
ぼーる通信 プロ野球ビジネス
by B_wind
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2005/12/28(188号) |
45 選手会の改革案 |
| プロ野球選手会がNPB改革案を発表しましたが、なんと「史上最も成功したスポーツビジネス(種子田穣立命館大学教授)」ともいわれるNFL(アメリカンフットボール)を共産主義と表現しています。 元共産党員の渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長なら分からなくもないのですが、新たなビジネスモデルを提唱する選手会の「改革案」に社会体制の用語である「共産主義」という言葉がでてきたことに驚きを禁じ得ません。戦後のレッドパージ(赤狩り)でもあるまいし、時代錯誤も甚だしいといわざるを得ませんし、何かしらの意図が感じられます。 そもそも、NPBやNFLといったリーグスポーツ・ビジネスは、リーグ戦興行体であり、フランチャイズビジネスです。そこではリーグと球団は、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)という関係にあります。スポーツビジネスの場合、加盟店である球団が先に設立されている場合が多く、ビッグクラブ(有力加盟店)とリーグ(本部)との確執(主導権争い)が常に問題となります。いわば、販売店が先にでき、その後本社ができた「ヤクルト」みたいなものです。 この点、Jリーグは、リーグが主体となってできた組織です。もちろん、クラブはJリーグ設立以前からありましたが、Jリーグへの加盟に当たっては、リーグ側で加盟基準を設け、選考もリーグ側で行っています。集権的なJリーグはリーグスポーツとしては少数派ですが、一般的なフランチャイズビジネスでは、本部(リーグ)主導は当然とされるものです。 プロリーグでは、NFLのようにリーグの力が強い集権的なリーグとNPBのように球団の力が強い分権的なリーグに分類することができますが、NFLのように本部(リーグ)主導の集権的なフランチャイズビジネスは、フランチャイズビジネスではごく一般的なモデルであり、これを共産主義と表現するということは、リーグスポーツ・ビジネスの基本を理解していないことになります。 選手会のせっかくの「改革案」ですが、結局はビッグクラブ(巨人、ソフトバンク)、選手会顧問弁護士、そして選手自身への妥協の産物のように思えてなりません。 |
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2005/11/21(184号) |
44 プロ野球ビジネス雑感 2005年11月 |
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日本でも近年、企業買収が盛んになり、2005年は、ライブドアによるニッポン放送株買収に始まり、村上ファンドによる阪神電鉄株の買収や楽天によるTBS株の買収とテレビメディアとプロ野球を舞台にまさに劇場型の企業買収「劇」が巷を賑わしております。
ここで問題になっているのが、他球団の株式所有を禁止したプロ野球協約第183条です。「球団、オーナー、球団の株式の過半数を有する株主、または過半数に達していなくても、事実上支配権を有するとみなされる株主、球団の役職員および監督、コーチ、選手は直接間接を問わず他の球団の株式、または他の球団の支配権を有するとみなされる会社の株式を所有することはできない」というものです。 楽天イーグルスを保有する楽天は、これまた横浜ベイスターズの株式の約70%をグループで保有するTBSの株式を20%弱取得し、TBSに企業統合を迫っております。また、阪神タイガースの親会社である阪神電鉄株の40%を取得した村上ファンドのひとつMACアセットマネジメントは、同じ関西地区をフランチャイズとするオリックス・バファローズの80%の株式を保有するオリックスが45%の出資をしているとされています。しかも、役員を派遣しているそうです。これらは、協約183条に違反するのではないかとオーナー会議でも問題になっています。 また、ライブドアに買収されそうになったニッポン放送は、結局フジテレビの完全子会社になりましたが、さらにフジテレビに分割吸収されるようです。ご存じのようにニッポン放送は、横浜ベイスターズの残りの30%を保有し、フジテレビは、ヤクルト・スワローズの20%の株式を保有していましたから、これでフジテレビが2球団の株式を保有することになり、これまた、協約183条に違反するのではないかとオーナー会議で問題にされました。 183条ができたのは、他球団の株式保有が、近代スポーツの持っている競争という要素を損なう恐れがあるからです。スポーツの競争性を否定しては近代スポーツは成立せず、当然、プロスポーツも成立しません。 しかし、スポーツとして成立しないからといって、株主(企業)の経済活動を否定することはできません。昨年の近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併のように、球団の合併・統合は、プロリーグ全体の存続に係わる問題になり非常事態であるのに対し、通常の企業合併や企業統合は、日常的なものになってきています。この企業買収時代に、親会社に依存する日本(アジア)プロ野球独特のカイシャフランチャイズ・モデルは、限界がきているのではないでしょうか。新しいビジネスモデルを構築する必要に迫られています。 協約第28条では株主構成の届け出の義務付けや外国資本の制限を定めていますが、オリックスの外国人持ち株比率は50%を超えており、ヤクルト・スワローズの80%の株式を保有するヤクルト本社の株式の20%はフランスの食品関連企業ダノンが取得しています。 村上ファンド(M&AコンサルティングHP 阪神電鉄株の保有増について) > http://www.maconsulting.co.jp/PDF/051003_PR(J).pdf 村上ファンドの研究 (2)見えぬ実態 増す影響力 読売新聞(11月9日) > http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/85/murakami002.htm |
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2005/10/15(180号) |
43 公共財とハゲタカ |
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阪神の人気は巨人を今や上回り、盟主交代とかいう話題にもなったりしますが、阪神の親会社、阪神電鉄というのは、大手私鉄の中でも、相模鉄道に次いで営業区間が最も短く、中小企業に毛が生えたような会社であります。
しかも、ライバルの阪急が阪急・東宝グループとしてナショナル・ブランドになったのに対し、阪神間のローカルブランドのまま。甲子園球場とタイガースというお宝を持っていますが、タイガース人気にあぐらをかき、ついこの間まで、弱い方が人件費が安くていいといっていた会社であります。それが、今回、「堅実な経営」という皮肉な言葉で、買収のターゲットになってしまったのであります。 星野SDの巨人監督就任騒動で見せた阪神の対応をみれば、阪神の会社としての実力は推し知るべし。人気に見合った器ができていないのが、阪神であります。ですから、他球団のファンも、いずれタイガースは落ちてくると安心していられ見ていられたのです。成長の限界というやつですな。 この成長の限界を村上さんなら、突き抜けてくれるのでありましょうか。いかに・・・・。因みに、村上氏もコミッショナー某氏も虎ファンであります。 ところで、読売巨人軍の渡辺恒雄球団会長は、村上ファンドが阪神電鉄にタイガースの株式上場を提案したことに関して「プロ野球は社会的な国民の公共財産。ハゲタカが乗っ取って売買する、そういう対象になるのは第3条違反」と批判(2005年10月8日スポニチ)しました。 http://sports.livedoor.com/baseball/pro/detail?id=1705969 このプロ野球協約第3条の公共財という文言は、2002年7月9日改正されたものです。2002年の改正は、ベイスターズのオーナー企業変更時の騒動を受けてのものです。この騒動は、スワローズの株式を20%保有していたフジテレビの資本関係にあったニッポン放送が、ベイスターズのオーナー企業になることを、一旦、実行委員会とコミッショナーが認めたのに対し、当時、東京読売巨人軍のオーナーであった渡辺氏が反対し、TBSに乗り換えさせた事件です。 このときオーナー会議の力も強くなり、従来は、球団の譲渡は実行委員会の承認があれば認められていたのが、オーナー会議の承認も必要と改正されました。ですから、公共財という文言は、渡辺氏の要望で追加されたものだと想像できます。 協約が改正された同じ2002年7月9日巨人は、ビジター用ユニフォームの胸マークを「TOKYO」から「YOMIURI」に変更しています。公共財とは名ばかりに、しかも、「巨人」ブランドの意味も考えず、ただ、読売色を全面に押し出してきたもので、巨人人気凋落のひとつとされています。 相手を公共論で攻撃し、自らは私利私欲に動くというのは、まさに読売の伝統であります。かの正力松太郎氏も日本テレビの開設にあたって、資金不足から日本初の民放テレビということで朝日新聞や毎日新聞からも支援を受け、共同経営体制をとっていました。 ところが「正力は両社からきた役員たちに向かって,テレビは国家的な事業である,私利私欲を捨てねばならない,個人が株をもつことはまかりならぬと,誓いをたてさせた。ところが,いつのまにか読売が筆頭株主になっていた。両者の役員たちが読売の株集めに気づいた他時はもう遅かった。日本テレビの株はほぼ読売が掌握し,新聞と同様,正力個人の手へと落ちていった」(巨怪伝) |
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2005/09/24(176号) |
42 麻袋のベースボール |
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今回は趣向を変えてスポーツの由来の話です。サッカーのコーナーキックを見ていると、コーナーフラッグ(コーナーポスト)がいつも邪魔だなと思います。コーナーフラッグは、ボールがタッチラインあるいはサイドラインを通過したかを区別するために必要とされます。ですが、コーナーポストは、ラインができるよりも前からあります。
サッカーグラウンドのことをピッチといいますが、ピッチとは杭と杭で囲まれた場所を指します。サッカーは芝生の上で行われものとされますが、サッカーが生まれた19世紀、芝の丈は今よりも長くくるぶしまであったそうです。単なる線じゃ、境界が分かりにくかったわけです。 ピッチの語源は、クリケットに由来します。ご存じのようにクリケットはバッツマン(打者)の後ろにあるウィケット(三本の棒の上に二本の横木が乗っている)めがけてボウラー(投手)がボールを投げ、それをバッツマンが空振りし、ボールがウィケットに当たり、ウィケットが倒れると、バッツマンはアウトになります。 このウィケット(三本の杭)とウィケット(三本の杭)に囲まれた場所をピッチといいます。ピッチは投げるという意味ではなく、突くとか掴むという意味のpick(ピック=突く、摘む)の姉妹語で杭を打ち込むとか、地面に突き刺すという意味からきています。 ベースボールのルーツは、タウンボールで、タウンボールはイギリスのラウンダーズに由来するとされています。成文化されたタウンボール、マサチューセッツ・ゲームでは、ベースは杭(ポスト)とされています。イギリスで今も行われているラウンダーズも、ベースは杭です。芝生の上でプレーするにはベースは杭でないと目立ちません。芝生では杭が目印という重要な意味を持っていたのです。 ところが、ベースボールのベースは、杭ではなくキャンパス地の袋です。丈の長い芝生でベースボールが行われていたら麻袋ではベースが目立ちません。ベースボールはもちろん、芝生の上で行われていましたが、ベースとラインの部分は芝が削られ土になっており、ベースが杭でなくても分かるようになっています。 イギリスでスポーツが芝生の上で行われるようになったのは、イギリスの気候とも関連しています。イギリスの首都ロンドンは北緯51度。日本の札幌が北緯43度ですから、かなり北の方にあります。サハリンと同じ緯度のため、夏は昼が長く、冬は夜が長くなります。ただし、メキシコ湾流の影響で緯度のわりには気温が暖かく、冬でもあまり雪はふりません。 イギリスの夏はとても短く、3〜4週間で終わってしまいます。気温も、20度を越えればいいほうで、25度を越えることは滅多にありません。この気候が、冬芝と呼ばれる寒冷地型芝の生育に最適でした。イギリスの芝生は一年中枯れることはありません。 ところが、アメリカでは地域によってことなりますが、ロンドンよりも寒暖の差があり、芝生の手入れには手間が必要でした。例えば、競馬もイギリスでは、芝が常識ですが、アメリカではダート(土)が主流です。テニスのウィンブルドン大会は芝ですが、全米オープンはオールウェザーです。アメリカでは、必ずしもスポーツ=芝ではないということです。 マサチューセッツ・ゲームのマサチューセッツ州には、ボストンがあり、ニューイングランド地方といわれるように極めてイギリス風の文化や伝統が色濃い地域です。このため、イギリスの伝統に縛られ、マサチューセッツ・ゲームのベースは杭として残ったのではないでしょうか。 ニューヨークは、昔、ニューアムステルダムといわれたようにオランダ植民地でした。最初のベースボール・チームはニッカーボッカーズといいますが、ニッカーボッカーとはオランダ人の俗称で転じて、ニューヨーカーの別名となったものです。ニューヨークは、ボストンと異なり、イギリスの伝統に囚われることはなく、自由で寛容な風土があったようです。 ヨーロッパのスポーツや娯楽を、最もありのままにアメリカで再現したのは、二ューアムステルダムに移住してきたオランダ人であった、ともいわれます。そんなニューヨークがだからこそ、杭ではない麻袋のベースボールを生んだのではないでしょうか。 【参考web】 Cricket Explained > http://pavien.net/about/explained.htm Townball > ../../www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/8414/town_h3.html アメリカ・スポーツ史の発端 > http://www.eonet.ne.jp/~otagiri/new_page_36.htm#4-1 |
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2005/08/17(172号) |
41 読売の思惑どおりになった |
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前回「ドラフト改革案まとまらず」と書きましたが、急転直下、7月19日のオーナー会議で、(1)高校生ドラフトの先行開催(2)自由獲得枠を「希望入団枠」と名称変更し、1減、という事実上の先送り案でまとまりました。
朝日新聞によれば、5月から6月にかけて行ったアンケートでは、オリックス・楽天など7球団が完全ウェーバー制(又は準じた制度)を支持し、資金力のある読売、ソフトバンクが自由競争に近い現状維持を主張していたそうです。 ところが、7月に入ってから読売のFA取得期間の短縮を条件にした完全ウェーバー制案がでると、「資金力がある球団に今まで以上に戦力が集まる可能性が強い」と反発が強まり、「(育成した選手を奪われる)FA短縮よりはましだ」と、ウェーバー制の主張から「自由枠を残した方がいい」と立場を変える球団も出てきて、結局、ドラフト改革はいつものように、読売の当初の思惑どおりに自由競争に近い形で決着することになりました。 昨年明らかになったプロ野球危機は、球団の赤字問題であり、裏金問題でした。その象徴とされたのが、ドラフトの自由獲得枠とFAでした。自由獲得枠による選手獲得競争の激化は、裏金を産みだし、新人選手の獲得費の高騰を招きました。 このためドラフト改革と並び不正防止対策もとられることになりましたが、結局、アマチュア選手や監督ら関係者への利益供与を禁じる「倫理行動宣言」を発表するにとどまっています。 また、FA取得期間の短縮は、何の規制もなければ、人件費の高騰を招き、資金力のある球団に戦力が集中する恐れがあります。その解決策の一つが、球団の資金力の均衡を図る、サラリーキャップ制やレベニューシェアなどの財政均衡策です。ただ、その財政均衡策に実効性を持たすには、球団経営の透明化とリーグや機構によるカバナンスが必要になってきます。この点は前回指摘した点です。 ところが、カイシャ・フランチャイズ制(親会社の広告宣伝媒体)という球団と親会社の関係は、球団間の不均衡を招くだけでなく、その不透明な関係は、球団間の球団の自立性・自律性を損ない、また、裏金の温床にもなっています。今回のドラフト改革は、この親会社と球団の不透明な関係にメスをいれるいい機会だったはずです。 |
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2005/07/17(168号) |
40 ドラフト改革案まとまらず |
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7月13日の12球団代表者会議で、読売ジャイアンツが主導してきたワーキング・グループ(WG)がまとめたドラフト改革案が討議されました。WGの提出した案は、(1)完全ウェーバー制移行論と(2)先送り論の2案でした。ただし、(1)は、FA取得期間の短縮を前提としています。
hl?a=20050714-00000006-spn-spo へのリンク
