司法試験に関係するかもしれないちょっと気になる判例をあげてみました。
ここに掲載してあるのは、平成16年(2004年)までのものです。
平成17年(2005年)以降の判例は、「最新法律情報室」に掲載しています。
詳しい判決文は、裁判所のサイトにあるものを参考にしてください。
政治ビラ配布目的の建造物立ち入りを無罪とした事例
(東京地裁八王子支部判平成16・12・16、長谷川憲一裁判長)
住民のプライバシー侵害の程度は低く、ビラ入れが憲法で保障された政治的表現活動の一つとして民主主義社会の根幹を成すことを考えれば、刑事罰に値するほどの違法性はない。
旧日本軍の行為について戦後賠償をしないことは憲法に違反しないとした判例
(最二小判平成16・11・29、津野修裁判長)
戦争による損失の補償を憲法は予定していない、憲法施行前の戦前のことに憲法は適用されないとして、平等原則・財産権違反の憲法違反を理由とした損害賠償請求・補償請求は認められないとした。
放送法をの規定を根拠に訂正放送命令をすることはできないとした判例
(最一小判平成16・11・25、才口千晴裁判長)
放送法の規定は放送事業者が自発的に訂正放送を行うことを国民全体に対する義務として定めたもので、個々の被害者が民事訴訟で訂正放送を求めることはできないとして、訂正放送を命じた控訴審判決を破棄した。
首相の靖国神社参拝を公式参拝と認定した事例
(千葉地判平成16・11・25、安藤裕子裁判長)
客観的に職務に当たるとしつつ、憲法判断はせず、請求を棄却しました。
ヤミ金の取立てと家庭崩壊に不法行為の因果関係を認めた事例
(さいたま地判平成16・11・19、石原直樹裁判長)
精神的に追いつめられた家庭が夫による妻の殺害という形で崩壊したことと、違法な取立て行為に因果関係があるとした。
分譲マンションの値下げ販売に関し、売主の公団に説明義務違反を認めた判例
(最一小判平成16・11・18、島田仁郎裁判長)
高値のままでは買い手がつかず、すぐには売りに出せないと考えていたにもかかわらず、こうした状況を全く説明しなかったため、原告らは優先分譲の価格が妥当か十分に検討する機会を奪われたとして、信義誠実の原則に著しく反するとした。
2年4ヶ月の別居では有責配偶者からの離婚請求は認められないとした判例
(最一小判平成16・11・18、横尾和子裁判長)
同居期間6年7ヶ月の後に別居が2年4ヶ月続いただけでは別居が相当期間に及んでいたとはいえないとして、有責配偶者からの離婚請求を否定した。
パートナー関係の破棄につき慰謝料請求を否定した判例
(最一小判平成16・11・18、横尾和子裁判長)
子供はいるが別居で生計も別というパートナー関係について、婚姻やこれに準ずるものと同じように法的に保護する必要性は認められないとして、一方の意思による解消でも慰謝料請求権は発生しないとした。
暴力団組長の使用者責任を認めた判例
(最二小判平成16・11・12、北川弘治裁判長)
組の威力を利用した資金獲得活動に関し、組長と組員は使用者と被用者の関係にあるとし、抗争事件警戒中に山口組組員に射殺された警察官の遺族の山口組組長に対する賠償請求を認めた。
学生は年金任意加入とした立法を違憲とした事例(新潟学生無年金訴訟)
(新潟地判平成16・10・28)
20歳以上の学生をそれ以外の学生と区別し、被保険者とせず放置したのは合理的な理由のない差別で、法の下の平等を定めた憲法に違反する、とした。
マンション周辺住民の景観利益を否定した事例(国立マンション訴訟)
(東京高判平成16・10・27、大藤敏裁判長)
個々の国民や地域住民が司法上の個別具体的な権利・利益として、良好な景観を享受する権利を持つとはいえないとして、住民らにマンション建設による景観上の被害を認めることはできないとした。
水俣病に国と県の責任を認めた判例(水俣病関西訴訟)
(最二小判平成16・10・16、北川弘治裁判長)
