手抜きジョギングのすすめ
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■手抜きジョギングのすすめ
 ある朝、私はジョギングをしていて、二人組の知人とすれ違った。すると知人は
「あら、あなた走っているふりをしているの? 遠くで見ていたらブラブラ歩いていたのに私たちを見たら急に走り出したんじゃない?」と話し掛けてきた。
 私は、そのなんとも不躾(ぶしつけ)な質問に面食らった。彼女らは、かなり遠くから私を見つけたようだが、私は普段は度のゆるいメガネをかけているので、そんなに遠くに居る人たちに気付かないし、気付いたとしても誰だか分らないのである。

 しかしながらその質問のおかげで、多くの人がジョギングをそんなふうに、即ち「まじめに走り続けるものだ」と思い込んでいることに気付いた。そこで私はこう言い返した。
「そうなんですよ、それがジョギングなんですよ。歩きたくなったら歩き、走りたくなったら走り、道草を喰いたくなったら道草し、それでいいんですよ。だから楽しいんですよ。だから続けられるんですよ!」と。
 実際、健康のために始めたジョギングだから、続けること、それが一番大切なのである。継続は力なり。

 そもそも「ジョギング」という言葉が日本に入ってきたのは今から40年位前に遡る。私は中学校2年か3年の体育の授業の時に初めて「ジョギング」なる言葉を聞いたのだった。その時、体育の先生は
「今、ジョギングというものが海外(確かアメリカと言ったように思う)で流行っているそうです。ジョギングというものは自分のペースにあわせて、走ったり、歩いたり、道草したり、時にはお店に入ったりして、楽しみながらするものです」と教えてくれた。
 それを聞いて、長距離走が苦手だった私は、とても楽しいそうだなあ、と思ったものだ。だから、私の頭の中にあるジョギングとはそういうものなのである。

 しかし、今朝、知人の言葉で、世間ではそう思われていないことに気付いた。そして、インターネットで調べてみても、ジョギングは「ゆっくりと走るもの」という定義しか見つけられず、私の頭の中にあるような楽しいジョギングの姿は見出せなかった。

 40年もの歳月が、ジョギングの姿をまじめな日本人向けに変えてしまったのか? それとも、あの時教えてくれた体育教師の言葉が間違っていたのか?
 でもあの頃はインターネットも無い時代、教師はしかるべきルートから「ジョギング」に関する情報を得ていたに違いない。私には、あの体育の先生の言葉が間違っていたとは思えない。それにあの頃は、ただ走ることは「ランニング」と呼んでいた。ゆっくり走ろうが速く走ろうが、ランニングはランニングであった。わざわざゆっくり走ることを「ジョギング」といい直す必要があっただろうか? 「ジョギング」という言葉を新たに提唱するには、それ相応の違いがあったはずだ。そう考えると、やはり40年もの歳月がジョギングの姿を変えてしまったのだと思われる。

 インターネットでジョギングの起源を探してみても、私は確たるものを見つけられなかった。ウィキペディアでは「奇蹟のランニング」の著者、ジェイムズ・F・フィックスをジョギングの提唱者、としているが、その「奇蹟のランニング」という本を購入して調べてみたところ、この本の中では一貫して「ランニング」という言葉が使われており、「ジョギング」という言葉は他の引用文献の中でしか使われていなかった。
 さらにこの「奇蹟のランニング」は、アメリカで1977年に書かれ、日本語版は翌年の1978年に初版が発行されたものであるが、私が「ジョギング」という言葉を初めて聞いた中学2年~3年の時は、1973~1974年に当るから、この書籍によって「ジョギング」が日本へもたらされたのではない、という事は確実である。

 まあ、いずれにしても、現在の日本人の頭の中には「ジョギング=走ること」というイメージが定着してしまっているようだから、私は改めて本来のジョギングのスタイル、現代人から見れば「手抜きジョギング」とでも言うべきスタイルを提唱したいと思う。

 健康維持に大切なことは「楽しく続けられること」。走る一辺倒のランニングではなく、「走ったり、歩いたり、道草したりする楽しいジョギング」をぜひおすすめしたい。

 雨の日は休めばいい。風が強い、体調が悪い、とにかく気分が乗らなければやらなくていい。ずーと歩くだけでもよい。走りたくなったら走る。○○しなければならない、ということは一切ない。自由である。無理をしない。楽しくやる。細く、長く続けていくことが、健康を維持するための秘訣である。
2015年5月18日  濱田 篤重


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