従来、自由競争を主張していた読売ジャイアンツは、FA 取得期間短縮を前提に(1)の完全ウェーバー制移行を主張、これに阪神、中日が同調しました。これに対し、従来完全ウェーバー制を主張していたオリックス、楽天などはFA取得期間短縮に伴う、年俸高騰を懸念し(2)の先送り論を支持するという逆転現象がおきました。 カイシャ・フランチャイズ制となっている日本のプロ野球では、カイシャと球団の依存関係の違いで、個々の球団のスタンスも変わってきます。読売、阪神、中日にとって、球団は利益に直結していますが、オリックスや楽天など他の球団 にとっては単なる宣伝媒体に過ぎません。 そもそも、昨年のオリックス・近鉄合併は、人件費の高騰 に起因するというのがNPB側の主張であり、人件費の高騰 の原因は、読売ジャイアンツの渡辺現会長の主張による1993年のドラフト逆指名、FA導入でした。ドラフトに ついては、渡辺会長がオーナーを辞任する原因となったスカウトの栄養費問題もあり、コンプライアンス(法令遵守)の点からも改革が急務とされています。 このため、球団への依存関係の高い読売は、球界改革を印 象づけるためドラフトの完全ウェーバー制の導入を受けいれる代わりに、FA取得期間の短縮(9年から7年)による実をとることを選択し、反転攻勢にでたようです。 FA導入には、選手人件費の上限を規制するサラリーキャップ制の導入が不可欠とされています。FAは、選手市場における自由市場の創設であり、選手年俸の高騰が避けられず、人件費抑制のシステムも併せて導入する必要があるとされて います。MLBでは、サラリーキャップ制の導入は選手会ストによって頓挫しましたが、現在、レベニュー・シェアリングの一種であるラグジュアリー・タックスが導入されています。2005074651.html へのリンク NPBがサラリーキャップやラグジュアリー・タックスを導入するためには、選手人件費や球団収入における透明度を 高める情報公開(ディスクロージャー)が不可欠であり、これを進めていくためのNPBのコーポレート・ガバナンス(企業統治)が必要となります。 |
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2005/06/16(164号) |
39 セ・リーグのレベニュー・シェアリング |
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史上最も成功したスポーツビジネスといわれるNFLは、人口800万のニューヨークから人口10万のグリーンベイまで、同じ条件でフィールドで競争できるしくみを作り上げてきました。
スタジアムを常に超満員にするグリーンベイ・パッカーズですが、人口10万の地方都市で、フランチャイズからの収入だけで運営し続けることは不可能です。それを可能にしたのが、レベニュー・シェアリングです。NFLでは、リーグが得た収入は均等に各球団に分配されます。 例えば、パッカーズは、2003年度の収支は、総収入1億7910万ドル、利益はNFL32チーム中10位の2080万ドルを記録しましたが、収入の中では、リーグから分配されるTV放映権だけでも8120万ドルと売上の約45%を占めています。 >http://www.nfljapan.co.jp/nfl/system.html このNFLを社会主義的だという批難に対して、「それは当たらないだろう。現在あるプロリーグの中で、NFLほどプロリーグの理念に忠実なリーグはなく、また効率よく収入を得ているリーグはない。これはMLBや日本のプロ野球と比較すれば、一目瞭然である」と「プロ野球は崩壊する」で著者の大坪正則氏は述べています。 ところで、日本にもグリーンベイ・パッカーズのように地方の小都市に本拠地を置いた球団がありました。それが1950年下関を本拠地とした大洋ホエールズです。当時の下関市は、人口約28万人で、東京、名古屋、大阪などと比べるとはるかに小さな都市でした。 しかし、当時のセ・リーグは、フランチャイズ制ではなく、一種のレベニュー・シェアリングが採られていました。まず、全入場料収入の半分を勝ち負けに関係なく折半し、残りの半分を6:4で勝敗によって分けることになっていました。 つまり、各球団の入場料収入は、25%の基本給と勝てば30%、負ければ20%の能力給との組み合わせになっており、弱い球団の経済的な保護を狙ったものでした。当時の球団収入にはテレビの放映権料といったメディアからの収入はなく、大部分が入場料収入によって占められており、本拠地人口の多寡による不平等性を克服するには、入場料の分配システムが必要とされました。 このNFL的なしくみによって、1950年のセ・リーグの税抜きの収益は1億1907万円で1リーグ時代に比べ200万円あまりの増収となっており、リーグとしては成功を収めたことになります。 ところが、当然のごとく、盟主読売ジャイアンツの収益は、前年の2465万円から1158万円と約1300万円の減収となり、阪神も、1009万円から959万円に急減しました。このため、既存球団の読売・阪神・中日の不満がつのり、2リーグ分裂時にセ・リーグに生まれた大洋は、同じ境遇の広島との合併が画策され、西日本パイレーツは実際に、西鉄と合併し、パ・リーグに去っています。 セ・リーグのレベニュー・シェアリングは、1952年のフランチャイズ制の導入により消えていきます。このため、大洋ホエールズは、大都市への移転を余儀なくされ、1953年松竹ロビンスと合併し、京都・大阪を本拠地とし、1955年大洋に戻ると川崎を本拠地とすることなります。 参考文献 「プロ野球ビジネスのしくみ」小林至著 宝島社新書 「史上最も成功したスポーツビジネス」種子田穣著 毎日新聞社 「プロ野球は崩壊する」大坪正則著 朝日新聞社 「魔術師<上>」三原脩と西鉄ライオンズ 立松泰則 小学館 |
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2005/05/18(160号) |
38 ドラフト制 |
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昨年の1リーグ騒動を経て、今年のプロ野球は改革元年と言われています。この中で、争点になっているのがドラフト制です。球団の赤字経営の原因は選手の人件費の高騰のほか新人選手の獲得のためにかかる裏金が原因とされ、選手会や オリックスは完全ウェーバー制を主張し、読売(巨人)は契 約金の厳格化で対応し、自由獲得枠を残すことを主張してい ます。
ドラフト制については、従来から、職業選択の自由を奪う ものであるとか、人権侵害だとか批判がある一方、ドラフト はプロ野球への就職であり、職業選択の自由を奪うものでは ないという反論があります。 プロ野球というのは、選手の奪い合いを防ぐ意味でナショ ナル・リーグの頃から球団と選手の契約は同時にリーグ(機構)と選手との契約を兼ねる統一契約書による契約でした。 つまりプロ野球の選手契約は、リーグ戦の興行を共同で運営するリーグ及び機構との契約だという点です。ですから、ド ラフトはプロ野球への就職という点では間違いはありません。 プロ野球選手の契約が、プロ野球というリーグ戦興行共同 体との契約ならば問題はありませんし、統一契約書というのは事実そうなっています。ところが、実際には選手は個々の球団と契約することになります。選手側からは球団を選ぶことができません。もし、個々の球団によって、報酬や施設、指導法などに格差があった場合、どうなるのでしょう。プロ野球への就職というからには、各球団の選手環境は同じか、 同じ機会が与えられなければいけません。もし、異なるのであれば、異動する自由を保証されなければならないはずです。 ところが、読売ジャイアンツに入団した選手と他球団に入団した選手の報酬、出場機会、指導法、練習場、移動手段、マスコミの扱いは同じといえるでしょうか。日本のプロ野球は、各球団の環境の違いが大きすぎるのではないでしょうか。 日本のプロ野球(NPB)は、長いこと親会社の宣伝機関として位置づけられていきたため、親会社の違いによって球団 の環境も大きく異なってきました。さらに、巨人の所属の有 無によるセ・パの格差、さらに巨人の他の11球団との格差。 この格差がある以上、NPBが共同体といえるのかどうか。 共同体といえないのであれば、ドラフト制というものは成立しないのではないか。そして、NPBが不完全な共同体であるのであれば、ドラフト制も不完全でしかたがないのではないかと思います。NPBのドラフトには、古くはくじ引き、近年では逆指名・自由獲得枠というものが持ち込まれドラフト本来の目的が損なわれています。これは、球団の親会社、リーグの違いによる財政格差がある以上仕方のないことだと思います。それよりも球団の財政格差を是正する施策の方が 優先課題だと思うし、二軍に埋もれている選手を発掘する場 も必要です。 FAの導入により選手の異動の道も拓けてきましたが、FAは一握りの選手に限られた権利であって、その取得には9 年以上も必要になります。そしてFAは、日本人選手のメジャー流出のための手段になってしまっています。 |
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2005/04/21(156号) |
37 ビジネスは1リーグ制のススメ |
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昨年、NPBのオーナー側は、オリ近の合併を契機に1リーグ制を画策しましたが、選手会ストとファンの反対にあい、楽天の新規参入により2リーグ制で決着しました。プロ野球というのは、フィールドでは競争しますが、ビジネスでは協働するリーグ戦興行体です。フィールドでは、興行的に二分対立の関係となる2リーグ制は利点が多いのですが、ビジネス上は、2リーグである必要はありません。
現オリックス・バファローズ・オーナーの宮内義彦オリックス会長曰く「プロ野球は珍しいビジネスモデルだと思う。一つ一つ違う企業がリーグを構成し、全体としての総合的な利益を図らないと成り立たない。若干似ているとしたらフランチャイズチェーンだ」
「全体としての総合的な利益を図らないと成り立たない」のですから、ビジネス上は1リーグ制にすればよいのです。いま、プロ野球に必要なのは、裁判官ではなく、ビジネス・リーダーです。ナショナル・リーグとアメリカン・リーグという2リーグ制をとっている米国では、既に、ビジネス上1リーグ化され、すべての権限がコミッショナーに集中しています。
MLBは、NPBと同様に、オーナー側が前コミッショナーに辞任に追い込んだり、現コミッショナーが元ブリューワーズのオーナーだったりと、オーナーの集合体的な色彩が強いといわれています。
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2005/03/12(152号) |
36 事業者と競技者 |
| 経済産業研究所(当時)の広瀬一郎氏によれば、(財)東京大学運動会の「スポーツマネジメント・スクール」では、ステークホルダーを、プロスポーツの顧客としてファン、TV、企業、行政/自治体という全く別の論理によって対価を支払う4種類の顧客を上げ、売り手としての所有者/株主/事業者、(監督・選手などの)競技関係の2つあわせたこれら6つのグループをプロスポーツ産業の基本的な利害関係者(ステークホルダー)としています。 >広瀬一郎 プロスポーツ・リーグの経済学 売り手としての「事業者」と「競技関係者」の関係をみてみると面白いことが分かります。1871年、最初のプロ野球リーグNAPBBPが結成されますが、NAPBBPとはナショナル・アソシエーション・オブ・プロフェッショナル・ベース・ボール・プレイヤーの略で訳せば全国プロ野球選手協会になります。文字通り、選手の協会で、競技関係者が事業者を兼ねていたわけです。 ところが、NAPBBPは、選手のわがままや規律の乱れから、リーグ運営もずさんで、賭博の対象にもなったり、リーグ戦での不正な順位操作、選手の引き抜きや八百長も横行し、ついにはファンの支持を失い5年間で幕を閉じてしまいました。 1876年、この野球の危機を乗り越えるべく登場したのが世界最古の大リーグ、ナショナル・リーグです。ナ・リーグでは、選手や監督は試合に専念させ、経営は専門の役員が行うことにしました。つまり、「事業者」が「競技関係者」と分かれ、近代的で合理的なリーグ運営が可能になった一方、保留条項により「事業者」が「競技関係者」を支配する構図ができあがりました。 その後、競技関係者=選手側は、選手会(組合)を結成し、「事業者」側に対抗します。そして、フリーエージェント革命を経て、選手会は、事業者のパートナーとなっていきます。これが、メジャーリーグ(MLB)おける売り手側のステークホルダーの関係です。 純粋にスポーツだけをみれば、そこには売り手や買い手も存在せず、監督・コーチ・選手・審判など競技関係者しか存在しません。近代スポーツの定義は、統一されたルール、統一された組織、統一された大会です。国際化した今日では、このため、国際的に統一された競技者組織の存在が欠かすことができません。サッカーには国際サッカー連盟(FIFA)が、バスケット・ボールには国際バスケットボール連盟(FIBA)があり、野球には国際野球連盟(IBAF)があります。 組織があれば、次は「国際的に統一された大会」です。一番有名なのがFIFAワールドカップです。FIFAワールドカップは、オリンピックと並ぶ国際的なスポーツイベントで、今や単なる一競技団体の主催大会ではなく、国際的事業になっています。競技関係者が事業者を兼ねるという構図となり、現代版NAPBBPというリスクをはらむことになります。 ところで、スポーツ組織としてはMLBは、北米の一事業者に過ぎません。この一事業者が、ワールドカップという国際大会を一方的に開こうとして問題になりました。北米の一事業者が、MLB選手会と合同で、ワールドカップと名乗った大会を開催しても、たとえ競技レベルが国際レベルであっても、「国際的に統一された大会」としての認知は難しく、野球が世界のローカルスポーツであることを露呈するだけです。かといって、MLB選手が出場しないIBAF主催の国際大会(ワールドカップなど)の価値は、レベル的に「国際的に統一された大会」としては疑義のあるものです。 最後に国際的に統一されたルールですが、日本の野球ルールは「米国プロフェッショナル野球機構で用いられているオフィシャル・ベースボール・ルールズ OFFICIAL BASEBALL RULES 」がもとになっており、アメリカでルールが変われば、日本でもルールが変わるという仕組みになっています。国際球にしても、結局、MLBの使用球ということなんでしょうね。 >「公認野球規則」 |
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2005/02/11(148号) |
35 球団の人気が親会社に直接の利益をもたらす球団 |
| 日本のプロ野球は、親会社の広告宣伝媒体といわれがます が、一様ではありません。プロ野球の人気が直接、親会社の 利益につながっている球団があります。それが、人気球団と いわれる読売ジャイアンツ、阪神タイガース、中日ドラゴン ズ、そして、2003年までの福岡ダイエーホークスです。 ジャイアンツの親会社は、読売新聞社ですが、読売新聞社は、東京ドームのチケットやジャイアンツのグッズを読売新聞の販売拡張材として利用しています。ジャイアンツは、フ ランチャイズ以外の大阪ドームや福岡ドーム、札幌ドームで主催試合を開催していますが、これも、それぞれ関西、九州、 北海道における読売新聞の販売拡張のために行われていると 考えられます。 全国展開している読売新聞に対し、ドラゴンズの親会社で ある中日新聞社は愛知県内で8割のシェアを持つブロック紙ですが、ドラゴンズの機関誌ともいえる中日スポーツの人気 も高く、名古屋では、全国紙を上回る宅配率を誇っているそうです。名古屋地区では、ドラゴンズがプロ野球を独占して おり、読売新聞は、ジャイアンツを使った新聞の拡販ができず、シェア2%と苦杯をなめています。 私鉄大手に名を連ねていますが、ローカル電鉄の域をでな いのがタイガースの親会社である阪神電鉄です。このため、 タイガースが電鉄を買収すればいいという話さえでる始末で す。実際、タイガース・ファンによる運賃収入、阪神甲子園球場での売り上げが、阪神電鉄にとって大きな利益になって います。 2004年、福岡ドームが米国の投資会社コロニーに売却 されるまで、ホークスの実質的な親会社は、福岡ドームでした。本来の親会社であったダイエー本社は、1兆円を超える 有利子負債を抱え、福岡ドーム、ホークスといった福岡事業を支える力がなく、ドームを中核とした独立路線がとられて いました。このため、福岡ドームへの集客を優先したドーム とホークスの一体的な経営が行われてきました。 球団の人気が直接、親会社の利益につながるこれらの球団 は、必然的に親会社の力の入れ方が異なってきます。そして、 これらの球団の特徴は、親会社のマーケットと球団のマーケ ットが同じだということです。 |
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2005/01/16(144号) |
34 メディア・ヴァリュー |
| スポーツは商品としての実体がなく、その商品価値はプレーの面白さに基づいている。そのため企業がプロダクトすることは非常に難しい。ただ、そのためにスポーツは特定企業に属することなく、一般性や公共性を持ちやすい。そこからコンテンツとしての価値、メディアヴァリューが生まれてくる。 これは、今回のプロ野球再編劇でもたびたび登場されました経済産業研究所の広瀬一郎氏の著書「ドットコム・スポーツIT時代のスポーツ・マーケティング」の一説です。 ここでいうメディアには、新聞・雑誌、テレビ・ラジオといったものだけでなく、球場の看板広告、ユニフォーム、キャップ、ヘルメット、芝生のカット、球場本体、球団ロゴ、球団ロゴ入りTシャツ・トレーナー・スタジャン、「○○は、××を応援します」といった応援メッセージ、球団名、球場名etcといった多種多様なものが考えられます。 メディア・ヴァリューの中で代表的なものにテレビ放映権がありますが、このテレビというメディアも多様化しています。テレビといえば従来は、アナログ地上波だけでしたが、最近では地上波のデジタル化が始まっています。衛星放送にもアナログとデジタルがあり、またスカパーに代表される通信衛星を使った衛星放送もあります。これら無線媒体のほかケーブルテレビといった有線媒体があります。有線媒体にはネットTVが加わります。また、ネットTVは、無線LANの普及により、無線媒体にもなります。 次に、利用方法をみても、ライブ中継のほか、録画中継があり、本放送に再放送、スポーツニュースに、「珍プレー好プレー」といった画像を編集した二次利用・三次利用、ビデオやDVDといったパッケージソフト化、といった具合に多様です。 また、メディア・ヴァリューには、テレビなどのメディアを介した「through」な価値と、メディアとしてのスポーツ自体の「of」の価値があります。前者の代表が放映権料とすれば、後者の代表はプロ野球の球団名やサッカーのユニフォーム広告です。スポーツビジネスの成功の鍵は、このスポーツが持っているメディア・ヴァリューをいかに現金化できるかにかかっています。 日本のプロ野球は、親会社の広告宣伝媒体として、このスポーツのメディア・ヴァリューを昔から大いに利用していました。国税庁通達では、球団への赤字補填は、親会社の広告宣伝費として処理するとされています。ところが、この広告宣伝費は、球団の赤字補填という形をとっているため、プロ野球の正当な収入にはなりません。昨年のストライキ騒動の最中、当時のオリックスと近鉄が発表した球団収支の中には、この広告宣伝費としての赤字補填分は含まれていません。 |