被害は深刻で、国が規制していればその拡大を防ぐことができたとして、対策を怠った国や県の責任を認めた。
行政手続の瑕疵があっても事業の違法性を否定した事例(やんばるの森開発訴訟)
(福岡高裁那覇支部判平成16・10・14、窪田正彦裁判長)
手続的な瑕疵のみで事業全体が違法となるわけではない、として当時の沖縄県知事の公金支出の責任を否定しました。
非嫡出子の相続分が嫡出子の半分としている立法は合憲とした判例
(最一小判平成16・10・14、島田仁郎裁判長)
3対2の僅差で合憲としました。
教師の紀行文を生徒会誌不掲載とした校長判断を合憲とした事例
(最三小判平成16・9・28、浜田邦夫裁判長)
戦争責任などに触れた紀行文を校長判断で生徒会誌に掲載しないことは、表現の自由、学問の自由、検閲の禁止には反しないとした。
内部調査過程の取りまとめ文書の開示を認めた判例(福井県カラ出張訴訟)
(最二小判平成16・9・10、津野修裁判長)
福井県は外部に調査報告書を公表しているが、その基礎となった調査過程の取りまとめ文書もこれと同視し、開示の対象とすべきとした。
旧海軍の機雷爆破による損害に国の責任を認めた事例
(東京高判平成16・9・6、原田和徳裁判長)
海軍関係者が捨てた機雷と推定できることから、国に危険除去義務と譲渡の際の告知義務を怠っていたとして、賠償を認める。
プロ野球球団の合併について、選手会による差し止めを認めなかった事例
(東京地決平成16・9・3、土田昭彦裁判長)
将来多くの選手が解雇されるという主張に対し、仮処分を認める必要性がないとして、差し止めを認めなかった。
プロ野球球団の合併について、親会社株主による差し止めを認めなかった事例
(大阪地決平成16・9・3、土田昭彦裁判長)
球団経営により年間40億円の赤字があることから、合併しても会社に回復不能な損害が生ずるおそれがあるとはいえないとして、差し止めを認めなかった。
銀行の統合交渉の差し止めを認めなかった事例(最高裁)
(最三小決平成16・8・30、上田豊三裁判長)
住友信託銀行が基本合意書の独占交渉権に基づいて求めていた、UFJホールディングスと三菱東京フィナンシャルグループの統合交渉の差し止めを認めず、抗告を棄却した。基本合意書の独占交渉権に法的拘束力は認められるが、合併できるという期待権の侵害にとどまる。
干拓事業の差し止めを認めた事例(諫早湾干拓訴訟)
(佐賀地判平成16・8・26、榎下義康裁判長)
干拓事業と漁業被害の因果関係を認め、工事が進んだら再検討自体が困難になるとして、差し止めを認めた。
入学辞退者に大学入学金の返還を認めず、授業料の返還のみを認めた事例(京都入学金返還訴訟控訴審)
(大阪高判平成16・8・25、大出晃之裁判長)
入学金は大学に入学できる地位や資格を得たことの対価にあるとして、返還義務を否定した。
銀行の統合交渉の差し止めを認めなかった事例(高裁)
(東京高決平成16・8・11、原田和徳裁判長)
住友信託銀行が基本合意書の独占交渉権に基づいて求めていた、UFJホールディングスと三菱東京フィナンシャルグループの統合交渉の差し止めを認めず、交渉中止の仮処分を取り消した。
路上駐車の所有者に交通事故の過失を認めた事例
(さいたま地判平成16・8・6、山崎まさよ裁判長)
違法駐車をしているトラックをよけた女児が別の車に引かれた事案で、トラック所有者に「現場を走行する運転者の過失を誘発する危険性を認識しながら、違法駐車を継続し、事故を発生させた」として過失を認定しました。
夫の死後に冷凍精子で妊娠した子の認知を認めた事例
(高松高判平成16・7・16、松本信弘裁判長)
死亡した男性は妻の賛同が得られれば、保存精子を使って子供をつくってほしいと希望しており、死後の懐胎について同意していたと認められる。認知の訴えは、懐胎したときの父の生存は要件ではない、として認知を認めた。
法的見解は事実の適示とはいえないとした判例
