Wind Back Number 

wind

101〜200 (2002/07/11〜2003/03/02)

 

wind1 bP〜100(2002/01/22〜2002/06/15)
wind3 bQ01〜300(2003/03/08〜2004/02/07)
wind4 bR01〜400(2004/02/08〜2004/11/27)

wind5 bS01〜500(2004/11/30〜2005/08/16)
wind6 bT01〜600(2005/08/17〜2006/02/18)
wind7 bU01〜700(2006/02/19〜2007/02/05)
wind8  bV01〜  (2007/02/06〜  )

200(2003/03/02) スポーツの由来 2 もう一つのハンドボール

199(2003/02/26) スポーツの由来 1 ハンドボールとフットボール

198(2003/02/23) sports wind

197(2003/02/22) 幕内と幕の内弁当とプロ野球と

196(2003/02/17) 「スポーツ解体新書」の気になる点

195(2003/02/16) スポーツ知ったかぶり ハリー・ライトはカートライトに会ったのか?

194(2003/02/15) おらが街、おらがチーム

193(2003/02/13) スポーツ知ったかぶり おらがチームを応援する2

192(2003/02/12) スポーツ知ったかぶり  マイナーリーグ

191(2003/02/08) スポーツ知ったかぶり おらがチームを応援する

190(2003/02/07) スポーツ知ったかぶり サッカー場と陸上競技場

189(2003/02/06) プレーオフ、あれこれ

188(2003/02/03)  リーグ戦とトーナメント

187(2003/02/02) チャンピオンズ・リーグ 2

186(2003/02/01) チャンピオンズ・リーグ 1

185(2003/01/29) プレミア・リーグ

184(2003/01/27) ギャンブル興行

183(2003/01/25) 1年経ちました。

182(2003/01/21) プレーオフ 4 ワイルド・カード

181(2003/01/20) プレーオフ 3 ディヴィジョン制

180(2003/01/18) プレーオフ 2 代替案

179(2003/01/17) プレーオフ 1

178(2003/01/16) フリーエージェント制とサラリーキャップ制

177(2003/01/15) ラグジュアリー・タックス

176(2003/01/14) 松井,紐育に行く

175(2003/01/13) プロフェッショナル考 大相撲 5

174(2003/01/12) プロフェッショナル考 大相撲 4

173(2003/01/08) プロフェッショナル考 大相撲 3

172(2003/01/07) プロフェッショナル考 大相撲 2

171(2003/01/06) プロフェッショナル考 大相撲 1

170(2003/01/05) プロフェッショナル考 6 プロは勝者が曖昧

169(2003/01/04) プロフェッショナル考 5 野球はプロ競技のお手本

168(2003/01/03) プロフェッショナル考 4 凶器としての競技場

167(2003/01/02) プロフェッショナル考 3

166(2002/12/25) プロフェッショナル考 2

165(2002/12/24) プロフェッショナル考

164(2002/12/11) 12月10日の掲示板から

163(2002/12/05) プロ野球ビジネスの「 through と of 」2

162(2002/12/03) プロ野球ビジネスの「throughとof」

161(2002/12/03) チャンピオンシップとチャンピオン大会

160(2002/12/01) スタジアムに化学調味料をふりかけて

159(2002/11/30) プロ野球版浪速金融道

158(2002/11/25) 巨人戦視聴率 年齢別構成比

157(2002/11/21) プロローグはエピローグの始まり 3

156(2002/11/20) プロローグはエピローグの始まり 2

155(2002/11/19) プロローグはエピローグの始まり

154(2002/11/18) 松井狂想曲 BY 読売巨人軍

153(2002/11/17)  メディアとスポーツ 最終章

152(2002/11/16) テレビメディアがスポーツを変える 2

151(2002/11/15)  テレビメディアがスポーツを変える

150(2002/11/09) スポーツ団体の腐敗とチェック機能(2002/11/11修正・加筆)

149(2002/11/06) キラーコンテンツとユニバーサルアクセス権

148(2002/11/05) 多チャンネル時代のスポーツ

147(2002/11/04) テレビとスポーツの関係 2

146(2002/11/03) テレビとスポーツの関係

145(2002/11/02) MLBが堕落していてるのなら,NPBはそれ以上に魅力を喪失している

144(2002/11/01) 読売巨人軍優勝そして松井メジャーへ

143(2002/10/30) 新聞とスポーツの関係

142(2002/10/30) メディアとスポーツの関係

141(2002/10/30) 史上最低の視聴率から読む

140(2002/10/24) TODAY’S BASEBALL WIND

139(2002/10/19) 中内オーナー外堀埋まる

138(2002/10/19) 北海道日本ハムファイターズ

137(2002/10/18) ベッカム効果

136(2002/10/15) 税金と広告宣伝費の話

135(2002/10/14) 「スポーツ経済効果で元気になった街と国」

134(2002/10/12) 「スポーツイベントの経済学」

133(2002/10/08) 「メジャーリーグ・ビジネス大研究」

132(2002/10/06) 「メジャー野球の経営学」

131(2002/10/04) 「プロ野球ビジネスのしくみ」

130(2002/10/01) 「史上最も成功したスポーツビジネス」

129(2002/09/30) 「新庄が「4番」を打った理由」

128(2002/09/29) 祝西武ライオンズ様

127(2002/09/28) 祝読売巨人軍

126(2002/09/27) 森監督解任

125(2002/09/23) ビジネス・モデル 2

124(2002/09/16) 顧客にして経営主体

123(2002/09/15) 外部性の侵入

122(2002/09/07) ビジネス・モデル 1(2002/09/23改訂)

121(2002/09/06) メディア・ヴァリューの活用

120(2002/09/04) メディアと公共性

119(2002/09/02) プロ野球のメディア・マーケット

118(2002/09/01) プロ野球の地域マーケット (2002/09/23補記)

117(2002/08/31) ワールドカップの遺産 2

116(2002/08/30) ワールドカップの遺産

115(2002/08/28) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす 3

114(2002/08/17) プロ野球ビジネスのしくみ

113(2002/08/17) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす 2

112(2002/08/16) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす

111(2002/08/07) くたびれてるんやろなあ〜,プロ野球が

110(2002/07/22) スポンサーシップと親会社の宣伝媒体の違い

109(2002/07/20) 広告効果 大阪近鉄の場合

108(2002/07/20) 曲がり角

107(2002/07/20) 赤字にも鈍感な体質

106(2002/07/17) 東京読売巨人軍の謎

105(2002/07/16) 戦後の大正力

104(2002/07/15) 興行収入とメディア・ヴァリュー

103(2002/07/14) 正力松太郎は巨人軍で立派に儲けている

102(2002/07/12) プロ野球は公的なものだ!

101(2002/07/11) 正力松太郎は,何を考えていたか?

200(2003/03/02) スポーツの由来 2 もう一つのハンドボール

大きなボールを手を使ってプレーするスポーツが登場するのは、弾力性のあるゴム製の中空ボールが普及する19世紀も後半を過ぎてからです。1891年、ゴム製の中空ボールのサッカーボールをつかって、米国のジェームズ・ネイスミスは、冬の室内ゲームとしてバスケット・ボールを考案します。続いて、弾力性のあるボールを使用したバレーボールがこれまた米国で1895年考案されます。つまり、大きなボールを手を使ってプレーするボールゲームが出現するのには、石油からゴムを作り出すという技術革命が必要だったのです。

また20世紀になると、近代スポーツとしてのハンドボールが生まれています。当初ハンドボールは、サッカーグラウンドを利用して足の代わりに手を使ったゲームでした。ところが、広いグラウンドで行うにもかかわらず、パスやシュートが正確で、攻守の転換が少なく、選手の動きも不活発で、室内ハンドボールの普及とともに、しだいに関心と興味がもたれなくなっていったそうです。このことから中村敏雄氏は「スポーツ・ルール学の序章」で「広いグラウンドで行われるボールゲームが攻防の転換が少なく、そのプレーも定型化して変化もスリルに乏しくなれば興味やスリルも乏しくなれば興味や関心が低下することを教示している」と述べています。

このことからも、大きなボールを手を使ってプレーするボールゲームは、プレーヤーが必然的に密集する狭いグラウンドを使用したゲームということになります。
up


199(2003/02/26) スポーツの由来 1 ハンドボールとフットボール 

近代スポーツの母国といえば、イギリスで、ボールゲームもまた多くがイギリスから生まれています。そのボールゲームをその発展経路からみれば「手とボールの関係になるもの、脚とボールとの関係になるもの、手・腕の延長としての打棒とボールとの関係のあるもの」に区分できます。これは、加藤元和氏が「歴史としてのスポーツ」で書いているものですが、とにかく、イギリスでは極一般にこう考えられているそうです。分類的にいえば、本HPの「野球って何だろう」で引用した宇佐見陽氏著の「大リーグ野球発見」に出てくる表が参考になると思います。

まず、手とボールに関係になるボールゲームですが、イギリスではこれをハンドボールと言うそうです。ここで言うハンドボールとは、近代スポーツとしてのハンドボールではなく、テニスのようにボールを掌で打ち返し合うもののことをいいます。もちろん、このハンドボールの代表はテニスで、これはフランスの掌のプレー「ジュ・ド・ポーム」に由来するとされています。掌で打ち返していたものが、しだいに打球を早くするため、グローブをはめたり、手に革ひもや糸ひもを巻いてプレーするようになり、最後は手の延長としてのラケットへと変化していきます。主に1対1で争う対戦型のゲームですが、2対2の複数でも争われます。ボールははじめ、布きれを固く巻いたものが使用されていましたが、ラケットの出現当時には、羽根や犬の柔毛を詰めた白革ボールが使われるようになったそうです。(参考文献 「歴史としてのスポーツ」加藤元和著 近代文藝社)

一方、足とボールに関係あるボールゲームのことをフットボールといいます。フットボールは多人数で争う対戦型のゲームで、ボールを相手方のゴールにたたき込むことによって勝負が決まります。サッカーもラグビーもフットボールといいますが、サッカーは手を使うことを原則禁止されていますが、ラグビーは手を使います。手を使うのにフットボールというのはおかしいといえばおかしいのですが、ここでフットボールと呼ばれるのには理由があります。ハンドボールのボールが掌サイズなのに対し、フットボールのボールは、両手でなければ扱えないほど大きなボールを使います。大勢のプレーヤーが密集してボールを取り合うので、大きなボールでなければ都合が悪かったのでしょう。この大きなボールは、革製でしたが、その中身は、牛や豚の膀胱が使われていました。この膀胱性の中空ボールは、弾力性に乏しく、ゲームは密集したプレーが中心となります。さらに、この膀胱性の中空ボールは貴重で、一般には革製のボールに布などを詰めたものが使われ、手でプレーするには重く、第一手が痛くなってしまう代物でした。結局、フットボールは、ボールをもって運ぶか蹴るとかいった、足と脚を使ったプレーが主体にならざるをえなかったからです。

up

198(2003/02/23) sports wind

進む東アジア戦略(サッカー)

2月22日、161で紹介したサッカーの日中韓三カ国によるチャンピオンズ大会は、マツダA3・チャンピオンズカップとなり、開催国出場枠の鹿島アントラーズが2勝1分けで初代王者に決まりました。Jリーグチャンピオンのジュビロ磐田は3連敗で最下位でした。Kリーグチャンピオン城南一和(韓国)が2位、Cリーグチャンピオン大連実徳(中国)が3位です。リーグでは、Jリーグが最下位という結果になりました。東アジアのサッカー界の競争の厳しさを予感させます。一方、国レベルでは、5月28日に横浜で東アジア選手権が開催されますが、その予選が香港で始まりました。香港、マカオ、台湾、モンゴル、グアムの5カ国・地域のうち一位が、本選に進みます。日本、韓国、中国はシードされており、四カ国の代表によるリーグ戦となります。日中韓三カ国はワールドカップ進出国で、日本はベスト16、韓国はベスト4ですから、世界的なレベルということになります。

アイク生原氏の志を継いだ男(野球)

大リーグのメッツで新庄の通訳をしていた岩本賢一さんが、日本に帰ってきました。アイク生原氏は、日本に戻るという志半ばで逝去しましたが、岩本さんは約束通り、生原氏の意志を継いだことになります。岩本さんは、日本ハム・ヒルマン監督専任通訳として、昨年の末、メッツの球団職員を辞め帰国したそうです。彼は、北海道旭川市の出身で「小さいときから北海道にプロ球団を作ると言って豪語」していたそうです。「球場に行くだけで本当に楽しんです」 日本ハムファイターズは、2004年から札幌に本拠地を移し、北海道日本ハムファイターズ(たぶん)になります。2月22日朝日新聞朝刊「ひと」から

企業チームをベースに(ラグビー)

2月23日ラグビー日本選手権でNECが初優勝。これを最後に、日本ラグビーは転換期に入るそうです。前日の22日ラグビー協会強化委員長宿沢広朗氏が朝日新聞のコラムに投書しています。「従来の東日本、関西、西日本の社会人リーグを統合してトップリーグを設立する。単なる国内リーグにとどめるつもりはない。将来は近隣諸国と連携し、アジア・太平洋諸国に広がるリーグを模索していく。(中略)今回は企業チームをベースに(トップリーグを)スタートさせることにした。(中略)英国のスポーツクラブがそうであるように、日本の企業スポーツもまた、歴史を背景にしたユニークな文化である。その文化を一気に破壊する必要はないはずだ。確かに企業がスポーツクラブをもつのは、そこに宣伝・広告価値を見いだすからだ。しかし、それだけではない。スポーツを通じた「社会貢献への理念」も少なからず存在している。この理念をベースに、将来、地域住民と行政が一体となったトップリーグを地域クラブ化させていくのが望ましい。「企業か、地域か」ではなく、両者が融合した新しいスタイルの創造が求められていくのではないか。私は、ラグビーを野球やサッカーと競合させるより、「差別化」させたいと考える。格闘技と球技の両面を持つ競技として国立競技場に5万人を超える観衆を集める大学スポーツにおける優位性を生かしつつ、トップリーグを成功させ、企業スポーツの意義を維持し、地域への浸透をはかっていく。「差別化」は、企業や地域の支援を受けやすいキーワードだと考える。」

スポーツの風は、どこに吹くのでしょう。

up


197(2003/02/22) 幕内と幕の内弁当とプロ野球と

相撲における「幕内」という言葉は、gooの大辞林で引けば「江戸時代、将軍の相撲上覧に際して幔幕(まんまく)の内にはいる待遇を受けた数人の優秀力士」の意味から転じて「相撲番付で、第一段目に名を連ねている前頭以上の力士」のことをいうようになったとのことで「幕の内」ともいうそうです。また、芝居で幕内というと「幕の内側、すなわち、俳優・大小道具・衣装・床山・作者など直接芝居をつくる者の総称」のことだそうです。芝居で「幕の内」というと「舞台の幕がおりている間、幕間(まくあい)」を言います。

相撲では、「幕内」も「幕の内」も同じ意味のようですが、芝居では意味が異なるようです。「幕の内弁当」の「幕の内」は、芝居の「幕の内」に由来しており、同じくgooの大辞林で引けば「芝居の幕間(まくあい)に食べた」弁当に始まるそうです。幕間に食べきれるようにという意味か、ご飯が小さな俵形に握ってあって、おかずは卵焼き・かまぼこ・焼き魚・漬物といったフルコースメニューの詰め合わせの弁当のことを幕の内弁当または単に幕の内といいます。

幕の内弁当の幕の内は、相撲の幕内とは、語源的には、直接関係ないようですが、相撲と芝居は共通性があるようです。前回、玉木正之氏の「スポーツ解体新書」の気になる点を指摘しましたが、今回はその「スポーツ解体新書」から相撲と芝居の関係を見てみたいと思います。

江戸時代、相撲興行が人気を博し、隅田川の花火や歌舞伎などと並ぶイベントとなり、力士は歌舞伎役者と同じようにスターとして称賛されました。「寺や神社の境内で相撲興行があるときは、土俵が作られ、ゴザが敷き詰められ、観客は酒を飲み、弁当を食べながら、花見のときのように、相撲を楽しんだのです。また、江戸以外の都市や田舎でも、相撲興行がさかんに行われるようになり、力士の登場する田圃の畦道を花で飾った名残として、「花道」という言葉が今も残されています。また、その場所(土俵を作った場所)は芝居興行を行う場所でもあったので、「花道」という言葉が、相撲と芝居で共有されているのです。」(玉木正之「スポーツ解体新書」NHK出版)

わが国でも、古来、スポーツビジネスとショービジネスは、共通性をもっていたということでしょうか。さらに、そこには食文化というものが絡んでいます。芝居の幕間に食べたことから生まれた幕の内弁当は、相撲の枡席には付き物になっています。つまり、食文化が共通しているわけです。

物見遊山という言葉があるように、古来、わが国には見る遊びの文化があったようです。花見、花火、芝居、相撲といった見る遊びが江戸時代さかんになりますが、庶民にとってこれらの遊びは一大イベントだったはずです。相撲興行は、江戸でも、年に二場所興行だけですし、田舎では、年に一度来るか来ないかです。花見は桜の時期だけですし、花火は夏だけです。庶民はこの一大イベントにたっぷりと時間をかけて楽しみます。このとき欠かせないのが食事です。お腹を空かして遊びでもありませんが、特別な日に食べるご馳走は欠かせないばかりかそれ自体が目的でもあります。

日本のお弁当にはこのご馳走が詰まっています。日本のお弁当にあたるものは世界にはないそうです。「知らなきゃ恥ずかしい日本文化」(白幡洋三郎 ワニブックス)によれば、中国・台湾や東南アジアでは、外食は熱い食品に限られ、駅で売られているのは蒸した饅頭か熱い麺類。お弁当も、熱い飯に熱いおかずを盛ったものはあるそうですが、冷たい飯の弁当はないそうです。インディカ米は冷めると美味しくありません。冷えた弁当には、インディカ米は適していないのです。インディカ米を使う地域では、弁当には熱源が欠かせません。これに対し、ジャポニカ米は、冷めても美味しく、そこから、おにぎりが生まれ、多種多様なお弁当に発展していったということです。

冷えても美味しいお弁当は、日本の遊びの行動様式に影響を与えています。芝居の幕と幕との間に食事がとれる幕の内弁当などはまさにその典型です。もし、幕の内弁当がインディカ米だったら、まずくてせっかくのお芝居見物も台無しになってしまいます。さもなくば、席を外して、食堂で食べるか、屋台といった熱源がある場所に買いに行くしかありません。見物しているその席でご馳走が食べられるのが、日本の見る遊びの特徴です。劇場でお弁当を食べる機会は減っていると思いますが、スポーツ興行では、お弁当は現役です。特に、プロ野球では、幕間がありますから、食事は付き物になっています。試合時間も、球場での食事を前提に決められています。

なお、欧米では、芝居やスポーツの観戦は、レストランで食事をしてからというのが主流で、開始時間は結構遅くなっています。観戦しながらの食事は、競技場内のレストランかVIPルームぐらいです。競技場内の食事は、ホットドッグやハンバーガーなどの軽食が中心です。

日本のスポーツ興行に欠かせないお弁当。そして、このお弁当は、大きな利益を生みます。大相撲にお茶屋制度があってこれがこの弁当販売の利権を独占していて、大相撲改革が進まない原因の一つになっています。

プロ野球でも、同じようなことがあります。昔、西鉄が身売りして太平洋クラブライオンズになったとき、一時、ホームに平和台球場から閉め出されそうになったそうです。議会の一部から平和台は市民スポーツの場だからプロの独占は許さないという議案が出たそうです。そして、その裏には、西鉄時代、弁当販売の利権を持っていた業者のいやがらせがあったそうです。太平洋クラブ・ライオンズになったとき、一旦、弁当の販売業者を白紙に戻したそうです。このため、なんと利権を持っていた販売業者の社長であった議員が、嫌がらせを行ったというわけです。弁当販売の利権については、多くの公営球場で多かれ少なかれ起きていることのようです。当時ライオンズの社長をしていた坂井保之さんが書いた「ニッポン・プロ野球」考という本に載っていました。

参考文献 
「スポーツ解体新書」(玉木正之 NHK出版)
「知らなきゃ恥ずかしい日本文化」(白幡洋三郎 ワニブックス)      
「「ニッポン・プロ野球」考」(坂井保之 海鳥社)
goo 大辞林

up

196(2003/02/17) 「スポーツ解体新書」の気になる点

玉木正之さんの「スポーツ解体新書」を読んで、気になる点が3点ほどあります。

その1、「サンフレッチェ広島は、地元のバレーボールVリーグチーム(JT)やプロ野球の広島カープと合同して「トップス広島」という名称で新たなスポーツ活動を展開しようとしています」。私の知る限りでは、トップス広島にはカープは含まれていないはずですが。ネットで調べても出てきません。ネットでも分からない、玉木さんだから知っている情報なのでしょうか。
http://www.sanfrecce.co.jp/tops/

その2、「シアトルのセーフィコ・スタジアムは、保険会社のセーフィコ社が建設したもので、そのためにセーフィコ社の名前がつけられています」。名称がまず、セーフィコ・フィールドです。それから、セーフィコ社は、命名権を4000万ドルで買ったのだと思いますが。違うのでしょうか。http://www.tbs.co.jp/b-park/web03-03.html

その3、MLBの世界戦略として「中南米地域をAAAクラス、アジア地域をAAクラス、ヨーロッパ地域をAクラスと位置づけ」。これはタック川本氏の受け売りのような気がしますが?メジャーが公式に認めているのでしょうか?川本氏でも「計画を立てるとする」と仮定の話としているものです。

その1〜その3については、私が間違っているかも知れません。「スポーツ解体新書」について、本人のコメントの中で、本人曰く「誰もが「無知」なまま、堂々と「意見」を開陳する。」

私が無知なのでしょう。
up


195(2003/02/16) スポーツ知ったかぶり ハリー・ライトはカートライトに会ったのか?

ハリー・ライトは、ご存じ、プロ野球の父で1869年シンシナティ・レッドストッキングズという世界初のプロ野球チームを作った人です。かたや、アレグザンダー・カートライトは、野球の父で、1845年野球というゲームのルールを作った人です。

ハリー・ライトは1835年生まれで、野球を始める前はクリケットのプロ選手だったそうです。ということは、彼がレッドストッキングズを作ったのは、34歳のとき。監督兼選手だったから、ちょうどいい年齢でしょう。ところで、ハリー・ライトが野球を始めたのは、カートライトの作ったニッカーボッカーズだったそうです。そしてここからが問題です。

ベースボールの歴史に詳しい佐山和夫氏は「ベースボールと日本野球」で次のように書いています。「1848年、ハリーはニッカーボッカーズのメンバーに迎えられた」。1848年といえば、13歳です。一方、カートライトは1849年、フォーティーナイナーズの一員としてニューヨークを去っています。

※フォーティーナイナーズ:1848年カリフォルニアで金鉱が発見され、翌1849年、多くの人たちが西海岸を目指しました。世にいうゴールドラッシュの始まりです。現在、サンフランシスコにあるNFLのチームのニックネームの由来にもなっています。

ハリー・ライトが1848年に、ニッカーボッカーズに入ったとすると、ライトとカートライトは一緒に1年間だけですがプレーしたことになります。でも、ハリー・ライトは13歳ですよ。それも、ニッカーボッカーズに入る前は、クリケット選手として名を馳せていたのにです。

もう一つ、佐伯泰樹氏は「ベースボール創世記」で「(18)58年に、その後のベースボールの方向性を左右する重要な人物がニッカーボッカーズに加入している。英国シェフィールド出身のハリー・ライトである」と書いています。1858年であればハリー・ライトの年齢は23歳、立派な青年ですね。もちろん、カートライトとはプレーしていないはずです。

佐山氏の48年説と佐伯氏の58年説、どちらが正しいのでしょうか。年齢から見れば佐伯氏の58年説が合っていると思うのですが。それとも、どちらとも正しいのか。真相はいかに。

up


194(2003/02/15) おらが街、おらがチーム

地元意識。地元意識ってあるのかな?自分の住んでいるところの自慢できる点を上げられるかな。人に勧められるところがあるかな。僕はみなとみらいを自転車で走るのが好きだ。気持ちがいい。

堺屋太一さんの本を読んで僕はショックだった。僕は平凡であること。普通であることでいいと思っていた。でもそれは作られたものだった。単純に言えば一億総中流化・平等化ということだけれども、言ってみれ日本全国の画一化だった。

9.11の同時多発テロで、世界が縮み上がり、ハワイの観光客も激減した。これに対し、ハワイ州は直ちに観光キャンペーンを行っている。ニューヨークもそうだ。ニューヨークも結構な観光都市だから。

松井のニューヨークでの入団会見の席にニューヨーク市長も顔を出し、しっかりとニューヨークの宣伝をしていた。松井のヤンキース入団で、日本人や日系人観光客が押し寄せることを期待しているのであろう。

人を惹きつけたいと思うなら、何かそこにしかないものでなければ、と思う。戯れに僕はそう思う。

../../www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/4031/toshi1.html 

up


193(2003/02/13) スポーツ、知ったかぶり おらがチームを応援する2 

マーティー・キーナート氏は、自信のコラムで、去年、横浜ベイスターズが地元開幕6連戦でプロモーションを行ったとき、相手チーム用のプレゼントも配ったことに対し、次のようにコラムで述べています。

「私は新聞でこのニュースを読んだ瞬間に、2002年のベイスターズの先行きを心配した。どこの世界に相手チームのプロモーションをしてあげるチームがいるだろう。6日間計4万8000人のファンがみんなジャイアンツ用が欲しいと言ったり、半分はタイガース用、もう半分はジャイアンツ用を選んだりしたら、一体どうなるのか。」
「スーパーへ行けば、よく無料のサービスをやっている。ビールやワイン、ソーセージ、ハム、チーズとクラッカーなど何でもある。でも、競争相手(たいてい険悪な関係のはずだ)の商品を無料で配るなんて聞いたことがない。」
http://journal.msn.co.jp/articles/nartist2.asp?w=216726

ところが「エスキモーに氷を売る」「エスキモーが氷を買うとき」の著者ジョン・スポールストラ氏は、ちょっと考えが違うようです。NBAのお荷物球団ニュージャージー・ネッツのマーケティングを任されたジョン・スポールストラ氏は、常識破りのマーケティングを行ったのです。ネッツは弱く、観客を呼べるスタープレーヤーもいませんでした。また、地元のニュージャージーは、ニューヨークの衛星都市圏にあり、地域としてのアイデンティティに欠けていました、つまり、ニュージャージーの住民は、ネッツには「おらがチーム」という意識がなかったのです。(これは、まさに横浜ベイスターズのおかれている状況と同じです。)

そこで、スポールストラが行ったのは、地元に「おらがチーム=ネッツ」を売り込むのではなく、ネッツの対戦相手を売り込んだのです。ニュージャージーにも、ネッツは見たくなくても、マジック・ジョンソン、マイケル・ジョーダンといったスーパースターを見たいと思っている人は多い。それもわざわざ、ニューヨークにまで足を運ぶ必要はない。ニュージャージーで見られる。

具体的には、マジック・ジョンソン、マイケル・ジョーダンといったスーパースターのいる対戦チームのチケットまとめたパッケージを作り、売り出したのです。これをきっかけにネッツの選手の顔と名前だけでも覚えてもらおうというものでした。また、チケットを大きなサイズにして、表面に選手のプレーしている写真をカラーで載せたそうですが、写真はネッツの選手だけではなく相手チームの選手も載せるというものでした。チケットの完売のなかったネッツは、このスーパースターのチケットパッケージから完売がでるようになり、売り上げを伸ばしていきました。

スポールストラ氏は、プロスポーツを「おらがチームを応援することが基本中の基本」とするのではなく、エンターテイメントとしてとらえ、観客をいかに楽しませるかということに集中しています。このため、ネッツのお粗末なプレーではなく相手チームのスーパースターが織りなす魔法のプレーを売り込みに使うといった「おらがチーム」といった固定観念にとらわれない常識破りのマーケティングができたのだと思います。

up


192(2003/02/12) スポーツ、知ったかぶり  マイナーリーグ

高校や大学で呼び声が高かった選手が、ドラフトされてからメジャーリーガーになるまで-平均5年4ヶ月かかるとさされている。それだけの期間、マイナーで修行を積む。ウィスキーやワインと同様、熟成し価値を得るには、長い期間が必要なのだ。」
「メジャーリーガーとしての地位を築いた人間は、マイナーリーグでの厳しい教育を通して、卓越したベースボール技術を身につけると同時に、様々な経験を通して人間性も磨かれる。」