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2004/12/11(139号) |
33 エゴと意地 |
| 現オリックス・バファローズ・オーナーで規制改革・民 間開放推進会議議長の宮内義彦オリックス会長「プロ野球は珍しいビジネスモデルだと思う。一つ一つ違う企業がリーグを構成し、全体としての総合的な利益を図らないと成 り立たない。若干似ているとしたらフランチャイズチェーンだ」 リーグ戦興行体であるプロリーグ・スポーツは、分かりやすくいえば、プロスポーツのフランチャイズ・チェーンです。野球協約によれば、NPBに参加している球団は、その参加と引き替えに、NPBから地域権、選手契約権、選手保留権を与えられている形になっています。つまり、フランチャイザー(本部)がNPBで、フランチャイジー(加盟店)が球団という関係になります。 フランチャイザー(リーグ)とフランチャイジー(球団) の関係は、集権化の傾向にあります。MLBやNPBといった老舗のプロ・リーグは、球団の力が強く分権的です。 逆に、新興のNFLやJリーグはリーグの力が強く集権的です。これは、近年スポーツのプロ化が進み、リーグ間競争が激しくなってきたこととメディアへの対応によるものです。 米国でも日本でも、長い間、野球は、プロリーグスポーツ市場を独占していました。各球団のファンを増やせば全体の反映につながるという前提に立っていましたが、リーグ間競争だけでなく、ディズニーランドなど他のエンターテイメントとの競争も激しくなっていく近年では、リーグ 全体でのブランドの確立による差別化戦略が重要になって きます。 ところで、NPBの地域権・選手契約権及びその保留権は、NPBの加盟店である球団にNPBから付与されているもので、球団を運営している企業同士が合併しても、地 域権・選手契約権等は、1+1=2になるのではなく、1+1=1に過ぎません。オリックス・バファローズのダ ブル・フランチャイズなど例外中の例外です。特例で3年間認められたに過ぎません。 選手契約権も、消滅球団となる大阪近鉄の選手は、パ・ リーグの一時保有となり、新規参入球団に譲渡されるところをオリックスのエゴで25人のプロテクトというこれまた、 特例的な措置がとられたに過ぎません。どちらも、野球協約を遵守したものではありません。 この特例措置がスト回避の最後の障害でした。そこで交わされたのがオリックスのエゴと礒部近鉄選手会長の意地との妥協の産物である「球団の代表として、特に近鉄の選手の意向を誠意を持って聞きたい。私どもの方で『欲しい』 という選手に対しては残ってほしいとお願いしたいが、選 手の希望をかなえられるようにしたい」(9月23日、選手会との団交を終え、ストが回避された直後のオリックス 小泉球団社長のコメント:朝日新聞)という発言です。 選手の希望をかなえるという合意文書は、交わされませんでした。そこまで選手会側が迫った場合、第2派のスト ライキは回避できない虞があったでしょう。最後は、日本的な玉虫色の決着です。しかし、オリックス小泉球団社長 は、「選手の希望をかなえる」とは言っていないので、火 種は残っていました。 |
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2004/11/15(135号) |
32 東北楽天ゴールデンイーグルス 誕生 |
| パ・リーグの新規参入枠を争っていたライブドアと楽天は、結局、11月2日の実行委員会とオーナー会議の結果、「楽天の経営体力がライブドアより勝っていると判断」され、楽天に決定しました。 経営体力の比較で気になったのが、ライブドアの収益構造です。楽天の収益は、ネット通販42%、金融事業38%の二本柱があるのに対し、ライブドアはネット証券が収益の74%と収益源が一事業分野に集中している点が挙げられていました。 「あれ?」ライブドアは、IT企業だと思っていたのですが、証券会社だったのでしょうか?ライブドアは、総合ポータルサイトを運営していますが、余り儲かっていないことになります。ライブドアは、市場から得た資金をもとにM&Aを繰り返し大きくなったようで、現金500億円という金額も、市場から得た資金です。このへんのカラクリについては、「All About」のガイド・コモエスタ坂本さんが「ライブドア落選、当然の理由」の中で説明しています。 http://allabout.co.jp/sports/baseball/closeup/CU20041102C/index.htm 楽天の参入は、出来レースだの、後出しジャンケンとかいろいろ言われていますが、NPBの審査結果は、妥当といったところでしょうか。 また、楽天イーグルスは、高橋ユニオンズ以来50年ぶりの新球団と言うことですが、高橋ユニオンズは、3年間で大映と合併し球史から消えたのでなんだか不吉な予感がします。そもそも、高橋ユニオンズは、パ・リーグの数あわせのため1954年にできた、高橋龍太郎氏なる人物の個人球団でした。球団は資金に乏しく、戦力も他球団からの峠を過ぎた古参選手が中心でした。当時も、新規参入球団への戦力の均衡化を図るといった考えがありませんでした。逆に、勝率0.350を下回ったチームに500万円の制裁金が課される始末です。 http://www.asahi-net.or.jp/~kp7s-ootk/ORIONS/ORIONSMAIN.html 当時の高橋ユニオンズと同じことが、楽天イーグルスの場合にもおきています。8日に分配ドラフトが行われましたが、楽天の戦力は、パ・リーグの5位球団と最下位球団の選手のうちの上位25人の有力選手を除いた選手たちです。戦力面での見劣りは否めません。このため、楽天の田尾監督やマーティ・キーナートGMは、戦力均衡の点から拡大ドラフトなど他の10球団の協力を求めています。 この戦力の見劣りは、そもそも、12球団制を維持するのなら、近鉄球団の売却を認めていれば起こらなかったことです。合併後新球団の参入という馬鹿げた措置をとったため、馬鹿げたことがおきたのです。中には、制裁金の復活を言い出す人もいますが、これでは、まさに、恥の上塗りです。 ところで、高橋ユニオンズのオーナー、高橋龍太郎氏は、戦前イーグルス(1937〜1943)の経営に参加した経験をもっており、楽天イーグルスとはこれまた因縁がありそうです。また、高橋氏は、日本サッカー(当時は蹴球)協会会長を務めたこともあり、Jリーグ、ヴィッセル神戸のオーナーでもある三木谷氏とも何か縁がありそうです。http://www.islands.ne.jp/yawatahamaozu/people_back/people13/rekishi/ |
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2004/10/14(131号) |
31 オライオンのトラウマ |
| オリックス・近鉄の合併問題でいくつかメールで問い合わせがあったとき、私見として「近鉄の仙台移転」を挙げていました。仙台を中心に、東北6県をマーケットとして抑えれば、充分やっていけると思ったからです。ただ、危惧したのは、県営宮城球場の老朽化でした。 オリックス・近鉄の合併問題は、ストライキを経て、NPB側が2005年からの新規球団参入を認めるということで一応の決着をみました。IT会社のライブドアと楽天の2社が、予想通り、宮城県を保護地域、県営宮城球場を専用球場するとして、新規参入の申請をし、現在、NPBが審査委員会を設けて、審査中です。今月中に結論がでるそうです。そして、審査の中で問題になったのが県営宮城球場の老朽化でした。 http://sports.yahoo.co.jp/baseball/headlines/sph/20041002/spo/08012900_sph_00000035.html 今月6日に審査の公開ヒアリングが行われ、老朽化と座席の狭さが指摘された県営宮城球場の改修について、ライブドアは、工期を来年の3月末までと6月末までに分け、「内外野で8000席増やして3万席に」と説明し、一方の楽天は「両翼を拡張し改修するのでまず2万3000席。速やかに2万8000席に」と説明しました。 http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/news/20041007ddm035050008000c.html 同球場の改修は両社とも、自社で全額負担し、代わりに宮城県から球場の優先使用や興行権の許可を得ることで合意し ているそうですが、さらに一歩進んで、宮城県は、球場の運営権の移譲も考えているようです。「運営権が移譲されると、球場内の広告料金を自由に設定することが可能で、売店収入も球団に入り、球場改修費などを回収できるという。」ということです。 http://www.nikkansports.com/ns/baseball/f-bb-tp0-041007-0020.html 「全国の都道府県、あちこちで財政危機に陥っています。この宮城県も例外ではありません。」ということで、宮城県の浅野知事も、球場改修費の負担はできない、と早々と釘を刺していました。その代わりに、新球場の運営権を新球団に移譲するので勘弁してくれよ、というものです。 http://www.pref.miyagi.jp/kohou/tiji/joso/joso17.htm ところが、宮城県は、平成12年には事業費約270億円をかけて、ワールドカップ会場となった宮城スタジアムを造っています。仙台には、J1のベガルダ仙台がホームグラウンドとして使用している仙台スタジアムというのがあります。せっかく作られた宮城スタジアムは交通が不便ということで、ワールドカップ会場になったにもかかわらず、ベガルダの試合はほとんど行われていません。 http://www.grande21.or.jp/institution/stadium01.html このため、ワールドカップ後の宮城スタジアムの利用問題が浮上しており、新球団のホームグラウンドとして野球場に改修しては、という市民の意見もでています。 http://www.2002rifu.net/php/bbs.php プロ・サッカー場は過剰なのに、プロ野球場は老朽化。これは、東京球場を失い、流浪化したロッテを暖かく迎えてくれたにもかかわらず、裏切ったロッテ・オリオンズに対するトラウマなのでしょうか。 |
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2004/09/18 |
スト考察号 特別編 |
| ●雇用問題 オリックスの宮内オーナーは、9月8日のオーナー会議後の記者会見で「(各球団に)一番協力していただいたのが (合併によって)選手を路頭に迷わすことはしないということ。全選手を全チームがピックアップして雇用を維持すると いうことを、一番最初に決めました。それについて、選手会 が統合を反対するというのは、労働組合としては非常に不思 議なストライキだな、と。何を要求するのか」と述べています。 http://www.nikkansports.com/ns/baseball/p-bb-tp0-040909-0009.html そもそも、特殊技能者であるプロ野球選手の雇用は、一般の雇用とは意味が異なります。特殊技能者の雇用は、その特殊技能を発揮する場の雇用でなければ意味を持ちません。特殊技能を発揮できなければ、特殊技能の対価としての報酬を得ることができません。選手会側が主張しているのは、特殊技能を発揮できる場の確保なのです。球団数が減れば、1軍で試合ができる選手は、その分減ることになります。「1球 団の保有選手を増やし、全選手を雇用しましたよ」といっても意味がないのです。 プロ野球の選手は、1軍で実績を残して「いくら」の世界であり、逆に、1軍で実績を残せなければ契約を打ち切られてしまいます。実際、プロの世界では、そうでなければなら ないはずです。1軍で活躍できる見込みのない選手を何年も 雇用できる余裕など今のプロ野球にはないはずです。1年たてば、多くの選手が実績が残せず、球界を去ることになるでしょう。なぜなら、実績を残そうにも残す場が減ってしまっているのですから。 「全選手を全チームがピックアップして雇用を維持する」 という雇用は、選手にとって意味がありません。1年契約が延長されたに過ぎないのです。こんな雇用話に反対するストライキは、不思議でも何でもないのです。特殊技能者として、れっきとした雇用を守るためのストライキなのです。 ●経営問題 宮内オーナーはさらに、続けて「パ・リーグは徐々に観客動員が増えているが経費、とくに選手の参稼料(年俸)が急 騰して経営が苦しくなっている。(合併を)1年延期すると いうことは、1チーム数十億円の赤字が発生するんです。それを選手が負担してくれるのか。代案のない一方的な申し入れです。労働条件についてはいくらでも話をさせていただく。 ぜんぜん違うところでストライキといわれて戸惑っている。 一番迷惑をこうむるのはファンではないのか」と述べていま す。 しかしながら、合併凍結後の球団は、なにも近鉄が経営しなくてもよいはずです。残った11球団で管理会社を作り、球団経営を行えばそれで済むことなのです。必ず1球団が余る奇数球団制は、あまりにもデメリットが大きく、それなら、管理会社を作って残った球団でその赤字分を分けた方が、11球団制より損失は少なくなるはずです。 そもそも、近鉄買収を求め、それができなければ新球団での参加を求めているライブドアに球団売却し、2リーグ・交 流戦を推し進めた方がよいのは明らかなのです。このライブドアが信用できないのであれば、1年間この管理会社の運営 をライブドアに委託すればいいのではないでしょうか。 あと、「とくに選手の参稼料(年俸)が急騰して経営が苦 しくなっている」という話は、経営者の責任を選手側に押しつけています。そもそも、選手年俸の高騰を招いたのは、 93年のFAとドラフト逆指名の導入からです。これは経営者側が決めたことであり、その推進役となったひとりが、パ・ リーグ西武の堤オーナーです。今回、選手会側は、自ら、選手年俸の抑制策の一つであるぜいたく税の導入と年俸減額幅 の拡大を提唱しています。本来、これは経営者側が行うべきものであり、まさに経営者側の怠慢行為なのです。 ●新規参入問題 パ・リーグ村田繁事務局長「私見ですが」と前置きした上 で、「監督やコーチ、選手が誰か決まっていて、球団の形がなされていなければ申請は通らないのでは。シダックスのようにすでにチームがあり、草薙球場を本拠地にしてというよ うな構想があれば加入を検討されると思いますが」と話した ということです。 http://www.nikkansports.com/ns/baseball/p-bb-tp0-040912-0003.html パ・リーグは、そもそも、リーグ運営の責任を負っています。また、参加球団が奇数になればリーグ運営がうまくいかなくなることは明白です。協約上も、合併や破産・脱退する球団があった場合、リーグを守るために、その球団の選手をリーグがいったん預かり、リーグ会長が買収先を探すことになっています。その義務と責任を放棄し、合併という言葉で 1球団の消滅を許し、会長自らダイエーにロッテとの合併を 働き掛けるという言語同断のことを行ったのがパ・リーグな のです。 消滅しようとしている球団に、選手がいます。パ・リーグ 会長は、協約57条でダイエーに脅しをかけましたが、本来、 57条で近鉄の選手をリーグで保有し、新規加入を求める球団に譲渡しなければならないはずです。パ・リーグ自ら、 57条を守らず、球団が消滅するにも関わらず、選手を独占 し、新規参入希望球団に選手を譲渡しないこと、それに加えて、そうしておきながら新規参入希望球団に選手がいないから参入資格がないと断ることは、まさに、公正な取引の妨害でしかありません。 シダックスのような社会人チームが、そのまま、新規参入 を希望してきた場合、選手たちは、元プロ野球出身者を除けば、オール新人ということになります。すると、新人選手は、 ドラフト指名を受けなければ、球団と契約することは協約上できないはずですから、逆に、シダックスの方が協約上問題 となります。こういうことがあるので、MLBでは、球団数を拡大するとき、既存選手のエキスパンション・ドラフトを行います。新規参入球団にこういったフォローがあるため、 MLBでは、新規参入に対する加盟料が存在しています。 |
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2004/09/12 |
30 球団統合と野茂選手の保留権 |
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9月8日のオーナー会議でオリックス球団と大阪近鉄球団の球団統合が承認されました。ちょっと前まで、球団合併と言っていたのに、なぜ、球団統合という言葉になったのでしょうか。それは、球団合併が、当初言われていたオリックスと近畿日本鉄道が共同出資して球団会社を設立し、新会社を運営するというものではなく、大阪近鉄球団がオリックス球団に営業譲渡する形で行われるためです。理由は節税だそうです。 |
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2004/08/27 |
特別編 「1リーグ制の意味」 |
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BS朝日が9月5日午後9時から放送する「田原総一朗の熱論90分スペシャル−ライブフォーラム−」「プロ野球が元気になれば、ニッポンが元気になる!?」の収録が8月23日行われ、そこでゲストとして出席した竹中金融・経済財政担当相が「インターリーグの数が増えていったときに、結果的にそれは1リーグと同じじゃないか」という発言をしたそうです。これは、当日参加された当「ぼーる通信」編集長のMBさんから伺った話です。 |
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2004/08/14 |
29 不良債権 |