(最一小判平成16・7・15、横尾和子裁判長)
法的な見解の表明には、特定の事実の適示を含む場合があることは否定できないが、法的見解自体が事実の適示とはいえない、と判断した。
謝罪広告の掲載命令は思想良心の自由を侵害しないとした判例
(最一小判平成16・7・15、才口千晴裁判長)
陳謝の意を表明する程度の謝罪広告掲載を命じても、憲法に違反しない、とした。
国立大キャンパス内の神社は清祥分離の精神に反するとした事例
(東京高判平成16・7・14、根本真裁判長)
神社を存置したままでいる国や大学の姿勢は、特定の宗教団体に対する公金支出を禁じた憲法89条の精神に明らかに反するが、信教の自由が直ちに侵害されたとはいえないとして請求を棄却した。
ネズミ講組織への課税を有効とした判例
(最三小判平成16・7・13、藤田宙靖裁判長)
課税庁が社団と認定したことには合理性があるとして、破産管財人が求めた税金の返還を否定した。
おとり捜査がを適法とした判例
(最一小判平成16・7・12、泉徳治裁判長)
薬物犯罪などの捜査で、通常の捜査方法だけでは摘発が困難な場合、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に、おとり捜査を行うことは任意捜査として許される。
職場での受動喫煙に損害賠償を認めた事例
(東京地判平成16・7・12、土肥章大裁判長)
区職員が職場での受動喫煙で健康を害したとして区に賠償を求めた事案で、受動喫煙の危険性から原告の生命、健康を保護するよう配慮する義務があったとした。
意に反する昇進につき個人で救済申し立てができるとした判例
(最二小判平成16・7・12、福田博裁判長)
組合幹部の意に反して昇進させ組合員資格を奪う不当労働行為について、組合ではなく個人でも救済申し立てがができるとした。
強制連行につき時効適用を権利の濫用とした事例
(広島高判平成16・7・9、鈴木敏之裁判長)
不法行為請求権については除斥期間の経過により請求できないとしつつ、安全配慮義務違反の損害賠償請求については、強制連行・強制労働の資料に虚偽記載をしていることから、時効の適用は権利濫用に当たるとした。
終戦後に朝鮮籍の父の認知を受けた男性に日本国籍を認めた判例
(最一小判平成16・7・8、甲斐中辰夫裁判長)
昭和20年終戦前日に日本人の母の婚姻外の子として生まれ、9月に朝鮮国籍の父の認知を受けた男性に、現国籍法の趣旨より日本国籍を認めた。
相続権不存在確認訴訟は固有必要的共同訴訟とした判例
(最三小判平成16・7・5、上田豊三裁判長)
特定の相続人が相続人の地位を持つかどうかは、遺産分割当事者の範囲や相続分など基本的な事項にあたるとして、相続人全員が参加しなければならないとした。
具体的理由の記載さえあれば株主の帳簿閲覧請求はできるとした判例
(最一小判平成16・7・1、泉徳治裁判長)
帳簿閲覧を請求する理由は具体的に記載されなければならないが、その理由を基礎づける事実が客観的に存在することが必要とする法的根拠はない、として、株主の帳簿閲覧請求を広く認めました。
環境アセスメント準備書の公開を認めた判例(東海環状道訴訟)
(最三小判平成16・6・29、金谷利広裁判長)
環境影響評価準備書や評価書など、正式の公表される前段階の文書も、公開することにより、行政の意思形成に著しい支障が生じるとはいえない、として岐阜県知事の非公開処分を取り消しました。
即位の礼に知事が出席するための公費支出は合憲とした判例
(最二小判平成16・6・28、福田博裁判長)
伝統的な皇位継承儀式に参列した行為は、憲法で禁止される宗教的活動には当たらない。
裁判官会議議事録を非公開とした最高裁の決定を違法とした事例
(東京地判平成16・6・24、河村吉晃裁判長)
ロッキード事件に関する裁判官会議議事録の非公開決定について、当時会議が非公開であったとしても、事後も議事録を非公開とするまでの理由は見当たらない、として損害賠償請求を認めた。