以上は、タック川本氏が「新庄が4番を打った理由」で述べていたものです。確かにメジャーリーグに上がるには長い期間が必要であり、新人が、マイナーリーグを経ずにメジャーリーガーになったケースは僅かしかいないそうです。このマイナーリーグの下積み期間を野球技術を磨くだけでなく、人間教育の場であるとしています。

一方、日本のプロ野球では、二軍は選手育成機関と言うよりも一軍選手の調整機関となっています。新人選手は即戦力として期待され、大学や社会人野球が選手の育成機関として機能しています。川本氏は、同書で「本物を育てるには熟成期間が必要」と育成機関としてのマイナーリーグの重要性を説いています。マイナーリーグがあるメジャーリーグは本物だといういうことは、マイナーリーグのない日本は本物ではないということでしょうか。

ところが、アメリカ4大スポーツの中でもマイナーリーグがあるのは、ベースボールだけでした。アイスホッケーは分かりませんが、NBAとNFLには最近までマイナーリーグは存在しませんでした。両者がマイナー組織を作ったのはごく最近の話です。ということは、日本のプロ野球だけでなく、アメリカンフットボールのNFLも、バスケットボールのNBAも本物ではないということになってしまいます。

アメリカンフットボールもバスケットボールもカレッジスポーツが盛んで、このカレッジスポーツがマイナーリーグの役割を果たしています。いわば、日本のプロ野球と同じ環境にあるといえます。日本の野球とアメリカのフットボールとバスケットボールは、いずれも学生スポーツとして生まれ発展してきた競技で、プロ組織のほうが後発組となります。このため、先に確立された学生スポーツが人気と権威を持っており、その上に乗っかっているのがプロ組織ということになります。

これに対し、ベースボールと似た環境にあるのが大相撲です。ベースボールも大相撲も、初めからプロスポーツとして生まれ発展してきました。学生スポーツを初めとしたアマチュア組織には人気も権威もありません。逆にプロ組織が自前で選手を育成しなければならなかったのです。そこで生まれたのが自前の育成組織です。ベースボールでは、メジャーに上がるためにはルーキーリーグに始まり、A・AA・AAAといったピラミッド組織があり、大相撲には幕内に上がるため序の口、序二段、三段目、幕下、十両といった階段を上らなければなりません。

メジャー・リーグは自前で育成組織をもたざるを得なかったのに対し、日本のプロ野球には、必要なかったともいえます。
北米ホッケーリーグのマイナー組織
NFLヨーロッパ
NBAのマイナー組織
up


191(2003/02/08) スポーツ、知ったかぶり おらがチームを応援する

玉木正之氏は「スポーツ解体新書」で2001年ニューヨーク・ヤンキース対アリゾナ・ダイヤモンドバックスのワールドシリーズを「手に汗握る興奮の連続」と賞賛しますが、そのときカリフォルニア州出身の友人の話として「このワールドシリーズを、ニューヨークとアリゾナ以外の住人で最も騒いでいたのは日本人かも知れない。だって、ロサンゼルスの住人はドジャースがプレイオフに出場できないとわかったときから、レイカーズ(バスケットボール・チーム)のほうに注目しているし、シカゴの住人はブルズ(同)やベアーズ(アメリカンフットボール・チーム)の応援に移ってるだろうし・・・・」。この後、玉木氏は、MLBツインズより人気のある独立リーグ、セントポール・セインツの話の後、「スポーツとは、「おらがチーム」を応援し、「おらがクラブ」で楽しむことが、基本中の基本といえるのです。」と述べています。

実際、このときのワールドシリーズの平均視聴率は、15%しか稼げませんでした。2000年のヤンキース対メッツのニューヨーク決戦は12%、2002年のジャイアンツ対エンゼルスのカリフォルニア決戦は11%であり、東西対決となった2001年のワールドシリーズは、最近のワールドシリーズの中では盛り上がったほうです。スポーツファンは、「おらがチーム」でなければ関心がないのでしょうか。

NFL(アメリカンフットボール・リーグ)におけるスーパーボウルは、「テレビの視聴率は軒並み40%を越え、視聴者数では約1億3千万人以上と、国民の2人に1人が生で観戦していることになる。アメリカでの歴代視聴率トップ15の半分以上(8)をスーパーボウルが占め」るほどの人気です。ワールドシリーズが、出場チームの本拠地で行われるのに対し、スーパーボウルは、出場チームの本拠地と関係なくあらかじめ決められた都市で開催されます。つまり、NFLのファンは、「おらがチーム」と関係なく、スーパーボウルを見て楽しむのです。http://www.nfljapan.co.jp/nfl/spbowl.html

NFLのファンは、NFL自体を楽しんでいます。これは、ナショナル・パスタイムであるベースボールに対抗した長年にわたるNFLのブランド戦略によるものであり、カリフォルニア州出身の友人の話というのは、MLBのブランド戦略の失敗を述べているともいえます。確かに「スポーツとは、「おらがチーム」を応援し、「おらがクラブ」で楽しむことが、基本中の基本といえるのです」が、スポーツ・ビジネスとしては併せて、ナショナル・ブランドの構築も必要などのだと思います。

up


190(2003/02/07) スポーツ、知ったかぶり サッカー場と陸上競技場
赤字部追加(2003/03/15)

2002年ワールドカップの決勝戦について一部の人が、横浜国際総合競技場ではなく、埼玉スタジアムで行うべきだ主張していました。横浜国際総合競技場が、陸上競技場兼用なのに対し、埼玉スタジアムがサッカー専用競技場であり、ワールドカップというサッカーの祭典には、埼玉スタジアムがふさわしいというわけです。確かに、横浜総合競技場は、サッカー場としては陸上の400メートルトラックがあるため、選手との距離が遠くなってしまっています。ところが、収容人員は、埼玉スタジアムは6万人台なのに対し、横浜国際総合競技場は7万人台であったため、FIFAは、商売を優先して収容人員が多い横浜総合競技場を選んだのだと、FIFAの金儲け体質を非難する人もいました。

ところが、陸上の400メートルトラックは、サッカー場で生まれたというではありませんか。もともと、徒競走はオリンピアの時代から直線コースで行われ、19世紀になっても短距離は直線コース、長距離はロードレースということで、円周コースという発想はなかったそうです。400メートルトラックという円周コースが出来たのは、サッカー選手が、トレーニングのためサッカー場の周囲を走っているうちに、芝がはげて、自然にコースが出来たのが始まりだそうです。つまり、400メートルトラックは、サッカー場で生まれたのであり、陸上競技兼サッカー場というのは別におかしくない、むしろ自然なことだということです。よくよく考えれば、陸上競技場の中央でサッカーがやれるというのも不思議な話でした。でも、サッカー場から生まれたのならそれは当然なことでしたね。埼玉スタジアムでの決勝戦を主張していた人たちはこのことを知っていたのでしょうか。

なお、「陸上の400メートルトラックは、サッカー場で生まれた」という話の出典は加藤元和著「ロマンとしてのスポーツ」です。

現在、イギリスのサッカー場はサッカー専用になっており、グラウンド(ピッチ)がせまり非常に見やすい競技場として評判ですが、これは第一次世界大戦直後の観客急増に対応するため円周のトラック部分に観客席を増設したためです。

参考文献 「欧州サッカーを極める」後藤健生著 青春出版社

up


189(2003/02/06) プレーオフ、あれこれ
修正・削除(2003/03/15)

そもそもプレーオフというのは優勝決定戦であり、リーグ戦で優勝が決まらないときに特別に行われるものです。この例外的な仕組みを、興行上人為的に、常態化した仕組みにしたのが、ポスト・シーズンです。決勝リーグという方法もあると思いますが、負けると後がないトーナメント形式のほうが盛り上がるし、短期間に集中して決着をつけられ決定戦にふさわしいということもできると思います。FIFAワールドカップやUEFAチャンピオンズ・リーグも、グループ・リーグの後は決勝トーナメントという形をとっています。リーグ戦とトーナメントという二つの異なった方式、自ずとその戦い方も異なってくるでしょう。この二つの異なった方式を勝ち抜いたチームが真の王者ということができるのかもしれません。

また、162試合戦い抜いたレギュラー・シーズンがあるからポスト・シーズンの価値が高まるのだと思います。162試合のレギュラー・シーズンは、ゲーム上もビジネス上も評価するべきです。162試合を戦い抜くことがいかに大変か、また、リーグ戦がなければ球団は成り立たないことを。パ・リーグのプレーオフ案では、
135試合戦い抜いた勝率1位の球団の135試合は、プレーオフの第一出場権を獲得するだけのものです。勝率1位が確定したそのとき球団はビール掛をするのでしょうか。彼らは讃えられないのでしょうか。また、せっかく1位になったのにチャンピオンの称号を与えないのは、ビジネス上ももったいないことです。これでは、肝心のリーグ戦が却って盛り上がらなくなってしまうのはと思います。

ビジネス上、ポスト・シーズンというのは球団にとってボーナスみたいなものですが、このボーナスの球団経営上比重が高いと、プレーオフに進出できなかったとき問題になってきます。即ち、ボーナス目当てにローンを組んで買い物したはいいが、当てにしていたボーナスがもらえず、破産という憂き目に会うかもしれないからです。プレーオフに進出しても、トーナメント方式ですから、負けたらそこでおしまいです。ワールドチャンピオンの収入を当て込み、一流選手を大金で次々と獲得したのに、プレーオフ一回戦で負けてしまったらそれまでです。

※バイエルン・ミュンヘンの話は、bP87と重複のため削除(2003/03/15)
up


188(2003/02/03)  リーグ戦とトーナメント
赤字部追加(2003/03/15) 

スポーツ大会の対戦方式には,主に,総当たり戦であるリーグ戦方式と勝ち抜き戦となるトーナメント方式(正式にはノックアウト方式)の二つがあります。リーグ戦は,実力差がハッキリでますが,試合数が多く,全日程を終了するまでに期間もかかります。消化試合もあり,出場チーム数も限界があります。これに対し,トーナメント方式は出場チームが多くても,少ない試合数で,短期間で決着がつけることができます,ただし,運に左右される可能性も高くなります。

実力のリーグ戦か,運のトーナメントかといった趣がありますが,トーナメントの方が負けたら終わりですから1試合ごとの緊迫感が高く,リーグ戦は負けても挽回の可能性もあり落ち着いて試合を進めることができます。これらの特徴を生かし,スポーツイベントは運営されます。プロ野球では,興行回数の確保という点から,リーグ戦が採用され,高校野球では参加校が多く,期間も限られているためトーナメント戦が採用されています。

サッカーでもプロはリーグ戦が基本ですが,リーグ戦は,チーム数が限られているためクラス別に分けられ,全チームが参加するカップ戦にはトーナメント方式が採用されています。ここで,サッカーにおけるリーグ戦とカップ戦の話を少しします。サッカーにおける世界初の全国組織は,イングランドのアマチュア組織であるフットボール協会(FA)で,このFAが主催した全国大会がトーナメント形式のFAカップです。その後生まれたプロチームも最初はFAカップだけでしたが,これではプロとして運営していけないためフットボール・リーグ(FL)を結成し,リーグ戦を行うようになります。

プロ・サッカーにおいても,リーグ戦が基本となり,リーグ戦だけでは試合数が少ないため,それを補完するものとしてカップ戦があります。原則としてリーグ戦とカップ戦は別物です。UEFAチャンピオンズ・リーグやFIFAワールドカップでは,リーグ戦とトーナメント戦が併用されます。第一段階では,グループ別ですが実力差をじっくり見るため,リーグ戦を行います。参加チームのお披露目の役割もあります。優勝決定方式は,劇的な演出のため緊迫感がでるトーナメント方式が採用されています。

MLBやNFLなどのアメリカ4大スポーツでは,レギュラー・シーズンは興行優先のリーグ戦が採用され,優勝決定戦(プレーオフ)であるポスト・シーズンは勝敗重視でトーナメント方式が採用されています。

up


187(2003/02/02) チャンピオンズ・リーグ 2
赤字部修正・追加(2003/03/15)

チャンピオンズ・リーグのシーズンが,各国リーグのシーズンと重複することとなり,チャンピオンズ・リーグ出場クラブは,一シーズンに2つのリーグ戦を戦い抜くことになりました。この結果,試合日程が過密になり,選手の疲労が問題になってきました。2002年の日韓共同開催のワールドカップにおけるヨーロッパ勢の不振の原因のひとつと考えられています。このため,ビッグ・クラブの中には,一クラブ2チーム体制(ツー・プラトーン・システム)を敷くところもでてきています。これがまた,選手年俸の高騰に拍車をかけています。

そもそも,チャンピオンズ・リーグが改組されたのは,メディア・パワーを背景とした全欧版プレミア・リーグともいえるスーパー・リーグ構想に,UEFAが対抗したものです。スーパー・リーグでは,一部のビッグ・クラブだけが,メディア・マネーを独占し繁栄することになり,逆にUEFAや中小クラブ・地方クラブは破綻の危機に着面することになります。このため,UEFAは,ヨーロッパ・クラブ選手権であるチャンピオンズ・リーグに,ビッグ・クラブが多く出場できるように,有力リーグの上位チームにも門戸を広げ,ビッグ・クラブとの利害調整を図ることにしたものです。

チャンピオンズ・リーグは,アメリカ4大スポーツにおけるポスト・シーズンにあたると言いましたが,ポスト・シーズンがシーズンの最後を飾るイベントなのに対し,チャンピオンズ・リーグは,レギュラー・シーズンにあたる各国の国内リーグ以上の規模で行われ,チャンピオンズ・リーグの上位進出は,数十億円の利益をクラブにもたらすことになります。チャンピオンズ・リーグはリーグとは言っても,実際には総当たり戦ではなく,一次・二次リーグ(※1)・決勝トーナメントというノックアウト式の勝ち抜き戦で,途中で負けると,それ以降に利益を享受することにできなくなります。チャンピオンズ・リーグの利益を当てにクラブ経営を行っていると,それがダメになったとき,大変な目にあいます。
昨季の欧州チャンピオン,バイヘルン・ミュンヘンが,今季一次リーグで敗退してしまい,目算が狂い、財政ピンチという記事が新聞に出ていました。特に深刻なのがイタリアで、多くのクラブがチャンピオンズ・リーグの収入を目当てに有力選手の獲得に走った結果、倒産の危機に立たされています

※1 2003-2004シーズンから、過密日程を避けるため、二次リーグを廃止し、ベスト16以降は決勝トーナメントとなることが決まっている。
up


186(2003/02/01) チャンピオンズ・リーグ 1
赤字部追加(2003/03/15)

UEFA(欧州)チャンピオンズ・リーグは,ヨーロッパ・サッカー連盟が主催するヨーロッパ・クラブ選手権です。ヨーロッパ三大カップの一つ,チャンピオンズ・カップとして長らく親しまれてきましたが,1999−2000年のシーズンに改組され現在に至っています。従来のチャンピオンズ・カップは,各国のリーグ・チャンピオンと前年度チャンピオンがホームアンドアウェイのトーナメント(ノックアウト形式)で争うものでしたが,チャンピオンズ・リーグは,プレミア・リーグ,セリエA,ブンデス・リーガ,リーガ・エスパニョーラなど有力リーグの上位2チームなどによる16チームと予選から勝ち上がった16チーム,計32チームにより争われます。まず、一次リーグと二次リーグは、各4チームによるホームアンドアウェイのグループリーグ方式で、ベスト8からは決勝トーナメントとなります。また、予選は,1回戦から3回戦まで有り,中央アジアのカザフスタンや地中海の孤島マルタのリーグ・チャンピオンも参加します。有力リーグからは,3回戦から3位・4位のチームも参加します。チャンピオンズ・リーグは,予選から含めれば71チーム,379試合,9ヶ月間に及ぶ一大イベントとなっています。

チャンピオンズ・リーグは,アメリカの4大スポーツのポスト・シーズンにあたり,各国の国内リーグがレギュラー・シーズンということになります。違いは,チャンピオンズ・リーグと各国のリーグが1シーズンずれ,しかも平行して行われることです。いま,行われている2002−2003年のチャンピオンズ・リーグの出場チームは,2001−2002年の各国リーグの優勝チームや上位チームということになり,現在行われている2002−2003年の各国リーグは,2003−2004年のチャンピオンズ・リーグの出場権を争っていることになります。

up


185(2003/01/29) プレミア・リーグ

プレミア・リーグは,イングランドのプロ組織フットボール・リーグ(FL)から独立し,FLの上部組織であるフットボール・アソシエーション(FA)の直轄組織としてできたイングランド・プロサッカーのトップ・リーグです。

プレミア・リーグの成立にはいろいろな理由がありますが,その中に,一部の有力クラブが自分たちの権益を独占するため,FLから独立したというものがあります。もちろん背景にはメディア・マネーがあることは言うまでもありません。このため,プレミア・リーグはFLから独立した放映権を持ち,巨額の放映権料をプレミア・リーグの加盟クラブだけで独占することが可能となりました。プレミア・リーグは,FLの中小クラブにその放映権料の分配(シェアリング)をしなくて済むわけです。このことは,逆に言えば,FLのクラブは放映権の分け前をもらえないことを意味しています。

プレミア・リーグはメディア王マードックのBスカイBのキラー・コンテンツとして巨額の放映権料で契約していますが,FLはその恩恵を受けることはできませんでした。そこで,FLは別個に地上波デジタルのITVデジタル社と契約を結びますが,ITVデジタル社は契約者が伸びず,破綻してしまいます。これは,トップ・リーグと下部リーグとのメディア・ヴァリューの差がいかに大きいかを示しています。

FLの中小クラブがビッグクラブの仲間入りをするためには,プレミア・リーグに昇格し,BスカイBからの放映権料の分け前をもらう必要があります。そのためには優秀な選手を借金をしてでも揃える必要があります。プレミア・リーグ昇格のためのギャンブルです。ギャンブルに失敗したら,もちろん,倒産のリスクが待っています。

up


184(2003/01/27) ギャンブル興行

MLBがメジャーを頂点にAAA・AA・A・ルーキーというヒエラルキー型リーグ構成になっているように,ヨーロッパのサッカー・リーグも,欧州チャンピオンズ・リーグを頂点に,各国リーグが1部から4部などというように階層的なヒエラルキーを形成しています。違いは,MLBが,球団のランクが固定され昇格・降格がないのに対し,ヨーロッパ・サッカーは,球団(クラブ)がヒエラルキーの階層間を昇格や降格によって異動する点です。この点でいえば,プロ球団にとっては,アメリカの方が身分社会であり,ヨーロッパの方が自由社会といえると思います。

プロ球団にとってのヨーロッパ・サッカーの自由社会が,球団経営の落とし穴となります。90年代ヨーロッパでは衛星放送による有料放送が普及し,サッカー放映権が高騰し,巨額の富がサッカー界にもたらされるようになりました。ただし,その恩恵を受けたのはイングランドのプレミア・リーグ,イタリアのセリエA,ドイツのブンデス・リーガ,スペインのリーガ・エスパニョーラといった主要国のトップ・リーグとビッグ・クラブだけです。

下位リーグの球団(クラブ)でも,実力があれば,トップ・リーグに参戦できるのがヨーロッパ・サッカー界の自由性の特徴です。金持ちクラブになるためには,トップ・リーグに昇格し,放映権料の分け前を授かるほかありません。トップ・リーグに昇格するためには,強くなければなりません。強くなるためには優秀な選手をかき集めなければなりません。優秀な選手を集めるのにはお金がかかります。高額な人件費は球団経営を圧迫します。

トップ・リーグに昇格すれば,放映権の恩恵が受けられ,投資した人件費を回収するだけでなく巨額のリターン(利益)が期待されます。逆に,トップ・リーグに昇格できなかった場合,投資した巨額の人件費を回収することが困難となり,倒産の危険性さえ生まれることになります。

up


183(2003/01/25) 1年経ちました。

ショートコラム「wind」を始めて1年が立ちました。1年でbP82ですから、ほぼ2日に1回のペースになります。我ながらよく続いたと思います。ネタというものは不思議なもので、尽きるようで尽きない、かと思っているとネタがありすぎて逆に書くのがいやになってしまうことがあります。では、気を引き締めて今日の話題へと行きたいと思います。

プロ・スポーツの基本はリーグ戦だということはこのwindやほかのところでも何度も話しているとおりです。リーグ戦はトーナメントとは異なり、負けても試合が保証され、球団の安定した収入の確保・選手の確保が可能となり、近代的な企業経営が可能となります。負けたら次の試合がなくなり、収入の途も閉ざされるトーナメント戦では、継続的な球団経営は出来ませんし、そもそも優秀な選手の確保も困難です。逆に、優秀な選手を獲得しなければトーナメントを勝ち抜いて行くことは困難です。

優秀な選手を多く集めなければトーナメントを勝ち抜いていくことは出来ません。優秀な選手を集めるにはお金がかかります。優秀な選手を集めても負ける時があります。ところがトーナメント戦では、負けたら次からの試合がなくなるわけですから、球団の収入もなくなることになり、選手にお金が支払えなくなってしまい、倒産ということになってしまいます。稼ぐためには勝ち抜いて行かなくてはならない。勝ち抜いていくためには優秀な選手を多く集めなければならない。優秀な選手を集めるには多額のお金が必要です。しかし、負けたらそのお金を返すことができなくなります。トーナメント戦では最後に勝ち抜くチームは決勝に進出した2チームだけですから、プロ球団として経営が成り立つのはごくわずかということになってしまい、トーナメントの存続さえ怪しくなってしまいます。

プロスポーツの世界では、1企業(1球団)では存在できず、必ず同業者が必要になります。その同業者同士が集まってリーグを組み、総当たりで競い合うのがリーグ戦です。プロスポーツ、中でもボールゲームの世界では、負けたら倒産というギャンブル興行は考えられません。負けても興行が成り立つものでなければ、プロスポーツ興行は成り立ちません。ところがこのギャンブル興行がヨーロッパ・サッカーでは起きる危険性を持っています。

up

182(2003/01/21) プレーオフ 4 ワイルド・カード

ディヴィジョン制の欠点の一つに,ディヴィジョンで勝率1位となっても,他のディヴィジョンの2位の球団より勝率が低い場合があることがあげられます。場合によっては5割を割っても優勝できる場合も考えられます。逆に,同一ディヴィジョンに強い球団があると他球団は最初から優勝する機会を奪われたり,他ディヴィジョンの優勝球団より高勝率であっても優勝できないという場合も考えられます。ディヴィジョンの優勝球団同士によるプレーオフではこのディヴィジョン制の欠点がもろに出てしまいます。

そこで考えられたのがワイルド・カードです。ディヴィジョンの2位同士で勝率が高い方の球団に対しプレーオフに進出する権利を与えるものがワイルド・カードです。ワイルド・カードによってディヴィジョン制の欠点である優勝球団より強い2位球団のケースが救済されることになり,なおかつ,2位球団同士によるワイルド・カード獲得競争というディヴィジョン間競争・リーグ全体の競争も生まれることになります。

これにチャレンジ方式のプレーオフを行えば,ディヴィジョン1位同士によるプレーオフ第一順位争いが生まれ,これもまた,ディヴィジョン間競争・リーグ全体の競争となり,競争の多元化が図られることになります。

up


181(2003/01/20) プレーオフ 3 ディヴィジョン制

プレーオフについて補足します。プレーオフをgooの辞書で引くと「引き分けや同点のときなどの、再試合・延長戦。同点者・同率者間の優勝決定戦。主にゴルフ・サッカーなどでいう」(大辞林第二版)とでてきます。プレーオフとは,勝者が決まらない時に行う決定戦です。

プロ野球で言えば,プレーオフとは,リーグ戦で優勝が決着しない場合に行う優勝決定戦のことです。逆に言えば,プレーオフがあるときは,リーグ戦で優勝者が決まらないはずですから,リーグ戦は最後まで盛り上がるはずですし,当然消化試合は減るはずです。そして,優勝決定戦であるプレーオフはなおさら盛り上がるはずです。この状況を人為的に作り出そうというのがポスト・シーズンとしてのプレーオフです。日本シリーズやワールドシリーズもまたプレーオフといえると思います。リーグ戦で決まるのはリーグ・チャンピオンだけです。リーグ優勝者間で勝者を決定するプレーオフが,日本シリーズであり,ワールドシリーズということになります。

ところが,このプレーオフの前提である,リーグ戦で優勝者が決まらないという条件が,パ・リーグのプレーオフ案では,欠けています。パ・リーグのプレーオフ案では,リーグ戦の1位から3位の球団がプレーオフで優勝を争うとしていますが,リーグ戦の勝率1位というのは通常,優勝者のはずです。優勝者が決まっているのに,優勝決定戦を行うということになり論理的な矛盾を起こしています。その論理的な矛盾を解決できるのが,ディヴィジョン制です。

up


180(2003/01/18) プレーオフ 2 代替案

じゃあ,プレーオフはどうしたらいいのかということになります。

競争を多元化し,勝者を複数作り,勝者の明確な曖昧化を行います。具体的には,ディヴィジョン制(東西地区制),ワイルドカード,チャレンジ型プレーオフを併用します。リーグを東西二つのディヴィジョン(地区)に分けます。東地区が札幌・埼玉・千葉,西地区が大阪,神戸,福岡。一つの地区で3球団しかないのがネックですが仕方ありません。同地区と他地区とでは試合数を変えます。これにより,リーグ全体の勝率1位の意味を無意味化します。

東西両地区の勝率1位の球団が,地区チャンピオンになります。地区チャンピオンと同時に,プレーオフ進出の権利を得ます。ここで,単に東西対決によるプレーオフを導入するのではなく,今回パ・リーグ案で採用しようとしているチャレンジ制を導入します。チャレンジ制は下位のチームが,上位のチームに挑戦する形で,勝者が勝ち上がっていくシステムです。

パ・リーグ案では3位が2位の球団に挑戦し,その勝者が1位の球団に挑戦して,その勝者がリーグ・チャンピオンになるというものでしたが,これではリーグ戦の勝率1位が評価されないことになります。チャレンジ制は,オリンピックや世界選手権などで,予選リーグと併用する形で行われることが多いのですが,プロ野球百数十試合を戦うレギュラーシーズンを予選リーグにしてしまうのは酷というものです。

レギュラーシーズンの勝者はチャンピオンとして評価できるようにします。ただし,ディヴィジョン制を採用することにより,レギュラーシーズンのチャンピオンを二つ作り,リーグ全体のチャンピオンは作らないし,わからないようにします。

さて,チャレンジ制ですが,プレーオフに進出できる球団数は,リーグ全体でも6球団しかないので3球団がやはり限度ではないでしょうか。そこで,ワイルドカードを採用し,東西両地区の2位球団のうち勝率が高い球団をワイルドカードとしてプレーオフ進出権を獲得することとします。まず,ワイルドカードの球団が,地区チャンピオンで勝率が低いほうの球団に挑戦します。そして,この勝者が,地区チャンピオンで勝率の高いほうの球団と対戦し,リーグ・チャンピオンを決定します。

これにより,リーグ戦は地区チャンピオンを競うとともに,勝率1同士,2位同士地区間で争うことになり,競争が多元化し,消化試合が減ると思います。さらに,リーグ戦での勝者も地区チャンピオンとして評価されます。

up


179(2003/01/17) プレーオフ 1

パシフィック・リーグが2004年からプレーオフ制の実施を検討しています。これは,パ・リーグの観客動員数が1000万人を割ったこと,相次ぐスター選手のセ・リーグやメジャーへの流失などパ・リーグの危機意識が「メリット、デメリットはもちろんある。しかし、この際やろうという気持ちが強かった」(小池パ・リーグ会長)ということでまとまったものです。

具体案は,17日の日刊スポーツ記事によれば「有力となったのが、オリックスの案だ。まずシーズンの2位と3位で勝者を決め、1位とリーグ優勝を争う。5試合制で先に3勝した方が勝ち。上位チームは初戦から3戦までの主催権を得て、営業的にアドバンテージを得る。シーズン試合数は今年までの140から10減の130を予定、仮に3位に同率チームが並んだ場合は1試合のプレーオフを行うことにしている。」ということです。