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私がプロ野球と日本経済というレポートを書いたのが2001年3月。あれから3年が過ぎ、今まさに、プロ野球が日本経済の中に不良債権として呑み込まれていくかのようです。 |
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2004/07/09 |
28 七夕の夜の笑劇場 |
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7月7日七夕の日に行われた日本プロ野球組織のオーナー会議は、中日ドラゴンズの白井オーナーにとっては「衝撃的だった」ようですが、世間的には「笑劇的」だったと思います。「笑劇」とは、辞書を引くと「見物人を笑わせることだけを目的とする、こっけいな劇」とあります。この「笑劇」の主役のひとりは、もちろんオーナー会議の議長でもある読売ジャイアンツの渡辺オーナーでしたが、なんといっても、本当の主役は26年ぶりにオーナー会議に出席した西武ライオンズの堤オーナーでした。 今回のオーナー会議の主要議題であった大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併話はすんなり終わってしまったようですが、堤オーナーが、パ・リーグで新たな合併協議が進行していることを報告すると、「衝撃的だった。皆さんショックを受けているようだった」(中日白井オーナー)。 会議後に記者会見した堤オーナーは、「現在見ていて、プロといえない試合がいくつかある」「10球団になって密度の濃い球団になった方がファンの興味をひく」「まだ具体的に発表できない。西武、日本ハム、ダイエー、ロッテの中で、どことどこが一緒になるか模索している」と述べるとともに「来季からの10球団1リーグ制を希望している」と語ったということです。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/04season/column/200407/at00001311.html 堤オーナーといえば野球に興味がないことは有名です。公式戦にも滅多に顔を出さず、見に来ると御前試合と話題になるくらいです。趣味はウィンター・スポーツらしく、現在の西武ライオンズ球団社長は昔、アイスホッケーで日本代表監督にもなった星野好夫氏、松坂投手の教育係をやっていたのは、スピードスケートの黒岩彰氏。西武ライオンズは、プロ野球出身者ではなく、ウィンター・スポーツ出身者で固められています。 オーナー会議への出席もなんと26年ぶりそれも、これが2回目です。そんな彼の口から「現在見ていて、プロといえない試合がいくつかある」とは、まさに笑劇的でした。記者会見で、(もう一組の)合併の話が出てきたのは具体的にいつごろから、という質問に、「スタートしたのは、やはり近鉄とオリックスの話が新聞紙上に出たころじゃないでしょうかね」ととぼけて答えているのも笑劇的ですね。 早くから1リーグ制を提唱し、いろいろな仕掛けを作ってきた堤オーナーにとって、今回の合併劇は、やっと巡ってきたチャンスですから、この機会を絶対逃がすわけにはいかなかったはずです。オリックス・近鉄の合併話が明らかになっても、一時、1リーグ化に慎重な動きがありましたが、このとき、盟友である読売の渡辺オーナーは「そうでなければ有志連合でいくしかないのかな。新リーグだよ」と新リーグ結成の話を切り出し、1リーグ化への動きを加速させました。西武ライオンズもこのとき、球団内部に1リーグ制のプロジェクト・チームを作っています。http://www.shinchosha.co.jp/foresight/main/data/frst200009/tokusyu.html パ・リーグが4球団になれば、セ・リーグの球団も1リーグ化に抵抗しづらくなります。先手を打って、パ・リーグを4球団化し、パ・リーグがセ・リーグに吸収される形で1リーグ化しようというものです。そうしなければ、なぜ、パ・リーグ球団救済のために、球団合併や1リーグ化しなければならないのかという問題がセ・リーグの各球団に出てきて1リーグ化が危うくなってしまうからです。 |
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2004/07/04 |
番外編 プロ野球協約から見た「球団合併 2」 |
| 今回の合併劇は、ちょっと話の進み方がおかしいのではないでしょうか。新たな買い手を捜そうとはせず、合併容認で話がどんどん進んでいます。焦点は、「選手の救済策はどうしようか」、「5球団でリーグ戦をやるのは難しい」「1リーグ制にしようか」という話になっています。 オリックス・近鉄両球団は、合併だから、「保護地域として大阪府と兵庫県の二地域を認めろ」「両チームの主力20選手を優先的に契約させろ」と主張しています。普通の会社の合併なら両社の権利を合併後の会社が引き継ぐのは当然ですし、これらが認められなければ合併のメリットもありません。さらに、コミッショナーも含めてオーナー達は、野球協約には合併についての規定が曖昧で不備があるとしています。 そもそも、オリックス・近鉄両球団の主張は、普通の会社の合併とは異なることが分かっているからわざわざこのような主張をするわけです。地域権や選手契約権・保留権(以下「諸権利」といいます。)が球団固有の権利であれば、合併後の新球団は、当然に二球団分の権利を引き継ぐことになります。ところが、当然には、新球団には合併前の球団の諸権利を引き継ぐことはありません。なぜなら、諸権利は日本プロ野球組織(NPB)が参加資格を有する球団に付与しているものだからです。 協約36条の2で、破産や脱退などで参加資格を喪失した球団は、「地域権及び選手契約権ならびにその保留権」を喪失するとされています。協約36条によれば脱退の恐れがある球団からは、これらの諸権利を取り上げる処分もできることになっています。 プロ野球における球団とは、協約27条で「この組織に参加する球団は・・・株式会社でなければならない」とされています。つまり、球団は、株式会社ですから吸収合併であれ、対等合併であれ、法人としては合併は可能です。ところが、球団としては合併はほとんど意味を持ちません。 協約27条が本来意味しているところは、一球団=一株式会社=一参加資格です。一つの株式会社に、二以上の球団を保有することは認められないし、当然に二以上の参加資格及びその諸権利を保有することも認められません。これは、他球団の株式所有を禁止した183条を持ち出すまでもないことです。 NPBとその参加球団との関係は、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)との関係にあると考えた方がわかりやすいと思います。「球団が、NPBに加盟する」ということは、「本部」であるNPBが、「加盟店」となる球団にNPBの参加資格を与えるということです。そして、はれて球団が「加盟店」として認められる(=球団がNPBの参加資格を得る)と、「本部」であるNPBから諸権利=フランチャイズ権(独占行使権)を付与されることになります。 逆に、NPBに加盟している球団(加盟店)が、脱退や破産又はその恐れがあるときは、当該球団の参加資格及び諸権利(フランチャイズ権)は、その所属連盟の一時保有となり、新たな球団の保有者を連盟会長が捜し、斡旋する義務を負っています(協約36条、36条の2、57条、57条の2)。 合併の場合は、被合併球団が参加資格を喪失することは、協約には明記されていませんが、必要により57条(連盟の応急措置)、57条の2(選手の応急措置)を準用するとされています。NPBに加盟している二以上の球団同士(2法人以上)が合併し、加盟球団が一になった場合、協約27条によりNPBから認められる参加資格は一であり、諸権利も一となりますから、被合併球団は参加資格を当然に喪失することになります。また、参加資格の合併がない以上、対等合併などは存在しません。 合併の項である33条では、必要により57条(連盟の応急措置)、57条の2(選手の応急措置)を準用するとされていますが、球団数を削減する場合や新たな球団の参加がある場合を除けば準用は当然に必要であり、36条の2と同様に57条及び57条の2は準用しなければならないことになります。 とすれば、5球団ではリーグ運営は難しいことははっきりしている訳であり、当初から球団数の削減を目的に合併したのでなければ、所属連盟であるパ・リーグは、大阪近鉄バファローズかオリックス・ブルーウェーブのどちらかの監督、コーチ、選手を一時保有し、パ・リーグ小池会長は、新たな球団保有者をさがしだし、斡旋しなければならないはずです。 今回の合併劇の選手救済策など一時的なものです。80人に支配下選手を増やしても、コストがかかるだけですから、翌年には大リストラです。それも、1リーグ制にするならもう1球団減らさなければなりません。支配下選手の10人増では対応できません。 今の体制のままで、否、ドラフトの廃止など、さらに状況が悪化する中での1リーグ10球団では、経済規模の小さい球団はこれまで以上に経営が苦しくなるだけです。これでは、10球団が8球団に減り、破滅への途を辿りかねません。 今やることは、ひとつ、パ・リーグ会長は新たな球団の買い手を捜しだすこと。コミッショナーは36条の5及び6の廃止を含め新たな買い手が見つかるように特別措置を講ずること。球団及びセ・リーグはそれに協力することです。 次は、プロ野球協約の目的でありかつ、日本プロ野球組織(NPB)を構成する団体及び個人が不断の努力を通じてこの目的達成を目指すものとされています(3条)。 (1)わが国の野球を不朽の国技にし、野球が社会の文化的公共財となることによって、野球の権威および技術にたいする国民の信頼を確保する。 (2)わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。 (3)この組織に属する団体及び個人の利益を保護助長する。 今回の合併劇も、この協約3条に則り処理されるべきです。 |
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2004/06/16 |
番外編 「球団合併 1」 |
| 6月13日大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブが今季終了後、合併することで合意したことを近鉄側が発表しました。 大阪近鉄は、1月31日、30億円の赤字解消のためとして球団名売却案を発表しましたが、読売の渡辺オーナーから「協約違反」、西武の堤オーナーから「理解に苦しむ」、根来コミッショナーからは「多勢に無勢」と猛反発をくい、2月5日には撤回を発表しています。(2004/02/06サンスポ) 5月25日親会社の近畿日本鉄道の岩田和弘専務は、球団経営について「聖域を設けずに、いろいろな施策を打っていく」などと述べ、売却も視野に入れた検討を進めていることを明らかにしました。その中で、近鉄の決算上は大阪バファローズへの委託費などを含むため、野球事業が実質40億円近い赤字になっていることが明らかになりました。近畿日本鉄道は、1兆5000億円を超える有利子負債を抱えて、不採算事業の整理、再編など合理化を進めています。(2004/05/25日刊) これに対し、読売の渡辺オーナーは、「球団の合併というのもあるが、野球協約上まだ不備な点がある。また、勝手な球団売買は許されないから、いい加減な企業には売れない」さらに、「この問題は、7月のオーナー会議で議論することになるだろう」と話したそうです。 近鉄側の発表によれば、4月後半からオリックスの宮内オーナー側から打診があったそうですから、読売の渡辺オーナーは、5月のこの時点で合併話を知っていた可能性もあります。 そもそも、大阪近鉄バファローズは、何年も前から身売りの噂が出ていています。2001年には、アメリカのドジャースとの提携の際、当時ドジャースのオーナーでありFOXグループの総帥であるマードック氏による買収の噂が流れました。(2001/04/01毎日) 2002年9月には、近鉄側は、消費者金融のアイフルに共同出資を提案しています。2003年には、同じく消費者金融会社のアコムと1年間のスポンサー契約を結んでいます。(2002/11/26スポニチ) 後者の消費者金融に対しては、読売の渡辺オーナーは、「そこまで堕落したのか。断じて許せない。そういう球団には出ていってもらうのが一番」「ビジネスの自由もあり、仕方ないが、プロ野球の品位を汚す。そういう球団は滅びる。パ・リーグもつぶれるぞ」(毎日新聞)と批判しています。 マードック氏の件については、記録が残っていませんが、福岡ダイエーの外資売却の件で読売の渡辺オーナーは、「安く買って高く売るというハゲタカ商法に売ったらプロ野球の将来がなくなる。どうしても12球団じゃないと、というのはない。野球協約による57条とかの緊急措置も必要かもしれない。解散することがあっても、1球団の選手枠を増やして、ウエーバーで選手を取っていけば(ダイエーの選手は)全員、救済できる。」(2003/09/10報知)と外資企業の出資や売却に対し猛反対しています。 このように、大阪近鉄バファローズは、外資や消費者金融会社への売却、球団名の売却といった球団再建策がことごとく頓挫し、せっぱ詰まった状態にありました。オリックス・ブルーウェーブもまた、大阪近鉄が破産したら次なる削減の対象となる恐れが高い球団でした。大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併合意は、最後の生き残り策であり、一リーグ論者に対する最後っ屁ではないでしょうか。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~Salvador/Balltsushin/LastBalltsushin.htm http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000088272 |
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2004/06/10 |
27 「巨人」というブランド |
| 今回も球団名の話です。プロ野球の球団は、協約27条で資本金1億円以上の株式会社とされていますが、球団名と一般に言った場合、この「株式会社」の名称ではなく、協約38条(保護地域)で登録されている球団呼称のことを指します。球団呼称とは2003年度版の協約から登場するものですが、リーグ戦で使用される名称のことを言います。いわゆる「巨人」の場合、法人名が「株式会社読売巨人軍」で、球団呼称は「読売ジャイアンツ」です。 つまり、プロ野球の公式戦や日本シリーズを戦うときの名称は「読売ジャイアンツ」が正式の名称になり、「読売ジャイアンツ」が正式な商品名となります。ところが、通常、この名称を略す場合は「読売」か「ジャイアンツ」のどちらかになるはずですが、新聞やテレビ・ラジオなどのメディアでは、「巨人」という名称を使っています。 「巨人」という名称は、大日本東京野球倶楽部が渡米する際、使用された「TOKYO GIANTS」の和名「東京巨人」に由来しています。戦後、大日本東京野球倶楽部は、東京読売巨人軍として「読売興業株式会社(のちの「株式会社よみうり」)」の一部門になり正式に読売グループの仲間入りをしますが、親会社である読売新聞や系列の日本テレビをはじめそれ以外のメディアでも使われる名称は「巨人」でした。 「巨人」という名称は、「読売」という企業臭さや「東京」という地域臭さもない無色透明な名称です。「読売」ではありませんから、読売のライバルである朝日や毎日、産経でも心おきなく人気球団である「巨人」の記事を大きく取り扱うことができます。テレビやラジオの場合も同様です。また、「東京」ではありませんから、九州や北海道・東北、果ては関西においても、多くのファンを集めることができたのだと思われます。 もちろん、日本プロ野球の創業者利得(日本で4番目にできた球団ですが)と高度成長・テレビ普及期に同調した王・長島の活躍による「刷り込み」が大きな働きをしていますが、「巨人」という無色透明なネーミングがそれを可能にしたといっていいと思います。そしてそれが「巨人」というブランドになり「王・長嶋」がいなくなっても、なかなか「優勝」できなくても、プロ野球の人気を独占し続けることができたのだと思います。 そのブランド力にも近年、急激に翳りを見せています。その原因にはいくつかあると思いますが、ここでは2点ほど指摘しておきます。ひとつは、「読売」臭さがでてきたことです。2002年「巨人」は、ビジター用ユニフォームの胸文字を「TOKYO」から「YOMIURI」に変更し、「読売」の存在を前面に打ち出しました。これに対し、ファンの一部が「オレたちは読売ファンじゃない!巨人ファン!」という横断幕を揚げ、抗議の意志を表しました。 もうひとつは、資金力にモノをいわせ、各球団から4番打者を寄せ集めたため、「巨人」ブランドを支えていたオリジナリティやアイデンティティが希薄化してしまったことです。逆に「巨人」最後のフランチャイズ・プレーヤー松井秀喜がニューヨークに去り、「ジャイアンツ愛」を唱える原辰徳監督を事実上解任するなど「巨人」のオリジナリティとアイデンティティの喪失が続いています。 |
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2004/05/13 |
26 球団名 |