謝罪広告の掲載命令は思想良心の自由を侵害しないとした判例
(最三小判平成16・6・22、上田豊三裁判長)
単に事実の真相を告白し、陳謝の意を表明する程度の謝罪広告掲載を命ずることは倫理的な意思、良心の自由を侵害せず、憲法に違反しない、としました。
国体の参加資格にある国籍制限を合憲とした判例
(最二小判平成16・6・11、福田博裁判長)
アメリカ国籍であることでみやぎ国体に参加できなかった男性が訴えていた事案で、国籍で国民体育大会参加を制限したことは、法の下の平等を定めた憲法に違反しない、とした。
法令違憲判決を理由に過去の別事件の再審を認めた事例
(大阪高判平成16・5・?、下方元子裁判長)
郵便法の規定につき法令違憲とした平成14年9月の最高裁大法廷の判決を理由として、平成11年10月に確定した同様の事件の再審を開始する決定をした。日本郵政公社は、最高裁に特別上告(最高裁は9月に別の形式的理由で再審開始を破棄)。
民事訴訟において、裁判所に検面調書の提出命令権があるとした判例
(最三小決平成16・5・25、金谷利広裁判長)
刑事事件の記録の開示を保管者が拒否した場合、民事訴訟で使用する必要性、関係者の名誉やプライバシー侵害の有無や程度などに照らし、裁量権を超えていると認められる場合は、裁判所は提出を命令できるとした。
強制連行の損害賠償請求権を除斥期間により消滅するとした事例
(福岡高判平成16・5・24、蓑田孝行裁判長)
国家無答責の法理に関わらず、特段の事由がある場合は国は責任を負う。そして、強制連行は国と企業の共同不法行為にあたるが、提訴可能になってから速やかに権利を行使したとはいえないとして除斥期間の適用を認めた。
靖国神社の参拝は首相の職務行為とはいえないとした事例(大阪靖国訴訟)
(大阪地判平成16・5・13、吉川慎一裁判長)
肩書きを明らかにして社会的影響力の存在を示すことは私的領域においても行われることで、献花代金が私費から支出されることから、靖国神社への一連の参拝は国の機関としての内閣総理大臣の行為に当たらないと認定した。
炭鉱労働者の塵肺被害につき、国の責任を認めた判例(筑豊塵肺訴訟)
(最三小判平成16・4・28、藤田宙靖裁判長)
旧じん肺法施行の時点でじん肺を防止する義務が国にあるのにも関わらず対策を怠ったことは、著しく合理性を欠き違法とし、国に国家賠償法上の責任を認めた。
マンションの滞納管理費の請求権の消滅時効は5年とした判例
(最二小判平成16・4・23、北川弘治裁判長)
区分所有法上、管理人に認められている区分所有権譲受人に対する滞納管理費の請求権は、定期給付債権に当たり、5年の消滅時効にかかるとした。
圏央道の事業認定を取り消した事例
(東京地判平成16・4・22、藤山雅行裁判長)
首都圏中央連絡道は事業の必要性が低い上、代替案の検討を全く行っておらず合理性もないことから、事業認定は違法として取り消した。
首相の靖国神社の参拝を政教分離に反し違憲とした事例
(福岡地判平成16・4・7、亀川清長裁判長)
目的効果基準より社会通念に従って客観的に判断すると、憲法20条3項の宗教的活動にあたる。しかし、原告の信教の自由を侵害しておらず、不法行為には当たらないとした。
政治家の長女のプライバシー侵害を理由とした出版差止めの仮処分を取り消した事例(週刊文春出版差止め事件)
(東京高判平成16・3・31)
プライバシー侵害に当たるが、離婚に関する私事は日常生活で人が耳にし、眼にする情報のひとつに過ぎず、事前に差止めを認めなければならないほどの重大な損害が出る恐れはない、とした。
犯罪の嫌疑がないとして、日米犯罪人引渡し条約に基づく引渡しを認めなかった事例(理化学研究所遺伝子スパイ事件)
(東京高決平成16・3・29、須田賢裁判長)
アメリカの裁判で有罪とされる見込みがあるかを日本で審査することが条約の趣旨で、アメリカ法に基づく犯罪の嫌疑が認められないとして、引渡しを認めなかった。
