナード・バーンスタイン自身の作詞した語り手の言葉を読むと明らかに、この神への称賛は、実はいったん失われた神と人間の信頼関係がやっと回復されてのこと、というドラマティックな結果として歌われるものなのである。ここに、契約の民という民族独特の歴史的宗教的立場を、現代に生きる自分自身の宗教的立場として再吟味しているレナード・バーンスタイン独自の思想があらわれているとみなすこともできよう。
 (勿論、独自な立場といっても、宗教問題にそれ程敏感でない日本人には、さほど大きな問題には思われないかもしれない。だが、イスラエルでの世界初演では、この語り手の言葉は神への冒?を含んでいると一部の人達から激しい抗議を受けたほどなのである。信仰の問題についての追究とその表現では、レナード・バーンスタインは私達の想像以上に大胆な立場に立っていたと考えても良いだろう)
 音楽の面でも、このレナード・バーンスタインの《カディッシュ》はドラマティックで大胆である。語り手、独唱、合唱を導入していることで、いわゆる交響曲の概念からかなり遠いものになっていることはいうまでもないし、低音の漠然とした合唱を背景とする語り手の祈りによる全曲の開始の部分なども、著しく演劇的である。さらに、音楽様式や語法の上では、民俗的雰囲気から実験的雰囲気、調性から12音技法、新ウィーン学派風の旋律から、ジャズのイディオまで、単純な新古典主義から極めて複雑な表現主義まで、適切な表現効果のもとに組み合わされているのである。こうした点で、交響曲第3番は、レナード・バーンスタインの最もシリアスで大胆な主張を持った作品と呼んで差し支えないのであろう。
 第1楽章の第1部<祈り>は、全曲中の最も重要な主題で、ふたつの主要動機を含んでいるオーケストラによるアダージョの導入楽節である。
 コーラスが初めて祈りの言葉を歌い始めるところからがこの楽章の第2部にあたる<カディッシュ1>である。テンポは急に激しいアレグロに変化する。新しい楽想として音列主題と朗誦風の第2主題が登場する。
 第2楽章もやはりふたつの部分から成っており、第1部は、<ディン・トーラー>(神の旋律による試練)である。語り手が、神に直接激しい口調で懺悔の言葉を投げつける。その言葉が苦悩の極点に達した時、オーケストラで新しい音列主題が提示される。この音列主題の長い展開に続いて、打楽器と金管群によるグロテスクな、殆どジャズ風なエピソードが、不安感を称えた合唱のアーメンを伴って挿入される。この第1部は、8声の合唱によるカオス風の絶望的な叫びが終わる。
 第2部は、<カディッシュ2>。神の被造物たる人間が、神に抱かしめた失望感。その悲しみを慰めようと神に捧げるソプラノ独唱による優しい子守唄である。
 第3楽章は、スケルツォとフィナーレ、そして2部分に分けられたカディッシュ3とから構成されている。徹底したプレストで進む スケルツォは、交響曲の「十字架」と呼ばれていて、全ての楽想が巧妙に組み合わされて、走馬燈のような夢の連続を暗示するのである。語り手は、この夢の中で、神に向かって、人間を再び信じよと、強いるのである。その瞬間、少年合唱がフォルティッシモで登場する(<カディッシュ3>)。夢は終わったのである。 フィナーレは、まずディン・トーラーと同じアダージョで始まる。ここで語り手は、神と人間により深い新たな関係が確立したことを告げる。信仰の復活は、アレグロ・ヴィーヴォの溢れるばかりの歓喜に満ちた力強い合唱フーガ(<カディッシュ3>の後半)によって讃えられる。

著:石田一志、発行者:ワーナー・ミュージック・ジャパン、CD番号: WPCS-6600 3984-21669-2、佐渡裕指揮フランス放送フィル
※ワーナー・ミュージック・ジャパンが関係者の了解の下に、発行者:ドイツ・グラモフォン、レナード・バーンスタイン指揮イスラエル・フィルのCD盤より転載しました。

レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

Copyright (C) 1997-2003 じゃずべんだ All rights reserved.
UPDATE:
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6718/bernstfiles/kaddish.html