またそのほか「過去10年間行われた2シーズン制や、シーズン後半にリーグを東西2地区に分け、地区トップが争う案なども出たが、賛成意見は少なかった。2シーズン制について、小池会長は『メリットもデメリットもあったが、2度消化試合ができるのはマイナス』と話した。」

プロ・スポーツの基本的な興行方式であるリーグ戦,このリーグ戦には終盤の消化試合という欠点があります。優勝争いから見放されたチームは早々と夏場から消化試合になり,優勝が決まってからは消化試合のみとなりリーグ戦の体を成さなくなります。終盤のこの欠点を補うため各リーグではいろいろな工夫をしています。メジャー・リーグで言えばワールドシリーズ,ディヴィジョン制,プレーオフ,ワイルドカード,交流戦といった具合です。

日本では,リーグ間の優勝決定戦である日本シリーズのみで,リーグ戦の終盤における盛り上がりに欠けています。メジャー・リーグでは,各ディヴィジョンで優勝争いが行われていると同時にプレーオフ進出を懸けたワイルド・カード獲得競争も行われ,盛り上がりを見せます。盛り上がったリーグ戦(レギュラー・シーズン)に引き続いて,ポストシーズンが始まりワールドシリーズへと一気に進んでいきます。メジャー・リーグの場合,ワールドシリーズの時期は,ナンバーワンスポーツになったNFLの開幕と競合するため,必死なのです。

ワールドシリーズは,世界一強いチームを決めるシリーズのはずなのですが,2002年のワールドシリーズは,ディヴィジョン2位のワイルドカード・チーム同士が争うという結果になりました。それではディヴィジョン・チャンピオンとワールドチャンピオンはどちらが強いのか,という問題になります。こういうデメリットも承知の上で,プロフェッショナルの興行は進められます。

ここで注意して頂きたいのは,レギュラー・シーズンの優勝者であるディヴィジョン・チャンピオンも,ワールドシリーズの勝者であるワールドチャンピオンもチャンピオンには代わりがないことです。チャンピオンはチャンピオンとして評価されます。

ところが,今回のパ・リーグのプレーオフ案では,プレーオフのチャンピオンがリーグ・チャンピオンということになり,リーグ戦(レギュラーシーズン)のチャンピオンは,チャンピオンではないということになってしまいます。これでは,リーグ戦(レギュラーシーズン)の勝者の意味がなくなってしまいます。

プレーオフは興行上,有効な方法だと思いますが,勝者を評価することも大事なことです。

up


178(2003/01/16) フリーエージェント制とサラリーキャップ制

フリーエージェント制とサラリーキャップ制は対で考えられています。

フリーエージェント制というのは,そもそも,球団が選手の保有権を半永久的に拘束したリザーブクローズ制が人権上問題があるとして,その拘束力をある一定期間に定め,その一定期間を過ぎた場合,自由契約とするというものです。

プロスポーツの世界では,パレートの法則でいえば,2割のスター選手が売り上げの8割を稼ぎ,残りの8割の選手が残りの2割を稼ぐといえますし,また,勝利の8割は2割の選手の活躍によるものであるということになります。昔,大相撲の世界では横綱が稼ぎの8割をもらっていたという話を聞いたことがあります,それだけ横綱という一部の力士により大相撲が支えられていたという話です。プロスポーツの世界では人気と実力を兼ね備えた一握りのスター選手によって支えられているといっても過言ではありません。

ところがこの人気と実力を兼ね備えたスター選手というのは,やはり一握りの存在です。2割で8割の売り上げを稼ぐスター選手を獲得することは,勝利と収入に直結することであり,球団はスター選手の獲得にやっきになることとなります。つまり,選手のフリーマーケットであるフリーエージェント市場において,スター選手は売り手市場ということになり,必然的にスター選手の年俸は高騰することとなります。それに連動して,他の選手年俸も上がり,結果的に選手年俸総額の高騰を招くことになります。

選手年俸の高騰は,低収入の球団の台所を直撃します。そこで選手年俸高騰の抑制策として,選手年俸の総額を規制するサラリーキャップ制がでてきました。ところが,メジャーリーグでは,このサラリーキャップ制が見送られたため,選手年俸の高騰を防ぐことができなくなり,赤字球団が続出することとなりました。フリーエージェント制には,選手年俸高騰抑制策が必要です。サラリーキャップ制を見送ったメジャーリーグが,行った年俸高騰抑制策がラクジュアリー・タックスということになります。

up


177(2003/01/15) ラグジュアリー・タックス

2002年のメジャーのFA市場は冷え込んでいました。例年,売り手市場で,選手の最高年俸の更新が話題になっていましたが,今年は買い手市場で,選手の移籍先が12月になっても決まらず,年越しする選手が続出しました。その影響で,大阪近鉄バファローズの大塚投手は,ポスティングによる買い手がつかず,メジャー行きを断念しました。この大塚投手の件も含めて今年のメジャーの日本人マーケットは,厳しく,ベイスターズの齋藤も,日本残留になりそうです。日本人メジャー・リーガーの伊良部と吉井は日本球界に復帰し,鈴木は日本初登場ということになりました。また,小宮山は引退の危機にあります。

アメリカのFA市場が冷え込んだ一番の理由が,ラグジュアリー・タックス(贅沢税)の導入です。これは,去年結ばれた新しい労働協約の中で決められたもので,球団の年俸総額が1億1700万ドル,日本円で約140億円を超えた場合,超過分に対し17.5%の課徴金を課し,機構が徴収するというものです。課徴金は財政状態の厳しい低収入の球団に配分されます。

収入の再配分の制度としてレベニュー・シェアリングの制度がありますが,これは高収入の球団から低収入の球団に収入を再配分する制度で,球団間の収入格差を是正することが第一の目的です。ラグジュアリー・タックスも,低収入の球団への収入再配分というレベニュー・シェアリングの形をとりますが,その主たる目的は選手年俸の抑制にあります。

選手年俸の抑制策としては,NBAやNFLで導入されているサラリーキャップ制があります。サラリーキャップ制は,球団の選手年俸総額の枠が決められ,それを超える年俸を支払うことが認めらないというもので,フリーエージェント制の中では有効な選手年俸の抑制策となります。ところが,このサラリーキャップ制がメジャー・リーグでは採用されていません。1993年メジャー・リーグでも,このサラリーキャップ制を導入しようとしましたが,ストライキにより断念しています。このため,このサラリーキャップ制に代わるものとしてラクジュアリー・タックスが導入されました。

選手年俸の高騰は,メジャー球団の財政状態を危うくするまでになり,2球団の球団削減案まで出る始末です。そこで危機感をもった選手会が今回は折れて,ラクジュアリー・タックスの導入に同意したというわけです。

up

176(2003/01/14) 松井,紐育に行く

プロフェッショナル考は,一休みして,しばらくは最近のスポビズネタで行きます。

今日1月14日,松井秀喜がニューヨーク・ヤンキースと正式契約を結びます。2002年のオフ,セパを代表する大阪近鉄バファローズの中村紀洋内野手と読売巨人軍の松井秀喜外野手がフリーエージェントを宣言しました。

松井秀喜は,当初からニューヨーク・ヤンキースが第一希望だったようですが,ヤンキースと業務提携した読売巨人軍の縛りをいやがり,読売ルートではなく,独自に代理人を立て,ヤンキースとの契約の運びになりました。その契約交渉にしても,紆余曲折があった模様です。最初のヤンキースのオファーの中に,ヤンキースとの3年契約が切れたら,日本の球団としか契約できない条項が含まれており,実質的な読売巨人軍からのレンタル移籍という内容だったそうです。そのことが,去年の12月20日の朝日新聞朝刊西村欣也さんのコラム「チェンジ」に書かれていました。これに松井が怒り,メッツ入りに一時傾いたそうです。このため,ヤンキース側が,この条項を撤回して,契約が成立したということです。

読売が実際にレンタル移籍を画策していたのはこれで,明らかですし,読売とヤンキースとの業務提携が松井絡みであったことも明白です。まさにタンパリングです。しかしながら松井本人が「レンタル移籍」条項を蹴ったことで,結果オーライということになったと思います。結果的に,松井がヤンキースと契約したため,このレンタル移籍条項がなくなっても,読売側にとっては当初の思惑通りに落ち着きホッとしているが現状でしょう。日本テレビがとにかく喜んだでしょう。当初狙いのニュースでの独占映像権を確保できた分けですから。

中村ノリは,最初メジャーは眼中になかったそうですが,12月ニューヨークに観光で行き,アメリカのスタジアムに感動して,一時メッツ入り寸前まで行きました。ところが,ニューヨーク・メッツとの契約が結果的にドタキャンとなり,結局大阪バファローズに残留ということになりました。

つまり,紐育に,松井は亡命し,ノリは観光に行ったということです。up


175(2003/01/13) プロフェッショナル考 大相撲 5

一頃,大相撲の八百長疑惑が世間を賑わしていました。相撲には八百長ではないにしろ,加減はあると思います。プロフェッショナルの世界は厳しいように思われていますが,プロフェッショナル間でも,プロレスや大相撲は自主興行ですから,仲間同士の試合のようなもので,厳しさの中にも,一種の甘さがあります。プロは生活がかかっていますし,明日以降も試合は続きます。ケガや故障は避けられれば,避けた方がいいのです。それに,観ている方にとっても,ケガや故障でお目当ての力士が休場などされるとがっかりです。とはいっても,つまらない相撲も頂けませんが。
up


174(2003/01/12) プロフェッショナル考 大相撲 4

大相撲というのは,総当たり戦のようでいて,そうではありません。15日間の取り組みなら,16人しか幕内に入れないはずですが,実際には倍の関取がいます。個々の取組にしても,かなり恣意的です。昔,大相撲の取組をみて,ある外国人がフェアじゃないといっていました。取組がある力士に有利なるように組まれていたというのです。でも,これは「有り」ではないでしょうか。

大相撲は,15日間連続して興行します。毎日面白い取組を組まなければお客さんは来てくれません。毎日,看板となる取組を作らなければ,せっかく来てくれたお客さんに失礼になります。また。お客さんは,毎日観に来れる分けではありません。たまたま,見に来てくれたお客さんに,つまらない取組では二度と場所に足を運んでくれなくなります。場合によっては,実力が伴わなくても,看板力士を作らなければならないときがあります。実力だけに任せていては,興行が成り立たない場合があるものです。このように考えた場合,大相撲の取組というのは興行上,結構,的を得ていると思います。

up


173(2003/01/08) プロフェッショナル考 大相撲 3

大相撲という世界は何か前近代的な組織のように思われますが,メジャーリーグと同じような育成システムを持っていたり,プロフェッショナル組織としての洗練性をもっています。マーケティング面でも,枡席などは4人分のチケットとお弁当に大相撲グッズがパック料金になっていて,値段を別にすればアイデアものです。また,枡席という形状は,グループでおしゃべりをしてお弁当を食べて間合いを楽しむという大相撲の楽しみ方にマッチし,ファミリー向けや企業の接待用に向いています。枡席は近代スタジアムのVIPルームに通じるものがあります。

チケットの販売方法については,ひいき筋や接待などを優先され一般客にはなかなか手に入らない時代が続き非難されました。ひいき筋というのはリピート客であり,得意先です。パレートの法則でいえば,2割の得意先が,売り上げの8割を占めるといわれるように,得意先というのは重要です。ですから得意先のひいき筋を優先するのは,的を得ています。企業の接待向けについては,アメリカのスポーツビジネスでもマーケティング上の重要な柱になっています。ただし,得意先や企業接待ばかりに目を向けていると,一般客から見放されることになります。

up


172(2003/01/07) プロフェッショナル考 大相撲 2

前回の補足です。日本の相撲とアメリカのベースボールは,プロのスポーツとして発展しました。このため,プロのスポーツとしての成長発展過程として独自の育成機構を必要としたのです。また,アマチュアの学生相撲やカレッジベースボールも存在しますが,実力だけでなく人気の面でもプロが断トツです。これに対し,日本の野球とアメリカのフットボールは学生のスポーツとして発展し,その技術的な成長プロセスの中からプロが生まれたもので,学生スポーツは人気および歴史的な面でプロに優位に立っています。このように相撲とベースボールの環境が似ているように,野球とアメリカンフットボールのおかれている状況も多くの共通点を持っています。

相撲とベースボールは,格闘技とボールゲームという違いはありますが,「間」という共通点を持っています。この間がプレーヤーにとっては,身体的負担を軽くしています。観客側からすれば,「間」は「間」が抜けているのではなく,間合いを楽しみ,さらにいろいろな楽しみを提供してくれる時間でもあります。この「間」は観客にとっておしゃべりの時間であり食事の時間であり,余韻の時間でもあります。「間」があることによって,観客にとって競技場は,行楽の場であり,コミュニティの場となります。

これが興行上どういう効果があるのかといえば,観客に大人の男性だけでなく,女性や子供も期待できます。お弁当やホットドッグの売り上げといった付加価値も期待できます。プレーヤーの身体的負担が少ないので,連日興行が可能となります。
up


171(2003/01/06) プロフェッショナル考 大相撲 1

日本古来のプロスポーツといえば大相撲があります。この大相撲,家という制度を別にすればアメリカ生まれの最古のプロスポーツ,メジャーリーグベースボールに結構似ているところがあります。まず,どちらも,プロとしての独自の育成機関を持っているところが似ています。大相撲は,前相撲から始まって序の口,序二段,幕下,十両という階級的育成機関を持ち,プロ独自の育成システムを持っています。同様にメジャーリーグも,ルーキーリーグからシングルA,ダブルA,トリプルAという階級的な育成システムを持っています。どちらも実力だけで,階級を勝ち上がり,関取やメジャーリーガーといったカネを稼げるプロフェッショナルに育っていきます。

これと対照的なのが日本の野球です。日本の野球は,学生野球として発展したため,プロ野球には本格的な選手の育成機関を持っていません。二軍というのは,育成機関というよりも一軍選手の調整機関になっているのが現状です。日本のプロ野球は,選手の育成を学生野球や社会人野球に頼っています。これと同じ状況にあるのがアメリカのNBA(バスケットボール)とNFL(アメリカンフットボール)があります。バスケットボールやアメリカンフットボールは,日本の野球と同じように,学生スポーツとして発展してきたもので,NBAやNFLは独自の育成システムを持っていません。

up


170(2003/01/05) プロフェッショナル考 6 プロは勝者が曖昧

プロの世界は弱肉強食で優劣を明らかにするものと思われている人が多いと思いますが,実際は逆です。プロの世界では,勝者は逆に曖昧にされます。一見,勝者は明確なようですが,実は曖昧なのです。

日本のプロ野球でも,勝者をはっきりしたければ1リーグ制でいいはずです。それを二つのリーグ戦とその勝者による日本シリーズという二段階を踏んでいます。これがアメリカになるとプレーオフとワイルドカードという制度があって,MLBでいえば,地区優勝しなくてもワールドシリーズに進出できます。現に2002年のワールドシリーズはア・ナともワイルドカードで進出してきたアナハイム・エンゼルスとサンフランシスコ・ジャイアンツが覇を競いあいました。地区優勝の球団とワールドシリーズのチャンピオンとどちらが強いのでしょうか。

さらに,NHLやNBAになると半数近くの球団がプレーオフに進出でき,リーグ戦は何のためにあるのかと疑われる始末です。また,ヨーロッパ・サッカーでも,チャンピオンズ・リーグに進出するのは,各国リーグの優勝クラブだけでなくリーグの上位数クラブが参加資格を得ます。Jリーグでは,リーグ戦のほかにナビスコカップに天皇杯があります。

勝者がはっきりしているのはプロボクシングぐらいです。そのプロボクシングにして複数の世界団体が存在し同じクラスでも複数の世界チャンピオンが存在しています。勝者が曖昧の方が多くのプロが存在できるのです。多くのプロが生活出来た方が,その業界は繁盛します。

up

169(2003/01/04) プロフェッショナル考 5 野球はプロ競技のお手本

順序が逆になりましたが,野球という競技はそもそも,非接触型のノンコンタクトゲームです。このため,選手のぶつかり合いによるケガの可能性が低い競技です。さらに,3時間の試合のうち実際にプレーをしているのは30分程度と言われほどですから投手を除けば,選手の身体的負荷は極めて低い競技でもあります。ですから,大リーグでは162試合,日本では140試合という過密日程が可能となります。試合数が多いことは興行主にとってありがたいことであり,身体的負荷が小さいということは選手にとってありがたいことです。これで,観客を満足できるのですから,プロ野球興行というのは,プロ競技のお手本みたいなものといえます。

これに対し,他の主要プロチームスポーツであるバスケットボール,アイスホッケー,アメリカンフットボール,サッカーは全てコンタクトゲームで選手と選手のぶつかり合いがあります。このため,野球よりもケガや故障に見舞われる機会が多く,また,試合における運動量も多く,疲労度も高いといえます。このため,サッカーを除いては選手の入れ替えが頻繁に行われます。とはいっても試合数はアイスホッケー,バスケットボールで野球の半分,アメリカンフットボールになると10分の1です。サッカーは4分の1といったところでしょうか。試合数の点から見ても,観客収入を当てにしていた昔ながらのプロスポーツ興行では,野球が一番の優等生ということになります。

ところが,テレビメディアの登場により,メディア収入が主流になってくると,試合数や競技場の収容人員を抑え,1試合の希少性を高めようとする動きが出ています。その典型がアメリカンフットボールのNFLです。

up

168(2003/01/03) プロフェッショナル考 4 凶器としての競技場

プロフェッショナルの資本は身体です。この身体に競技場自体がダメージを与えるものであったとき、プロフェッショナル・プレーヤーはどのような選択をするのでしょうか。ケガをしても、最高のプレーをする。ケガをしたくないのでプレーをセーブする。通常は、後者だと思います。ケガをしたらお終いですから。観客は、最高のプレーを期待しますが、ケガの補償はしてくれません。

この点から見れば、日本のプロ野球場は、選手にとって凶器と化しています。人工芝と固いフェンスです。人工芝の下は固いコンクリートで、立っているだけでも、選手の膝に負担をかけ、故障の原因となります。スライディングキャッチは、火傷や擦過傷、打撲の危険が待っています。ハイテク人工芝になっても、松井の言うように「人工芝」は「人工芝」に過ぎません。同様に、ラバーを貼っても固いフェンスは、依然として凶器です。フェンス激突による故障は後を絶ちません。


こんな環境で選手は,最高のプレーをするでしょうか。プロフェッショナルであればこそ,凶器と化した競技場で,最高のプレーを見せるなど期待できる分けがありません。もしも最高のプレーを望むのなら,ケガの治療とブランクによる影響を考慮した分の高額な報酬と,高額な医療保険が必要となります。
(青字部分 MB Da Kiddさんのアドバイスにより追加)

up

167(2003/01/02) プロフェッショナル考 3

プロボクシングは,ブラッディ・スポーツ(流血スポーツ)の系譜にあり,ギャンブル・スポーツとして発展してきた歴史があると思います。ギャンブルですからケガと引き替えになるだけの報酬が期待できるわけです。単なる見せ物興行では,1試合の収入などたかがしれています。ギャンブルだからこそ,ケガを前提とした試合が組める分けです。ギャンブルですから,選手には力をセーブするということは八百長と見なされ,常に真剣勝負が要求されます。真剣勝負であればこそ,よりいっそうケガの危険性が高まることになります。ギャンブルによる資金力を背景に真剣勝負としてのプロボクシングが成立してきたと思われます。近年のプロボクシングは,ギャンブル・マネーに代わり,テレビ・マネーが背景にあると思います。

一方,プロレスは見せ物興行として発展してきたのではないでしょうか。見せ物ですから,ショー的な要素も要求され,これが逆に力をセーブしても成り立つ背景になっていると思います。ただし,収入的には,ギャンブルほど大金が動くわけでもないため,興行1回当たりの収入はたいしたことはありません。そこで,回数でこれをカバーしようとします。ですから,余計に,選手は力をセーブせざるを得ません。見せ物興行としてショー的要素をもったものとしてプロレスは発展してきたのだと思います。

このプロレス興行に真剣勝負とテレビ・マネーが持ち込まれ,興行形態がプロボクシングに近くなっているのが最近の傾向です。テレビ・マネーといっても,従来もテレビのプロレス番組はありました。ところが,従来のプロレス番組は,スポーツ中継と言うよりも,テレビ番組の一つとして埋没し,衰退していきました。これに対し,近年はスポーツ・イベントの放映権という形でのテレビ・マネーという特徴があります。競技団体側に主体性がでてきた点と放映権料が巨額になったという点でしょうか。また,プロレスという枠を超えた格闘技という形でのイベントになっているのも特徴です。

プロの格闘技に真剣勝負を持ち込めば,ケガは当然増えてきます。ケガに見合う報酬を提供できるのでしょうか。スター選手がケガで長期に離脱する場合も考えられます。真剣勝負はショー的要素と相反し,地味なケースもあります。この動きと対照的にショー的要素を高めているのがアメリカのWWEです。

up

166(2002/12/25) プロフェッショナル考 2

プロレスは毎日興行があります。一度興行が始めれば、試合が休みなく続きます。プロレスにはケガは付き物です。とはいっても,マジで毎日試合をしているのかと言えば、嘘です。毎日真剣に試合をしたら身体は保ちません。プロレス興行には、あらかじめ決まり事が存在しました。

この決まり事を最近の格闘技では、否定されようとしています。ですから最近の格闘技にはケガが付き物であり、大都市での拠点興行が主流になってきました。プロレス型の巡業興行は廃れ気味です。ボクシング型の拠点興行が主流になっています。

ボクシングは、真剣勝負で、ケガの存在を前提にしています。ですから試合数は少なく、その代わり大きな会場での高い入場料が条件になります。真剣勝負をしようとすればケガが付き物です。ケガを前提とした競技は、高額なファイトマネーが前提になります。それがなければプロフェッショナルは存在しません。ケガで選手寿命が短くなるかもしれないのにプロになどなれません。

プロフェッショナルなプレーヤーは選手寿命を延ばすために、その力をセーブします。セーブしても観客を魅了できるプレーができる選手が本当のプロフェッショナルだと思います。
up

165(2002/12/24) プロフェッショナル考

プロスポーツ選手はいつもベストなプレーをしているのでしょうか。プロスポーツ選手の高度なプレーに対し,観客は観戦料を支払います。高度なプレーの源は,選手の身体能力であり、プロは身体が資本と言っていいでしょう。ですからプロが一番おそれることは,ケガであり,故障です。いくら才能があっても,ケガで試合に出られなければ,プロとは言えません。競馬の世界で,無事これ名馬という言葉がありますが,まさにそれです。

プロの世界では,通常の場合,興行によって成り立っていましたから,多く稼ぐためには興行の回数を増やすのが手っ取り早い方法です。ですからプロの世界では興行回数,すなわち,試合数がアマチュアに比べて,格段に多くなります。試合数が多くなると,試合をこなすだけでも,体力を消耗します。疲労は故障の原因にもなります。

プロの世界では、日程は過密になりがちです。むしろ、過密になるほどにならなければ、プロとして一人前とは言えないでしょう。こういった状態で、プロスポーツ選手はいつもベストなプレーをしているのでしょうか。もちろん、答えは否だと、私は思っています。

up

164(2002/12/11) 12月10日の掲示板から

僕は,正直ビジネスマンじゃないから,「プロ野球のビジネス」とか言っていますが,ビジネスの実際についてはわからない点が多いです。とは言っても,日本のプロ野球ビジネスは金額的には小さいとは言えませんが,組織・人材・ノウハウとかいったものは貧弱です。だから,まあ,こういう素人サイトが成り立っているわけですが。なにせ,僕が大学のころから状況はほとんど変わっていないんだから。僕でもついていけるわけです。

僕が大学の頃作った連関図には,スポンサーシップというのは,なかったかなと思います。Jリーグという商売敵はいなかったし,MLBとも競争関係にはなかった。当時よりも複雑化しているのは確かです。

それから,主体性と相対性について。昔も今もプロ野球で何が一番問題なのかといえば,球団やリーグが自分たちで主体的に物事が決められないこと。プロ野球のことを,プロ野球も分からん奴らが決めていることに腹が立ちます。プロ野球のことは,プロ野球で決めれば良いことで,プロ野球の連中は責任を持って自分たちやっていってほしいわけです。

僕のサイトのサブタイトルが「プロ野球の論理」,プロ野球の主体性の確保が一番大事じゃないかと思って,どのようにしたら主体性が高められるか,素人考えですがやっているわけです。だから,僕の見方は「of」になります。

まず,今のプロ野球は,親会社の宣伝機関であって,一つの企業,産業として社会的に認知度は低い。球場をはじめ,自治体の協力が少ない。プロ野球が自立できない理由の一つに球場問題があって,その球場を安く調達するには,やはり,自治体の協力が不可欠。ということは,プロ野球はいまより社会性を高めなくちゃいけない。社会性が高くなければ,自治体は動けないですから。そのためには,プロ野球の相対性も考えて行かなくちゃならないわけです。

つまり,「Through」の価値を高めなくちゃ行けないわけです。高めて「MLBは「Through」しても,自治体にはベネフィットはありませんよ」「Jリーグを「Through」するよりプロ野球の方がリターンが大きいですよ」といった具合に売り込むしかないわけです。また,スポンサーシップや参加型消費者の比重の増加もまた,相対性を高めています。それから,「of」を考えるためには,取り巻く環境を知らなければいけないし,環境を知るには相対性も考えて行かなくちゃならないわけです。一方的な関係なんてものは,ありませんから。

僕は「メセナ」もありだと思っています。「メセナ」が「Through」ビジネスとして成り立つのであれば,いいわけです。そのための理論的な裏付けを作れば良いわけです。社会が企業のメセナを認めて,企業が「メセナ」にお金を出すことに社会が認めるのであれば,企業は「メセナ」を行うでしょう。そうであれば,プロ野球とメセナを関連づけて,企業から「メセナ」を理由にお金を出してもらえばいいわけです。企業も「メセナ」で社会的評価を受けて株価が上がればいいわけで,それにプロ野球が貢献できればそのリターンの一部をお金でいただくということです。
up


163(2002/12/05) プロ野球ビジネスの「 through と of 」2

「なぜ全日空はチームを持ったのか?」「何を期待しているのか?」つまり「フリューゲルスは企業にとってどういう価値を提供できるか」

これを「through」 と 「of 」で説明すると次のようになります。全日空は,フリューゲルスを利用して利益を追求しようしたのであり,全日空にとってフリューゲルスは「マーケティングthroughスポーツ」でした。つまり,フリューゲルスの「マーケティングofスポーツ」というのは,全日空というスポンサー企業に,いかに利益のでる「マーケティングthroughスポーツ」を提供できるかということであり,フリューゲルスは,全日空というスポンサー企業に,「マーケティングthroughスポーツ」で利益を提供できなかったということになります。ビジネスの世界では「through」を通して「of」が見えてきます。

プロ野球ビジネスの話に戻すと,「プロ野球のビジネス」というのは,NPBや球団のプロ野球ビジネスのことであり,「プロ野球を通したビジネス」とは,スポンサー企業がプロ野球を利用したプロ野球ビジネスのことです。そして,この二つのプロ野球ビジネスは,多くの部分が重なり合っています。この重なった部分では,プロ野球側から見るか,スポンサー企業側から見るかの視点の違いということができます。つまり,スポンサー企業に,「プロ野球を通したビジネス」をいかに提供するかが「プロ野球のビジネス」だということもできます。

「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」の関係を少し見てみましょう。プロ野球消費者(コンシューマー)は,観戦者や視聴者,購買者といった形態をとります。チケット販売やグッズ・飲食物販売といった,プロ野球消費者から直接売り上げがある部門よりも,放映権や広告収入といった間接な収入部門のほうが,「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」との関係が重複しているといえます。つまり,放映権やスポンサーシップといったものは,プロ野球消費者から直接利益を得るのではなく,放送会社やスポンサーといった第三者を通して,間接的に利益を獲得するもであり,「プロ野球を通したビジネス」の考え方が重要になってきます。この間接収入の部分がプロ野球の持っているメディア・ヴァリューが収益化した部分です。