強制連行後の苛酷な労働に対して、国に賠償義務を認めた事例
(新潟地判平成16・3・27、片野悟好裁判長)
国が強制連行と労働を政策決定していたことから、国と労働者の間に労働契約類似の契約関係があり、国に安全配慮義務違反があるとした。また、消滅時効の主張は、社会的に許容された限界を著しく逸脱するとした。
保険金目的の自殺でも、免責特約期間後の支払い義務を認めた判例
(最一小判平成16・3・25、甲斐中辰夫裁判長)
契約1年以内の自殺の場合に限り生命保険金支払いを免責する特約は、常に免責されるとする商法の規定に関わらず有効で、免責期間経過後は特段の事由がない限り、保険金目的の自殺でも支払義務が生じるとした。
無年金障害者への保険給付措置を放置した国の行為を違法とした事例
(東京地判平成16・3・25、藤山雅行裁判長)
任意加入だった学生時代の国民年金保険料を支払っていなかったことを理由に、障害基礎年金を不支給のままで何ら措置を講じないことは、1985年の改正で給付の有無の格差が拡大した点より、法の下の平等に反するとした。
取材相手の期待権は法的保護に値するとした事例
(東京地判平成16・3・24、小野剛裁判長)
取材される側が報道内容に抱いた期待・信頼は法的保護の対象になり、意図に反する内容に編集して期待権を侵害した場合は、取材者(製作会社)に損害賠償責任が生じるとした。
しかし、放送事業者には自由な編集権が認められるとして、責任を否定した。
学資保険の返戻金を理由に生活保護費の削減を違法とした判例
(最三小判平成16・3・16、藤田宙靖裁判長)
生活保護法の趣旨にかなった目的と態様で蓄えた貯蓄などは収入認定の対象とすべき資産には当たらず、学資保険の満額返戻金を収入と認定して、生活保護費を減額した処分を違法とした。
弁護人が接見時に証拠のビデオを再生することを妨害した拘置所職員の行為を違憲とした事例
(大阪地判平成16・3・9、森宏司裁判長)
接見時に弁護人が持ち込む物について、内容に及ぶ検査は許されないとし、内容を検査しなければビデオを被告人に見せることを許可しないとした拘置所の行為を、接見交通権の侵害にあたり違憲・違法とした。
非嫡出子の戸籍の記載をプライバシー侵害とした事例
(東京地判平成16・3・2、柴田寛之裁判長)
非嫡出子について、戸籍の続柄欄に嫡出子と区別して「男」「女」と記載することは、戸籍制度の目的の必要限度を超え、プライバシーの侵害に当たるとした。
記載の制度を改廃しない法務大臣の不作為については、注意義務違反はなく慰謝料請求を棄却。
商工ローンの貸手に不備がある場合、みなし弁済規定の適用を否定した判例
(最二小判平成16・2・20、亀山継夫、滝井繁男各裁判長)
貸金業規制法で貸し手に交付が義務づけられている書類に、記載漏れや交付の遅れがあった場合、利息制限法の上限を超えた支払いも有効とする「みなし弁済」の規定の適用はないとした。
また、貸付当初から利息を差し引いて貸し付ける場合の「天引き利息」にも、みなし弁済の規定の適用はないとした。
貸金業規制法を厳格に解釈した、商工ローン側に厳しい判決。
被害者に自殺を迫った行為を、殺人罪の間接正犯とした判例
(最三小決平成16・1・20、浜田邦夫裁判長)
激しい暴行を受け被害者が被告人を極度に恐れていた場合、冬の海に車ごと飛び込んで自殺するよう指示することを、殺人の実行行為とした。
特許権の譲渡対価を600億円と認定した事例(日亜化学工業青色発光ダイオード訴訟)
(東京地判平成16・1・20、三村量一裁判長)
特許法35条の利益を、権利を独占する利益として算出。
一票の格差5.06倍を合憲とした事例(2001年参院選定数不均衡訴訟)
(最大判平成16・1・15、町田顕裁判長(長官))
選挙区の定数配分は9対6で合憲。非拘束名簿式比例代表制の導入については、立法裁量として全員一致で合憲。