| プロ野球の商品は試合というサービスです。このサービ スを購入しようとするとき、つまり、顧客であるファンが 試合のチケットを購入しようとするときなど、何をもって 購入を決めるのでしょうか。 それは野球が好きだからかも知れません。バレンタイン 監督や新庄がいるからかもしれません。ロケット風船や傘 でほかのファンと一緒に応援したいのかも知れません。それでも、チケットを購入するとき、まず、目に入ってくる情報は、球団の名前です。巨人対阪神とか、読売ジャイアンツ対阪神タイガースといった対戦カードがまず、顧客となるチケット購入予定者の最初の情報となり、これがまた、 最終的な情報となっていきます。 球団名が分かれば、選手は誰々、監督は誰で、戦力はこうで、現在のチーム状態はこうだから、試合はだいたいこ うなるだろうな、とかいったことが予想できます。球団名 から予測できなくても、球団名からいろいろな情報を集め ることができます。逆に、集めたいろいろな情報からチケットを購入するとき、プレイガイドで球団名と日付を言ってチケットを購入することになります。 人びとが、商品を購入するときも、プロ野球のチケットを購入するのと同じ行為を繰り返します。人びとは、商品名により無数の商品の中から、その商品を区別し、商品の中身を理解し、購入するかを決めていきます。つまり、プロ野球にとって球団名とは商品名だということです。 それでは、商品名とは何か、どのような意味があるのでしょうか。まず、商品名には、無数の商品の中からその商品を区別する効果(識別効果)をもっています。消費者は、商品名によって、その商品を知り(知名効果)、商品の中身が何であるかを理解します(理解効果)。そして、商品名が知れわたり、商品名を通じて商品の中身についての理解が消費者の間に浸透すると、商品の存在や中身を知らしめるためのコスト、つまり広告宣伝するためのコストを節約することができます。 しかし、商品名は、さらに、商品名それ自体が独特のメ ッセージを発するようになると、つまり、商品が独特の意味を持ちブランド化した商品(ブランド商品)になると、 コスト節約や投資コスト分に還元できない価値(剰余価値)が生まれます。ブランドが、他のブランドにはないブラン ド固有の欲望を作り出すことにより剰余価値を持つように なります。加えて、固有の欲望を作り出す世界の憧れを生 み出します。 商品名というのは、消費者が、単に商品を識別し、理解するための道具ではなく、売り手側にとっては広告宣伝効果を持っているし、さらにはブランド効果を持ち得るものということです。ブランド化した商品名は、単に商品の名前を示すだけでなく、ブランド名それ自体が商品となります。このブランド効果を利用したのが「巨人」です。 参考文献 「ブランド 価値の創造」 石井淳蔵著 岩波新書 1999 |
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2004/04/09 |
25 リコーMLB開幕戦 |
| 球春到来。プロ野球の開幕です。パ・リーグは、3月 27日、セ・リーグよりも1週間早く開幕し、狙いどおり、
福岡ドーム4万8千、西武ドーム4万8千、大阪ドーム 4万1千と3ドームとも満員という、リーグ最多となる13万7千人の観客動員を記録しました。ところが、翌日
の28日は福岡ドームでこそ、前日と同じ4万8千の観衆 が集まりましたが、西武ドームと大阪ドームは、それぞれ半減の2万4千と2万3千でした。 同じ日、西武ドームから30q離れた東京ドームでは、 タンパベイ・デビルレイズ対阪神タイガース、ニューヨー ク・ヤンキース対読売巨人軍のオープン戦が行われていま した。3月30日、31日同じ東京ドームで開幕するメジ ャー・リーグ公式戦に先立ち、巨人、阪神とオープン戦を行っていたのです。 猛虎タイガースは今年も元気で、デビルレイズと7対7 の引き分け、ヤンキースの松井は、見事第一打席で本塁打を放ち、凱旋試合を飾りました。本塁打を放った瞬間の視聴率は27.1%、平均でも20.5%を記録しました。 3月28日のパ・リーグ開幕第2戦の西武ドームは、明 らかにメジャーに食われた格好です。関係者の不安は的中 しました。28日の朝刊記事に「西武ドームでは、28日 の指定席が一、三塁側とも売れ残っている。営業担当者は、 『できれば日程をずらしてほしかった』と話す。」と不安視されていたのです。 29日にも、巨人・阪神とメジャーとのオープン戦が行 われ、30日、31日には、ヤンキース対デビルレイズ戦 のメジャー・リーグ開幕戦が行われました。いずれも東京 ドームです。つまり、パ・リーグの開幕5連戦は、27日 の開幕日以外、メジャーの試合と見事に日程が重なっていました。明らかに、メジャーの試合は、パ・リーグが享受できたであろう利益を損ねています。 このメジャー開幕戦の主催者は、メジャーリーグ (MLB)と同選手会、読売新聞、そして日本野球機構 (NPB)です。もちろん、読売新聞は、セ・リーグ読売巨人軍の親会社で、NPBの構成員には、セ・パ両リーグ とその各球団が含まれます。 確かに東京を保護地域とするパ・リーグの球団はありませんから、プロ野球協約上の地域権の侵害にはあたらないといえばそうでしょう。しかし、パ・リーグの球団も歴と したNPBの構成員です。NPBは、構成員であるパ・リ ーグの利益を守る義務を負っているはずです。それが自らパ・リーグの利益を侵害したことは、明らかに暴挙といっていいでしょう。 千葉ロッテ・バレンタイン監督「計画の時点から、これは間違いだった」(2004年3月28日朝日新聞朝刊) |
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2004/03/11 |
24 NPBモデル |
| 日本のプロ野球は、親会社の広告宣伝媒体だといわれて います。実際、球団は、親会社の名前を名乗り、親会社は、
球団の赤字分を広告宣伝費として償却できる仕組みになっ ています。 広告宣伝媒体という点であれば、親会社と球団の関係は、 球場の広告看板スポンサーやテレビのCMスポンサーと変 わりはありません。親会社もスポンサー企業もプロ野球を 通して広告宣伝という企業活動を行っているわけであり、 その広告宣伝媒体になっているのがプロ野球であり、各球 団ということになります。 スポンサー企業と親会社の違いは、球団に出資している か否かです。スポンサーは球団と直接又は間接的に契約しているに過ぎず、広告宣伝効果がなければスポンサー契約を打ち切りればいいわけです。ところが親会社の方は、球団に出資しているわけですから、球団経営に対するリスク を負担しなければなりません。 そこで、日本のプロ野球の親会社がとったリスク回避策が、親会社が自ら球団経営を行うということでした。プロ 野球出身者は、ビジネスには素人だからと、球団経営に参 加させず、経営陣は親会社からの出向者で占められていま す。NPB自体が、球団の代表の集まりである実行委員会で は何も決められず、親会社の代表の集まりであるオーナー会議のいいなりになっています。 すなわち、日本のプロ野球の最大の特徴は、本来、プロ 野球を利用したビジネスであるはずの親会社が、プロ野球 のビジネスを行っている点にあります。別の言い方をする と、球団の経営主体が、球団にはなく、親会社にあるとい うことです。 こうなった背景には、球団の収益性の低さがあります。 プロ野球は観戦スポーツといいながら、観戦収入だけでは 成り立っていけないからです。その原因のひとつに、球場 の所有(管理権を含む)の問題があります。観戦スポーツ にとって球場というのはいわば店舗です。観戦者は入場料 を払ってくれるだけではありません。球場内の看板広告を 見てくれます。また、観戦者は、お弁当やビール・おつま みを買ってくれます。球団の応援グッズも買ってくれます。 米国ではこれに駐車場収入も加わります。 ところが、日本の球団は、自前で球場を所有(管理権を 含む)していないため、売店収入も広告看板収入も球場の 収入となります。日本の球場は、民間の株式会社が多く、 甲子園や西武ドームにしても、親会社は球団と同じですが、 全くの別法人です。日本のプロ野球は、ハードである球場 は儲かるけれども、ソフトである球団は儲からない仕組み になっています。 親会社が球団経営の意志決定権を持っていますから、球 団の経営陣は、親会社からの出向者で占められています。 ただし、親会社は、球団の収益性の低さのため、プロ野球 を本格的なビジネスとは捉えておらず、球団は単なるチー ム運営会社になってしまっています。入場券の販売など営 業活動は、親会社や球場にアウトソーシングされているの が普通です。 また、ビジネスのことはプロ野球出身者には分からない だろうからと、球団の経営陣は、親会社の出向者で占めら れていますが、逆に、プロ野球については、親会社の出向 者は素人だからと、チームの運営を監督に権限委譲をして きたのが、日本のプロ野球の一般的なスタイルです。日本 の監督は、一軍の采配だけでなく、選手・コーチ・トレー ナーの面倒をみ、選手の育成(二軍)、獲得(スカウト、 トレード、外国人選手)も担います。もちろん、選手の査 定も行います。日本の監督は、監督と言うよりも、総監督 と呼んだ方がよく、昔からゼネラル・マネージャー的な存在でした。 【参考文献】 「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」 (昭和29年8月10日国税庁通達)http://www.nta.go.jp/category/tutatu/kobetu/houzin/2027/01.htm |
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2004/02/13 |
23 ネーミングライツ |
| ネーミングライツ「命名権」は、「スポンサー企業の社名や商品ブランド名をスタジアム、アリーナ等の施設の名称として付与する権利」のことをいい、70年代以降米国で生成・発展してきた概念です。 米国では、プロ球団は、都市名や地域名を名乗り、エリア・アイデンティティとして存在しています。このため、プロ球団が使用するスタジアムやアリーナを自治体が提供するのが普通になっています。スタジアムやアリーナを提供できない都市や地域は、都市や地域のステータスでありシンボルとなるプロ球団を所有することができません。 ところが、このスタジアムやアリーナの建設費の負担はやはり大きく、自治体の財政を圧迫します。このため、メジャーリーグの新球場建設のために、市債発行や新税導入について住民投票を実施した都市はシカゴ、デトロイト、クリーブランド、デンバー等があります。いずれの場合も、否決された場合はメジャー球団を失うことになっていたと、いわれています。 このため生まれたのがスタジアムやアリーナのネーミングライツ・ビジネスです。スポンサー企業が、スタジアムやアリーナ等の施設の名称を名乗るのと引き替えに、その建設費や維持費の一部を負担してもらおうというものです。今や、プロ球団が使用するスタジアムやアリーナは、都市や地域のランドマークになっています。このスタジアムやアリーナに企業名やブランド名を付けつことは、マーケティング効果があるというわけです。 最近の一番の成功例がメジャーリーグのマリナーズの本拠地セーフコ・フィールドです。同球場はイチロー、佐々木の活躍ですっかり日本でも有名になりました。セーフコはシアトルに本社がある保険持ち株会社で、契約内容は99年の球場オープンから20年間、総額4千万ドル(約49億円)。マリナーズの活躍でビジネス基盤の弱い東海岸や、日本など海外にも大きく社名が宣伝されました。年間200万ドル(約2億5千万円)は十分元が取れたわけです。 (2001.12.1 朝日新聞記事より) ところで、日本のプロ野球では、球団はコーポレート・アイデンティティ、つまり会社の広告宣伝の媒体として位置づけられ、企業名を名乗っています。企業名を名乗るプロ球団を所有していると赤字分は、広告宣伝費として処理することができます。いわば、球団名が、ネーミングライツとなっています。実際、球団名をネーミングライツ・ビジネスとして利用したのが、西鉄ライオンズを引き継いだ福岡野球株式会社です。1973年から1976年は「太平洋クラブ」ライオンズ、1977年と78年は「クラウンライター」ライオンズを名乗りました。 米国では、プロ球団はエリア・アイデンティティが高いため、球団名のネーミングライツが不可能でした。NFLでは、企業が球団を所有することさえできません。このため、スタジアムやアリーナといった施設への命名権ビジネスが普及したのです。これに対し、日本では、球団名自体が古くから、ネーミングライツとして考えられ利用されてきました。 「近鉄」バファローズが、球団名を売却しようとしたのは、驚くにあたらない行為だということです。なぜ、それを他の11球団のオーナーがいまさら非難するのか、それこそが驚きです。 |
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2004/01/15 |
22 パブリック・ビューイングとクローズド・サーキット |
| 2003年の日本シリーズは、史上初めてNPB主催で、ビジター側のホーム球場で、全試合、有料のパブリック・ビューイング(PV)が実施されました。甲子園では、福岡に行けなかったファンが多数応援に駆けつけ、第1戦が1万3千人、第2戦が1万1千人、第6戦と第7戦は1万5千人の観客が集まったそうです。ただし、球場側は、2万人の観客を見込んでいたそうです。入場料は、アルプス席が1000円、指定席が1500円。ちなみに福岡ドームは大人1500円、子供500円で観客が第5戦は8千人でした。 PVという言葉が日本で広く使われるようになったのは、2002年のサッカー・ワールドカップからです。ワールドカップでは、FIFAの要請により、開催地となった10都市の競技会場(スタジアム)などで、(常設の)大型スクリーンを使った中継イベントが無料で行われました。その中で、国立競技場で、有料の中継イベントがPVとしておこなわれました。 もともと、PVとは、ユニバーサル・アクセス(誰もが見ることができる権利)と相通じるもので、競技場に入れなかったファンのために、公共の空間で、非営利で不特定多数を対象に行うテレビ放映イベントのことです。街頭放映、街頭テレビがこれにあたります。 つまり、NPBが主催したPVは、営利を目的とした興行であり、本来の意味でのPVではなく、クローズド・サーキット(CC)といわれるものです。CCとは、もともとは、有線テレビ(ケーブルテレビ)のことで、現在では、特定の会場に人を集めて行う営利目的の有料放送イベントのことを指します。かつて、ケーブル・テレビを利用してプロ・ボクシングの有料中継がクローズド・サーキットとして盛んに行われ、興行スタイルとして定着しました。 営利目的のCCは興行ですから、それがPVと名乗っていても、他球団の保護地域での開催は興行権に抵触します。それが2003年夏の「埼玉スタジアム」における阪神戦のPVでした(ぼーる通信2003/08/16「さまよえるパブリック・ビューイング」)。これは結局、阪神が西武の承諾を得て実施されましたが、8月26日が450人、27日が1300人と主催者側の皮算用1万人を大きく割り込み赤字だったそうです。 ところで、一昨年までのシリーズでは無料で行われてきた街頭や商業施設での大型スクリーンを使ったテレビ放映(これが本来のPV)は、NPBにより「放送局の権利保護や、現場での治安の関係」から禁止とされました。福岡・天神のソラリアステージ広場など、放映を予定していた福岡市や北九州市の商業施設は、相次いで放映を取りやめたそうです。ただし、優勝決定のニュースを見ていると、実際には球場以外の場所で、テレビ中継が行われていたようです。例えば、福岡のキャナル・シティです。↓のHPは、日本一の瞬間です。大画面は静止画には出てきませんが、動画には出てきます。 http://www.nishinippon.co.jp/nishispo/hawks/V/photo/canal.html 公共スペースでの非営利のテレビ中継こそがPVであり、PVがPVであるのなら興行上問題はありません。NPBの主張も興行権の問題でなく、放映権と保安上の問題ですが、放映権は、民放の無料商業放送なら問題は無いはず(CMカットは問題になるかも)です。 |
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2003/12/13 |
21 看板広告 |
| 子どものころ、プロ野球の試合を観に球場に出かけると、球場全体を埋め尽くしたカラフルな看板広告に驚かされたものです。しだいにそれが見慣れた風景になっていったものでした。時は経ち、Jリーグが開幕すると看板のないスタンドに奇異さえ感じたものでした。サッカー場にあったのはグラウンド(いまで言えばピッチ)を囲む仮設の看板広告でした。それは、観客というよりもテレビのための広告のようでした。 日本のプロ野球場のほとんどが私企業であるため、球場の看板広告は、球場と広告主との契約となり、広告収入は球場の収入となります。球団には、球場側から、間接的にマージンをもらう仕組みになっています。これに対し、サッカー場は公営が多く、常設の看板広告は基本的にありません。Jリーグの試合があるときだけ、仮設の広告看板がピッチの周りに設けられ、広告収入はクラブの収入になるのが普通です。 可笑しいと言えばおかしなこの見慣れた日本のプロスポーツの風景。そこには面白い歴史が隠されていました。プロ野球場に私営が多いのは、球場が建てられたのが戦前・戦後と古く、当時の自治体にはそれだけの資金が不足していたことが挙げられます。ところが、民間企業というだけでは、球場が看板で埋め尽くされるようになった理由ではありませんでした。 球場が広告看板で覆われるようになったのは、高額の入場税の結果でした。大阪スタヂアムが建てられた当時(1950年)、入場料には100%の入場税が係っていました。入場料400円とした場合、そのうちの200円が税金というわけです。ところが広告は、「税の制約が少く、・・・初期の球場経営を大きく潤すもの」だったそうです。「その後の球場が、たくさんの看板で埋められていったのには、こういった懐事情があった」と「南海ホークスがあったころ」(紀伊国屋書店)で著者の永井良和氏と橋爪紳也氏は述べています。 一方、サッカー場の仮設広告ですが、その歴史はヨーロッパに遡ります。米国と日本では、1960年代、70年代にはテレビ社会が完成し、民放テレビはCMを通して広告メディアとして抜きんでた地位を確保するようになります。ところが、ヨーロッパでは米国や日本と違い、90年代になるまで民放テレビ局の発達がなく、公共テレビしかない状態が続きました。このため、CMは長い間許されず、民間企業にとって、スポーツの試合会場に看板広告を出すことがテレビに露出する数少ない機会でした。このため、ヨーロッパでは、早くからプロ・サッカー試合への看板広告の掲出が行われ、CMの代替機能を果たしていました。(参考文献「新スポーツマーケティング」(広瀬一郎著 創文企画)) サッカー場のピッチを囲む看板広告には、ヨーロッパにおけるテレビCMの遅れがあったわけです。面白いですね。 |
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2003/11/13 |
20 GM(ゼネラル・マネージャー) |