メディア・ヴァリューの収益化のためには,「プロ野球を通したビジネス」をいかにスポンサーに提供することできるかが「プロ野球のビジネス」のポイントになります。いかに,スポンサー企業にプロ野球という興行を利用して利益をあげてもらうかが,「プロ野球のビジネス」だともいえます。
up

162(2002/12/04) プロ野球ビジネスの「 through と of 」

プロ野球ビジネスは,「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」の二つに分けることができます。「プロ野球のビジネス」とは,球団やリーグ自身が行うビジネス活動であり,「プロ野球を通したビジネス」はプロ野球を利用して行う企業のビジネス活動です。「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」は,両者は明確に区別できるわけではなく,多くの部分が重なりあっています。言ってみれば,プロ野球ビジネスを球団側から見るのか,投資をしようとしている企業側から見るかといった視点の違いと見ることもできます。

プロ野球ビジネスを「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」に分ける考え方は,スポーツナビの広瀬一郎氏が書いた「ドットコム・スポーツ」にでてくるスポーツ・マーケティングの考え方をもとにしています。

広瀬氏は「ドットコム・スポーツ」の中で,スポーツ・マーケティングを,スポーツ社会学では,「マーケティングthroughスポーツ」と「マーケティングofスポーツ」の二つに考えることがあると述べています。「マーケティングthroughスポーツ」とは,スポーツを通して広告キャンペーンなどの企業活動を行うことであり,「マーケティングofスポーツ」とは競技団体がその競技の普及と競技レベルの向上を図る,そのスポーツ自体のマーケティングを指す,としています。とはいうものの,現実のビジネスでは「of」と「through」の両者を明確に区別できるわけでもなく,重なり合う部分も多い,として,1998年秋に起こったJリーグ・フリューゲルスの消滅事件を例にとり,この関係を説明しています。以下は,その抜粋です。

あの時,フリューゲルスを擁護する世評もメディアも,その意見のほとんどは「of」の観点からであった。なぜ全日空がチームに出資しているのか,つまり,「through」から論じられなかったことは残念であった。もしフリューゲルスがリーグ上位ならば,全日空はチーム経営を続けたのであろうか。サポーターの人気がリーグで一番だったら,存続していたのか。たしかにこれらは必要条件であろうが,全日空の経営の観点からは十分条件ではない。実際,悲しいことだが,フリューゲルス問題の直後に全日空の株価は上昇した。

チームの人気と株価は関係ないというのであれば,スポーツ・マーケティングを語る資格はない。どんなに「フリューゲルスが素晴らしいチーム」であるかを強調したとしても,なぜ,出資しているかに対応した論理がなければ,どこまでいっても議論はすれ違うばかりである。「なぜ全日空はチームを持ったのか?」「何を期待しているのか?」つまり「フリューゲルスは企業にとってどういう価値を提供できるか」ということが重要な点なのである。あの時点で,スポーツ・マーケティングからの議論が見られなかったことが実に残念であった。以上,広瀬一郎著「ドットコム・スポーツ」。

マーティングは,ビジネスの一部門であり,今回話すプロ野球ビジネスの話はスポーツ・マーケティングの話と多くの部分が重なり合っています。また,フリューゲルスの話は,「球団の親会社が野球という興行を通して利益を追求する(小林至氏)」という親会社ビジネスが闊歩しているプロ野球ビジネスの世界にあっては極めて示唆に富んでいます。
up

161(2002/12/03) チャンピオンシップとチャンピオン大会  

ここでいうチャンピオンシップとは,Jリーグのサントリー・チャンピオンシップ(CS)のこと。J1の第1ステージと第2ステージの勝者年間チャンピオンを争うホーム&アウェーの試合です。今季は,第1・第2ステージともジュビロ磐田が優勝したため,このCSは行われなくなりました。J1のステージ制というのは,昔,パ・リーグが行っていた2シーズン制と同じです。この2シーズン制は,リーグ戦の持っている消化試合という欠点を解消しようとしたものですが,結局,消化試合が2回に分かれただけということで効果は薄れ,10年で1シーズン制に戻されました。

Jリーグの場合,消化試合の解消のほか,プロ野球の日本シリーズみたいな,シーズンのクライマックスを盛り上げるイベントが欲しかったためです。欧州のリーグには,国内リーグの上位クラブが欧州チャンピオンリーグや欧州カップへの進出権をかけて,シーズンのクライマックスを盛り上げます。Jリーグには,この欧州チャンピオンリーグや欧州カップにあたるものがないため,考え出されたのがCSだったのです。

CSは,視聴率的にもよく,Jリーグの通常の試合が磐田対鹿島でも6%程度なのに対し,CSは13%前後の実績を残しており,ファン掘り起こす貴重な機会となっています。また,CSのスポンサー料と放映権料は約3億円と言われ,これは各クラブに均等に配分され,J1加盟クラブの貴重な収入にもなっています。もちろん,CS進出クラブは,さらにCSの賞金(優勝2千万,準優勝1千万)とホーム戦での収入増が見込まれます。

それでもと,朝日新聞の編集委員潮智史さんはコラムで「私が廃止を訴え続けるのは,見る側の論理が先行して,主役である選手の立場が忘れられているからだ。磐田が第2ステージで苦労したのは「どうせCSがあるから」という気持ちを封じて,戦う気持ちを保つことだった。「自分たちが強いのか,弱いのかわからなくなってしまう」。1年前に選手が漏らした悲痛な言葉を改めて思い出す。」と書いています。

プロスポーツは,リーグ戦が基本です。ところが,リーグ戦には,消化試合という欠陥があります。その解消策に各リーグは工夫を凝らしているのです。そこで,Jリーグ関係者も,ようやく動きだしたのが,日本・韓国・中国3カ国チャンピオン大会(仮称)です。まだ,仮称ですから本格稼働といったものではなく,試験的なものみたいですし,参加資格がリーグチャンピオン1チームでだけということと,実際収入増につながるかが問題です。概要はJリーグの公式ページによれば,

Jリーグ、Cリーグ(中国)、Kリーグ(韓国)は、互いのリーグの交流を深め、競技・運営の水準向上を図る目的で、同3ヶ国によるリーグチャンピオン大会(仮称)を開催する。本大会は毎年持ちまわりで行われる予定で、2003年度は日本、2004年度は中国、2005年度は韓国で開催。各国の前年度リーグ戦優勝の3チームに開催国が推薦する1チームを加えた4チームが参加する。第1回大会となる2003年度はJリーグから2002Jリーグチャンピオンのジュビロ磐田と2002Jリーグヤマザキナビスコカップ優勝チームの鹿島アントラーズが出場、Cリーグは大連実徳足球クラブが、Kリーグからは城南一和が出場を決めた。日程は,2003年2月16日(日)、19日(水)、22日(土)。大会方式は4チーム総当りリーグ戦(全6試合)

up

160(2002/12/01) スタジアムに化学調味料をふりかけて

「東京スタジアム」が「味の素スタジアム」になるようです。東京都調布市にあるサッカースタジアム「東京スタジアム」は,東京都が建設資金307億円を提供し,都と調布市,三鷹市,府中市などが出資する第三セクターが運営しています。運営は独立採算でやれと石原都知事に言明されおり,サッカー以外のコンサートやイベント貸しにも積極的のようですが,一方では荒れた天然芝が問題になっています。そこで収入アップの手段として考え出されたのがスタジアムの命名権です。

スポーツ施設への命名権は,90年代以降米国の新球場等の建設資金の不足を補うため盛んに用いられているものです。米国の4大プロスポーツでも,公共性が社会から認知されており,球場やアリーナといったスポーツ施設の建設には公的資金が使われています。公的資金で球場やアリーナを建設しなければ,プロ球団が移転しまったり誘致できなかったりするからです。

日本でもサッカー場は,公的資金で作られました。ところが,プロ野球が使う野球場だけは民間資金を出せということになっています。横浜ドームの件にしたって,結局,市にはお金がないから,民間で造るならどうぞ,といった状態です。横浜スタジアムにしても公的資金は使われていません。600億円を超える建設資金と10億円近い運営資金を横浜国際総合競技場(サッカー場兼陸上競技場)に使うのにです。

話を戻すと東京スタジアムは当初,年間5億円の10年契約を望んだそうですが,景気低迷の中なかなか見つからず,11月21日付けの朝日新聞によれば,やっと「味の素」に内定したもようです。契約期間を半分にし,年間契約料も2〜3億円になる見込み。
※5年契約の12億円

命名権ビジネスといえば,米国の90年代のバブルで登場した新興企業が積極的に利用してきましたが,バブルの崩壊とともに,エンロンやワールド・コムといった破綻が相次ぎ,曲がり角にきているようです。エネルギー会社のエンロン社は,90年代の米国の規制緩和・グローバル路線に乗って急成長した会社ですが,絶頂期の1999年,ヒューストン・アストロズの新本拠地球場の命名権(ネーミングライツ)を30年間1億ドルという破格の契約で取得し,新球場は「エンロン・フィールド」と名付けられました。ところが2001年突如経営破綻をします。
http://www.unityflag.co.jp/doc/720/0720_23c.html

今度は,エンロン社の倒産が逆に,球場や球団のイメージダウンにつながるとして,アストロズ側は,エンロン社に契約解消を求め,アストロズがエンロン社に210万ドル(約2億8,000万円)を支払って,球場の命名権を買い戻すことになりました。2002年2月,球団が新たなスポンサーを探している間,「エンロン・フィールド」は「アストロズ・フィールド」と呼ばれ,その後,2002年6月5日スポンサーがミニッツメイド社に決まり,名称が「ミニッツメイドパーク」に変更されました。

スタジアムやアリーナなどのスポーツ施設は,今や都市のシンボルであり,ランドマークになっています。都市の案内表示やガイドブックにも名前が載ります。さらには,地元住民の記憶に刻みこまれ,歴史となり文化となります。その名称がちょくちょく変わってしまってはたまったものではありません。2002年アストロズの本拠地球場は,短期間のうちに「エンロン・フィールド」「アストロズ・フィールド」「ミニッツメイドパーク」と変更されました。しかし,今でも,アストロズの本拠地球場の名称がエンロンのままになっているHPも結構あります。
http://habidon.infoseek.livedoor.com/mlb/clubs/astros.htm
http://www.246.ne.jp/~kbt-t/ballpark_mlb_nl/enron01g_j.html

エンロンフィールドと対照的なのが,シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドです。リグレー・フィールドこそ,元祖ネーミングライツで,リグレーとは当時のオーナーの名称であるとともにチューインガム・メーカーの名称でもありました。そのリグレー・フィールドは「
1914年以来、シカゴのランドマークとしての地位を守り続けるこの古い野球場は、国家的娯楽の記念碑」として,先月シカゴ市の指定建造物に認定されることになりました。
up

159(2002/11/30) プロ野球版浪速金融道

大阪近鉄バファローズが消費者金融のアコムと2003年度(2002年12月1日から1年間)の年間スポンサー契約を結びました。バファローズは,2001年,2002年とコンビニの「エーエム・ピーエムジャパン」とヘルメットのスポンサー契約を結んでいましたが,2003年度はアコムと契約することになりました。「ヘルメットに加えユニホームへのロゴ掲出,各種発行物への広告掲載のほか、本拠地3連戦などでのイベント協賛なども視野に入れた契約のスポンサー契約」となるとのこと。

近鉄本社が消費者ローンに関して東京三菱キャッシュワンと業務提携を行い,その東京三菱キャッシュワンにアコムが出資(35%)していることから,本社の意向を受ける形で,球団とアコムとのスポンサー契約が締結された。契約金は2億円のもよう。アコムへの球団株の譲渡は否定したが,今年の9月には同じ消費者金融のアイフルに共同出資を提案していたことも判明したとのこと。

今年の9月といえば,大阪近鉄バファローズが2003年1月1日から登記簿上の商号から近鉄を取り「大阪バファローズ」とすると発表した時期です。商号から近鉄を外したのは球団譲渡の布石とも噂されていたので意味深です。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/kiji/2002/11/26/08.html
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/baseball/nov/o20021125_80.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021126-00002902-mai-spo
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021126-00000074-mai-spo

消費者金融がプロ野球の年間スポンサーになるのは初めて。サッカーではJリーグのオフィシャル・スポンサーに武富士がなっています。消費者金融といえばこれに反対しているのがご存じナベツネさん。その語録はヤフーの毎日新聞情報によれば

「そこまで堕落したのか。断じて許せない。そういう球団には出ていってもらうのが一番」
「サラ金はプロ野球のイメージにふさわしくない。東京ドームでは(金融業者の広告を)一切、許していない」
「ビジネスの自由もあり、仕方ないが、プロ野球の品位を汚す。そういう球団は滅びる。パ・リーグもつぶれるぞ」


品位を一番汚しているのはナベツネさんだと思うのですが,私も消費者金融のスポンサー契約には反対です。とはいっても,1998年ベイスターズ優勝時の横浜スタジアムでの胴上げ写真には某消費者金融の名前がばっちりでています。つまり,プロ野球のメディア・ヴァリューは,ナベツネさんが指摘しているように球場の広告看板という形で,既に消費者金融に利用されていました。テレビCMや街の中の広告を見ていると,今の日本で元気なのは消費者金融ぐらいしかないようにおもわれます。やはり,日本経済が不健康な証拠でしょうか。

とはいっても,バファローズは,球団存続のために頑張っていると思います。セ・リーグも今後,視聴率の低下や視聴者の高齢化のため,巨人戦の放映権料のダウンが避けられません。これに,デフレ経済が追い打ちをかけています。放送業界は,広告収入が激減しています。セ・リーグ5球団にとって巨人戦の放映権料の占める割合は,高く,この放映権料がダウンするとなると大問題です。消費者金融は問題があると思いますが,球団のスポンサーシップ制度は今後重要になってくると思います。

up

158(2002/11/25) 巨人戦視聴率 年齢別構成比

「イカサマ巨人ニュース」の藤見雅希さんが初めて書いた「悪魔の野球」P119に巨人戦視聴率・年齢別構成比というのが載っていました。某野球某掲示板からの転載だそうですが出典は不明だそうです。「35歳以上の視聴者がじつに87.6%」を占めています。プロ野球のオヤジ化が証明されたことになります。20年前は小学生以下のこどものうち5人に一人が巨人戦を見ていたのに,今年はなんと20人に一人です。2000年からの落ち込みだけでもひどすぎます。50歳以上が増えているのに,20歳から49歳までの層が40%も激減しています。

参考:平均視聴率 http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/07giants.htm#2
    人口     http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2001np/index.htm

巨人戦視聴率 年齢別構成比
  1983年 2000年 2002年
4〜12歳 10.3% 3.8% 2.8%
13〜19 12.7% 3.7% 3.9%
20〜34 21.9% 12.6% 7.7%
35〜49 28.0% 19.0% 12.1%
50以上 26.9% 60.8% 73.1%
  100.0% 100.0% 100.0%
藤見雅希著
「悪魔の野球」
P119から
某掲示板からの転載だそうですが出典は不明だそうです。
巨人戦年齢別視聴率
  1983年 2000年 2002年
4〜12歳 2.8% 0.7% 0.5%
13〜19 3.4% 0.7% 0.6%
20〜34 5.9% 2.3% 1.2%
35〜49 7.6% 3.5% 2.0%
50以上 7.3% 11.2% 11.8%
平均視聴率 27.1% 18.5% 16.2%
平均視聴率に年齢別構成比率をかけたもので総人口(4歳以上)に占める年齢別巨人戦視聴者の割合
巨人戦年齢別視聴者人口(千人)
  1983年 2000年 2002年
4〜12歳 3,491 904 583
13〜19 4,305 880 812
20〜34 7,424 2,996 1,603
35〜49 9,491 4,518 2,523
50以上 9,118 14,456 15,222
  33,897 23,777 20,821
1983年の人口は1985年の人口,
2000年は2000年の人口,
2002年は2000年の人口による。
巨人戦年齢別視聴率
  1983年 2000年 2002年
4〜12歳 21.8% 8.1% 5.2%
13〜19 18.7% 5.3% 4.9%
20〜34 29.6% 11.1% 5.9%
35〜49 33.8% 18.2% 10.2%
50以上 27.8% 29.6% 31.1%
平均視聴率 27.1% 18.5% 16.2%
巨人戦年齢別視聴者人口を年齢別人口で割ったもので,その年齢別人口に占める巨人戦視聴者の割合
年齢別人口と構成比
   1985年 2000年
人口(千人) 構成比 人口(千人) 構成比
4〜12歳 16,049 12.8% 11,131 8.7%
13〜19 23,039 18.4% 16,654 13.0%
20〜34 25,078 20.0% 26,988 21.0%
35〜49 28,110 22.5% 24,831 19.3%
50以上 32,807 26.2% 48,918 38.1%
 合計 125,083 100.0% 128,522 100.0%
up

157(2002/11/21) プロローグはエピローグの始まり 3

案の定,ナベツネの恫喝がはいった。今日の朝日の朝刊によれば「巨人の渡辺恒雄オーナー(読売新聞グループ本社社長)は20日,ダイエーの王監督がFA宣言選手の獲得人数減を提案したことについて『どういう理由だ。そんなものを(オーナー会議)あげてきても認めない』と批判した。ドラフトの完全ウェーバー方式導入案については『断じて許さん。そんなことになったら新リーグをつくる。おれが腹を決めたら6球団ぐらい集まるんだ』と持論を改めて展開した」

ナベツネは相変わらずバカなことをいっているが,日刊によれば,原辰徳は,監督会議で王監督から「原くん、それでいいかな? 2人とるのかな?」といわれたのに対し,「1人です。私はそれでもいいのですけど…。」と答えたということだが,スポニチによれば「何も言っていません」ということになる。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/kiji/2002/11/21/03.html
http://www.nikkansports.com/news/baseball/p-bb-tp0-021121-08.html

ところで,原辰徳は10連覇を目指すそうだが,原辰徳は東京読売巨人軍の9連覇がNPBに何をもたらしたか知っているのだろうか。東京読売巨人軍の九連覇はドラフトの始まった1965から1973年までの9年間だが,セパ両リーグを併せたプロ野球全体の観客動員数は,最後の1973年を除き,9連覇が始まる前年の1964年「9,689,755人」を上回ることできなかった。プロ野球の観客動員数が急激に増るのは,東京読売巨人軍の9連覇最後の年1973年以降の話である。
../../www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/4031/report2001.html#2-3
../../www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/4031/kankyaku.gif

東京読売巨人軍のテレビ視聴率は,9連覇時に20%を超えていたのはV1,V2,V4のときだけで後半には17%台に落ちている。ところが,長島監督(第一次)が登場すると20%を超え25%近くにもなった。東京読売巨人軍の9連覇は,結局はプロ野球ファンの支持を得られなかったし,最後は巨人ファンにさえ飽きられたのである。

up

156(2002/11/20) プロローグはエピローグの始まり 2

昨日(19日),ペタジーニの読売巨人軍入りがきまった。

2002年,原辰徳はジャイアンツ愛を唱え,工藤,桑田,清原のベテラン勢,仁志,清水,河原の中堅,斉藤,川中のファーム組,高橋由,二岡,上原,高橋尚,阿部の逆指名組といった個性ある面々をまとめ優勝した。しかし,その中心にあったのは常に4番に座り続けた松井秀喜であった。松井秀喜こそ,川上,長島,王,原辰徳と続くジャイアンツの伝統を引き継ぐ生え抜きのスーパースター(フランチャイズ・プレーヤー)であった。原辰徳は,生え抜き選手を中心に新たな伝統を築こうとした。

ところが,松井秀喜は,ナベツネが作ったFA制度で,米国大リーグに挑戦するといって,読売巨人軍を捨てた。「人工芝は人工芝」という名言を残し,日本のプロ野球を捨てて,MLBを選んだ。すると,ジャイアンツ愛の原辰徳は,生え抜き選手を中心とした構想をあっさり捨て,当初,構想から外れていたヤクルト・スワローズの4番ペタジーニと大阪近鉄バファローズの4番中村紀洋の獲得に突然乗り出してきた。これでは,何でも欲しがる長嶋さんと何ら変わりがない。そして,昨日,ペタジーニを大金で獲得してしまった。今日行われた,ドラフトでも大豊作といわれる中,屈指の好投手木佐貫と久保を自由枠で獲得している。実質的な3巡目では,これまた高校球界屈指の長田内野手も指名している。ところで,なんで読売巨人軍が実質的な3巡目で1番指名なんだ!。

松井秀喜の大リーグ亡命(マーティ・キーナート)は,ナベツネ反革命のパラドックスだが,その穴埋めも反革命の手法で行おうとしている。しかし,ここに来て,他球団の現場からはFAと骨抜きドラフトに不満が出ている。

「ダイエーの王貞治監督は、フリーエージェント(FA)宣言選手を獲得できる人数について、従来の1球団2人の制限を1人に改めるよう20日の12球団監督会議で提案した。実際に移籍する選手が少ないことなどが理由。次回の実行委員会で議題となる見通し。同会議ではドラフトについても、「より戦力が均衡する方向にしてほしい」という意見で一致した。」(時事通信)

「一致した」ということは,原辰徳も同意したというのか?
 
up


155(2002/11/19) プロローグはエピローグの始まり

2002年読売巨人軍は,セントラル・リーグを独走で制し,日本シリーズではこれまたパシフィックリーグを独走で制した西武を4連勝の無傷で倒した。長嶋監督の後を受け,新監督になった原辰徳は,ジャイアンツ愛を唱え,個性派集団をまとめ監督就任1年目で,日本一の監督となった。原辰徳は,この日本一を(10連覇の)プロローグに過ぎないと言った。

1992年,東京読売巨人軍は,ドラフトという戦力均衡化策のため人気実力とも青色吐息であった。9連覇後の1974年から1992年までの19年間で,東京読売巨人軍が日本一になったのは1981年と1989年のたった2回であった。その前の同じ19年間では12回の日本一を飾っていたのにである。テレビの視聴率も藤田監督の4年間1989年から1992年は20.00%と低迷していた。

このため,読売新聞社の社長となったナベツネは,1993年NPB脱退をちらつかせ,ドラフト制の骨抜きを図り成功した。これが私がナベツネ反革命と呼ぶFA制度と逆指名制度の導入であった。反革命とは,ビジネスとして共同体であるべきプロリーグに反する動きであったためである。FAでは落合,広沢,清原,江藤と他球団の4番狩りを行い,工藤というエースも手に入れた。逆指名ドラフトでは,高橋由,二岡,上原を他球団から裏金で奪った。外国人では,ヒルマン,メイという他球団で活躍した選手をカネで買い取った。それでも,長嶋監督時代は9年間で2回しか日本一になれなかった。

「マスコミの巨人批判は,これだけの戦力をそろえれば,巨人が優勝するのが当然のように書いてあるが,実際には毎年優勝しているわけではない」と,読売巨人軍批判に対する批判を言う人がいるが,原辰徳が監督に就任するとぶっちぎりの優勝となり,読売巨人軍の横暴による戦力の不均衡化が明白となった。

up

154(2002/11/18) 松井狂想曲 BY 読売巨人軍

読売巨人軍とニューヨークヤンキースが業務提携を結びました。朝日新聞の17日朝刊によれば,両球団は16日,業務提携に関する合意覚書に調印し,基本項目について発表しました。合意した内容は7項目で主なものは@両国のスカウト情報を含む全般的な情報交換Aコーチ,スタッフの人材交流B中南米での巨人のスカウトをヤンキースが援助Cアジア,環太平洋地域でのヤンキースのスカウトを巨人が援助など。今後具体的に詰めていくそうです。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/kiji/2002/11/17/03.html
http://www.nikkansports.com/news/baseball/p-bb-tp0-021118-06.html

注目の松井選手の獲得問題については,タンパリングの疑いがもたれないようにヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは「業務提携とは一切関係ない」ことを強調しています。ここいらへんのわきまえはナベツネ巨人と大きな違いだと思います。なお,現在巨人が「業務提携を結んでいるサンフランシスコ・ジャイアンツとは来年5月31日で契約を打ち切る方針で、今後は来春のキャンプでのコーチやスタッフの派遣などを含めて、ヤ軍と具体的な内容を煮詰めていく」いくそうです。巨人がジャイアンツと業務提携をしていたとは知りませんでした。
http://www.sponichi.co.jp/usa/kiji/2002/11/16/01.html
http://www.sponichi.co.jp/usa/mlb/japanese/matsui/kiji/200211.htm

大リーグ側も,今回の業務提携が松井ヤンキース入りの隠れ蓑ではないかと危惧しているみたいです。ヤンキースといえば,日本ハムと長年にわたって業務提携を結んでいたことは有名で,今回のヒルマン監督も元ヤンキースのファームの監督だったという縁からでした。

2002年8月15日の記事によれば「ヤンキースは73年11月から足かけ29年間にわたり、日本ハム球団と業務提携。日本ハム・小嶋球団社長が『おれは、ビリー・マーチン(元ヤンキースの名将)の親友』と、豪語していたほどだった。ところが、ヤンキースは、今年6月いっぱいで、期間満了を理由に契約解除。日本ハム側は2月に、東大出身投手として話題になり、昨年限りで現役引退した遠藤良平氏(球団職員)を2年間のフロント留学の予定で、送り出したばかりだった。その遠藤氏がやむなく4月に帰国したのだから、よほど急な契約解除だった、と予測できる。日本ハム球団関係者は『確かに、ヤンキースにとっては、うちと提携していてもうまみはなかったかも。でも、松井獲得のためなら、巨人と手を結んでおいて損はない、という計算が働いたんじゃないですか』と、怒りをにじませながら話している。」

ヤンキースは日本ハムと,巨人はジャイアンツと業務提携していたわけで,急な業務提携はタンパリングの疑い濃厚です。巨人の狙いは実質的なレンタル移籍です。松井の大リーグ志望をかなえつつ,松井の義理堅さを利用しようという姑息な手段です。プロ野球にはレンタル移籍はないので,業務提携によって無理矢理行おうとしています。これに対し,松井は反発しているみたいです。そして,もう一つの狙いが,松井のヤンキース戦の放映権です。

http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200211/bt2002110402.html
「大リーグの放映権は地上波分については、平成15年までの5年間はNHK、TBS、フジテレビが所有しており、月ごとに持ちまわりで放送している。一方、巨人主催試合の放映権を持つ日本テレビは大リーグの放映権はなし。他局に完全な後れをとっているが、同会長は自信を見せた。「(大リーグ放映権は)コミッショナーが一括して管理する分とフランチャイズのある地元ケーブルテレビ(CATV)が持つという2つのやり方がある。NHKなどは、コミッショナーと契約しているがな」。つまり、松井の移籍先チームが所有するケーブルテレビ局と放映権契約を結ぶ“抜け道”を模索しようというわけだ。中でも業務提携するヤンキースは渡りに船。ヤンキース戦中継を独占するケーブルテレビ局『YES(ヤンキース・エンターテインメント・アンド・スポーツ)』は来季以降、ニューヨークで巨人戦の中継を検討中。来週にも来日するヤンキース球団幹部と放映権の“バーター”について最終協議を行う予定だ。」

※ 日テレがメジャーの放映権を断念したそうです。放映権を持たない日テレが,HNKに譲渡を申し込む動きがあったそうですが,視聴率が稼げないためやめたそうです。今年のNHKでのメジャー中継最高視聴率は6%で,日テレは通常の番組でもこれ以上の視聴率を稼いでいるためという理由だそうです。日テレが狙っているのが情報番組内での独占映像による速報だそうです。このためには,所属球団の許可が必要なため,氏家会長は「話し合いの糸口をつけるという意味では、松井君が巨人と業務提携を結ぶヤンキースに行ってくれるのが望ましい」と要望してるそうです。(2002/12/03スポニチ)

どちらも姑息ですね。

up

153(2002/11/17)  メディアとスポーツ 最終章

メディアとスポーツの関係を扱ったものに最近出た「スポーツを殺すもの」(谷口源太郎著 花伝社 2002.10.13刊 1800円税込み)が非常に参考になります。「スポーツを殺すもの」というあまりに過激で挑発的すぎる(著者)タイトルですが,このタイトルには著者の思いが込められています。以下,本書のあとがきからの引用です。