5人の裁判官は、人口比例のよると15の選挙区が定数1となり6年に1度しか投票できなること、都道府県を単位とした選挙区とすることは立法裁量として、合憲。
4人の裁判官は、次の選挙でも現状維持の場合、立法府の義務にあった裁量権の行使がなかったとして違憲判断がなされうると警告しながらも、合憲。
6人の裁判官は、平等原則を重視して、5倍を超える格差は違憲。
駐留軍用地特措法の改訂を合憲とした判例
(最一小判平成15・12・27、泉徳治裁判長)
使用期限経過後も国が暫定使用できるよう駐留軍用地特別措置法を改定した点を、平成8年8月の判例を踏襲し合憲とした。
1年以上にわたり根拠ないまま国が土地を占有した点は、違法とした。
痴漢で懲戒免職になった社員に対する退職金の一部支払いを命じた事例
(東京高判平成15・12・11、浅生重機裁判長)
痴漢は横領などと違い会社に対する直接の背信行為でないと指摘し、退職金は給与の後払い的な意味合いが強く、全額不支給とするほどの背信行為ではないとして、3割の支給を認めた。
損害保険の地震免責に慰謝料請求権は発生しないとした判例
(最三小判平成15・12・9、藤田宙靖裁判長)
地震免責特約がある以上保険金の支払い義務がないことを前提とした上で、保険会社の説明に不適切な点があっても、特段の事情のない限り、慰謝料請求権は発生しないとした。
成田空港の事業認定を合憲とした判例(成田空港訴訟)
(最一小判平成15・12・4、横尾和子裁判長)
新東京国際空港の事業認定や公共用地の取得に関する特別措置法は憲法に反するとはいえないとした。
産休を理由とした賞与不払いを公序良俗に反するとした判例
(最一小判平成15・12・4、甲斐中辰夫裁判長)
産休・育児休暇を欠勤扱いにしたため、賞与を全額不払いした代々木ゼミナール運営会社の行為を公序良俗に反するとした。
ただし、一定の範囲内で減額する部分は直ちに違法とはいえないとした。
公務員の停職処分を非公開とした判例(富山県出席簿公開訴訟)
(最二小判平成15・11・21、北川弘治裁判長)
公務員の出勤簿のうち、氏名や出勤状況の記載は、公務に関する情報で非開示にできないが、停職は懲戒処分の一つで、公務員を離れた個人の評価を低下させる性質があり、非開示にできるとした。
民間人の氏名を非公開とした判例(新潟県食糧費公開訴訟)
(最二小判平成15・11・21、亀山継夫裁判長)
食糧費を使った接待への出席者を記載した文書の開示請求について、企業の従業員の氏名については便宜のための記載で個人情報にあたるので、非公開とした。
商工ローンの手形訴訟を制度の悪用とした事例
(東京地裁決定平成15・11、杉山正己裁判長)
借用書代わりに約束手形を債務者から取り、手形訴訟を利用したSFCG(旧商工ファンド)の行為を、手形訴訟の悪用で不適法として、訴えを却下した。
民間人分の情報を非公開とした判例(大阪市食糧費公開訴訟)
(最三小判平成15・11・11、金谷利広裁判長)
食糧費を使った会議への出席者を記載した文書の開示請求について、民間人についての情報は、公務員の職務に関するものでも、個人に関する情報にあたり非公開とした。
指導要領の本人開示を一部認めた判例(大田区指導要領開示訴訟)
(最三小判平成15・11・11、浜田邦夫裁判長)
自分の小学校時代の指導要領のうち成績や評価について開示されなかった部分につき、主観的要素の少ない部分は非開示とはできないとした。
分譲マンション値下げ分の返還請求を否定した事例(公団マンション値下げ販売訴訟)
(東京高判平成15・11・5、江見弘武裁判長)
値下げ前の購入者による値下げ分の損害賠償請求について、市況の変化で不利益を被るのは購入者の責任として、公団の責任を否定した。
公団が値下げしないと言い続けた点についても、法的責任まではないとした。
男女別の賃金体系を公序良俗には反しないとした事例(兼松男女差別訴訟)
(東京地判平成15・11・5、山口幸雄裁判長)