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プロ野球の球団も、他の会社と同じ組織構造をしています。例えば自動車メーカーが、製造部門と販売部門からなっているように、球団組織もベースボール部門とビジネス部門からなっています。ベースボール部門は、自動車メーカーの製造部門にあたり、スカウト・ファーム・一軍などからなります。同様に販売部門にあたるのがビジネス部門で、チケット販売やライセンス・放映権の管理、プロモーションなどを行う部門です。 GMとは、メジャーリーグでは、一般に、前者のベースボール部門を総括する総責任者のことを指します。ベースボール部門の長であるGMは、いわば製造部門の長ですから、野球とビジネス双方に精通している必要があります。 販売部門というのは、業種が異なっていても共通項が多いのに対し、製造部門では、業種特有の専門的な知識と経験が求められます。このため、メジャーリーグのベースボール部門の長には、野球についての知識と経験と才能をもった人がGMとして任命されます。これはなにもGMは、選手経験者でなければならないというわけではありません。 実際、メジャリーグの選手出身のGMも、選手引退後MBAの資格をとってビジネスマンとしてのキャリアを積んできた人たちです。選手の獲得費用・育成費や年俸には巨額の費用がかかります。巨額の費用をかけてチーム運営するわけですから、GMには、野球だけでなくビジネス能力も要求されます。 日本のプロ野球というのは、親会社の宣伝機関として位置づけられていますから、興行権を親会社や球場に委託しているケースが多々あります。この場合、球団といってもベースボール部門だけの単なるチーム運営会社に過ぎないことになります。そして、そのチーム運営についても、野球選手はビジネスには素人なのだからと親会社の出向者が経営のトップを占めることになります。 ところが、親会社の出向者は、ビジネスでは、玄人かも知れませんが、野球については逆に素人同然です。野球については素人なのですから、監督の意見を尊重して経営にあたってくれればいいのですが、権限も与えないでチームを監督に任せっきりで自分では何もしないというケースが多く見られます。 最悪なのが、ビジネスも知らない、ましてや、野球も知らない親会社の一出向者が、「GM」を気取ってフロント主導のチーム編成を行おうとした場合です。メジャー・リーグでは、チーム編成は球団フロントが行っているとばかりに、GM気取りで素人がチーム運営にあたっても混乱を招くばかりです。 9月10日読売ジャイアンツ球団代表に読売新聞社経理三山秀昭氏が就任。三山氏は、早大を卒業後、1969年に読売新聞社に入社し、秘書部長、政治部長などを歴任。9月10日の産経Webによれば、渡辺恒雄オーナーは新代表について『野球の知識、理論に詳しい」と説明。阪神に大きく引き離された今季の戦いに強い不快感を示し、「編成などを新しいフロント機能に委ね、ただちに補強の調査に着手しないといけない。来季の優勝を目的に今回の人事を行った」と話したということです。 ビジネスも野球も知らない人がGMもどきのことをやろうしたことが、原前監督の悲劇を生んだのだと思います。 なお、9月26日オリックス・ブルーウェーブの小泉社長は、GMとして元阪神監督の中村勝広氏を招聘しました。GMとしては元ロッテの広岡氏についで二人目。中村氏には、ビジネス経験が足りません。 |
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2003/10/11 |
19 社長解任(その2) |
| (前回の続きです) 大堀氏が社長に就任するまで、球団の入場券の販売は、横浜スタジアムに委託されていました。これに驚いた大堀氏は、さっそく、入場券の販売権を球団に取り戻したそうです。球団にとって、広告収入と売店収入はあてに出来ませんから、収入源は、入場料収入と放映権料、それとライセンス収入だけということになります。放映権については、ベイスターズ・ソフトという会社を作って、テレビ放映の制作を球団自ら行うことにより、放映権を完全に売却するのではなく、高次利用を念頭においた体制を作っています。また、ライセンス収入の確保を目的に、ベイスターズ・サービスという会社も作っています。また、湘南シーレックスを作ったのも大堀氏です。大堀氏が社長になってから、やっとプロ球団としての体裁がとれたと言っていいでしょう。 ところが、98年の球団優勝以降、親会社のマルハの経営状態はさらに悪化し、また、選手年俸もあがり始め手詰まり状態に入ってきます。巨人戦以外の放映権料とライセンス収入は、いくら増やしても、高騰する選手年俸をまかなうことはできません。入場料収入も、球場の収容人員は3万人と限られており限界が見えていました。そこで、起死回生策として考えられたのが横浜ドームでした。誤解されてては困るので説明しますが、大堀氏が要望したのは5万人収容の球場です。ドーム球場を望んだわけではありません。当時、地元経済界にあったドーム話に、増収を図りたかった大堀氏が便乗したのが真相だと思います。入場料収入を増やすには、球場 のパイ(収容人員)を広げるしかなかったからです。結果的には、ドーム球場の頓挫、球団の売却、有力選手・スタッフの流出と退団、戦力補強の失敗により横浜ベイスターズの現状となっています。 一方、オリックス・ブルーウェーブの場合、パ・リーグに属し、巨人戦の放映権料と入場料収入は存在しません。93年のFAとドラフト逆指名の導入により選手コストが高額化した結果、パ・リーグ各球団の親会社は、20億円から30億円の球団支援を余儀なくされています。状況は、オリックス・ブルーウェーブも他のパ・リーグ球団と同じです。ところが、オリックス本社にしてみれば、グループ内で赤字なのはブルーウェーブだけであり、なんでだという話になります。オリックスという親会社は、球団を単なる宣伝機関として捉えるのではなく、ひとつの企業として捉えています。ただし、あくまでもオリックス・グループの企業としてですが。 採算をとるにはどうしたらいいのか。それには、コストを減らすことと収入を増やすことです。コストの大半は選手と監督・コーチの人件費です。外から見ると、70人の選手が本当に必要なだろうか、コーチング・スタッフの数が多すぎはしないか、海のものとも山のものとも分からない新人選手に何千万円の契約金を払うのはおかしくないか、といった疑問が湧きます。そして、これを実行したのが岡添球団社長でした。契約金ゼロ選手や選手・コーチの少数化です。実際には、これが、球団の弱体化につながった可能性が高いのですが、試みは評価すべきでしょう。 岡添社長の最大の成果は、球場の管理権を手に入れたことです。神戸市から球場の管理委託を受けて、広告看板や売店収入などの収入手段も増えますし、球場使用に当たっての自由度が増したことが最大のメリットでしょうか。グラウンドの全面天然芝化やグラウンドレベルの観客席(フィールド・シート)などアメリカン・スタイルのボールパーク構想を掲げ、球場の改造を行ってきました。合わせて、年間予約席のディスカウント化も行い誰もが気軽に見られる球場をめざしています。といっても、いまのところ観客動員に結びついてはいませんが。 大堀氏と岡添氏の実績は、評価すべきであり、決して無駄に終わらせてはならないことです。そして、新たに社長となった峰岸氏と小泉氏に新たなビジネス・チャレンジを期待することにしましょう。 |
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2003/09/12 |
18 社長解任 |
| 03年3月27日横浜ベイスターズ大堀隆球団社長が退任し、峰岸進球団顧問が新社長に就任した。峰岸新社長は、昨年からベイスターズの親会社になったTBSの元プロデューサーで、「8時だヨ!全員集合」を手がけた人です。大堀氏は前の親会社マルハの出身でしたが、94年に球団社長に就任以来、球団改革を進め、98年には38年ぶりの優勝を実現しました。大堀氏は、02年は、親会社がTBSに代わったにもかかわらず、球団社長としてそのまま留任し、球団経営に当たっていましたが、昨年の森監督辞任に続き、最下位の責任を取る形で退任という形になりました。 03年9月3日オリックス・ブルーウェーブの岡添裕球団社長の辞任と小泉隆司新社長の就任を発表しました。球団は、岡添氏の社長就任以来、イチローや田口などの主力の流出がつづき、さらに補強の失敗により4年連続のBクラス、ここ二年は連続して最下位に低迷していました。岡添社長の事実上の解任は、4月の石毛監督の解任に続くものです。新社長の小泉氏は、関連会社オリックス・インベストメントの社長で、オリックス・グループ内での人事異動の意味合いもあります。 成績不振の責任をとって球団社長が交代するというのは、NPB(日本プロ野球組織)にとっては極めて珍しいことです。これも民間企業からすればおかしな話ですが、プロ野球がこれまでビジネスとして顧みられてこなかった証でもあります。このおかしな世界にビジネス・チャレンジしたのが、大堀氏であり岡添氏でした。そして、両者は、プロ野球ビジネスに敗れたという次第です。 このおかしなプロ野球ですが、両球団の置かれていた経営環境は大きく異なっていました。横浜ベイスターズは、セ・リーグに属し、巨人戦の放映権料や入場場料収入で球団経営は赤字を出さずにすむ状態でした。ただし、親会社であったマルハ(前大洋漁業)自体が、再建途上にあったため、親会社からの支援は広告宣伝費という名目であっても期待できませんでした。横浜大洋ホエールズからの名称変更も、親会社からの宣伝機関から独立採算のプロ野球を目指ざる得なかった状況もあったわけです。 独立採算を目指した大堀ベイスターズは、横浜スタジアムと横浜市という壁にぶつかります。横浜スタジアムについては、私のHPのコラムで紹介したように、市民の出資で、横浜市は資金を出すことことなく、市民の球場を手にすることができました。その建設資金を負担したのは、実質的に横浜球団でした。しかも、球場と球団との契約内容は、不当な内容でした。この契約自体は、98年で20年契約が切れ、契約を更新しているはずですが、改善されたという情報は入っていません。そこで、当「ぼーる通信2002/6/12」配信のプロ野球ビジネス15「都市とチームの結びつき」で紹介した大堀前社長の話ということになります。 http://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/4031/wind1.html#79 http://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/4031/ballcom.html#15 つづく |
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2003/08/16 |
17 さまよえるパブリック・ビューイング |
| 地域権と保護地域という言葉が、新聞紙面を賑わしています。地域権と保護地域というのはフランチャイズのことであり、各球団には、保護地域内における興行権を独占する権利が野球協約で保証されています。 阪神タイガースは毎年夏になると高校野球に甲子園を明け渡すため死のロードといわれる長期ロードを強いられるため、お隣の大阪ドームで試合を主催する場合があります。今年は、19日から中日3連戦が予定されています。ところで大阪ドームは、大阪府にあり、その大阪府を保護地域としているのは大阪近鉄バファローズです。阪神タイガースの保護地域は兵庫県ですから、阪神が大阪ドームで試合を主催するときには、阪神は大阪近鉄に書面で承諾をとる必要があります。 ところが、今回、JTBが企画した埼玉スタジアム(8月26日、27日)でのPVに、阪神が、埼玉県を保護地域としている西武ライオンズに書面による同意をもらっていなかったことがわかり、協約違反と言うことで問題になりました。 PVとはパブリック・ビューイングの略で、試合会場とは異なる会場で大型スクリーンに試合中継を写しだし、試合の雰囲気を味わってもらおうというもので、いわばバーチャル・スタジアム観戦のことをいいます。試合会場が満員で会場から溢れた人や遠隔地で観戦に行けなかったファンを対象に開催されます。ワールドカップでも話題になりました。 パブリック・ビューイング(PV)は、テレビ中継を生のスタジアムで観戦しようというものですから、スタジアム観戦とテレビ観戦の双方の特徴をもった観戦形態といえますが、観客にとっては、スタジアム観戦であることには代わりありません。これが、今回のPVイベントが地域権侵犯だとコミッショナー事務局が見なした理由だと思います。プロ野球で本拠地球場以外でPVを開催する機会は滅多にありませんから、阪神球団側が、PVについての認識が甘かったのだでしょう。 阪神のPVイベント自体は、8月20日の阪神・中日戦(大阪ドーム)が神戸スタジアムで、同26、27日の阪神・巨人戦(甲子園)が埼玉スタジアムで、計3試合開催が予定されています。この日程は阪神優勝のXデーになるのではと企画されたものですが、この26.27日の両日には埼玉県を保護地域とする西武がライバルのダイエー・ホークスと西武ドームで優勝争いをするかもしれないということで、西武側も強行です。日本中、トラ・トラ・トラですが、埼玉県はライオンの縄張りだぞというわけです。 ところで、なぜ、サッカー専用スタジアムである埼玉スタジアムで、プロ野球のしかも阪神戦のPVなのかという疑問がでてきます。 ご存じのように、埼玉スタジアムは昨年サッカー・ワールドカップの準決勝が行われた日本最大のサッカー・スタジアムですが、他のワールドカップ会場と同様、年間5億円にのぼる維持管理費の捻出が問題となっています。その捻出策が今回の阪神戦PVイベントとだったわけです。アイデアはよかったのですが、手続きの問題と日程が悪かったということでしょうか。 首都圏の阪神ファンというのは、阪神タイガースにとっても、親会社の阪神電鉄にとっても、あまりおカネにならない存在です。阪神の試合は、首都圏で43試合もありますが、ビジターである阪神にとって入場料や放映権料は入りません。せいぜい、グッズの売り上げぐらいです。阪神電鉄は、関西の一私鉄に過ぎませんから、関西の巨人ファンのように球団は利益にならなくても親会社を通して利益を得るということもできません。そこで考えられたのが首都圏でのPVだったのだと思います。企画自体はJTBがだしていますが、阪神側も渡りに船だったと思います。 今回、あらためてプロ野球にはフランチャイズ制度があるんだということが世間に知れわったと思いますが、私自身は、西武ライオンズ自体が、埼玉県全体の地域権を主張できるのか疑問に思っています。埼玉スタジアムがあるさいたま市は、埼玉県東部が生活圏なのに対し、西武ドームのある所沢は、埼玉県南西部と東京都北西部の生活圏に含まれるかからです。西武こそ、東京都という保護地域の地域権を侵犯しているではと思ったりします。 最後に、テレビ放映権は、地域権に含まれないことが野球協約で明示されていますが、PVが地域権の中に含まれるのなら、テレビ観戦も地域権の中に含まれてもいいのではないかと思っています。8月26、27日の阪神・巨人戦が阪神優勝のXデーであるのなら、首都圏でも、テレビ中継は必ずあるわけで、西武にとって、そのテレビ中継のほうがPVより大きな影響があるのではないのでしょうか。Xデーの視聴率は、首都圏でも30%は行くのでは予想されます。 ※PVの入場者数は8月26日が450人、27日が1300人といった具合で、JTBの関係者は赤字だとこぼしていたそうです。観戦した阪神ファンは盛り上がっていたようですが。一方、Xデーの視聴率は、ビデオ・リサーチ社(9月16日)の調べによれば、プロ野球阪神タイガースの優勝を伝えたフジテレビの生中継の視聴率は、関東地区で26・9%、関西地区で32・6%。新聞記事をまとめると次のとおり。「フジテレビが、優勝決定の午後7時33分から20分間「世界柔道2003」を中断し、星野監督の胴上げの模様などを、甲子園球場から緊急生中継しました。瞬間最高は29・5%(関東地区)。また、関西地区では、神戸のサンテレビも胴上げシーンを生放送し、こちらも13・6%(関西地区)。NHKBS1でも大リーグ中継をカットして生中継しており、相当数の人が18年ぶりの「感動クライマックス」を目にしたことになる。」 |
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2003/07/10 |
16 プロ・リーグとビッグクラブの軋轢 |
| プロ・リーグは、リーグ戦を興行する共同体ですが、すべての球団が共同体意識をもっているというわけではありません。 大都市というビッグ・マーケットをフランチャイズとした球団(ビッグクラブ)とスモール・マーケットである中小都市をフランチャイズとした球団の財政格差は、単なるフランチャイズ・システムでは補完することはできません。通常、強豪といわれる球団は、読売ジャイアンツしかり、ニューヨーク・ヤンキースしかり、大都市に存在するビッグクラブです。 人口格差以上に深刻化させているのが放送メディアの存在です。放送メディアのマーケットには境界がなく、フランチャイズ・システムによる棲み分けは機能しません。このため、放送メディア・マーケットでは、各球団のマーケットが競合し、リーグによる統制がなければ自由競争ということになります。自由競争といえば、聞こえがいいのですが、実際には、大都市を背景にしたビッグクラブによる市場支配が、進行します。 以下、ヨーロッパ・サッカーにおける放送メディア・マーケットを題材に、リーグとビッグクラブの関係を見てみましょう。 イタリア・セリエAのテレビ契約は、各クラブの個別契約ですが、実際は、北部のビッグクラブ・グループと南部の中小クラブ・グループがグループごとに有料テレビ局と契約しています。ところが、去年のシーズン当初、サッカーバブルの崩壊の影響で、テレビ局が、南部の中小クラブ・グループの放映権料を値切ったため、これに反発した中小クラブ側が公式戦をボイコットし、シーズン開幕が2週間延びた事件がありました。この事件は、ビッグクラブが中小クラブにレベニュー・シェアリングすることで決着しました。 フランス・リーグのテレビ契約は、リーグが一括契約し、それを加盟クラブに分配しています。今年3月、この分配金を巡り、フランス屈指のビッグクラブ、オリンピック・マルセイユとリーグが対立しました。マルセイユの主張は、全試合の3分の2を生中継しているマルセイユと1試合しか中継されないチームの分配金がほとんど変わらないのはおかしい、というものです。マルセイユは40〜50億円の損害を受けていると主張しています。もし、マルセイユの主張が通った場合、フランスも、イタリアと同じ、クラブによる個別契約になるだろう言われています。 ドイツのブンデス・リーガも、フランスと同じく、テレビ局との契約はリーグによる一括契約ですが、この一括契約に、ドイツ屈指のビッグクラブ、バイエルン・ミュンヘンは、消極的でした。このため、一括契約を望んだテレビ局(キルヒ)は、リーグとの一括契約への同意を条件に、約27億円の資金をバイエルン・ミュンヘンに個別提供したことが、これまた今年の3月明らかになりました。もし、イタリアと同じクラブとの個別契約になった場合、独自に収益を上げられるのは、ブンデスリーガ18クラブ中、バイエルン・レバークーゼン・ドルトムントの3クラブだけといわれています。 フランスとドイツは、リーグが共同体として機能していますが、ビッグクラブはこれに反発しています。イタリアでは、リーグが共同体として機能していません。このため、ビッグクラブと他のクラブとの間の格差が大きくなり、リーグ戦の運営さえままならない状態に陥ってしまいました。そして、その解決策は、レベニューシェアリングというリーグ共同体の機能でした。 |