「日常的にテレビから流されるスポーツ報道を単に消費する(感動したり,熱狂したりして)だけでなく,その裏に錯綜した思惑が隠されていることを知らなければならない。なぜなら,そうした思惑に影響されてスポーツ世界に多くの深刻な影響が起きているからである。」「平和な社会をつくることにこそ,もっとも尊重されるべきスポーツの生命がある。しかし,国家主義(ナショナリズム),勝利至上主義,経済的利益追求主義などによって,そのスポーツの生命が無残に殺されている。その現実を歴史的に検証し批判することによってしかスポーツの生命を救う道は見出せない,と私は考える。」

スポーツを殺すものの正体はとは何か。現代において,その主役はメディアです。日本のプロ野球も,誕生の時からそのメディアと密接な関係にありました。メディアは,プロ野球を娯楽産業として普及発展させましたが,その一方でメディアは球界に深刻な影響を与えてきました。

「いまさらいうまでもないことだが,巨人中心主義の球界構造は『読売新聞』・日本テレビの強力な影響力をバックにつくりあげられてきた。それらのメディアは,巨人戦は新聞の拡販材料であり,テレビ視聴率を稼ぐ商品としか考えていない。そして,メディアは,あの手この手の演出を凝らして強引にスターをつくりあげたり,バラエティー番組化したりして娯楽としての商品価値を付加しようと必死になっている。これまで,こうしたメディアのスポーツへのかかわり方が球界で問題視されないままできた。改めてその問題を考えるべきであろう。
」「メディアが娯楽産業の一つとして直接球団を経営することは,とりもなおさず批判を規制し,その結果教育的役割が果たせないばかりか,より大きな障害を生みだすことになるのだが。」

プロ野球ビジネスから見ても,メディア企業が親会社になると,メディア収入の多寡が生まれ,これが球団財政の格差を生みだしてしまう危険性があります。ところが,一方では,読売グループ以外のメディアグループ(フジサンケイグループ,TBSグループ)が球団を経営することに対しては,読売グループに対する拮抗力として認められるのではないでしょうか。

今やメディアはスポーツと切ってもきれない関係にあります。このメディアとスポーツの関係がどうあるべきなのか。著者は参考として,英国の第三者機関による報告書を紹介しています。
「彼ら(BBCとITV)がするべきことは,人びとを楽しませることだけでなく,スポーツの基本原理を教え,理論だけ振り回す評論家気取りの視聴者の理解力を高め,そのうちのある人びとをスポーツに積極的に参加するよう鼓舞することである。」「しかし,批判的であることなしに教育的であることは難しく,もしスポーツとメディアの関係があまりに緊密であると批判することは困難な状況となる。(中略)大手テレビ局とラジオ局のスポーツ部が選手や組織委員と緊密な関係を保とうとすること,これらはすべて,メディアの果たすべき課題に対する障害を生みだす要因である」(『英国スポーツの文化』トニー・メイソン著,同文館出版刊)

とは言っても,メディアとスポーツの結合は,メディアとスポーツの関係を緊密にせざるをえませんし,スポーツにとってもメディアは不可欠なものになっています。
up


152(2002/11/16) テレビメディアがスポーツを変える 2

プロフェッショナル
テレビメディアと結びつく以前のスポーツ界でも,スポーツの専業化により国家アマ,企業アマ,学校アマという隠れプロが存在していました。このプロ化の動きに,テレビメディアとスポーツの結合が重なり,選手のプロ化が促進されます。テレビメディアによりスポーツ団体が巨額の報酬を得ているのに,肝心の選手が無報酬では道理に合いません。報酬のでない大会にはプロ選手や専業化した選手が参加しなくなってしまい,大会のメディア・ヴァリューが低下してしまいます。オリンピック,サッカーワールドカップと並ぶビッグイベントとしてIAAFが1983年に創設した世界陸上でも,選手側からの要求により97年のアテネ大会から賞金付きの大会となりました。因みに2007年の世界陸上の開催地に大阪市が決まったそうです。

ドーピング
選手側もテレビメディアからの報酬の分配を受けられるようになると,スポーツとテレビメディアとの結合体制の影響を受けるようになります。大会での勝利が高額な報酬をもたらすようになると,薬物の力を借りてでも勝利しようする動きも出てきました。といっても,ドーピングの問題は,東ドイツなどの国家主義による汚染の方が問題でしたが,国家アマの減少に伴って,テレビメディアとの結合による商業化に起因することが顕著に成っています。ドーピングの問題はプロの世界でも同じで,今年まとまったメジャーリーグの労使協定には「ステロイド系の筋肉増強剤を規制するための薬物検査の導入」というドーピング検査の項目が含まれています。

up

151(2002/11/15)  テレビメディアがスポーツを変える

スポーツとテレビメディアの結合により,スポーツはスポーツの持っているメディア・ヴァリューを放映権料,スポンサーシップ,ライセンス手数料といった形で収入化することが可能となります。収入化という点では,新聞メディアは通常スポンサーシップという形で関わることになります。

腐敗とバブル
テレビメディアと結びつく以前の,IOCというスポーツイベント主催団体やFIFA,IAAFなどの競技団体といったプロ組織を除くスポーツ団体は,ボランティア組織に近いものであり,会計上,財政上のチェック機能も甘いものでした。アマチュア・スポーツの時代は,資金力に乏しくそれで十分だったのです。ところが,テレビメディアと結びつくことにより巨額の資金がこれらスポーツ団体に入るようになっても,チェック体制は従来のままでした。このため,テレビメディアと結合したスポーツ団体の内部組織は腐敗への途を歩むことになります。これに対し,プロ組織はもともと興行団体であり,通常,企業として財政上・会計上のチェック体制が確立しており,内部組織の腐敗は発生しにくいといえます。とはいっても,欧州サッカーのような地域クラブ的なプロスポーツは,財政上のチェック体制が甘くなり,バブルが発生することがあります。テレビメディアはスポーツ組織の変更を迫っています

サバイバルと淘汰

すべてのスポーツがテレビメディアと結びつくものではありません。結合できるのは視聴者を獲得できるスポーツだけです。オリンピックというのは,スポーツの品評会みたいなもので,オリンピック種目はメジャーで,非オリンピック種目はマイナーだと評価されます。オリンピック種目になれば,競技の知名度も上がり,単独でのテレビメディアの結合も可能となります。ところが高額な放映権料を支払うテレビメディアとしては,人気のないスポーツやテレビ放映に適していないスポーツは邪魔になります。そこで,スポーツのルール変更やオリンピック種目からの削除という問題がでてきます。バレーボールのサイドアウト制をラリーポイント制にしたのは有名ですし,野球・ソフトボール・近代五種の三種目をオリンピック種目から削除するという提案が現在なされています。テレビメディアはスポーツのルール変更を迫っています。

up

150(2002/11/09) スポーツ団体の腐敗とチェック機能(2002/11/11修正・加筆)

近代スポーツは特権階級であるアマチュアのスポーツとして生まれました。国民国家の成立とともに国民国家のスポーツとして普及発展していきます。国民国家のスポーツとして近代スポーツは,国家や政治と大きく関わってきました。オリンピックやサッカー・ワールドカップもその例に漏れませんでした。最も典型的だったのがヒトラー・ナチズムの国家主義に利用されたベルリン・オリンピックでした。

このベルリン・オリンピックでは,映像メディアが初めて表舞台に登場します。オリンピック記録映画「民族の祭典」「美の祭典」は有名ですが,テレビ中継がはじめて行われたのもこのベルリン大会だったそうです。スポーツと映像メディアは国威発揚のため利用されたのです。因みに聖火リレーや国旗掲揚もこの大会から始まりました。
http://www.firstberlin789.de/imbn2001/092001/main/fs9_11.htm

戦後の大衆消費社会が成熟期の70年代80年代をむかえると,市場の国際化と相まって企業によるマーケティング手段としての広告宣伝も国際化してきます。この広告宣伝の媒体となったのがテレビメディアとスポーツでした。テレビは衛星中継により国境の壁を越え,スポーツという国境のないイベントは,世界的規模での広告宣伝に合致するものでした。スポーツと映像メディアは,今度はビジネスのために利用されるようになります。

それまでおカネにならないと思われていたオリンピックやサッカーワールドカップは,テレビメディアと多国籍企業と結びつくことにより,おカネのなるイベントに変わったのです。このため,IOCやFIFAといったスポーツ団体は,急速に利権団体へと変わっていきました。チェック機能の持たない利権団体は自浄能力がなく腐敗を招きます。IOCもFIFAも,ご多分にもれず腐敗してしまいました。JOCも同様です。

内部にチェック機能を持たないスポーツ団体のチェック機関として期待されるのが,スポーツ・メディアです。ところが,この腐敗したスポーツ団体のスポンサーにメディアがなった場合,メディアは腐敗したスポーツ団体のテイクホルダーとしてその腐敗を追及できなくなってしまいます。

up

149(2002/11/06) キラーコンテンツとユニバーサルアクセス権

多チャンネル時代,キラーコンテンツとなるのは,大衆が熱狂するスポーツが一番です。ところが,スポーツがメディアによって独占され有料化されると,経済的に恵まれないファンは,そのスポーツを見ることができなくなります。ユニバーサル・アクセス権とは,このアンチテーゼとして出てきたもので,誰もがテレビを見ることができる権利のことです。従来無料放送であったものが有料化されると,視聴者は必ず減少します。減少した数だけ,ユニバーサル・アクセス権が奪われたことになります。

スポーツは,多くの人に受け入れられ公共性が高いものとして考えられています。国や自治体が競技場や体育館を建設するのも,スポーツに公共性があるからです。先のFIFAワールドカップ韓国・日本大会では,有料衛星放送のスカパーが放映権を獲得し,ユニバーサル・アクセス権が注目されました。ワールドカップは公共性が高く,開催のためには,政府や多くの自治体の協力を受けています。ところが,このワールドカップの試合が有料放送により独占されると,会場整備等に多額の税金を使っているのに,一般の国民が試合をテレビで見ることができないという事態が生じてしまいます。

結局,NHKと民法によるジャパン・コンソーシアムも放映権料を負担することにより,64試合のうちの約3分の2を,NHKや民放で放送することになりました。ところが,横浜国際総合競技場で行われた3試合のうち日本戦を除く2試合は,地上波で放送されませんでした。横浜国際総合競技場の建設費603億円の65%393億円を横浜市が負担しているのにです。

従来無料放送だったものが,有料化されれば視聴者数は必ず減少します。それにつれ,露出が減り,広告効果も減少してしまいます。ワールドカップの広告看板の価値は日本では3分の2に減少したことになります。

up

148(2002/11/05) 多チャンネル時代のスポーツ

多チャンネルになれば当然,それだけの番組(コンテンツ)が必要になります。そうはいっても,ドラマやドキュメンタリーは簡単に制作することはできません。そこへ行くとスポーツというコンテンツは,既製の試合を中継するだけで足り,メディアにとって簡単で安価なコンテンツといえます。

スポーツの価値はプレーの瞬間にあり,スポーツは常に新鮮さを失いません。スポーツは毎日試合を中継しても同じ内容にはなりません。多チャンネル時代のテレビメディアにとって,スポーツ中継は,大量のコンテンツを確保することができます。

また,多チャンネルのターゲットは,マス(大衆)ではなく,ある特定の集団です。料金を払ってまで視聴しようとする集団です。 スポーツにはスポーツ観戦という,有料観戦の習慣があります。スポーツファンには,スポーツ観戦の習慣性もあります。スポーツファンは,有料・多チャンネルのターゲットになりやすい特徴があります。

テレビメディアの有料化には,ペイパービューとサブスクリプションサービスがありますが,見放題の後者の方式が一般的です。サブスクリプションサービスは,いわばパック料金であり,その売り込みのためには,目玉となる商品が必要になります。これがキラーコンテンツです。そして,スポーツは,キラーコンテンツとしての特性を持っています。より多くの人に加入してもらうためには,多くの人に受け入れられる大衆性が必要ですし,契約という行動を起こさせるためには,インパクトとなるリアルタイム性が必要です。スポーツは,このどちらも備えています。大衆性というのは,多チャンネルのターゲットと矛盾しますが,キラーコンテンツにとっては必要なものです。この矛盾がユニバーサル・アクセス権という問題になります。

up

147(2002/11/04) テレビとスポーツの関係 2

ラジオやテレビという放送メディアは情報を電波を通して伝達します。電波の周波数は限られており,電波は公共物として使用に当たっては政府の許可を必要とします。また,放送メディアは,情報操作商品を扱う社会的責任及び公共物の電波を占有することから,電波法及び放送法により集中排除原則がとられています。放送局が政府の免許制である点が新聞社とは全く異なる点です。

放送メディアも80年代米国のケーブルテレビの普及,90年代の欧州の衛星放送の出現により,これまでの商業放送や公共放送とは異なる有料放送が出現します。この有料放送には,番組ごとに課金するペイパービューや一定の料金を支払えば番組見放題のサブスククリプションサービスがあります。初期には,映画館スタイルのペイパービューが注目されましたが,実際にはサブスクリプション・サービスが主流です。

有料放送が出現する前,テレビとスポーツの関係は,テレビにとってスポーツは視聴率を稼げる有料コンテンツであり,スポーツにとってテレビは,パブリシティであるとともに新たな収入を生む金の卵でした。その収入の源泉は広告料です。商業放送が主流だった米国では,CMスポンサーの広告料が放送局の放映権という形でスポーツ団体に収入化します。公共放送が主流だった欧州では,テレビ中継で写る競技場の広告看板がスポーツ団体の収入源となりました。日本では,企業が広告宣伝を目的に直接スポーツを所有・運営するようになります。ただし,日本のケースは新聞メディア時代からの延長と考えられます。

商業放送にしても公共放送にしても,従来誰もがテレビをみることができました。ところが,有料放送が出現すると,これが危うくなってきます。有料放送の出現の背景には,地上波マスメディアからケーブルテレビや衛星放送・通信放送といったニューメディアの登場とそれに伴う多チャンネル化があります。これが映像マルチメディア時代の先駆となるわけです。ケーブルテレビや衛星放送・通信放送は,そもそも地上波の難視聴対策として始まったものですが,アナログ回線でも地上波を上回るチャンネルの確保が可能となり,一気に多チャンネル時代に突入します。とはいっても,これらが地上波を脅かす地位につくには時間を要し,米国のケーブルテレビでトップのスポーツチャンネルESPNも,地上波の脅威となったのは90年以降です。マードックのBスカイBがスポーツチャンネルの有料化を開始するのは92年以降の話です。

多チャンネル化は,いままで視聴率を稼ぐことができなかったものも,放送を可能にしました。日本の有料衛星放送スカパーでは,地上波ではほとんどお目にかかれないパシフィック・リーグの試合をほぼ全試合見ることができます。とはいっても,マイナーコンテンツだけでは巨額の投資を回収するだけの受信契約料を確保することはできません。そこでキラーコンテンツといわれるメガスポーツイベントやトッププロスポーツリーグの囲い込みが起こります。代表的なのがBスカイBによるイギリスプレミアリーグの独占放送。最近の話ではスカパーによるFIFAワールドカップの独占契約があります。多チャンネルは,普段,テレビに映らないコンテンツを,お金を払ってもみたいと思う人がいれば,見ることができるようにしてくれました。ところが,最も視聴率を稼げるキラーコンテンツの独占契約は,お金を払えない人は,そのキラーコンテンツをみることができなくなるといった状態を生みます。

up

146(2002/11/03) テレビとスポーツの関係 

テレビは報道機関であるとともに娯楽機関です。スポーツ観戦も娯楽です。テレビのスポーツ番組は,競技場でのスポーツ観戦の代替となる娯楽商品となります。テレビのスポーツ番組は,スポーツと競合関係にあります。

報道機関と娯楽機関の両面をもち,同じマスメディアといっても新聞を遙かに超えた広告宣伝効果を持っています。このため,テレビは全面的に広告収入に依存する無料放送が可能となります。この中では視聴者が稼げる番組(コンテンツ)が,価値=メディア・ヴァリューをもつことになります。その中で,公共性のあるスポーツは,報道性と娯楽性を兼ね備え,テレビにとって視聴率が稼げるコンテンツ(番組)となります。

一方,情報操作可能なメディアが,全面的な商業放送に依存することに危惧があり,NHKやBBCに代表される公共放送も併存しています。80年代までは,米国では商業放送が,欧州では公共放送が主流で,日本では公共放送のNHKと商業放送の併存体制になっています。

成熟した大衆消費社会において,企業による広告宣伝は重要な商品のマーケティング手段です。テレビというマスメディアに多額の広告宣伝費が投入されるようになります。このため視聴率を稼げるコンテンツの価値は,メディア・ヴァリューが高まります。競合関係にあるスポーツをテレビで放送するには放映権料が必要になります。この放映権料がメディア・ヴァリューの高まりとともに高額化していきます。

テレビ放送というのは,情報を遠隔地に伝達することができ,基本的に地理的な限界はありません。ただし,新聞と異なり時間消費型のサービスであり,時間的な限界は持っています。これがマルチメディア時代になるとビデオがパッケージ化されたり,マルチチャンネルにより再放送されたり,時間的な限界を超えるようになります。

地理的な限界を超えるテレビ放送は,スポーツ興行が持っている地理的マーケットの限界を超えた新たなマーケットをスポーツに提供してくれます。このため,従来スポーツ団体にあった成長の限界を破壊することができたのです。こうなると競合関係にあったテレビとスポーツは共生関係に変化します。しかし,結果的には,スポーツが大きくメディアに依存する関係ができてきます。そして,また,テレビはスポーツについては報道機関であること忘れてしまう場合が出てきました。

up

145(2002/11/02) MLBが堕落していてるのなら,NPBはそれ以上に魅力を喪失している

11月2日付けスポニチよると読売巨人軍のナベツネオーナー,松井選手に対し「オレの希望を言えば」と一応一言断っていますが「ヤンキースで一旗揚げてほしい」と権利もないのに,ヤンキース入りを強要していますね。そのヤンキースと読売巨人軍は,いよいよ業務提携を結ぶようです。来週末にはヤンキースのランディー・レビン球団社長(46)が来日するそうです。

どうせヤンキースのオーナーは数年で飽きるだろうから,また,松井選手が日本に戻ってくることを考えて,業務提携先となるヤンキース入りを企んでいるんでしょう。実質的なレンタル移籍です。そううまくことが運ぶか分かりませんが。

メジャーについてさらに「メジャー、メジャーと言うが、ワールドシリーズを見ても投手のレベルは相当に低い。松井君も50本以上はいけるよ」「それにアメリカは労使論争ばかりやっているから、各球団ともガタがきている。アメリカの野球は社会主義的な堕落をしているんだ。いずれメジャーは滅びる。まあ滅びかけているメジャーを松井君が救いにいくのはいいんじゃないか」

メジャーリーグのレベルが低下について野球を知らないナベツネさんに言われたくないですよね。米国の野球が社会主義的な堕落をしているといっていますが,米国の野球が堕落してきたのは社会主義になりけれなかったからです。プロスポーツはリーグ戦興行共同体で,リーグはひとつの事業体として行動しなければうまくいかない。特にスポーツ間競争,リーグ間競争が熾烈な米国では,なおさらです。そのまとまりが薄かった,つまり,ナベツネ流に言えば社会主義的になれなかったため,NFLというリーグブランドをフラッグシップに推し進めているフットボールにベースボールは人気面で後塵を拝することになったのです。

そして,今回松井がメジャーリーグに亡命するのも,NPBが社会主義的でないからです。NPBは,NPBとしてのブランドイメージの確立を全くしてきませんでした。盟主と名乗る読売巨人軍は自分のことばかりしか考えず,日本のプロ野球全体の魅力の低下に何の対策も講じてきませんでした。野球場もしかりです。いつの間にか,日本のプロ野球の球場は人工芝,ドームが主流になってしまいました。人工芝は選手の選手寿命を縮め,好プレーを阻んできました。松井はハイテク人工芝に対しても「人工芝は人工芝」といっています。

松井がメジャーを目指すのは,メジャーには魅力があって,日本のプロ野球には魅力がないからです。この人材の流失は何も野球に限ったことではありません,日本全体の課題ではあります。その松井が目指すメジャーも米国本土では,社会主義的になりきれなかったため,人気が凋落しています。先のワールドシリーズ,エンゼルス対ジャイアンツの視聴率12%は,NFLのレギュラーシーズンの平均視聴率なみです。全国的な人気でも1位のNFLの27%に対し,MLBは14%です。1985年のときNFLが24%で,MLBが23%だったのにです。こんな,MLBでも,松井をはじめ,新庄,野茂は魅力を感じ海を渡ったのです。

up

144(2002/11/01) 読売巨人軍優勝そして松井メジャーへ   

読売ジャイアンツが西武ライオンズに4連勝し,日本シリーズを制しました。当初,接戦を予想する向きもありましたが,実際は読売ジャイアンツの圧勝でした。セントラル・リーグの優勝や日本シリーズの優勝により原辰徳監督の名将説も出ています。原監督はこれはプロローグに過ぎず10連覇を目指すそうですが,果たしてどうなるのでしょうか。

ここで,私がHPやメルマガで書いた法則を再掲してみましょう。

第一法則 球団の成績は,球団の戦力に依存する。
 これは,各球団のマネージメント能力,スカウティング能力,コンディショニング能力が同等と仮定した場合です。実際には,各球団のマネージメント能力等には差があり,必ずしも球団の成績は戦力に依存する分けではありません。

第二法則 球団の戦力は,球団の資金力に依存する。
 これは,選手の入団の動機が金銭によるものだけと仮定した場合です。実際の選手の入団動機には,選手の出場機会,球団の育成能力,球団施設,球団の評価などの要因も含まれます。

資金力と人気を有する球団が,スカウティング能力,コンディショニング能力,マネージメント能力を高めた場合,資金力もなく人気もない他の球団はどうしようもない。今回の優勝の礎は10年前のナベツネ反革命に遡ります。

1992年にナベツネこと渡辺恒雄氏が読売新聞社長に就任すると,巨人は1リーグ制を脅しに使い保留条項とドラフト制による野球カルテルの改悪を球界に迫ります。

1993年Jリーグがスタートし,ブームが起きると,自らプロ野球の危機を演出し,長嶋茂雄氏を巨人軍の監督に復帰させ,フリーエージェントとドラフトの逆指名を勝ち取ります。これが,ナベツネの反革命です。

逆指名で上原,高橋由,高橋尚,二岡をとり,FAで落合,広沢,清原,江藤,工藤をとり,戦力を補強しますが,長嶋監督時代は1994年と2000年の2回しか日本シリーズを制することができませんでした。これは,資金力があってもスカウティング能力,コンディショニング能力,マネージメント能力が相応になかったことがあげられます。これは,この10年間に4度日本シリーズを制したヤクルトスワローズの関係で見れば顕著です。ヤクルトは巨人とは逆に広沢,吉井,川崎と4番・エースをFAで失っていながらの優勝です。

ところが,今年は長嶋監督から原監督に代わったため,最大の課題であったマネージメント能力の問題が解消されると第一法則のとおり,独走による優勝でした。いつの間にか身につけていたスカウティング能力によりドラフト1位の高卒ルーキー真田投手も,1年目から活躍しました。
1年間を棒に振るような選手もなく,桑田・工藤というベテラン選手の活躍などコンディショニング能力も高かったといえます。そして,逆指名とFAでかき集めた選手達もここにきてようやく成果を発揮しました。日本シリーズでは,第1戦の先発上原と第4戦の高橋尚は逆指名,第3戦の工藤はフリーエージェント,おまけに第2戦の桑田はドラフトの抜け道を使って獲得した選手まで大活躍です。

しかし,その背景には,ナベツネの反革命とMLBの膨張政策による他球団の弱体化があります。セントラルリーグでは広島が4番打者を失い,横浜はバッテリーを失い,ヤクルトは4番とエースを失っています。パ・リーグでは,西武が4番を失い,近鉄・ロッテ・ダイエーがエースを失っています。オリックスはイチローを失っています。

そして11月1日巨人の4番松井秀喜選手がFAによるメジャー行きを宣言しました。

up


143(2002/10/30) 新聞とスポーツの関係

新聞とスポーツの関係ですが,新聞の試合予告や試合結果の報道は,スポーツにとっては格好の宣伝になります。無料の宣伝,つまりパブリシティということになります。新聞にとっては,ファンや関係者がそのスポーツの載っている新聞を買ってくれるということで新聞の購読者の拡大につながります。これが,スポーツと新聞の補完関係です。新聞は,リアルタイムに試合を伝える能力がないため,スポーツと競合関係にはならず,相互補完の関係が成立します。これに対し,テレビは,スポーツの試合中,試合の映像を茶の間にリアルタイムで伝えることができるため,「見る」という点でスポーツと競合することになります。NFLのブラックアウトルールも元はといえば,試合の集客を優先するルールだったはずです。MLBのドジャースは,観客が減るからと長い間,ホームゲームの地元中継はしてきませんでした。

新聞とスポーツは,次の段階に入ると,パブリシティからスポンサーシップや広告宣伝に替わっていきます。スポーツが新聞の売り上げに影響することが分かるとスポーツを積極的に支援するようになります。新聞社は,スポーツ団体が,独力で試合を開催できなければ資金を提供し,スポーツイベントを協賛したり,場合によっては主催したりします。スポンサーシップや広告宣伝の形で,新聞社とスポーツ団体との間に補完関係の上に金銭関係が生まれることになります。ここで,報道機関としての新聞とスポーツ団体との関係が問題になってきます。もし,そのスポーツ団体に不正や悪影響があった場合,新聞社は正しい報道ができるのかどうかという,メディアの社会的責務の問題です。

新聞にも公共性があります。スポーツにも公共性があります。一見,公共性のある新聞社が公共性のあるスポーツを支援することは,道理に叶っているように感じます。ところが,新聞社はスポーツの公共性を隠れ蓑にして新聞の公共性を歪め可能性を持っています。実際歪められた関係にあるのが高校野球と朝日新聞の関係,プロ野球(巨人)と読売新聞の関係です。この関係を知っていればワールドカップと朝日新聞やJOCと読売新聞のスポンサーシップが危惧されるのも当然です。スポンサーになると優先的な取材が受けられ,特ダネや詳細な報道が可能となります。一方で,スポーツ団体にとって都合にいいことばかりを報道する危険性ももっています。逆に,新聞社にとって都合のいいようにスポーツ団体の公共性が歪められる危険性もあります。この点は放送メディアの場合の方が顕著ですが,新聞社の場合も可能性があります。

新聞社によるスポーツイベントやプロスポーツチームへのスポンサーシップは,好ましいとは言えないし,控えたほうがいいのかも知れませんが,避けて通れない問題ではないでしょうか。同じ,報道機関であるテレビが既に放映権という形で,スポーツイベントやプロスポーツチームとの直接の関係が生まれているのですから。新聞社だけダメということはできないでしょう。とはいっても,新聞社には報道機関としての社会的責務があります。これを倫理というのなら,新聞社は常に高い倫理性が求められます。少なくとも,報道と営業の間には,ファイアーウォールが必要になります。
up

142(2002/10/30) メディアとスポーツの関係

メディアとは,
情報を伝達する媒体のことで,特に新聞やラジオ・テレビといった社会に情報を大量に伝達する媒体,マスメディアのことをいいます。一部の限られた情報を広く社会に伝えることがマスメディアの役割だといえますが,メディアは,情報をただ伝えるのではなく,加工をして伝達します。つまり,情報は,メディアによって操作可能であり,実際,広く操作されています。これが政治的に利用されればプロパガンダとなり,商業的に利用されれば,商業広告となります。情報操作が可能であるが故に,社会性を有するメディアは,公共性を持ち,社会的責務を負うことになります。

報道機関と娯楽機関
メディアと同様に使われることばにジャーナリズムがあります。ジャーナリズムを辞書で引くと「新聞・ラジオ・テレビなどの,報道や娯楽機関(の事業)」とあります。テレビでいえば,報道はニュース,娯楽番組はドラマやバラエティで,スポーツは報道と娯楽の二面性を持っているといえます。新聞にも,4コマ漫画や新聞小説など娯楽記事もありますが,ほとんどが報道記事です。新聞は活字メディアですが,活字メディアの娯楽面は,雑誌や書籍が担っており,新聞は報道が主力です。新聞には一般紙とスポーツ紙がありますが,スポーツ紙は一般紙に比べて娯楽性が高いといえます。これはスポーツ新聞が扱う情報自体が娯楽情報だからです。ただし,扱う娯楽情報は,あくまでも娯楽の事前情報や事後情報で,娯楽の代替にはなりません。この点が代替の娯楽となるテレビとは異なります。つまり,スポーツ紙も,新聞であり,娯楽情報を伝達する報道機関には違いがないということです。ところが,メディアとスポーツの関係上,問題のひとつがここにあります。スポーツ紙が,娯楽情報の報道しているのを,スポーツ紙自身が自分は娯楽機関だと勘違いしている点です。