男女別の採用・処遇は、憲法14条の趣旨に反するが、労働基準法に違反しているとは言えず、採用時に公序良俗に反していたとはいえないとした。
暴力団組長に使用者責任を認めた事例(京都警官射殺事件)
(東京高判平成15・10・30、林醇裁判長)
山口組下部組織の組員に謝って射殺された警察官の遺族が山口組組長に損害賠償を請求した訴訟で、下部組織の対立抗争を指揮監督できる立場にあったとして、使用者責任を認めた。
入学辞退者に授業料のみ返還請求を認めた事例(東京入学金返還訴訟)
(東京地判平成15・10・23、斎藤隆裁判長)
消費者契約法の施行後は、授業料の前納分については支払い義務がないとして、返還請求を認めた。
しかし、入学金については、学生の地位取得の対価で浪人生活回避の対価を得ているとして、返還を認めなかった。
うっかり車庫に入れ忘れたことを無罪とした判例
(最一小判平成15・10・21、福田博裁判長)
車をうっかり車庫に入れ忘れ自宅前に一晩放置して車庫法違反に問われた事案につき、同規定は専ら故意犯を処罰する趣旨としたうえで、故意があったとするには合理的な疑いが残ると判断し、無罪とした。
サブリース契約の賃料減額請求を認めた判例(サブリース訴訟)
(最三小判平成15・10・21、藤田宙靖裁判長)
賃料自動増額特約のあるサブリース契約にも、借地借家法32条の適用があり、賃料の減額請求が認められるとした。
有害なタバコを販売しても違法とはいえないとした事例
(東京地判平成15・10・21、浅香紀久雄裁判長)
ニコチンの依存性は喫煙者の意思決定の自由を奪うほど強力ではなく、嗜好品として定着している事情などを考慮すると、タバコの製造・販売は違法とはいえないとした。
テレビ放送の名誉毀損の判断は一般視聴者を基準とした判例(ニュースステーション所沢ダイオキシン報道訴訟)
(最一小判平成15・10・16、横尾和子裁判長)
放送内容が名誉毀損にあたるかは、一般の人の視聴の仕方を基準に、放送全体から受ける印象なども総合的に考えて判断すべきとした。
任官拒否は裁量の範囲内とした事例
(大阪高判平成15・10・10、太田幸夫裁判長)
判事補への任官を拒否した最高裁の行為は、思想・信条による差別はなく、最高裁の裁量権の範囲内として、国家賠償請求を棄却した。
一部起訴による判決確定後、残部の起訴を適法とした判例
(最三小判平成15・10・7、金谷利広裁判長)
20件以上の窃盗の一部で起訴され有罪判決が確定した後、残部について起訴しても、前の起訴事実と後の起訴事実は一体のものとはいえないとして、後の起訴を適法とした。
入学辞退者に授業料のみ返還請求を認めた事例(神戸入学金返還訴訟)
(大阪地判平成15・10・6、佐賀義史裁判長)
入学辞退で契約を解約したことになり、大学が提供した部分の対価を除いて、返還請求できるとした。
しかし、入学金については、大学に入学し得る地位という対価を得ているとして、返還請求を認めなかった。
土地収用の代執行を停止する決定
(東京地判平成15・10・3、藤山雅行裁判長)
居住する者の利益は極めて重要で、いったん失うと容易に置き換えられず回復困難な損害が発生することから、手続きを停止する緊急の必要性があると認定した。
署名を集めた者の名簿を公開することに公益性ないとした事例
(松山地判平成15・10・2、板倉充信裁判長)
住民投票条例の制定を求めた署名を集めた受任者の名簿を愛媛県大洲市が情報公開条例に基づいて公開した行為について、プライバシー権を犠牲にしてまで名簿を開示する公益性はないとして、損害賠償請求を認めた。
旧日本軍の毒ガス兵器遺棄について、政府の責任を認めた事例
(東京地判平成15・9・29、片山良広裁判長)
政府に条理に基づいて中国政府に情報を提供する義務があったのに、国交正常化後も履行しなかったことについて、国家賠償請求を認めた。
入学辞退者への入学金返還義務を否定した事例
(大阪地判平成15・9・19、中村隆次裁判長)