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2003/06/12 |
15 都市とチームの結びつき |
| プロ野球の商品といえば、試合観戦ですが、これには球場での観戦と、テレビ観戦のふたつがあります。球場での観戦には、地理的限界があり、本来、フランチャイズ制と相性がいいのですが、前回見たとおり、我が国のおかれている状況には難しいものがあります。 チーム・ロイヤルティを使ったプロモーションにおいても、この問題が障害になってきます。「スポーツ産業論入門」(原田宗彦編著)によれば、チーム・ロイヤルティとは、特定チームへの忠誠心や愛着心のことをいいますが、このチーム・ロイヤルティの高い人は、1シーズンの観戦回数が多いという相関関係があり、球団にとっては優良顧客ということになります。 このため、チーム・ロイヤルティを高めることが球団のチケット販売戦略とって重要になります。では、どうやったらチーム・ロイヤルティを高めることができるかということになりますが、この点について同書では、「人が自分を規定する要素の中で、変えることができない物事に対してより強いロイヤルティを感じる」と指摘し、「それらの要素とチーム・ロイヤルティを結びつけることが重要である」としています。そして、チームへの結びつきを強める「変えることができない要素」の例として、居住地域と出身地域を上げています。 「この出身地域と居住地域へのロイヤルティとその地域に所属するチームとの結びつきを強めることによって、地元チームだから応援する、という安定したファンが確保できる」ことになります。特に、出身地域は生来的なものであり変えようがありません。この出身地域と強く結びついたのが夏の高校野球です。ノックアウト形式の都道府県対抗戦は、お盆シーズンと重なり、望郷意識を駆り立てます。ところが、居住地域には、今の日本人はそれほど愛着を感じないようです。 それは、戦後の都市づくりが「特色のない都市(地域)づくり」をしてきたからです。戦後、全国各地に同じような商店街ができ、同じような多目的ホールや病院ができ、同じような学校できました。さらにその商店街も、現在では、画一化された巨大スーパーとコンビニの登場により消え去ろうとしています。また、戦後の居住地域は、単なる寝るための場所となり、そこには地域コミュニティは生まれず、教育は学校で、人間関係は職場で、社交は厚生施設や商業施設で、娯楽は職場の仲間と一緒に通勤途上という生活スタイルが定型化されてしまいました。(参考文献 堺屋太一著「高齢化大好機」(NTT出版)) このような特色のない居住地域は、人にとってどこの地域も代わり映えしないということになり、そもそも「自分を規定する要素」となり得ないのではないかということになります。つまり、居住地域との結びつき利用したプロモーションは効果がそれほど期待できないということになります。ただし、Jリーグの鹿島アントラーズやコンサドーレ札幌などを見ていると特色のない都市に、球団という特色を付加することにより、チーム・ロイヤルティを作り出していくことは可能です。 ところがそれも難しい面があります。「スポーツの今日(いま)を刻む」(杉山茂・岡崎満義編著 創文企画)は、メールマガジン「スポーツアドバンテージ」のコラムをまとめて出版したものですが、その序文で,メルマガの主催者のひとり岡崎満義氏が横浜ベイスターズの大堀隆球団社長の話が忘れられないといいます。 その話とは「98年にベイスターズがセ・リーグで優勝し、日本シリーズも制したとき、同時期に神奈川ゆめ国体も開かれていたんです。どちらが地域=横浜市の活性化に力があったか。私はベイスターズだと思う。地下街に佐々木の大魔神神社ができたくらいですから。国体には何年にもわたって何千何百億円ものお金が使われたはずです。それにくらべて、せめてベイスターズには横浜球場の使用料を安くしてもらいたいと希望するのですが、それができない。市に言わせると,もし安くしたら必ず市民から,たかが一私企業のための利益をはかり、結局は税金を使うことになるようなことは許せない、と抗議の電話が殺到するだろう、というのです」 ちなみに横浜スタジアムの使用料は1試合2000万円だそうですが、札幌ドームは800万円のようです。 「スポーツ産業論入門」 原田宗彦編著 杏林書院 「高齢化大好機」 堺屋太一著 NTT出版 「スポーツの今日(いま)を刻む」 杉山茂・岡崎満義編著 創文企画 |
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2003/05/08 |
14 フランチャイズ地域の都市の独立性 |
| フランチャイズ・システムが有効に機能するためには、前回指摘したフランチャイズ人口の格差のほか、フランチャイズ地域の都市の独立性が上げられます。 人口504万の福岡県をフランチャイズとする福岡ダイエーは、2002年、310万人の観客を動員しています。これに対し、人口558万の兵庫県をフランチャイズとするオリックスの観客動員数は、109万人です。また、882万人の大阪府をフランチャイズとする大阪近鉄の観客動員数は135万人にすぎません。これは、福岡県が九州という地域に独立した経済圏を作っているのに対し、大阪府と兵庫県、それに京都府を加えた地域は、関西圏という同一の経済圏(生活圏)を有しており、その関西圏というマーケットの市場支配力を阪神タイガースが持っているからです。 福岡ダイエーは、フランチャイズ・システムにより、福岡県というマーケットを地域独占できるのに対し、オリックスと大阪近鉄は、関西マーケットの市場支配力を持つ阪神タイガースと、ビジネス上の競争を強いられています。 また、首都圏では、東京都をフランチャイズとする読売、ヤクルト、日本ハムと郊外に位置する埼玉県の西武、千葉県の千葉ロッテ、神奈川県の横浜ベイスターズの6球団が、首都圏マーケットを取り合う格好になっています。埼玉県の人口が700万、千葉県が600万、神奈川県が860万と福岡県の人口を上回りながら、西武168万、千葉ロッテ121万、横浜153万と福岡ダイエーの半数の観客しか動員することができません。 首都圏は、東京に経済・文化の拠点が集中し、東京への交通網が発達しています。埼玉・千葉・神奈川の同一県内の移動よりも、東京への移動の方が便利に出来ています。また、人々の関心も、郊外に住んでいながら○○都民と言われるように東京に向いています。そのような状況で、プロ野球の首都圏マーケットは、読売ジャイアンツが圧倒的な市場支配力を持っています。 我が国、中でも、首都圏と関西圏にあっては、厳密な意味でのフランチャイズによるマーケットの棲み分けは難しい状況にあります。このような状況は、我が国特有のようです。堺屋太一氏によれば、戦後の先進国の中で文化と経済に占める首都圏の占める比重が高くなったのは日本だけだそうです。アメリカの首都圏というとワシントンやニューヨークのある東部ですが,その比重は下がり,カルフォルニア,テキサス,ジョージア,フロリダなど首都圏から遠い地域の比重が高まっています。これは,大リーグの移転や拡大を見れば明らかです。ヨーロッパを見てもイギリスでは,ロンドンの比重は下がり,ロンドンに本社を置いている大企業は6割に過ぎず、フランスは典型的なパリ一極集中ですが,今や上位百社の中でパリに本社があるのは56社だけだそうです。 参考文献 「進むべき道」 堺屋太一・浜田宏一 PHP 2000 出典 観客動員数 日本プロ野球史探訪倶楽部http://www.d7.dion.ne.jp/~xmot/? 人口 GLinGLin 都道府県基本のデータhttp://www.glin.org/prefect/prf/prefbase.html |
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2003/04/10 |
13 リーグ戦興行共同体 |
| プロ野球を始めとするプロリーグの加盟球団は、リーグ戦を共同で興行する事業体です。私はこれをリーグ戦興行共同体と呼んでいます。いわば、各球団はフィールドでは、リーグ戦という競争を演じますが、ビジネスでは、利害関係の一致したパートナーということになります。アナハイム・エンゼルスのタック川本氏は、著書「新庄が「4番」を打った理由」の中で、「メジャーリーグの『リーグ』は,連盟、団体、協会という意味があるが、米ノートルダム大学リチャード・シーハン経済学部教授は、さらに解釈を深めて、リーグとは『協同の取り組み』と説いている」と書いています。 プロリーグは、リーグ戦を興行し、それをスポーツ消費者が直接・間接に対価を払って観戦するという財の交換によって成立するビジネスです。プロリーグは、スペクテイター・スポーツであり、観戦者を抜きには存在できません。スポーツ消費者である観戦者は、スタジアムで観戦したり、テレビを通して試合を観たりします。スタジアムでの観戦には、地理的に制約があることから、その観戦マーケットはスタジアムから1時間半程度の時間的距離圏内ということになります。この観戦マーケットが相互に競合しないように配置しようというのが、フランチャイズ・システムです。 フランチャイズの中では、球団は独立性を保ち、自己の利益を追求しますが、他球団の利益を奪ったり、倒産に追いやったりすることはありません。フランチャイズ・システムは、球団間のビジネス上の競合を避け、加盟球団の共存体制を可能にするシステムです。ただし、各球団のビジネス機会は、フランチャイズ人口に依存することになりますから、このフランチャイズ人口の格差が大きいと、球団間に財政的格差が生まれ、このフランチャイズ・システムは有効に機能しなくなります。 テレビ放送の場合、電波には地理的制約はありませんから、マーケットの競合が発生します。しかも、その競合は、ナショナル・マーケット上での競合ですから、球団間の利害の不一致も大きくなります。特定の球団の利益の追求が、他の球団の利益を奪い取り、倒産に追いやる可能性すらあるのです。リーグ戦興行共同体の運営のためには、テレビ放送に、フランチャイズと異なる規制が必要になってきます。それが、テレビ放送のリーグ管理とレベニュー・シェアリング(収入の再分配)です。これは、テレビ放映権について、プロリーグが直接契約し、その収入を各球団に再配分するという制度です。 個々の球団に放映権があるイタリアのセリエAでは、上位クラブと下位クラブの放映権料の格差が広がり、今シーズンの開幕が2週間延期になるという事態が生じました。収集策として、上位クラブが下位クラブの補填金を支払うという一種のレベニュー・シェアリングの方法がとられました。 参考文献 「新庄が「4番」を打った理由」タック川本著(朝日新聞社) 「スポーツイベントの経済学」原田宗彦著(平凡社新書) |
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2003/03/13 |
12 フランチャイズ・チェーンの秘密 |
| フランチャイズという言葉を辞書で引くと、プロ野球の地域独占興行権という意味と本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイ ジー)に与える一定地域内での営業販売権という二つの意味が出てきます。後者は、コンビニや外食産業などのフランチャイズ・チェーンやフランチャイズ・ビジネスという言葉として使われています。一見、プロ野球のフランチャイズと外食産業のフランチャイズは意味を異に しているように思えますが、私はなぜか同じように思えるのです。こう考えるのは私だけではないようです。 タック川本氏は、著書「新庄が「4番」を打った理由」の中で、 「メジャーリーグの球団は、地域のチェーン店」という言葉を書いています。米国ではフランチャイズ・チェーンの看板が溢れているが、この看板が商品やサービスの安心と信頼感を示している。安心と信頼 の看板がフランチャイズの戦略だ。そして、メジャーリーグは、地域密着型のフランチャイズ制をとり、球団のある本拠地の都市名を名乗っている。これは、メジャーリーグという冠(看板)のもと活動することを明確にしたものであり、いわばメッツとヤンキースはメジャーリーグ・ニューヨーク支店でドジャースはメジャーリーグ・ロサンゼルス支店の愛称だ」としています。フランチャイズ・チェーン「メジャーリーグ」にはそうしたお店が米国とカナダに30店営業し、店のオ ーナーは店舗(スタジアム)を用意し、スタッフを抱え監督やコーチ、選手を社員として雇用し、ベースボール・ゲームという「ザ・ショー」 を見せる、としています。 日本のプロ野球協約によれば、日本プロ野球組織(NPB)に加盟 している球団は、加盟と引き替えに同組織から「地域権」「選手契約 権」「選手保有権」を与えられている形になっています。逆に、加盟球団が、NPBから脱退しようとすると協約36条の2より「地域権」 「選手契約権」「選手保有権」は喪失します。したがって、たとえば 読売ジャイアンツ(株式会社読売巨人軍)が、NPBから脱けた場合、 清原や上原などとの選手契約の資格を失ってしまいます。つまり、フ ランチャイザー(本部)がNPBで、フランチャイジー(加盟店)が 加盟球団ということになります。「日本プロ野球(NPB)」という 看板が、プロ野球という商品の安心と信頼を与えるということになります。 NPBへの参加球団は、協約27条で資本金1億円以上の株式会社 と規定され、この会社自体が球団とされています。個々の加盟球団が独立した株式会社であるというもので、一つには八百長の防止がある と思いますが、もう一つ、球団経営の独立性を保つ意味合いがあると思います。 とあるビジネス書を読んでいたら次のような文書がでてきました。 加護野忠男著の「<競争優位>のシステム」の中の一節です。フラン チャイズ・チェーンの本部は、「店舗の設計・受発注の管理といった ノウハウ提供活動に集中し、店舗の運営は独立した事業家であるフランチャイジーに任せている。それによって、店舗経営の真剣さを上手に引き出すことができるし、情報環流を活性化することができる。損をすれば自分の損になるし、得をすれば自分の儲けになるという単純なインセンティブ・システムの導入が可能になるからだ。」 参考文献 「<競争優位>のシステム 事業戦略の静かな革命」 加護野忠男著 PHP新書 「新庄が「4番」を打った理由」タック川本著 朝日新聞社 |
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2003/02/13 |
11 フランチャイズ |
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プロ野球ビジネスとして一番知られているのが、フランチャイズだと思います。フランチャイズとは、よく本拠地や専用球場の意味で使われたりしますが、実際は、特定の地域の興行を独占する権利のことで、プロ野球協約では「地域権」といいます。また、その特定地域を「保護地域」といい、都道府県単位で与えられています。例えば、巨人は全国区ではなく「東京都」、横浜は横浜市ではなく「神奈川県」、阪神は大阪府ではなく「兵庫県」という具合になっています。 |
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2003/01/16 |
10 八百長と競争の演出 |
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プロ野球で一番意味嫌うものは八百長です。八百長は,あらかじめ試合の内容や結果が決まっています。そもそも,プロ野球は,勝敗を競い合うゲームです。筋書きのないドラマに例えられるとおり,野球は,結果が初めから分かっていては,ゲームとして成立しません。プロ野球というのは,試合やリーグ戦といったフィールド上の競争が,前提であり,競争のない八百長は,プロ野球の存在意義がなくなります。 |
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2002/12/12 |
9 プロ野球の敗者と不満 |
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前回,勝利の欲求について書きましたが,実際には,プロ野球には,勝者がいれば,敗者がいます。NPB12球団が1日試合をすれば,通常,勝者は6球団,敗者も同じ6球団です。勝者と敗者を分ける確率は5割です。これが優勝となると,リーグの勝利者は各1球団,日本シリーズの覇者となると1球団だけです。そして,他のすべての球団が敗者となります。プロ野球というのは敗者でもビジネスとして成り立つことを前提にしています。 |
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2002/11/14 |
8 勝利の欲求 |
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プロ野球ビジネスにおける商品は,フィールド上での競争です。スポーツはそもそも,勝敗を競い合うゲームですから,プロの世界ではなおさらです。勝利至上主義に対する非難がありますが,プロの世界では勝利至上主義は当然の成り行きとなります。 |
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2002/10/10 |
7 プロ野球ビジネスの法則 |