テレビは報道機関プラス娯楽機関
新聞が原則的に報道機関であるのに対し,テレビやラジオといった放送メディアは,報道機関と娯楽機関の両面を備えています。新聞は活字メディアで,事前情報や事後情報を伝達できますが,現在情報を伝えることはできません。伝える情報も文字情報です。これに対し,テレビは,放送メディアで,現在情報をリアルタイムに,しかも,映像という形で提供することができます。新聞と放送メディアの代表格であるテレビとをスポーツで比較するとわかりやすいと思います。

新聞とテレビの相違
スポーツの新聞記事というのは,試合結果か,周辺記事,または試合の予告記事です。スポーツをリアルタイムに伝えることはできません。新聞は,スポーツ大会のスポンサーにはなっても,スポーツという商品を直接販売することはできません。これに対し,テレビ局は,スポーツ団体から試合を購入し,それを娯楽商品としてスポンサーや視聴者に再提供することができます。新聞はスポーツを所詮は報道としてしか捉えることはできないのです。これに対し,テレビはスポーツを娯楽商品として扱うことができます。もちろん,テレビ放送にもスポーツを報道するという報道機能はあります。また,現代は,映像マルチメディアの時代に突入しており,その代表格は,CS放送のスカパーです(将来的には,インターネットがこれに替わると思いますが)。スカパーには,ニュースチャンネルやスポーツチャンネルといった報道は報道,娯楽は娯楽といった専門チャンネルがあり,チャンネルごとに機能が特化しています。


メディアの広告宣伝機能とスポーツの公共性
スポーツとメディアの関係を具体的に論じる前に,それぞれの機能について考えてみたいと思います。メディアは,情報伝達する媒体であり,情報を操作することができます。この機能から広告宣伝機能というものが生まれてきます。テレビなどでは,この広告宣伝機能を使って,CMスポンサーから広告料をとり無料放送を実現しています。もうひとつ,メディアとスポーツの話を進める関係上必要なのが,スポーツの公共性です。スポーツの魅力は一瞬のプレーの中から生まれ,多くの人々を引きつける力を持っています。このため,スポーツは,特定の企業に結びつきにくく,一般性と公共性を持ちやすいといわれています。
up

141(2002/10/30) 史上最低の視聴率から読む

2002年度のワールドシリーズは,エンゼルスvsジャイアンツというワイルドカード同士のカリフォルニアシリーズになりました。平均視聴率は,シリーズ最低の11.9%。ただし,地元のサンフランシスコとロサンゼルスは40%を超えたそうです。今までの最低視聴率は,2年前のヤンキース対メッツのサブウェイシリーズの12.4%。このときも,地元のニューヨークだけは盛り上がりを見せていましたが,全米では冷めていました。去年の,Dバックスとヤンキースの東西対決は,15%。Wシリーズは地元で開催されるため,地域的に偏ると時差なのども影響し,地元以外のファンの関心をつかむことができないようです。(以上データはyahoo)

今や,米国においてナショナル・パスタイムといわれる野球も人気面(1995年ABCニュース)では,アメフト(35%),バスケ(16%)に次ぐ三番手の12%に下がり,レギュラーシーズンの全国視聴率(1999年度)も,NFLが11.3%なのに対し,MLBは2.4%でNBAの3.4%よりも低くなっている。全米ネットワークの視聴率は,ケーブルテレビなの普及により,年々低下していますが,MLB全体の視聴率低下は,著しいものがあります。これが,放映権料にも影響していて,ネットワークとの放映権料の1年当たりの比較でNFLが22億ドル,NBAが8億7787万ドルなのに対し,MLBは5億5850万ドルと低くなっています。(以上データは「史上最も成功したスポーツビジネス」)

この違いは,リーグの姿勢にもあります。コミッショナーというのは日本では,球界のもめ事を裁く仲裁人として法曹界の人間が奉られて,実際の運営はオーナー会議(の一部のオーナー)が牛耳っています。ところが,米国4大スポーツのコミッショナーは,そのプロスポーツリーグのCEO(最高経営責任者)であり,リーグビジネスのトップなのです。プロリーグは,リーグ戦興行を行う各球団の共同体です。共同体をひとつの事業体としてまとめ,リーグビジネスを推進するのがコミッショナーの役割です。NBAのスターン,NFLのタブリアブー,NHLのベットマンは,皆そうです。ところが,MLBのセリグ・コミッショナーは,ブルワーズの元球団オーナーで,オーナー会議の代表に過ぎないと言われています。MLBは,NFLやNBAに比べ,球団の力が強く,リーグビジネスで遅れをとり,選手会との関係もうまくいっているとはいえません。

とはいっても,MLBは,観客動員数7000万人で他のスポーツ(NFL1500万人,NBA2000万人,NHL2000万人)を圧倒しており,ローカル放送も球団の重要な収入源になっています。MLBは,NFLと異なり,ローカル放送はフランチャイズに帰属(NFLでは,ローカル放送もリーグ管理)しており,このローカル放送市場の規模がそのまま球団の収入格差,戦力格差へと繋がり球団間不均衡が発生し問題になっています。MLBは,NFLに比べ球団の力が強く,ナショナル・スポーツとしての地位を低下させています。一方,ローカルスポーツとして根強い力を依然としてもっています。

近年,選手の権利が高まり,MLBやNFLでもフリーエージェント制が導入され,選手への拘束が限定的なものになりました。選手への年俸,契約金はコストであり,選手への拘束の緩和は,選手コストの増加を意味します。このため,NFLやNBAでは,球団の選手コストを抑えるサラリーキャップ制が導入されています。ところが,MLBは,このサラリーキャップ制の導入に失敗し,球団間の自由競争の結果,選手の年俸,契約金の急騰を招いています。

球団間格差,赤字球団の増加は,MLBにとって深刻な問題となっています。このため,コミッショナーの権限を強めるため,アメリカン・リーグとナショナル・リーグの会長職と事務局を既に廃止し,MLBの権限を機構に集中する体制を作っています。収入の再分配制度も導入されましたが,球団の財政悪化を防ぐことができず,ついには球団削減の話まででてきました。

そんな中,2002年8月30日来季からのの新たな労使協定が合意されました。内容は「〈1〉独自収入の高い球団から低い球団へ資金を回す収入分配制度〈2〉選手年俸が一定額を超えた球団に対し、超過分に対する「ぜいたく税」を適用する課徴金制度〈3〉2006年までは球団削減を行わない〈4〉ステロイド系の筋肉増強剤を規制するための薬物検査の導入〈5〉協定期限内での世界ドラフトの実施〈6〉20万ドル(約2380万円)から30万ドル(約3570万円)への最低保証年俸の引き上げ――など。」

これにより,ヤンキースは「新協定の下では供出金が今季の2800万ドル(約33億3200万円)から5000万―5500万ドルに大幅に上昇する。」という。このため,今回の新協定にヤンキース1球団のみが反対したそうです。MLBもリーグビジネスへの傾斜を急速に強めていますが,ヤンキース独自の動きもあなどれません。「世界ドラフトの定義には日本も含まれる」とされなど日本への影響が懸念されます。

up


140(2002/10/24) TODAY’S BASEBALL WIND

まずは,スポニチの悪いニュースから。今年の5月台湾での公式戦を成功させた福岡ダイエーホークスは,来期の4月8,9日に予定していた台湾での公式戦を断念したそうです。これは,対戦相手に予定されていた西武ライオンズが難色を示したためです。今年の台湾での試合相手はオリックス・ブルーウェーブでしたが,試合後,オリックスの石毛監督はコンディションの調整の問題や高温多湿下の台湾での試合に不満を述べていました。西武が難色を示したのもこの点でしょうか。球団単独での海外試合の興行は難しいものがあります。本来なら,台湾の公式戦はNPB全体が取り組むべきものであり,少なくともパ・リーグだけでもバックアップが欲しかったと思います。野球の国際化・プロ野球の退潮が言われている今,台湾での公式戦は大切だと思うのですが。なお,ホークスは,「来オフにオール台湾と試合を3試合やります」ということです。(2002/10/24スポニチ)

次は,スポニチのいい話です。チーム再建を目指す横浜ベイスターズの話。どうやら,中国棒球リーグの
北京タイガースか天津ライオンズと業務提携をはかる計画があるらしく,早ければ来年2月の沖縄宜野湾キャンプで合同キャンプを行う予定だそうです。横浜ベイスターズもようやくアジアに目を向けた分けです。中国では「08年の北京五輪に向けた強化を見据え、今年4月に4球団によるリーグ戦が発足」しています。最下位の今季,観客減と年間指定席の売り上げ減に悩む球団が,球場に隣接する中華街繋がりで,「新たなファン層拡大を目指す」「球団関係者の1人は『長い目で見れば絶対にプラスになる』と話した」。とは言っても,中国野球との関係については,決して早いとは言えないのが実情です。また,「その一方で米大リーグの球団とも業務提携を結ぶ予定でカブス、デビルレイズの名が挙がって」おり「壮大な世界戦略プラン」ということですが,相手がちょっと疑問ですね。カブスは,勝率は.414でナショナル・リーグ中地区6球団中5位。デビルレイズは,勝率.342でアメリカン・リーグ東地区最下位(5球団中)です。因みにベイスターズは,.362でセントラル・リーグの最下位です。

一方報知の記事によればサミー・ソーサのいるカブスで決まりみたいです。カブスは横浜と同様にシカゴ・トリビューン紙というメディアがオーナー企業となっていることや,かつて横浜でプレーしたレオン・リー氏が傘下のマイナーで巡回コーチを務めていることからも「コーチ、選手の交換留学、移籍にも発展しそうだ」ということです。

話は替わって,ファイターズのニュースです。04年から北海道への移転が決まった日本ハム・ファイターズの今村純二新社長は,日刊スポーツの昨日(23日)の記事によれば,今オフ,「北海道212ある市町村を可能な限りおうかがいしたい」と「全道の自治体にあいさつ行脚を決行することになった」そうです。また,今日(24日)スポニチの記事によれば「全国区の人気獲得へ自社CMで大露出作戦を展開する」そうです。ファイターズも,積極的にチームの再建を図っています。さらに,「『球団が移転して町おこしのお役に立てればと考えています。私も家を移して北海道に腰を据えるつもりです』と語り、自ら先陣を切って地元に溶け込む姿勢を示した。」

最後はヤフーから。記事元は毎日新聞です。読売巨人軍から放送の業務委託を受けている読売新聞東京本社は,「
米ニューヨークのケーブルテレビ局「YES」が、今シーズンの巨人戦を録画放送することで合意したと発表した。4月27日の巨人―横浜戦など10試合を放送予定で、日本テレビが映像を提供する」とのことです。これは,現在読売巨人軍とヤンキースとの業務提携の話とは関係ないということですが,もともと,ヤンキースとの提携話は,読売本社を含めたもので,ニューヨークでの巨人戦の放送,日本での読売系によるヤンキース戦の独占放送など話が上ったみたいですが,海外でのメジャー球団の放送は,大リーグ機構が管理しており,個々の球団では契約できませんし,巨人戦も中継ではニューヨークでは観る人もいないしということで,試験的に録画放送という形に落ち着いたのかと思います。

なお,「メディアリサーチ企業のニールセン社は23日、米大リーグのワールドシリーズ第3戦のテレビ視聴率が全米平均で10.8%にとどまり、同シリーズの第3戦では史上最低だったと発表」しました。

up

139(2002/10/19) 中内オーナー外堀埋まる

ダイエー本社から今年の2月,株式の返還も求められていた中内正福岡ダイエーホークス・代表取締役オーナー。ずいぶん抵抗していますが,だんだんと外堀が埋められてきました。朝日の今日の朝刊によれば,中内オーナーは,株式の返還とオーナー職の返還には応じないが,今月末に球団の代表権を返上し,今後はオーナー取締役となり,名誉職的な性格が強くなると言うことです。今月の10日に,球場とホテルを経営する福岡ドームの社長など球団を除く全役職を退くことを表明していました。これにより,ホークス球団経営の最高責任者は,高塚猛・代表取締役社長兼オーナー代行ということになります。

今日の朝刊には,このほか,ダイエー本社の中間決算として,増益91億円,負債は4300億円減少という記事も,出ていました。ただし,売上高などの営業収益(単体)は,8124億円で前年同期比7.1%減ですので,減収増益ということです。本業の儲けを示す単体営業収益は,5.9%増の107億円で,目標値160億円を33%下回った。前年並みを見込んでいた既存店売上高が1.7%減だったのが原因という。負債の4300億円減という数字も,UFJなど主力3行の債権放棄によるもので,ダイエーの力によるものではない。ダイエー本社を取り巻く環境は依然厳しい。ということです。

その中で,創業者の息子である中内オーナーの風当たりは強いものがあり,ここにきて中内オーナーの代表権返上により,高塚体制がより明確になってきました。
up

138(2002/10/19) 北海道日本ハムファイターズ

牛肉偽装事件で大社義規オーナーが辞職し,球団社長の小嶋武士氏(59)がオーナー代行を兼務していましたが,18日付けで,チームの不振(最下位)の責任をとって社長を辞任し,後任に今村純二本社監査役(64)が就任しました。小嶋氏は,オーナー代行に専任し,連盟と国際問題を担当するそうです。小嶋氏は,日本ハムが,球団を買収した当時,大社前オーナーの秘書をしていて,当時業務提携したヤンキースにフロント留学の経験もあり,国際問題担当として残ることになったのでしょう。球団取締役にはこのほか,藤井良清本社社長(62)が新たに就任し,前社長の大社啓二本社専務は留任だそうです。今回の社長交代は「球団はシンボル的な存在。ファンあっての球団で、現状の閉そく感を改革したい」からだそうです。空席のオーナー職は,少なくとも来年3月の球団株式総会まで決めないとのこと。球団名については,日刊スポーツの記事によれば

        ***************************
今村新社長は移転にからむ新球団名について「北海道から温かく迎えていただいた。私見だが、1つの市ではなく北海道がいい。企業名? 本社から援助があってこそ」と話した。ファイターズの愛称も継続する意向で「これが最もポピュラーな考えだと思う」と感想を述べた。ただ、球団名が長くなってしまうこともあり「良いアイデアがあったら受けたい」とファンから意見を公募することも視野に入れ、柔軟に対応していくことも示した。新しい監督に外国人を招くなど、メジャー流を打ち出したこともあり、企業名を廃したシンプルなネーミングへの要望がファンの間から高まる可能性もある。
        ***************************

新監督には,レンジャーズでマイナー統括部長をしていたトレイ・ヒルマン氏(39)が内定しており,メジャー流の経営を目指しているそうです。球団は,今年,業務提携先をヤンキースから2001年のワールドチャンピオン,Dバックスに急遽変更しましたが,ヒルマン氏は,長年,そのヤンキースのファームで監督をしており,その実績から,次期監督を依頼したそうです。また,業務提携先の変更については,読売巨人軍とヤンキースとの提携話が絡んでいるといわれています。

up

137(2002/10/18) ベッカム効果

Jフォンのリーフレットの表紙にベッカムが載っていました。息子のケータイは,写メールがいいというのでJフォンです。。私はドコモですが。息子の使用料の通知に同封されていたのがベッカムの表紙のリーフレットでした。なんで,Jフォンにベッカムなのか?と疑問に思ったのですが,よく考えてみれば,Jフォンの親会社は世界最大の携帯電話会社のボーダフォンで,ボーダフォンはベッカムの所属するマンチェスター・ユナイテッドの公式スポンサーです。事実,リーフレットのベッカムは,ヴォーダフォンのロゴ入りユニフォームを着ていました。マンチェスター・ユナイテッドのユニフォーム・スポンサーは長い間,日本のシャープでしたが,数年前,ヴォーダフォンに替わっていました。

Jフォンのリーフレットを見ただけでも,これは,Jフォンの広告であるとともに,ボーダフォンの広告であり,さらにマンチェスター・ユナイテッドの広告であり,サッカーの広告でもことがわかります。もちろん,ベッカムの広告でもあります。ベッカムのユニフォームにはボーダフォンのロゴのほか,マンチェスター・ユナイテッドのもうひとつの公式スポンサーであるナイキのあのマークもあり,しっかり,Jフォンの広告でナイキの広告にもなっています。これはシナジー効果といえるでしょう。そういえば,プサンのアジア大会で北朝鮮のユニフォームにはしっかり,ナイキのマークが入っていました。北朝鮮は,米国にとってテロ国家のひとつであり,ナイキは米国の会社のはずなのですが。

※ リーフレットの裏を見たら,ボーダフォンとベッカムの関係が書いてありました。ベッカムの持っているチームの枠を越えた抜群の知名度に着目し,今回,ボーダフォンはベッカム選手とイメージキャラクターの個人契約を結んだそうです。今後は,「広告のみならずJ−スカイコンテンツなど様々なプロモーションで,ベッカムと,そしてマンチェスター・ユナイテッドとの,新たなコラボレーションが進んでいく予定です」とのことでした。コラボレーション,つまりシナジー効果をねらっていくと言うことですね。(2002/10/19)

ベッカムといえば,ワールドカップ後,夏場話題になっていたのは,マンチェスター・ユナイテッドと読売巨人軍の提携話でした。現在も,読売巨人軍は,松井の絡みでヤンキースとの業務提携の話が出ていますが,以下は,2002/08/20の日刊スポーツの記事です。

           ***********************************

巨人がベッカムと“合体”する可能性が出てきた。ヤンキースと業務提携を進める巨人がデビッド・ベッカム(27)が所属するプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドとも手を結ぶプランがあることが19日、明らかになった。先日のヤ軍アフターマンGM補佐との交渉では、球団レベルを超えてヤ軍を運営する「ヤンキーネッツ」と読売グループの提携に話が発展。ヤンキーネッツとマンチェスターUが提携している関係から、今後は欧州、米国、アジアのトップクラブが連携して事業展開する「世界戦略」を視野に入れている。

巨人とヤンキースの球団業務提携の背景に、グループ同士のビッグプロジェクトがあった。業務提携に携わるマネジメント関係者は「球団の話とは別に事業の意見やプランを出し合ってます。お互い提携のコンセプトにグローバルな視野での事業展開があるのは事実。具体化はしてませんが、将来的にビジネスの部分ではマンチェスターとの話も出てます」と明かした。

現在進められているコーチ留学や外国人獲得など、球団間レベルの提携は小さなもの。実はその一方で巨人、ヤ軍、マンチェスターUが手を結んで事業展開する「世界戦略」構想がある。正確には読売(巨人)、ネッツ(ヤ軍)、マンチェスターUのグループ提携だ。先日、ヤ軍アフターマンGM補佐がトップの意向を受け来日し、巨人首脳と交渉したが、読売新聞社事業部とも交渉。その際、ヤ軍を運営し、マンチェスターUと提携を結んでいる「ヤンキーネッツ」と読売グループとの提携にも話が及んだ。マンチェスターU側も、日本に注目している。最高経営責任者のピーター・ケニヨン氏は「世界的に市場を拡大する」と明言しており、アジア進出も視野に入れている。日本、香港、韓国に「マンチェスター・カフェ」の出店構想を発表してもいる。

日本、米国、欧州を代表するビッグクラブが手を結ぶことになれば、さまざまな波及効果が期待できる。しかもマンチェスターUにはサッカーW杯でヘアスタイルが社会的現象になり、日本での人気が絶大なベッカムが所属。互いのグッズ販売、スポンサー広告、放送権など、その経済効果やファンへのPR効果は計り知れない。種目を超えて、超人気選手のグッズ購入が容易になったり、巨人主力選手とベッカム、ヤ軍ジーターらのCM共演が実現することも考えられる。実際、米国進出の足がかりとして北米でマンチェスターUと米国代表との親善試合計画があると言われ、ニューヨークではベッカムグッズの販売やチームロゴの使用などが開始されている。ベッカムとジーターの共演によるPR活動プランも出ている。

年内中には巨人、ヤ軍が調印する方向。正式契約は同時にグループの提携を意味するもので、マネジメント関係者は「巨人とヤ軍が正式に手を結べば、グループ間でマンチェスターUとのプランが具体化する可能性はあります」と説明。トップクラブが連携してのプロジェクトが、具体化していくことになる。


           ***********************************
長い引用になりましたが,面白い記事だったので全文載せてみました。これも,シナジー効果ということができるでしょう。でも,ベッカムと読売巨人軍との関係はその後どうなったのでしょうか。
up

136(2002/10/15) 税金と広告宣伝費の話

プロ野球が親会社の宣伝機関であるという正式な位置づけは,昭和24年1949年税務署からプロ野球の損失は親会社の広告宣伝費として処理してよいと認めらてからです。これについては,小林至著の「プロ野球ビジネスのしくみ」(P161)でオリックス岡添社長がインタビューの中で証言しています。バファローズが商号から近鉄を外すことにしたが,球団名は大阪近鉄のままにすると言ったときの理由がこれです。

※ 国税庁のHPによると,法人税法の通達として「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について(法人 昭29.8.10)がでていました。昭和24年というのは昭和29年の誤りみたいです。通達の文書はHPには載っていませんでした(2002/10/19)
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sakuin/hyou/03.htm

9月6日のサンスポの記事によれば「来年からの名称変更は運営会社『大阪バファローズ』のみ。チーム名に『近鉄』が残っていれば補てんは宣伝費とみなされ本社の損金に算入、法人税の対象外となる。チーム名から『近鉄』を外すと、年間補てん額の17億円は電鉄本社の利益増とみなされ、法人税の対象。約50%(7億5000万円)負担が増える。つまり、同額を補てんする場合、親会社は24億5000万円が必要となる。」とあります。

とはいっても,球団が親会社名を外したからといって,赤字補填分を全額,広告宣伝費としては認めないということはないはずです。球団名に親会社の名称を付けていない例にJリーグがあります。Jリーグの大半は赤字で親会社から支援を受けています。この構造はプロ野球とはあまりかわりはありません。「日本サッカーはほんとうに強くなったのか」(大住良之・後藤健生著 中央公論新社 税別1500円 2000年9月10日発行)の中(P80)でJリーグクラブの収支決算の話がでてヴェルディ川崎社長坂田氏(当時)が「親会社(日本テレビ)はこの9億5000万円の支援額について大変不満を持っています。と言いますのは,われわれのクラブに援助してくれているお金を税務署が宣伝・広告費としてみてくれる額の上限は5億円ぐらいだろうと。税務署は税収を増やすために企業に対していろいろと攻撃をかけてきておりますから,5億円以上は認めなくなる時代が,あと1,2年で来ると親会社は見ているわけです。そうなると残りの4億5千万円は贈与と見なされ,控除されるのではなく,より税金を取られてしまうことになる。」

つまり,球団名に企業名を名乗らなかった場合,親会社の広告宣伝費として認めてくれるの5億円までで,企業名を名乗った場合は,全額広告宣伝費として認めてもらえるということです。

up

135(2002/10/14) 「スポーツ経済効果で元気になった街と国」

「スポーツ経済効果で元気になった街と国」(上條典夫著 講談社+α新書 税別780円 2002年5月10日刊)。今日紹介する本書も前回紹介した「スポーツイベントの経済学」と同じくスポーツ産業を扱った本ですが,なかでも特に経済効果について書かれた本です。「スポーツイベントの経済学」とは同じ時期に出版されており,どちらもワールドカップに合わせて出版されたものと思われます。本書には「日本,W杯(ワールドカップ)「ベスト8」で経済効果3兆3000億円」と出ています。

著者の上條典夫氏は1956年生まれの長野県人。電通の人間です。ですから同じテーマでも大学教授が書いた「・・・経済学」より,専門的な用語は少なく,読みやすいと思いますが,経済効果の話なので数字はよく出てきます。ただし,グラフや表が多用され見やすくなっています。原田宗彦氏の推計したスポーツ産業15兆円という話もでてきます。とはいっても,上條氏自体は7兆5千億円という数字を算出していますが。

面白い箇所があったので紹介します。クラブ経営の経営資源・経営要素として著者は「チケット収入」「放映権料」「スポンサー料」,グッズ販売などを含む「スタジアム関連収入」をあげています。アメリカ4大スポーツの場合として,「全リーグの収入内訳は一般的に,チケット収入が38%,スタジアム関連収入が16%,放映権料が39%,その他7%で構成されている」としています。この中に「スポンサー料」が入っていないのですがその理由として著者は「アメリカではクラブ経営に民間企業が直接関与しているイメージを嫌う文化的土壌があり,スポンサー料という項目をあげていないため」と指摘しています。では「スポンサー料」がないのかというとそういうことはなく,「放映権料」の中で扱う決まりになっているそうです。
130で紹介した 「史上最も成功したスポーツビジネス」の中で,NFLのオーナーは個人に限られ企業がなることができないと書いてあります。アメリカという国の何かこだわりが感じられます。

因みに,欧州サッカーの収入内訳についてはマンチェスター・ユナイテッドの例として「入場料収入が32%,テレビ放映権料が26%,スポンサー料が16%,スタジアム関連収入のうちグッズ販売が20%,施設使用料が6%」となっています。スポンサー料が多いの特徴です。

最後に,本書のまえがきを紹介します。
「メジャー・リーグにステージを移したことで内外に新たな社会的・経済的効果を及ぼしたイチローの例に限らず,ここ20年あまりの間に世界のスポーツ・イベントやスポーツ・リーグは大きく構造を変化させた。メディアの進化とグローバル化により,スポーツの資本化が飛躍的に進行し,パラダイム・シフトが喚起されたのである。いまやスポーツは,ヒト・モノ・情報が集約された,大きな可能性を秘めたビッグビジネスへと変貌を遂げた。肥大化し複雑化したその構造は,スポーツがアマチュアリズムと断ち難く結びついていたかつての姿と隔世の感がある。本書では地域社会や世界経済と密接に結びつき,大きな波及効果を生むまでに成長したスポーツの姿を,さまざまなデータや事例をもとに読み解き,その輪郭をスケッチしようと試みた。(略)これからの都市や経済の発展にスポーツをどのように活用すべきなのか。あるいは地域と市民に根ざしたスポーツ文化をいかに育み根づかせればよいのか。そして,アメリカではすでに自動車産業や電機産業を抜くまでに成長したスポーツ産業としてのダイナミズムを,低迷する日本経済にいかに取り込めばいいのか。そうした問題意識に対するヒントをひとつでも提示できれば幸いである。」

up

134(2002/10/12) 「スポーツイベントの経済学」

今回は日本のスポーツビジネス第一人者,大阪体育大学教授・原田宗彦氏著の「スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」(平凡社新書 740円税別 2002年6月19日刊)です。本書の表表紙の袖には「スポーツビジネスのシステムが完成した1980年代以降,メガ・スポーツイベントは巨大産業化の一途をたどっている。一方,ギリシャ・ローマの時代から都市とスポーツは密接な関係を持ち続けた。巨大産業化と都市経済活性化,それはいま実りある関係構築を迫られている。W杯の遺産(レガシー),どう活かすか?ホームチームのこれからは?都市再生のスポーツ経済学入門」と紹介されています。本書は,スポーツによる都市再生の入門書で,いままで紹介したスポビズ本とは異なります。とはいっても,本書はプロスポーツリーグのホームチームと都市との関わりも書かれており,都市再生がプロスポーツの一つのビジネスチャンスであることを示唆しています。

「アトランタ工科大学がアトランタ五輪(1996年)の前年に行った調査では,アメリカのスポーツ産業は1520億ドルという巨大市場を持ち,国内産業別ランキングの11位に位置づけられた。この調査ではスポーツ産業は「スポーツエンターテイメント」「スポーツ製品」「スポーツ支援組織」の三領域とし,ツーリズムからイベント,そしてメディアからプロスポーツまで広い視点から分析している。(略)96年の調査から5年後,アメリカのスポーツビジネス誌が行った調査では2001年のスポーツ産業はさらに成長して1.3倍の1946億ドルとなった。」