入学辞退者の返還請求に対し、授業を受けることの対価の性質がある授業料と施設利用料の返還は認めたが、自ら入学辞退した以上は入学金の返還義務はない。授業料を返還しないとした募集要項も公序良俗には反しないとした。(7月の京都地判と異なる結論)
講演参加者の名簿を無断で警察に提出した大学の行為を違法とした判例(早稲田大学江沢民講演会事件)
(最二小判平成15・9・12、滝井繁男裁判長)
参加者の承諾を得ることは容易だったのに、同意なく警察に名簿を提出した早稲田大学の行為を、プライバシーの侵害にあたると判断した。
住民訴訟の原告たる住民に公取委への記録閲覧請求権を認めた判例
(最二小判平成15・9・9、上田豊三裁判長)
談合に関する住民訴訟を提起した住民は、独占禁止法69条の「利害関係人」にあたり、公正取引委員会による開示を適法とした。
法廷での弁護人と外国人の被告人とのメモの授受を制限することを適法とした判例
(最二小判平成15・9・5、亀山継夫裁判長)
外国人の被告人の弁護人が、被告人とメモによる意思疎通を図ろうとしたところ、裁判所や拘置所職員によって制限された事例について、制限は適法とした。
胎児への傷害で業務上過失致死罪の成立を認めた事例
(鹿児島地判平成15・9・1、大原英雄裁判長)
交通事故で妊婦に傷害を負わせ、事故当時の胎児が、事故後帝王切開で出生に至ったが傷害を負って生まれた事例について、妊婦だった女性への傷害のほか、出生した女児への傷害も認めた。業務上過失致死罪では、初の事例。
被害者の命日ごとの定期金賠償を認めた事例(東名世田谷飲酒トラック幼児焼死事件)
(東京地判平成15・7・24)
一時金賠償だと実勢利息を大きく超える法定利息を控除されることから、原告が定期金賠償を選択することを認めた。
子会社への保証料を実質的に利息とみなした判例
(最二小判平成15・7・18、滝井繁男裁判長)
商工ローンの日栄(現ロブロ)が、融資にあたり子会社の日本信用保証に保証料を支払うことを条件としている場合、保証料はみなし利息にあたるとした。
盗難通帳による引出しで、住所の誤記がある場合に銀行に過失を認めた事例
(横浜地判平成15・7・17、松田清裁判長)
銀行の窓口担当者が、払戻請求書記載の住所に一文字誤記があることを見落とし、印影の照合だけで定期預金の払戻に応じた点につき、銀行の過失を認めた。
普通預金については、注意義務は軽度で足りるとして過失を認めなかった
入学辞退者の入学金返還請求を認めた事例
(京都地判平成15・7・16、水上敏裁判長)
4月1日までに解約の意思表示をした者は、学生の地位を取得しなかったとして、授業料のほか入学金の返還請求も認めた。
町長交際費から玉串料を支出した町長の行為を違憲とした事例
(大津地判平成15・7・15、神吉正則裁判長)
併合罪は犯罪全体で量刑を決定するとした判例(新潟柏崎少女監禁事件)
(最一小判平成15・7・10、深沢武久裁判長)
併合罪規定は、個々の犯罪の量刑を考慮することなく、1.5倍の枠内で犯罪全体の量刑を決定する規定と判断した。
賃料増額特約を不相当とした判例
(最一小判平成15・6・12、甲斐中辰夫裁判長)
バブル経済の時期に締結された賃料の自動増額特約は、地価が下落に転じた後は特約の基礎事情が失われたとした。
金融整理管財人の選任があっても、代表訴訟の継続を認めた判例
(最一小判平成15・6・12、深沢武久裁判長)
信用組合の組合員が代表訴訟を提起した後に、組合が破綻し金融整理管財人が選任されても、組合が当事者能力を失わず、代表訴訟は可能とした。
出生後の認知でも日本国籍を認める特段の事由
(最一小判平成15・6・12、甲斐中辰夫裁判長)
出産前日に前夫と離婚し、前夫との親子関係不存在確認の判決確定後に認知された事例に、特段の事由があるとした。
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