| プロ野球は,試合内容やリーグ戦での順位争い・優勝争いを通して観客を集め,収入を得るしくみになっています。ところが,このプロ野球をビジネスとした場合,注意しなければならないことがあります。それがプロ野球ビジネスの法則です。 スポーツとは,主に身体を使って競争するゲームですから,プロ野球の順位争いは,選手の身体的活動の結果であり,選手の身体的能力に大きく左右されることになります。これがひとつめの法則です。 第一法則 球団の成績は,戦力に依存する。 次に,プロですから,選手の評価は,通常,金銭によって評価されます。近年ますますこの傾向が強まっています。球団に資金力があれば,能力の高い選手と数多く契約できる可能性があります。実際の選手の入団動機には,出場機会,育成能力,球団施設,球団の評価なども含まれますが,金銭的評価がプロ選手の最大の評価であることには変わりありません。 第二法則 球団の戦力は,資金力に依存する。 球団の戦力が,球団の資金力に依存するとした場合,球団は,どこからどれくらい資金を調達できるかが問題になります。これが,第三の法則です。 第三法則 球団の資金力は,フランチャイズに依存する。 プロ野球が,共同体の考えの下で運営されていない場合,第三の法則はあてはまりません。結果として,第一,第二の法則により資金力のある球団だけが,優勝争いに参加できることになります。そして,この資金力が特定の球団に偏ったら,リーグ戦の勝敗もおおかた予想通りとなり,競争も形だけのものになってしまいます。自由競争論には,ビジネス上の競争がフィールド上の競争を阻害するという矛盾をもっているのです。ビジネス面の自由競争は,球団間の資金力による格差を生みだし,それが,リーグの順位を固定化させることになります。 ただ,プロ野球=共同体という考えに立っても,第三の法則により,フランチャイズの地域人口に格差があると,球団の資金力に格差が生じてしまいます。これは,MLBにおけるニューヨーク,シカゴ,ロサンゼルスといったビッグ・マーケットとカンザス・シティやモントリオールといったスモール・マーッケトという球団環境の絶対的格差が,順位の格差になって表れるという問題が起こっています。そこで,MLBでは,共同体の考えをさらに一歩進めようとしています。 |
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2002/09/13 |
6 競争の多元化 |
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リーグ戦を飽きさせず最後まで盛り上げるには,リーグ戦の中にいろいろな 競争があればいいのではないか,ということで米国4大スポーツにしろ欧州 サッカーにしろ,リーグ戦といっても一つの競争ではなく,競争が多元的に展開 しています。 |
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2002/08/11 |
5 戦力の均衡化 |
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プロ野球のビジネスの基本は,リーグ戦です。リーグ戦はビジネスの基本であるとともにプロ野球の商品でもあります。リーグ戦の商品価値は,リーグの優勝争いや順位争いです。このリーグ戦での競争がなくなれば,リーグ戦という商品は価値を失います。価値を失ったリーグ戦が消化試合です。リーグ戦の商品価値を高めるには,消化試合を減らす必要があります。消化試合を減らす方法には二つあります。一つが前回も述べた戦力の均衡策です。もう一つが競争の多元化です。 戦力が一部の球団に偏っていると,消化試合が増えます。そこでこの戦力の偏りをなくす方法が戦力の均衡策です。直接的な戦力の均衡策は,戦力である選手の均等配分です。これには,ドラフト制があります。日本では,新人選手のみが対象ですが,MLBでは,マイナー・リーグの選手を対象にしたドラフトもあります。戦力の均等化という目的でいえば,ドラフトの指名順位は,前シーズンの下位の球団からというウェーバー制が本筋です。ところが,日本では,選手層が薄く,新人選手への依存度が高いため,ウェーバー制ではなく,くじ引きや逆指名の制度が採用されてきました。戦力の均衡策は,球団の独立性とのかね合いが問題になります。 選手の均等配分という直接的な方法ではなく,間接的に戦力を均衡させる方法として球団の選手費用を均等化する方法と球団の収益を均等化する方法の二つがあります。前者の代表がサラリーキャップ制です。これは,球団の選手費用の上限を決めておき,一部の球団に優秀な選手が集中しないようにするものです。これには,プロ選手の力は,年俸(球団からみれば費用)に比例するという前提があります。サラリーキャップ制は,野球界では日本でもアメリカでも採用されていません。MLBが,90年代に採用しようとしましたが,選手会側がストライキで対抗した結果,MLBでもサラリーキャップ制は採用されていません。NFLやNBAではすでに採用され,成果を上げています。 後者の球団の収益を均等化する方法として,レベニュー・シェアリングがあります。これには,放映権等をリーグ全体で管理し,これを各球団に分配する方法と,収益性の高い球団の利益を収益性の低い球団に再分配する方法の二つがあります。これは,収益を均等化することにより,収入による戦力の不均衡化を防ぐというものです。放映権は,NFLでは全国放送もローカル放送もリーグで管理されていますが,MLBでは,全国放送のみがリーグ管理で,ローカル放送は球団個々のフランチャイズに含まれています。NPBでは,放映権は,全国,ローカルの別なく,個々の球団に属しています。サラリーキャップ制とレベニュー・シェアリング制の中間的な方法として,選手費用の高い球団から罰金を徴収し,これを他の球団に分配する課徴金制度も考えられています。 この戦力の均衡化策は,直接・間接を問わず,リーグが球団個々の経営に介入することであり,効果も大きいものですが,逆に球団の自主性や独立性を損なうという弊害もでてきます。そこで考えられてきたのが,競争の多元化です。 |
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2002/07/11 |
4 プロ野球はリーグ戦スポーツ |
| プロ野球やJリーグの球団(クラブ)は,れっきとした株式会社という法人企業です。法人企業であるからには,何か商品を生産し,販売しているはずです。ところが,この球団という企業は単独では何も商品を生産することができません。プロスポーツにとって商品は試合になりますが,この試合,ひとつの球団(企業)では成り立たないのです。これは,スポーツの世界では当然の話ですが,経済の世界では奇妙なことなのです。 さらに奇妙なことに,この試合は,単なる商品ではなく,リーグ戦という商品の一部でもあるのです。例えば,巨人対横浜の試合は,巨人という球団と横浜という球団の対戦カードであると同時に,セントラル・リーグの公式戦でもあります。つまり,プロ野球やJリーグの試合は,2球団の対抗戦であると同時に,リーグ戦の中の一試合いう二つの意味を持っています。 このリーグ戦は,3以上の球団が組んで初めて成立します。つまり,3以上の球団が共同して初めてリーグ戦という商品の生産が可能になります。実際,プロ野球ではセ・パ各6球団,JリーグではJ1が16,J2が10クラブでリーグ戦を組んでいます。いわば,リーグに加盟している全球団が,共同してリーグ戦という商品を作っているといえます。 一般の社会では,企業はといえば弱肉強食の市場世界で競争を強いられることになっていますが,プロ野球やJリーグというプロ・リーグの世界は,やや異なります。プロ・リーグの世界では,リーグ戦という商品を生産しているのはリーグです。個々の企業である球団は,その生産者の一部に過ぎません。リーグ戦はマーケットではなく,ひとつの商品です。プロ・リーグの世界は,リーグ戦という商品を共同で生産する共同体の世界なのです。弱肉強食の世界は,プロ・リーグの外の世界にあります。 リーグ戦は,試合数が事前に確保され,優勝の機会も均等なため,あらかじめ選手に多額の投資が可能になります。勝ち抜き戦のトーナメントでは,初戦で負けてしまえば次の試合はなくなり,選手への報酬を賄うことが出来きません。プロ・スポーツを長期に渡って運営していくためには,リーグ戦により長期に安定した収入を確保することが不可欠です。 リーグ戦のデメリットとしては,消化試合が挙げられます。リーグ戦は総当たり戦ですから,優勝や順位が決まっても,リーグ戦は継続されます。消化試合は,リーグ戦という商品価値がないので,集客は期待できません。では,このリーグ戦が持っている消化試合というデメリットをいかに克服したらよいのでしょうか。 次回は,いかにこのリーグ戦のデメリットを克服するかを見ていくことにしましょう。 |
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2002/06/13 |
3 プロ野球ビジネス事始め |
| 1858年,最初の野球の有料試合はニューヨークの競馬場を借りて行われたニューヨーク選抜とブルックリン選抜の試合です。一種のオールスター戦で,競馬場の賃料として入場料を徴収することになりました。入場料は50セント,入場者1500人。しかし,入場料は取りましたが選手への報酬は禁止されていました。 1862年になると,ウィリアム・カミヤーという人物がスケート場の水を抜いて初めての野球場を作り,入場料を取って商売を始めました。これが,最初の野球ビジネスということになります。 1866年には,最初のプロ野球選手が出現しました。フィラデルフィアのアスレチックスが3人の選手と週給20ドルでプロ契約をしました。それまでプレーの報酬として陰で金銭をもらっていた人もいましたが,それが顕在化したのです。 1869年,最初のプロ球団,シンシナティ・レッドストッキングズが誕生します。これは,クリケットのプロ選手だったハリー・ライトが弟と作ったチームで,全員がプロの選手でした。アマチュア相手に連勝を重ねましたが,1球団だけでは経営的に安定せず,2年で解散してしまいました。しかし,このレッドストッキングズに刺激され,各地にプロの球団が誕生していきました。 1871年,これらの球団が結集し,最初のプロ・リーグ,NAPBBPが結成されます。NAPBBPは,リーグというより,選手の協会という形式をとっていたため,選手のわがままがつのり,規律も非常に乱れたものになっていきました。リーグ運営もずさんで,賭博の対象にもなったりしたため,リーグ戦での不正な順位操作,選手の引き抜きや八百長も横行し,ついにはファンの支持を失い5年間で幕を閉じてしまいました。 1876年,この野球の危機を乗り越えるべく登場したのが世界最古の大リーグ,ナショナル・リーグです。ナ・リーグでは,選手や監督は試合に専念させ,経営は専門の役員が行うことにしました。このとき,定められたリーグ憲章が,今日のベースボール・ビジネスの根幹となっています。各球団の地域侵略を防ぐため,@「本拠地となる都市」の人口規模が75000人以上であること,A「各都市」は互いに5マイル(約8q)以上離れていること,とされ,さらに,選手の争奪戦を防ぐため,B統一契約書によって選手を雇用すること,とされました。これがフランチャイズ制度と選手保有権制度です。日本プロ野球協約にも,地域権,選手契約権,選手保留権として球団の権利が保障されています。 1878年には,ターンスタイルと呼ばれる計数器が導入されました。これは,米国の球場でお馴染みの回転式のバーで,入場者が1人通るたびに,正確な人数を記録していきます。これは,入場料が当時唯一の収入源であったため,その分配は極めてシビアであったからです。正確な入場者数を把握することは,プロ野球ビジネスの基本なのです。 参考文献 「アメリカ野球史話」鈴木惣太郎 著 ベースボール・マガジン社 「熱闘!大リーグ観戦事典」池井優+アメリカ野球愛好会 著 宝島社新書 「ベースボールと日本野球」佐山和夫 著 中公新書 「ベースボール創世記」佐伯泰樹 著 新潮選書 「メジャー・リーグを100年分楽しむ」佐山和夫 著 河出書房新社 「大リーグと都市の物語」宇佐見陽 著 平凡社新書 「野球はなぜ人々を夢中にさせるのか」佐山和夫 著 河出書房新社 「大リーグ野球発見」池井優監修 宇佐見陽著 時事通信社 |
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2002/05/09 |
2 野球には観客が付き物だった |
| 野球は,ニューヨークのビジネスマン,アレグザンダー・カートライトが,ボランティアで行っていた消防団の仲間の健康と親睦のため,タウンボールを改良し考案したものです。タウンボールは老若男女誰もが参加できるスポーツでしたが,カートライトは,団員の健康のため「よりハード」なスポーツにすることにしました。そして,団員の家族や恋人との親睦を深める社交の場としても考えていたため,見物人を考慮してルールを改良しました。 「見せるスポーツ」として,一番大きかった改良点は,ファウルラインの設定でした。タウンボールにはファウルラインがなくすべてがフェア地域であったため見物人がゆっくり試合を見ている場所がありませんでした。ファウルラインの設定によって,初めて見物人は安心して試合を間近で見ることができるようになりました。また,打者が四方八方に飛ばしたボールを追いかける無駄な時間が減り,試合の進行も早くなりました。これも,見物人にとって有り難いことでした。 カートライトは自分たちのチームをニッカーボッカーズ・クラブと名付け,1845年の秋にはクラブ内で練習試合を行っています。場所は,ニューヨークではなく,ハドソン川の対岸,ニュージャージー州ホーボーケンにあったイリジャン(エリージアン)・フィールズというところでした。イリジャン・フィールズは,緑と芝生に覆われた風光明媚な行楽地でした。野球は,最初から芝生の公園で試合が行われていたのです。 ニッカーボッカーズのメンバーであったダニエル・アダムズの回想によれば,火曜と金曜の週2回を練習日と定め,イリジャン・フィールズで,毎週のように練習をしいたそうです。そのとき,練習とはいえ,見物人は多いときで百人ほど集まったということです。野球は,最初から見物人が付き物だったのです。 最初のクラブ同士の試合は,ベースボール創世記の著者佐伯泰樹氏によれば,通常言われている1846年ではなく,1845年10月25日に行われたニューヨーク・クラブとブルックリン・クラブとの試合でした。このときは,なんと前日の新聞に予告記事がでています。試合の予告をするくらいですから,クラブ側にしても,見物人を期待していたことになります。当初から,見せるスポーツとしてメディアと関係があったことが分かります。 また,野球は,当初から女性に人気がありました。野球は男性のスポーツですが,カートライトは,社交の場として,団員の家族や恋人にも配慮してゲームを作りましたし,その母胎になったタウンボールは女性にも親しみがあったので,当初から多くの女性が見物に訪れています。その後,イリジャン・フィールズには,女性のためにテントが建てられ,その下に即席の観覧席が設けられるようになったそうです。 参考文献 「アメリカ野球史話」鈴木惣太郎 著 ベースボール・マガジン社 「熱闘!大リーグ観戦事典」池井優+アメリカ野球愛好会 著 宝島社新書 「ベースボールと日本野球」佐山和夫 著 中公新書 「ベースボール創世記」佐伯泰樹 著 新潮選書 「メジャー・リーグを100年分楽しむ」佐山和夫 著 河出書房新社 「大リーグと都市の物語」宇佐見陽 著 平凡社新書 「野球はなぜ人々を夢中にさせるのか」佐山和夫 著 河出書房新社 「大リーグ野球発見」池井優監修 宇佐見陽著 時事通信社 |
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2002/04/11 |
1 観客はどこから来るのか? |
| プロ野球という商売で,何を一番大事にしなければいけないかというと,それはお客様(顧客)である観客です。お金(カネ)を払って,わざわざ見に来てくれる観客を大事することです。今,ビジネスの世界では,顧客満足度とか,ワン・トゥ・ワン・コミュニケーションといった顧客志向の考え方がもてはやされています。嗜好性のある産業では,なおさら,それが重要になってきます。 では,その観客は,どこから来るのでしょうか。 その答えは容易に想像がつくと思います。そうです,観客の大部分は,球場の近くの住民だったのです。阪神甲子園球場で応援するファンは,大阪や阪神地区に住んでいる人達が中心です。東京の住民がわざわざ飛行機や新幹線を使って応援に行くということは稀なことです。 これはサッカーの例ですが,1998年の大阪体育大学の調査によれば,関西エリアにホームスタジアムを持つ4つのJリーグクラブの観客は,クラブ間で若干異なりますが,球場から直線距離で30km以内に住んでいる人が約75%〜90%を占めており,自宅から球場までの所要時間は,観客全体の約70%〜80%が1時間30分以内となっています。また,観戦回数が多い観客は,球場までの所要時間が1時間圏内に居住していることも明らかになっています。 さらに,観戦回数の多い観客は球団に対する愛着心(ロイヤルティ)も高いという結果もでており,野球やサッカーといったプロスポーツの観客は,狭い地域に特定されていることがわかります。この球場から20〜30km(時間的距離で言えば1時間〜1時間半)以内の人口集積した地域が,球団にとってのマーケット,すなわち商圏(商売する範囲)ということになります。この条件を満たしているのが大都市ということになります。 次に,プロ野球の観客の特徴を見ていくことにしましょう。 プロスポーツの観客をプロ野球とJリーグを比較すると,プロ野球は,「団塊の世代(1947〜51年生まれ)」を中心とする中高年層で,Jリーグは「団塊ジュニア(1972〜77生まれ)」を中心とする若い世代と言われています。また,プロ野球の観客は,大相撲,バレーボール,マラソン・駅伝への関心が高く,Jリーグの観客は,バスケットボール,F1,アメリカンフットボール,テニスへの関心が高いという結果もでています。つまり,同じ地域をマーケットにしているといっても,プロ野球とJリーグでは観客層が違うことが分かります。 ところで,野球は,野球ができた時から,観客が付き物でした。次回は,そのお話しです。 参考文献 「スポーツ産業論入門」原田宗彦 編著 杏林書店 「スポーツの経営学」池田勝・守能信次 編 杏林書店 「スポーツ経営学」山下秋二・畑攻・冨田幸博 編 大修館書店 |
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「ぼーる通信」の創刊にあたって |
| プロ野球はビジネスです。会社は,商品を売って,利益を上げます。プロ野球も,試合をして,観客から入場料を受け取り利益を上げます。プロ野球は,生活必需品ではなく,好みによって選ばれる「選択財」です。プロ野球にとって,サッカーなどのスポーツだけでなく,テレビ・ゲーム・音楽・映画・旅行といった他の娯楽すべてが競争相手です。プロ野球は,フィールドだけで行われるのではありません。 「ぼーる通信」では,私B_wind が,プロ野球ビジネスとは何かを,簡単にお話ししていきたいと思います。プロ野球はビジネスにも夢がある。プロ野球ビジネスの声をお届けしていきます。 |