1946億ドル,日本円に換算すれば23兆円を超える金額をアメリカのスポーツ産業は稼ぎだし,その4割がプロスポーツなど「見るスポーツ」の市場からと言います。著者はまた,わが国のスポーツ産業の規模を15兆円と推計しており,巨大産業化したスポーツを明確に位置づけています。

また,「スポーツイベントが巨大産業化されるにつれ,それらを都市活性化のキャタリスト(触媒)に用いようとする動きがより明確になった。製鉄業や繊維産業,そして造船業や石油コンビナートなど,近代都市を育てたモダンな産業に変わり,平和で公害を生まず,万人に愛されるポストモダンな産業を都市の再生や活性化に用いようとする動きが活発である。」とし,著者は,スポーツをポストモダンな産業と位置づけ,重厚長大産業が去って衰退した都市の再生の要としてとらえています。


著者は,都市再生のためのスポーツ事業として「プロスポーツ産業の育成」「メガ・スポーツイベントの誘致」「するスポーツをコンセプトとしたまちづくり」の三種類をあげ,プロスポーツ産業の育成については「都市をフランチャイズとするプロスポーツ産業の育成に関しては,地元でのゲームによる消費の誘導や,そのチームを求心力とする地域連帯感の向上,そしてチームの活躍による都市イメージの向上が期待できる。わが国では,野球のフランチャイズはかなり固定化されて移転することは簡単ではないが,サッカーの場合は地元のチームを育て,いつかはトップチームに参入させるという夢を育むことは可能である。事実,鹿島(アントラーズ)や磐田(ジュビロ)のように,サッカーチームによって地域の連帯感が向上し,地域のイメージが高くなった都市もある。」と述べています。

ところが,従来の伝統的なプロスポーツである大相撲やプロ野球が地域を単なる興行の場としてしか捉えておらず,プロ野球のフランチャイズということばも単なる本拠地占有権に過ぎないとし,チームやクラブを地域と一体になって育てていこうとするJリーグのホームタウンと異なることを指摘しています。

プロ野球にとって,地域は興行の場でした。ところが,親会社の宣伝媒体としてのプロ野球は,その存在すら忘れてしまったようです。プロ野球にも都市再生のためのポテンシャルが残っています。宣伝媒体としてのプロ野球が曲がり角に来ている今,本書は,一つの方向性を示してくれます。


内容は
第1章 スポーツと都市の深い関係 1 古代都市とスポーツ 2 近代都市とスポーツ
第2章 メガ・スポーツイベントと都市 1 スポーツイベントと経済効果 2 オリンピックと都市 3 ワールドカップと都市 4 たかが国体されど国体
第3章 スポーツが変えた海外都市 1 北米における都市とスポーツ 2 ヨーロッパにおける都市とスポーツ
第4章 プロスポーツが動かす都市 1 伝統的プロスポーツと都市 2 Jリーグが目指す地域とスポーツの融合 3 地域密着型プロレスの出現
第5章 都市活性化とスポーツ 1 都市衰退サイクルからの脱出 2 スポーツに親しむまちづくり

up


133(2002/10/08) 「メジャーリーグ・ビジネス大研究」

今日は「メジャーリーグ・ビジネス大研究 勝ち組球団にみる奇跡の経営力」(太田眞一著 太陽企画出版 1400円 2002年3月27日刊)についてです。著者の太田氏は1937年の東京生まれ。スポーツアナ・プロデューサー出身の大学教授(山梨学院大学)です。

本書は前回ご紹介した「メジャー野球の経営学」と異なり,文字どおりメジャーリーグのみを対象としており,しかもMLBビジネスに的を絞った最初の本といえるのではないでしょうか。従来のMLB本の中にもビジネスについて書かれた本は多いのですが,ほとんどがMLB自体の紹介や文化的側面についても扱っていて,純粋にビジネス本とはいえなかったと思います。ただし,「メジャー野球の経営学」がスポビズ専門書であるのに対し,本書はサラリーマン向けのビジネスノウハウ本という感じです。これは「勝ち組球団にみる奇跡の経営力」というサブタイトルからも読みとることができます。あとがきにも「・・・本書は,メジャーリーグの”いま”を伝えることによって日本の個人や組織が抱えるさまざまな問題に対してなんらかの解決のヒントを与えることができるのはないかと,自負している」と述べられています。これが本書のスタンスにもでてきています。

本書も今まで紹介してきたスポビズ本,プロ野球ビジネス本と同じように互助会的な組織運営方式としてプロスポーツリーグの持っている特殊性を言及しています。しかし,その理由は「弱者救済を余儀なくされる他のスポーツとの競争」というリーグ間競争のみに求めているところが意図的です。本書は,サラリーマンのビジネスのヒントにならないといけないわけですから,弱者の球団のことを書いても意味がないのでMLBの中でも,ヤンキースやダイヤモンドバックスなどの勝ち組球団のビジネスに的を絞っています。

本書の内容は
第1章 メジャーリーグ 勝ち組球団の経営に学べ!
第2章 メジャーリーグのマーケティング戦略 「マーケット」は企業努力で作っていくものだ!
第3章 メジャーリーグの財務戦略 財務に強いチームがワールドシリーズを制する!
第4章 メジャーリーグの人事戦略 「やる気」を引き出すノウハウがぎっしり!
第5章 メジャーリーグのマネジメント戦略 組織の盛衰はリーダーで決まる!
第6章 メジャーリーグの未来戦略 これが勝ち組の科学的マネジメントだ!

互助会的な制度に対して

「考えてみれば,強くて人気のある球団は自助努力で儲けたのにもかかわらず,その売り上げの一部を万年赤字球団に横取りされるのだから,オーナーにしてみれば面白くない制度ではないだろうか。実際,ここ数年,下位チームをメジャーリーグから除名しようという動きも出ている。何度勧告しても経営改善できない球団に対しは「仏の顔も三度」でこれ以上,他チームがサポートする義理はない。アメリカンスタンダードで考えれば,そこは自然淘汰の原理を発動すべきであるという意見が強くなるのも当然といえば当然である。」と述べています。

ところが,今年9月5日に承認されたメジャーリーグの新労使協定では「新協定の定める課徴金制度と収入分配制度により、5000万―5500万ドル(約59億5000万円―65億4500万円)もの供出金を負担することになるヤンキースだけが反対票を投じたが、29―1の賛成多数で承認され」「 新協定の主な内容は〈1〉独自収入の高い球団から低い球団へ資金を回す収入分配制度〈2〉選手年俸が一定額を超えた球団に対し、超過分に対する「ぜいたく税」を適用する課徴金制度〈3〉2006年までは球団削減を行わない」などとされ,「ヤンキースの収入、年俸総額とも大リーグ30球団で抜きんでているが、新協定の下では供出金が今季の2800万ドル(約33億3200万円)から5000万―5500万ドルに大幅に上昇する。」と言われています。

up

132(2002/10/06) 「メジャー野球の経営学」

プロ野球ビジネス,MLBビジネス本の決定版と言えるのが本書「メジャー野球の経営学」(大坪正則著 集英社新書 660円 2002年5月22日刊)です。著者の大坪氏の略歴は巻末によると,1947年の佐賀県生まれで伊藤忠商事のアメリカ駐在を経て1988年,NBAと契約締結,NBAのマネジメントを通してアメリカのプロスポーツリーグの経営学を学び,98年伊藤忠を退社後,(株)ニッポンスポーツマネジメントを設立。これまでのコンサルタント先にニッポン放送スポーツ部とヤクルト球団があるそうです。

「新庄が「4番」を打った理由」がMLBを,「史上最も成功したスポーツビジネス」がNFLを,「プロ野球ビジネスのしくみ」がNPBだけを題材にしているのに対し,本書は,メジャー野球の経営学になっていますが,MLBをメインにアメリカ・プロリーグ・ビジネスすべてに共通する内容で書かれており,しかも,第4章で日本プロ野球の経営構造という章も設けられているなど,プロ野球ビジネスを知る上で必要なものがこの一冊に凝縮されていると言っていいと思います。

著者の見識の高さは,プロローグを見るだけでも分かります。2000年3月決算から導入された連結会計システムがNPBの経営に大きなインパクトを与えていることを指摘しています。実際,横浜ベイスターズの売却,読売ジャイアンツの独立子会社化,日本ハムファイターズの札幌移転,さらに大阪近鉄バファローズの商号から近鉄が消えるなど,今年になってその影響が立て続けに出てきています。

大坪氏も小林氏と同じように,プロ野球をはじめとするプロスポーツリーグの特殊性を指摘していますが,結論は全く異なっています。大坪氏は次のように書いています。

「プロスポーツリーグは不可思議な経済システムのもとに運営されています。プロスポーツリーグでは,自由主義経済が標榜する自由競争と自由価格の原理が機能しません。また,市場介入にも制限があります。しかし,プロスポーツリーグが完全な自由経済のもとで運営された場合,経営が成り立つでしょうか。異なと言わざるを得ません。

(略)自動車業界と比較してみます。トヨタ,日産,ホンダ,マツダが従業員数も同じ役員の数も同じにしなければならないルールはありません。四社の収益力に数十倍の格差が生じても自動車業界が騒ぎ立てることはありません。完全な自由競争の世界です。しかし,プロスポーツリーグでは,リーグから撤退する球団が出たり,球団間の収入格差が広がり過ぎると大変な騒ぎになります。

プロスポーツリーグでは,各球団は,自由競争と自由価格を制限した条件下で,それぞれが優勝を目指して競争する宿命を負わされています。プロスポーツリーグに求められる理想的競争とは,球団の戦力が等しく,どこの球団がペナントレースを制覇してもおかしくない状態での競争を指します。」

第一章 プロスポーツリーグの経営の特徴
第二章 データで見る日米比較
第三章 アメリカプロスポーツリーグの経営構造
第四章 日本のプロ野球の経営構造
第五章 プロスポーツリーグの営業活動
第六章 選手年俸にかかわる規制と緩和
第七章 プロスポーツリーグの重要な施策
第八章 プロスポーツリーグを支える裏方

up

131(2002/10/04) 「プロ野球ビジネスのしくみ」 

今日は,今話題の小林至本「プロ野球ビジネスのしくみ」(小林至&別冊宝島編集部編著 宝島社新書 700円税別 2002年7月発行)です。(一部内容が114と重複しています)

プロ野球ビジネスを取り扱っているサイトの運営者として,書店でこの本を見たとき,「とうとう出たか」と思いましたが,著者を見てちょっと怪しくなりました。とは言っても,ようやく出たNPBのビジネス本なので早速購入し読破。やっぱり,ちゃんと期待に答えてくれていました。日本で初めてのちょっと怪しいNPBビジネス本です。

なぜ,今回小林氏が本書を書くことになったかというとまず,今まで誰一人としてビジネスとしてのプロ野球を語ったものがなかったからであり,ビジネスという側面からプロ野球を考えたときに,ごくごく自然に湧き上がってくる「現在の球団経営がどのように行われ,どのような状況になっているのか」という単純な疑問を知りたいと思ったからだそうです。

小林氏の主張は,従来私が本サイトで何度も述べているものと酷似しています。

「プロ野球というビジネスを考える場合,絶対忘れてはいけないことがある。それはプロ野球ビジネスが興行の上に成り立ち,一つの球団単独では機能し得ないということだ。プロ野球の球団にとって,基本となる商品は「観客(視聴者)に試合を見せること」である。しかし,この商品は一つの球団だけで生み出すことはできない。つまり,巨人は対戦相手である阪神という球団があって初めて,巨人対阪神戦を,ヤクルトがあって巨人対ヤクルト戦という商品を売り出すことができるのだ。したがって,その意味では,各々の球団はグラウンド上でこそライバルとして機能するが,ビジネス上ではお互いの業績を大きく左右する運命共同体となる。一般の企業とは大きく異なるこのプロ野球ビジネスの特殊性を理解していないと,球団経営の本当の姿は絶対に見えてこない。」

これなど,私が主張している「プロ野球はリーグ戦興行共同体で,フィールドでは競争しますが,ビジネス上では協働する存在である」というものと同じです。ただし,氏の結論は肝心のところが異なっています。

プロ野球は「球団の親会社が野球という興行を通して利益を追求しているのだ。改めて言おう,プロ野球はビジネスである。」

確かにプロ野球はビジネスなのですが,氏によれば,プロ野球は親会社のビジネスということになります。氏は「日本のプロ野球ビジネスのしくみとは,球団の親会社のビジネスだ」という結論と言ってもいい部分を本書の冒頭の部分で述べてしまっています。ごくごく自然に湧き上がってくる単純な疑問をしりたいといいながら最初から結論を出しているのが本書です。ですから広島東洋カープの親会社をマツダだという単純なミスも犯しています。

氏は,プロ野球ビジネスの特殊性も言及しながら,巨人のユニフォームから「TOKYO」が消え「YOMIURI」となったことに関する朝日新聞の記事に対して,氏はプロ野球がビジネスだと理解されていないといい「ソニーがプレイステーションを生産し,朝日新聞が新聞を発行しているのと同じように,プロ野球は,スポーツイベント=試合を媒介として利潤を追求しているのです。だから,いくら読売が経営的に安定しているからといって,・・・・,それが読売の利益を損ねる行動であれば,ビジネスとして失格です。それどころか,「株主の利益」が重視されるこの時代,株主への背信行為と取られかねないのです。」と述べています。共同体というプロ野球の特殊性は,時には球団の親会社の利益を損なう場合もあります。このとき親会社の株主の利益の話を持ち出したら,プロ野球という共同体は運営していけなくなります。小林氏こそ,プロ野球ビジネスを分かっているのか疑問になります。

とはいっても,福岡ダイエーホークスの高塚オーナー代行のインタビューとデータ,オリックス・ブルーウェーブの岡添社長のインタビューが載っているので,本書は資料的には価値があります。
up

130(2002/10/01) 「史上最も成功したスポーツビジネス」

メジャーリーグという看板の下にフランチャイズ・チェーンを展開しているのが,MLBで,メジャーリーグというブランドが,安心と信頼のブランドになっている,ということができます。このいわば統一ブランドであるリーグブランドを前面に打ち立てて成功したプロスポーツが本書で登場するNFLです。「史上最も成功したスポーツビジネス」(種子田穣著 毎日新聞社 2002年7月30日発行 税別1400円)は,米国のアメリカン・フットボール・リーグ「NFL」についてスポーツビジネスの面から取り扱った著作です。最新のプロスポーツビジネスについて触れることができます。著者の種子田氏は立命館大学の経営学それも,スポーツビジネス論の教授で,しかもアメリカンフットボールの選手でもあるそうです。

私の持論であるリーグ戦興行共同体の絡みの部分を要約抜粋すると次のようになります。従来のプロスポーツは,個々のチームのファンを増やせばリーグ全体のファンも増えるという考え方が前提にありましたが,これでは,リーグ全体の価値を上げることはできず,結果的に収入が多いチームや人気の高い特定のチームのわがままを許すことになってしまいます。そして,リーグが特定のチームのために活動するようになり,特定のチームはさらに人気を集中させ,収入面での格差,実力の格差へとつながっていくことになります。

著者は,セ・リーグ,NBA,MLBの例をあげます。「セ・リーグでは,特に収入面で1強5弱であり,また報道が中立であるとは必ずしもいえない。そのような状況のなかで,多くのファンは,野球ファンではなくなっていった。また,NBAのようなマイケル・ジョーダン1人の人気がNBA全体を支えるまでになってしまったリーグもある。ほかにも,MLBのように,年俸の高騰によって,多くのチームが赤字となったリーグもある。」

著者は続けます。「しかし,そのような特定チームや特定プレーヤーに人気が集まり,それで年俸が高騰するようなことにはならないリーグが存在する。健全で公正なチーム間競争を行っているリーグがある。それがNFLである。NFLは,個々におけるプロモーションも重視しながら,むしろリーグ全体の価値を高めるために,NFLブランドを確立していった。そして競争の激しいチーム間のマネジメントをうまく行うことによって,NFLは,アメリカで最も人気のあるスポーツリーグとなったのである。」

つまり,NFLというのは,チームブランドやプレーヤーズブランドよりも,NFLというリーグの統一ブランドを確立することにより,リーグ間競争を勝ち抜き,史上最も成功したスポーツになったというもので,ゆえに本書にはスポーツビジネスのヒントが数多く隠されています。

フランチャイズ制をとっているのは,MLBもNFLも同じなのですが,MLBは加盟店(球団)の独立性が高く独自営業も行っているのに対し,NFLでは,リーグ自体による営業が中心でリーグの収益は各加盟店(球団)に平等に分配されるしくみになっています。興行収入だけであれば,各フランチャイズ・マーケットは地理的障壁により,地域的独占が守られますが,それが,メディア収入の時代になると,地理的障壁がなくなりフランチャイズが機能しなくなります。リーグにビジネス上のチーム間競争やチーム間格差が生まれリーグが存続できなくなってしまいます。メディア時代では,リーグビジネスがスポーツビジネスの中心となります。

up

129(2002/09/30)  「新庄が「4番」を打った理由」

現在ちょっとしたスポーツビジネス本・プロ野球ビジネス本のブームで,一頃だったら見向きもされなかった分野が実は今注目されているみたいです。しばらく,このプロ野球ビジネスに関連した書籍を,ここで紹介していきたいと思います。紹介する順序は,ランダムです。

今日は,タック川本氏著の「新庄が「4番」を打った理由 メジャーリーグの商売術」(朝日新聞社 2002年8月1日第一刷発行 1200円税別)です。タック川本氏は,1943年の東京生まれで現在アナハイム・エンゼルス国際編成担当だそうです。タック川本氏といえば「メジャー・リーグの陰謀」「大リーグ「悪」の管理学」という2冊の本をひとつのネタで書いた人です。でも,今回はMLBビジネスに焦点が絞られており,使える本になっていると思います。

タイトルの新庄が4番を打った理由というのは2001年に新庄がメッツで日本人としてはじめてメジャーリーグで4番を打ったときの話ですが,その理由がメッツが新庄の才能を買っていたのではなく,他球団に新庄を高く売り込むために4番を打たせたというもので,メジャーリーグのしたたかさの例えとして用いれられています。

一部内容を紹介すると,メジャーリーグの球団は,地域のチェーン店というくだりがあります。米国ではフランチャイズ・チェーンの看板が溢れていることを説明し,安心と信頼の看板がフランチャイズの戦略だとしています。そして,メジャーリーグは,地域密着型のフランチャイズ制をとり,球団のある本拠地の都市名を名乗っている。これは,メジャーリーグという冠(看板)のもと活動することを明確にしたものであり,いわばメッツとヤンキースはメジャーリーグ・ニューヨーク支店でドジャースはメジャーリーグ・ロサンゼルス支店の愛称だとしています。フランチャイズ・チェーン「メジャーリーグ」にはそうしたお店が米国とカナダに30店営業し,店のオーナーは店舗(スタジアム)を用意し,スタッフを抱え監督やコーチ,選手を社員として雇用し,ベースボール・ゲームという「ザ・ショー」を見せる,としています。

また,メジャーリーグの「リーグ」は,連盟や協会の意味のほか,「協同の取り組み」という意味があるとし,各店舗が自由競争の中で自店の利益追求をするが,チェーン展開の中では他店の利益を奪ったり,倒産に追いやったりということはしない。それがフランチャズであり,「ニューヨークでゲームに感動し楽しめたから,シカゴやロサンゼルスでも同じような感動を求めてスタジアムに行こう」こう思わせるのが,フランチャイズ制の成果であり,「リーグ」たるゆえんです,としています。まさに,リーグ戦興行共同体の説明ですね。


(2002/10/01追加)
内容的にこのほか,特徴的なのが,第五章でマイナーリーグの選手心得をクラス別にポイントが書かれていること,第八章でメジャーリーグの世界戦略が書かれている点です。これらは,氏の得意とするところで過去の著作の中で何度も取り上げられています。ところが,タック川本氏は現在もエンゼルスの国際編成担当という肩書きがあるように,従来の著作にはMLB内部の人間が書いたんだぞという独善さがありました。ところが,今回はその独善さが薄められ読みやすいものになっています。そのほかメジャーリーグの組織論や営業戦略にも触れられており,MLBビジネスというよりもプロ野球ビジネスの入門書として,お薦めです。残った独善さは,逆に文書を明快にしています。
up

128(2002/09/29) 祝西武ライオンズ様

これまた遅くなりましたが,西武ライオンズ様パシフィックリーグ優勝おめでとうございます。日本シリーズの相手も読売ジャイアンツですので注目されてよかったですね。優勝セールも,そごうが加わり盛況のようです。プロ野球には相変わらず無関心の堤オーナーですが,いつのまにか西武百貨店グループのほかそごうも手に入れてしまいましたね。そごうは倒産する前はジャイアンツの優勝セールをやっていたわけですから,西武がジャイアンツから奪った形になりますね。それも,おめでとうございます。これまたいつのまにか手に入れた新横浜の土地に建っているプリンスホテルに付属しているぺぺでも優勝セールをやっていました。98年の横浜優勝のときは西武の優勝も重なり板挟みでしたが,今年は思いっきり西武ライオンズの宣伝をしていました。それも,おめでとうございます。

サンケイアトムズは,アトムの絵を勝手に使って手塚治虫氏に怒られましたが,西武は許可を取ってレオをマークに使っています。堤氏はプロ野球は好きではありませんが,百獣の王ライオン,ジャングル大帝レオが気に入っているようですね。そういえば系列のホテルはプリンス(王子)でしたね。好みが分かります。

堤氏はプロ野球は興味があまりないようですが,趣味と実益を兼ねたウィンタースポーツは好きで,その関係からIOCにも顔が利きます。そこで,オーナー会議に出席しないくせに,野球の五輪外しの件で川島コミッショナーに頭を下げられ,堤氏が協力を申し入れたそうです。さすが世界の堤です。日本のナベツネとは器が違います。世界で頼れるはナベツネではなく堤氏であることが野球ファンの間でもようやくわかりました。今年の日本シリーズは,世界の堤と日本のナベツネの対決ということになるわけですね。野球の世界的普及のためには西武ライオンズにがんばってもらいたいものです。

札幌の準フランチャイズ化の話は,日本ハムファイターズの札幌進出で,ボツになり,堤氏はさぞお怒りになられたことと思いますが,その札幌準フランチャイズ化を阻んだ大社親子が牛の力で失脚しました。これも堤氏の見えない力なのでしょうか。^^;

up

127(2002/09/28) 祝読売巨人軍

遅くなりましたが読売巨人軍様,セントラルリーグ優勝おめでとうございます。東京読売巨人軍から読売巨人軍に変わった直後の優勝であり,ポスト長嶋体制での初優勝ということになります。今回の優勝は,新監督原氏の采配にもよりますが,ナベツネ氏がつくったFA・逆指名(現自由枠)という反革命体制の賜です。

ナベツネ氏は,MLBの体制を社会主義だと非難し,NPBは資本主義だと自慢していました。世の中の経済は資本主義のルールで動いています。資本主義のルールは,弱肉強食です。ところが,弱肉強食ではプロスポーツはやっていけません。弱肉強食というのは結局弱者は淘汰されるわけですが,プロスポーツの世界ではそれでは困ります。プロスポーツの世界では相手が必要だからです。

そこで,プロスポーツの世界では,リーグを組みます。プロスポーツは,資本主義の競争から自らを守るため,リーグを組みます。リーグを組むことによって,利益を分配し,弱者を救済します。リーグ内は,ナベツネ氏が指摘したように社会主義で,決して資本主義では動いていません。社会主義の典型は,NFLでしょう。放映権料は,全国,ローカルを問わず。NFLに一旦入り,NFLはそれを平等に各球団に分配しています。ローカル放送分は球団の取り分であったMLBでも,今回,課徴金制度や再分配制度など,より社会主義的になっています。各クラブが自由にメディアと契約できるイタリアでも,今年,上位クラブと下位クラブで対立が起こり,結局上位クラブが下位クラブに放映権料の再分配をする格好で決着しました。

プロスポーツの世界では,社会主義化の方向にあります。ただし,これはリーグ内のお話です。リーグ内の社会主義化の動きは,メディア収入への依存が高まるに従って,進んでいます。
up

126(2002/09/27) 森監督解任 

横浜ベイスターズの森監督が解任された。最下位を独走していたのだから当然であろう。解任が遅かったほどである。もともと,森氏が招聘されたのは,「勝つため」であった。98年の優勝後の低迷をみて,勝てるチームをつくるために,就任した。大堀球団社長は,ベイスターズのファンは勝利への要求が高い(強くないと客が来ない)ため,森氏を迎えたという話を当時述べていた記憶がある。ところが,その森監督が最下位ではお話にならない。

とはいっても,最下位は森監督一人の責任ではない。最下位の一番の原因は補強の失敗である。外国人,昔は定評のあった外国人選手のスカウトも牛込氏をクビにしたことから,ノウハウを失い,散々であった。そもそもピークの過ぎた30歳過ぎの選手を連れてきても仕方がない。メジャーに上がれ損ねた25,6歳の生きのいい若手を連れてこないと。それに,短期間で選手は分からない。長期的なスカウト活動が外国人選手の場合にも必要なのだ。牛込さんに復帰してもらいノウハウを球団として吸収すべきだろう。FAでも江藤の獲得に失敗するなどすべてダメ,トレードも小川と種田,中村,石井とベテランばかり。この補強の失敗の原因は,選手編成の責任者野口取締役にある。フィールド部門の責任者野口氏の責任は重い。

私なら,森監督の前に野口取締役を解任している。権藤氏を解任し,森氏を招聘した大堀球団社長の責任は,重大であるが,シーズン中においては,球団のトップであって営業部門も統括している大堀社長が責任をとって辞任するよりも,補強の責任者であるチーム編成の長をすげ替えるほうが緊急課題であったろう。ただ,日本のプロ野球に選手の補強を任せられる人材がはたしているのか疑問である。この面での第一人者は西武・ダイエーと渡り歩いた根本氏であったが,彼が歩んだ西武・ダイエーにはこのチーム編成の能力が球団として受け継がれている。チーム編成の能力,すなわちスカウティング能力こそ球団の生命線である。

戦力が整わなければ,フィールドでは競争ができない。フィールドで競争できなければ,球団のビジネスもおぼつかない。スカウティングは監督が行うものではなく球団が行うもので,ベイスターズも球団が責任をもってスカウティングを行おうとした。ところが球団にその能力がなかった。であれば,スカウティング能力の強化こそ,ベイスターズ復活の途である。

up


125(2002/09/23) ビジネス・モデル 2

活字マスメディア,映像マスメディア,映像マルチメディアという区分は,年代こそ前後しますが,欧米でも同じ事がいえる思います。プロスポーツとメディアの関係で言えば,欧米では活字マスメディアというのはビジネス上は影響はないように思えます。活字マスメディアは,プロスポーツに対し広告効果がありますが,プロスポーツは活字マスメディアからは直接利益を受け取る分けではありません。ですから,活字マスメディアとプロスポーツの世界ではビジネス上の関係はなかなか生まれない。生まれるとしたら活字マスメディアがプロスポーツをプロモーションした場合だけです。この関係にあったのは,日本だけではないとかと思います。

映像マスメディア=テレビ放送の時代になると,日米欧でプロスポーツとビジネス上の関係が生まれてきます。テレビ放送の重要なコンテンツとしてプロスポーツはそのメディア・ヴァリューを実体化していきます。このとき収入化の源泉となるのが広告収入です。この広告の収入化環境が日米欧では異なっていました。米国と日本では,商業放送が盛んでしたから,CM広告を源泉とした放送メディアからの放送権料という形で,メディア・ヴァリューの収入化が図られました。

ところが,欧州では,公共放送が中心だったため,CM放送は限られ放映権料もあまり期待できませんでした。このため発達したのが,背景広告とでもいえる看板広告やユニフォーム広告でした。試合中継で映る背景に看板広告を出し球団が広告主(スポンサー)から広告料を直接徴収しようというものです。これをスポンサーシップといいますが,米国のプロスポーツでは,逆に企業スポンサーというのは敬遠される傾向にあるみたいで,放映権料の中に統計上も組み込まれています。映像マスメディア時代,プロスポーツ・ビジネス・モデルとして米国では放映権ビジネスが上げられ,欧州ではスポンサーシップが上げられます。どちらにしても,広告収入には違いがありません。

では,日本のビジネスモデルも放映権ビジネスなのかというと,これが少し異なります。日本のプロスポーツ=プロ野球は,活字マスメディアの影響を強く受け,新聞社に取り込まれることによってメディア・ヴァリューの収入化が図られました。映像マスメディアの登場以前に,メディア・ヴァリューの収入化が行われていました。といっても収入化に成功したのは一部の球団に過ぎませんでした。つづく

up

124(2002/09/16) 顧客にして経営主体 

球団の経営主体でありかつ最大の顧客,これが,親会社ビジネスモデルの親会社です。球団の収入は,親会社に吸収され,費用は,別途親会社から支出されます。ですから,球団にとって,収入と支出の直接の関連性はなく,黒字だろうが赤字だろうが関係ない体質になっています。実際,球団の営業は,親会社や球場に委託されていることが多く,球団は単なるチーム運営会社にすぎません。さらに,このチーム運営も監督に委任されている場合が多かったのが現実です。監督が,一軍の選手だけでなく,スカウト,二軍,トレーナー,スコアラーなどフィールド部門すべてを総括させらていたのが現状です。ですから,観客軽視になるのは当然です。
up

123(2002/09/15) 外部性の侵入 

日本のプロ野球の発展は,日本の経済の発展と関連していることは,「プロ野球と日本経済」「都市とプロ野球」で見てきたとおりあるんですが,ちょっとそれをおさらいをします。第一次大戦によって日本はそれまでの債務国から債権国へと脱皮し,一時的な消費社会が生まれます。この時期の特徴が,第2次産業より第3次産業のほうが盛んだったということです。第三次産業の中心にいたのが,鉄道業と新聞業でした。つまり,軽工業から重化学工業へ転換する前に,消費社会を迎えてしまったわけです。このことが,後々問題になります。

第一次大戦後の好況時に,新聞社をスポンサーにして各地で野球の大会が開かれ,野球の持っている公共性と地域性が,ここでも利用され,新聞の拡販に利用されつつ,野球も全国的に盛んに成っていきます。野球の持っている公共性と地域性に,鉄道会社も便乗して,鉄道会社は球場を作り交通手段を確保する代わりに,新聞社が広告宣伝を行うという,スタイルがビジネスモデルが確立していきます。その代表が,今の高校野球で,球場は阪神電鉄が甲子園球場を提供し,夏は朝日新聞が,春は毎日新聞が広告宣伝を行っています。プロ野球も,この流れを踏襲しています。

NPB誕生時に参加した球団の親会社は,東京の読売新聞,国民新聞,名古屋の新愛知新聞,名古屋新聞で鉄道会社は,東京が西武鉄道,大阪が阪神電鉄と阪急でした。つまり,NPBというのは,新聞社と鉄道会社という外部の侵入により,スタートしたことになります。もちろん,野球界の成長的発展形としてのプロ野球も企図されましたが,資本面で中途で挫折しています。

NPBというのは,外部性の侵入によって誕生した経緯から,球団運営やリーグ運営に外部者である親会社の侵入を招く結果となり,その結果,プロ野球の自律的発展が阻害されることになりました。その弊害はプロ野球の利害よりも親会社の利害が優先され,プロ野球本来の利益が損なわれたり,プロ野球の運営を担う人材が育成も阻害され,運営面での親会社依存体質が出来上がってしまいます。

NPBは当初,興行収入にのみに依存できなかったため,公共性と地域性を武器に,外部からの投資を手にいれた。ところが,球団自身が球場を所有していた訳ではなので,興行収入を100%収入化できませんでしたし,新聞社や鉄道会社,それも,親会社のため,広告宣伝費という形でメディアヴァリューを,NPBの内部収入化することが出来ませんでした。

NPBにとって最大の顧客は,親会社です。球団の職員も選手も親会社の顔色を見ています。これは,テレビという放送メディアが誕生してからも同じです。放送メディア時代における顧客の間接化(観戦者から視聴者へ)は,親会社依存体質下ではあまり影響がないのではないかと思います。ただし,選手の芸能人化を除けばの話です。放送メディアのもたらす放映権料は,親会社依存体質を変えるほどの力はないと思います。

親会社依存体質というのは,戦後日本の企業スポーツの共通の特徴といえます。アマチュア野球もプロ野球も同じ体質です。私が前に言った「アマチュアなプロ野球,プロフェッショナルなアマチュア野球」にはその意味が含まれています。

up

122(2002/09/07) ビジネス・モデル 1 2002/09/23改訂

日本のメディアの流れを概観すると1950年代までが活字マスメディアの時代で,代表はもちろん新聞です,それも全国紙。60年代から80年代が放送メディア(映像マスメディア)の時代で,代表はテレビの全国ネットです。これが,90年代以降になると,映像マルチ・メディアの時代ではないかと考えています。

新聞やテレビは,マスメディアという概念で括ることができます。新聞は地方紙から全国紙へ,テレビ放送は全国ネットワーク化といったように,マスメディアの時代は,メディアの大衆化,大型化の時代だったといえます。これは,第2次大戦後の大量生産・大量消費という大衆消費社会を背景にしていたからだともいえます。メディアは,大量の画一化された情報を一方的に大衆に伝えます。

これがマルチメディアの時代になると,巨大化・標準化の一方で多様化・多元化さらには個性化・個別化が同時進行で進む時代になってきます。映像マルチ・メディアの時代では,ひとつのプレーが,生中継,再放送,ダイジェスト放送,スポーツニュース,選手の特集,プレーの特集といったものが,地上波,衛星放送,CATV,パッケージソフト,インターネットという多種多様な媒体を通して人々に提供されます。マルチ・メディア時代になるといままで考えられなかったものが利益を生み出すようになあります。このため,情報の出所での管理が重要になり,著作権と肖像権がキーワードとなってきます。

up

121(2002/09/06) メディア・ヴァリューの活用

放送メディアにとって,プロ野球は伝達すべき情報のひとつであり,コンテンツとしてのプロ野球ということになります。一方,一般企業にとって,プロ野球は,企業の情報を伝達してくれる媒体であり,メディアとしてのプロ野球ということになります。つまり,プロ野球は,コンテンツであり,メディアでもあるということになります。コンテンツとしてのプロ野球は,放映権ビジネスと,メディアとしてのプロ野球はスポンサーシップと関係があります。

プロ野球のメディア・ヴァリューというのは何も,メディアを利用したものだけでなく,球場に集まった多くの観客を利用したものがあります。それが球場の看板広告であり,ファンブックなどの広告ということになります。これらは,観客からの派生商品で,価値の源泉は,もちろん,観客にあります。

ところが,このうち球場の看板広告は,それ自体がテレビに映ることにより,テレビ視聴者を対象にしたメディア広告に変身します。この看板広告が発達したのがヨーロッパでした。ヨーロッパでは長い間,放送メディアは公共放送が主流で,CMというものがあまり価値がありませんでした。そこでサッカー中継などで考え出されたのがピッチの周りに看板広告を出し,試合中継の中の背景を利用して,CM効果を出そうというものです。いまはそれだけではなく,ユニフォームにも広告をつけています。

プロ野球のメディア・ヴァリューも,観客だけを利用するより,メディアを利用することによりもっと大きい価値を生み出すことが可能となります。いまや,観客さえも,メディアに対する価値を高める手段になっています。満員の観客が,メディア・ヴァリューを高めるというものです。NFLのブラックアウトルールもそうですし,近年,作られている球場の観客収容者数が少なくなっているのはこのためです。

そして,最後に,活字メディアで儲けるにはどうしたらいいといえば,活字メディアは,球団の儲けにならないが,活字メディアには儲けになる。それなら,活字メディアが球団を運営すればいいじゃないか,ということで誕生したのが日本のプロ野球ということになります。

up

120(2002/09/04) メディアと公共性  2002/09/24再編集

新聞というのは,もちろん活字メディアですが,活字メディアには,個人向けの雑誌や専門誌・業界紙もありなど様々なメディアがあります。この中で新聞,それも一般紙は,一般大衆をターゲットにしています。つまり,一般紙というのは,「公共性」というものを持ち合わせている必要がある,ということです。一般大衆に売り込むためには,一部受けではダメで,最大公約数的でなければ,販売部数が限られてしまいます。とはいっても,公共性と大衆性は紙一重ですが。

一方,放送メディアは,電波メディアで,電波は周波数が限られている公共物です。このため,ヨーロッパでは長い間,テレビ放送にしても公共放送が主流で,商業放送が盛んな米国や日本と大きく異なっていました。新聞メディアと放送メディアの違いを公共性でみれば,新聞メディアは,マーケティングの関係から公共性が必需だったのに対し,放送メディアは,生来的に公共性をもっていたといえると思います。ところが,放送メディアの生来的な公共性は,マス・メディアからマルチ・メディアになるに従って,消えていくことになります。放送メディアが,ケーブルや衛星・デジタル技術によって有限の世界から解放されるからです。

また,メディアは,情報を伝達する媒体のことをいいますが,この媒体,ただ情報をそのまま伝えるのではなく,受け手に伝わりやすいように加工して,伝達されます。逆に言えば,情報は,メディアによって操作される可能性がありますし,実際,操作されています。大衆社会では,受け手の大衆側は,一方的であり,マス・メディアに,情報を依存しています。ここにメディア,特にマス・メディアに対する社会的責任の問題が出てきます。情報操作可能(そもそも広告宣伝自体,情報操作そのものです)なメディアは,社会的影響力という点から公共性を持っている言えます。メディアは社会の公器ということです。公共性にはいろいろな意味があります。

up

119(2002/09/02) プロ野球のメディア・マーケット

メディアというのは,ぼーる通信でも書いたのですが,ベースボール誕生のときから関係があります。もちろん,最初のメディアは,活字で主に新聞ということになります。新聞は情報の伝達のとともに広告宣伝効果もあります。まあ,これはメディア共通のことですが。新聞メディアとプロ野球の関係でいえば,直接収入につながるのは新聞メディアのほうで,プロ野球にとっては間接的な効果しかありません。新聞にプロ野球の記事が載って直接儲かるのは,購買される新聞メディアのほうです。プロ野球にとって新聞は,広告宣伝機関であって,直接収入を得る手段ではありません。ここのところが次に出てくる放送メディア(映像マスメディア)との違いです。

放送メディアは,新聞メディア以上に広告宣伝効果が高く,この広告宣伝効果を使った商業放送が可能となります。すると,視聴者を稼げるプロ野球のコンテンツとして価値が高まり,放映権料というものがうまれ,プロ野球自体も収入を得ることができるようになります。放送メディアは,プロ野球にとって直接収入を得る手段に変わったわけです。プロ野球にとって放送メディアとは宣伝媒体であるとともに収入媒体ということになります。

bP18は,プロ野球収入=入場料収入であった場合の話ですが,新聞メディアにしろ,放送メディアにしろ,メディアがローカルであるうちは,同じような状況になります。収入=入場料収入+メディア収入になっても,収入構造は地域性が保たれ,フランチャイズ・システムが機能します。もちろん,巨大都市があった場合は,このフランチャイズ・システムが崩れることになります。

メディアで一番問題になるのが,マス・メディア,それもテレビの全国放送です。電波は,市境や県境,果ては国境も簡単に越える事ができます。プロ野球興行の持っている
地理的限界を簡単に超えることができます。つまり,フランチャイズ・システムが機能しないということです。放送メディアは,収入と結びついていますから,非常に大きな影響があります。放送メディアが球団ビジネスと結びついた場合,そのメディアがローカルであれば,それほど問題がありませんが,全国メディアであれば深刻な問題となり,リーグビジネスと球団ビジネスの衝突ということになります。または,その球団にリーグそのもが牛耳られる可能性があります。
up

118(2002/09/01) プロ野球の地域マーケット 青字部2002/09/23補記

114「プロ野球ビジネス」でプロ野球ビジネスというのはプロ野球のビジネスとプロ野球を通したビジネスに分けることができると書きましたが,一方で,プロ野球ビジネスは,球団ビジネスとリーグビジネスに分けることもできます。球団ビジネスとリーグビジネスというのは,プロ野球がリーグ戦興行共同体だということに起因しています。リーグと球団とのバランス,これがプロ野球ビジネスにとって極めて重要なことなのです。

この
リーグビジネスと球団ビジネスの利害が対立しないようにできたシステムがフランチャズ・システムです。これは,プロ野球興行の地理的限界を逆に利用して,球団のマーケットが競合しないように球団を配置するものです。ここでいうマーケットとは,プロ野球の興行の定義である「プロ野球というサービス財(商品)が野球場で生産され,消費者であるプロ野球ファンがお金を払って観戦するという財の交換によって成立するビジネスである」による消費者(=観戦者)市場のことで,消費者=観戦者は野球場の近隣住民であり,マーケットには地理的限界があります。プロ野球のマーケットが観戦者市場だけであれば,フランチャイズ・システムにより,球団の利益とリーグ全体の利益は対立することは少なくなります。

ここで,利害対立が起こるとしたら,それは巨大都市の場合です。巨大都市に1球団しか存在しない場合,
その球団は巨大市場を独占することになります。巨大市場を独占することにより,球団は強大化し,球団間の戦力アンバランス,リーグ戦の価値の減退が生じ,ついにはリーグと巨大球団との間に利害関係の不一致が起きてきます。そして,最後にはその球団は栄えても,リーグ全体は衰退へと向かうはめになります。

また,巨大都市に,複数の球団が存在した場合,観戦者市場が競合し,球団間のビジネス競争が起こり,リーグビジネスに影響を与えます。観戦者市場における球団間競争はやがて市場の論理に従って,寡占化に向かいます。そして,巨大球団の出現となり,先にあげた運命をたどることになります。

メディア・マーケットの出現による利害対立については,この次。
up

117(2002/08/31) ワールドカップの遺産 2

巨大スタジアムの有効利用で,まず,必要なのが,プロ球団の誘致でしょう。これが第一です。一定の試合が確保できます。一応,サッカー場ですから,Jリーグの誘致ということになりますが,これもなかなか難しいところがあるみたいです。今回のワールドカップの会場となった巨大スタジアムは,建設上,郊外の交通の不便なところに立地しているため,Jリーグがある地域であっても,本拠地として利用されないケースがあります。

ワールドカップ日本戦の最終会場となった宮城県利府町の宮城スタジアム。仙台市内になく,交通も不便なことから,肝心の「J1のベガルタ仙台は,仙台スタジアム(仙台市)が本拠で,宮城スタジアムの試合は限られている」ということです。しかも大会後の利用はほとんどなく,「いまのところ,9月に人気アイドル「SMAP」のコンサートがある程度で,来年3月までに大きな催しは20日ほどしか埋まっていない」そうです。

同じく,ワールドカップ日本戦の会場となり,決勝トーナメントの準決勝が行われた埼玉スタジアムも,交通アクセスが不便です。一応,さいたま市内にあるため,地元の人気球団浦和レッズの本拠地としてスタジアム側は期待したのですが,交通が不便なため,当初断られた経緯があります。ところが,浦和レッズは,数試合行った埼玉スタジアムでの動員力が高いことから,本拠地を従来のさいたま市営駒場スタジアム(収容人員2万1500人)から埼玉スタジアム2002(6万3700人)に事実上移転することを決定しました。地元開催15試合のうち10試合を埼玉スタジアムで行うそうです。さらに,球団事務所も同スタジアム内に移し,同スタジアム周辺をレッズ・タウン化するようです。とはいっても,確保できたのは年間10試合だけです。

これをみても,同じワールドカップ会場であった札幌ドームの条件がいいことがわかります。やはり,野球兼用競技場の利点でしょう。(とはいっても,所詮野球場としては密閉型の人工芝球場で魅力は乏しいものですが。)この優等生,札幌ドームに暗雲となったのが日本ハムの牛肉偽装事件でした。親会社である日本ハムのイメージダウンは避けられず,ファイターズの公共性も揺らぐことになります。このため自治体や地元住民,地元企業の支援を受けにくくなる可能性もあります。

プロ野球はその地域性と公共性を利用することにより,地元自治体,住民,企業の支援を受けることができます。親会社の宣伝機関と化している日本のプロ野球では,球団と親会社との結びつきが強く,「私」が高い。しかし,この親会社や球団の公共性が高ければ,その「私」性も薄らぎます。今回の牛肉偽装事件は「私」の身勝手さが前面にでてきたもので,球団の地域性と公共性は大きく損なわれたはずです。とはいっても,北海道の市民,自治体,企業が期待するファイターズの地域性と公共性は高いものがあり,この期待を今後裏切らないようにすれば,ファイターズの札幌移転は成功すると思います。
up

116(2002/08/30) ワールドカップの遺産

28日テレビを見ていたら香取慎吾と乙武洋匡のニュースクイズをやっていました。問題は,ワールドカップで使用された競技場の今後の話で,決勝戦の行われた横浜国際総合競技場は,税金603億円を投入され,年間6億円の維持費がかかるが,その赤字対策として何が売り出されたのか,というものです。答えは競技場の芝生で,これは,FIFAの注文で,広めにフィールドを作っていたため,陸上競技場として使う際邪魔になる部分が削られ,コーティングしたうえで商品化されたものです。

ワールドカップの遺産である巨大スタジアムの有効活用が問題となります。これについては,「都市とプロ野球 第6章 2 経済効果」で指摘したように,

スタジアムやスポーツ施設をいかに建設し,整備しても,それが社会で有効に活用されなければそれは,社会資本としてストックされたことにはなりません。「スポーツに参加する人々を増やし,施設をフル活用することによって入場料や施設利用料から収益を上げ,施設経営を安定させて地域活性化を促進すること」や「プロスポーツの興行やスポーツイベントの誘致し場料収入や放送権料,スポンサー料によって収益を上げ,地元経済への還元を図る」ことによって初めて社会資本として認められるのです。(「」内「スポーツ産業論入門」原田宗彦編著(杏林書院 1999)による)

ところが実際は,有効活用は難しく,

日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)の会湯となった全国十の競技施設の建設費は総額三千三百三十八億円で、このうち二千百三十八億円、64%が地元自治体の負担となることが十八日までに、総務省のまとめで分かった。地元負担分の三分の二は起債で賄い、今後、自治体が償還していかなければならない上、年間数億円の維持管理費が必要になるため、厳しい財政状況の下で重い負担になりそうだ。(2002年8月19日神奈川新聞)

その中で,優等生と言われるのが札幌ドームです。札幌ドームは,ドーム球場兼サッカー場ですから,稼働率が高く,サッカーはコンサドーレの本拠地として使用され,野球も巨人戦のほか多くの試合が行われました。その結果,01年度,「「初年度景気」で収入が約25億円あり,約8千万円の黒字だった。」そうです。札幌ドームは,サッカー場というより野球場という点から,黒字ベースにつながっているようです。

(札幌)ドームでは、日本ハム主催の70試合のうち、東京ドームでの15試合を除く55試合を予定する。ドーム使用料・フランチャイズ契約料が1試合800万円なので、55試合なら4億4千万円が日本ハム側から支払われる。ドーム年間維持費約5億2千万円の85%がまかなえる計算だ。西武や巨人、Jリーグのコンサドーレ札幌などの試合も含めれば、年間80試合強の開催は確実。採算ベースの「年110日」に「あと20日ぶんセールス活動をすればいい」。(2002/8/17朝日新聞夕刊)

採算ベースが「年110日」であるのは,札幌ドームが公的資金でできたからで,これは他のドームとの大きな違いでしょうか。でも,この年110日というペースなら,十分に天然芝球場が実現できるペースではないでしょうか。プロ野球の本拠地球場になれば年間70試合と採算ベースの7割弱を確保できますし,年間110日という日程なら,天然芝の養生の時間が十分にとれます。自治体の協力が得られるならば,プロ野球も十分に内外野総天然芝の球場が可能なことがわかります。プロ野球は,地域性と公共性という社会性を持っています。自治体にとってプロ野球とは魅力的なはずです。

プロ野球都市宣言

up


115(2002/08/28) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす 3

BSEいわゆる狂牛病事件の影響がついにプロ野球の世界にも及んできた。

日本ハムファイターズの親会社日本ハムが国のBSE対策に対し牛肉を偽装し,国費をだまし取ろうとした事件が発覚した。それも証拠隠滅をはかるため,証拠となる牛肉を焼却処分する始末である。事件としては極めて悪質といっていい。この牛肉偽装事件が会社ぐるみであったかという点では,一応,社長は知らなかったということで一部幹部の個人的事件ということになっている。そして,監督責任をとるということで,創業者である大社義規会長は名誉会長に,息子の啓二社長は,専務に降格するという処分を自主的にとった。これが8月20日の話である。これに対し,責任をとって辞めるのになんで「名誉」なのかという非難がおこり,26日には名誉会長案は撤回され,完全引退ということになった。

ところが,この時点になっても,大社義規氏の日本ハムファイターズのオーナー職は,依然として,留保され続けた。そもそも,日本ハムは,業界トップの超優良企業であるが,その実体は,義規会長を中心とした個人商店であり,創業者である大社会長とその後継者である啓二社長大事であった。今回の事件にしても,会長と社長は知らなかったこととされ,部下がすべての責任を負った。社長である啓二氏は,日本ハムの専務として日本ハムの中にとどまっている。会長にしても,社の内外の反対を押し切って,名誉会長という役を与えようとした。ファイターズのオーナー職にしても,野球が好きだった義規氏を配慮し,辞めさせることができない。

プロ野球は,曲がりなりにも,社会性をもっており,そのオーナー職にしても,社会性が求められる。社会的事件を起こし,職を辞した者が,プロ野球の世界では許されるのか,という疑問がでる。日本ハムは,ファイターズを「日本ハム・ブランド信頼回復」の切り札と位置づけ,その補強費用を惜しまないという。日本ハムは,日拓ホームフライヤーズを買収し東京に進出したことにより,業界トップに躍り出た経緯もあり,球団に対する支援は重視されているという。

今回の親会社日本ハムの経営危機がファイターズに飛び火してくる可能性は,まず第一に日本ハム自体の経営能力の欠如が露呈されたことである。今回の牛肉偽装事件でも,対応が後手後手に回り,中途半端な内部調査や処分が状況を却って悪化させている。ファイターズにしても,小嶋社長は,義規氏の子飼いであり,義規オーナーを守ることに終始している。

次に問題となるのは直接的な経営危機である。現在日本ハム本社は,ファイターズ球団の赤字年30億円を負担しているという。日本ハムグループは,製品の撤去が続き,今期50億円の赤字に陥るとも言われている。この程度の赤字が数年続いても,びくともしないと言われる財政状態と言われるが,球団の赤字30億円が今後も減らないようであれば,今後も球団を維持していくこと困難になる可能性もある。さらには,日本ハムグループの経営再建の象徴として,プロ野球からの撤退も考えられる。

札幌移転の話もとん挫する可能性もある。ファイターズの札幌移転は,30億円とも言われる赤字を5億円に圧縮することのほか,地元企業との提携により,北海道における日本ハムの地盤強化という目的もあるはずだ。移転準備室は,どうにか8月中に開設したが,目的である地元企業との提携の話は遅れるもようである。

そして,このままでは社会性・公共性を有するプロ野球にとって,イメージダウンにつながる虞がある,ことである。そういった中,今日(28日),大社義規オーナーの留任白紙,さらには辞任の話がでてきた。


※ 結局,大社義規オーナーは,オーナー職も辞職し,ファイターズのオーナーは,当面空席となり,球団社長の小嶋氏がオーナー代行となりました。
up


114(2002/08/17) プロ野球ビジネスのしくみ

元ロッテの小林至氏が「プロ野球ビジネスのしくみ」という本を出しました。その中でプロ野球ビジネスを「球団の親会社が野球という興行を通して利益を追求する」ものとしています。ですから今回のビジター用ユニホームの「TOKYO」から「YOMIURI」への変更について,「いくら読売が経営的に安定しているからと言って,そして地域性を取り入れることがモラル的に美しいからと言って,それが,読売の利益を損ねる行動であれば,ビジネスとして失格です。それどころか,「株主の利益」が重視されるこの時代,株主への背信行為と取られかねないのです。」と著しています。これは実際問題として親会社依存体制下にある日本のプロ野球について言い得ているいえますが,プロ野球のビジネスを論じる場合はおかしなことになります。

スポーツナビの代表でドットムコム・スポーツの著者広瀬一郎氏風にいいますと,プロ野球ビジネスとは「プロ野球のビジネス」と「プロ野球を通したビジネス」の二つに分けることができると思います。「プロ野球のビジネス」とは球団自身が行うビジネス活動です。後者の「プロ野球を通したビジネス」はプロ野球を利用して行う企業のビジネス活動です。日本の場合,本来プロ野球を通したビジネスなのにもかかわらず,これがプロ野球のビジネスになってしまっているということができます。プロ野球ビジネスのしくみを論じる場合,まず,プロ野球自体の話から進めるべきであって,プロ野球ビジネスについて,「球団が野球の興行を通じて利益を追求する」というプロ野球のビジネスとして論理を展開すべきものです。それはそうです,プロ野球のことが分からなければ,プロ野球を通したビジネスなど話ができません。

プロ野球のビジネスとしてみた場合,私の結論はプロ野球ビジネスとは,リーグ戦興行共同体とエリア・マーケティングだといえると思います。プロ野球を言うにおよばず,プロスポーツの世界の中で,対戦型団体球技というものはリーグ戦興行です。これはサッカーも,アメフトも,バスケも,アイスホッケーも同じです。リーグ戦興行というのは,経営安定のためには不可欠な興行形態です。また,プロ野球というのは生産の場と消費の場が一緒で,消費者は生産の場に来てもらわなければプロ野球興行というのは成り立たちません。つまり,プロ野球興行の営業エリアは生産の場でありかつ消費の場である球場の周辺ということになります。プロ野球興行とは極めてローカル性が高いものです。

このプロ野球も,社会の一員として,社会と関わりをもっています。これがプロ野球の社会性で,具体的には地域性と公共性だと思います。プロ野球興行はローカル性が高いわけですから,これが地元の地域や都市との関係やら結びつきにより,地域性という社会性が具備されることになります。公共性というのは,スポーツが本来持っている一般性,人々の受容度の高さによるもので,これは,サッカーのワールドカップやオリンピックが世界中で受け入れられていることからもわかります。つまり,私企業であっても公共性をもち,社会的影響力とその責任を有していることになります。公共性は地域性にも絡んできます。また,この人々の受容度の高さは,メディア性と言う形で,プロ野球に付加価値をもたらしてくれます。

up

113(2002/08/17) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす 2

主力である牛肉事業の自粛と製品の店頭撤去とファイターズの親会社・日本ハムグループは経営危機に直面しています。プロ野球事業については,「日本ハムブランドの信頼を取り戻すためにも、球団は重要な位置づけにある。必要な資金であればいくらでもつぎ込むということです」(大社啓二本社社長)ということで,本社の打ち出した設備投資凍結の枠外とされました。また,いったん,開設が延期された札幌移転準備室も今月末には札幌ドーム内に開設することが決まったそうです。
http://sports.yahoo.co.jp/baseball/headlines/mai/20020816/spo/18441600_mai_00002007.html

ただし,今回の不祥事が,日本ハム・グループ全体の資金繰りを悪化させた場合,ファイターズ自体の経営危機につながる畏れあります。また,現在の大社義規会長の進退問題に発展すると,本社のファイターズ支援体制が崩れる畏れもあります。

ベイスターズの場合もそうでしたが,現在のプロ野球の親会社依存体制の下では,親会社の経営危機が即,球団の収支に関係なく,球団の経営危機へと直結しています。親会社の動向によって何回もささやかれているホークスの例もあります。危機管理の点から,過度の親会社依存は球団経営にとって危険なことがわかります。さらに不思議なことは,このリスクが大きい親会社依存体制下にありながら,日本のプロ野球は,球団の譲渡を規制しています。球団の譲渡には,30億円が必要とされ,これには株主の変更による場合も含まれます。存続の危機に直面している球団を救済する場合の株主としての変更であっても30億円が必要となります。これなどは株式会社制度が無視されるという法律違反の規制です。

株式会社は,株主が変わっても,会社の権利義務は承継され続けられます。ところが,日本のプロ野球では,株主変更による球団保有者の変更では,機構への加盟権は承継されず,新たに30億円の加盟料が必要になります。これも,広島松田オーナーの相続や読売グループの持ち株会社化の時は,不要とされました。オーナー会議で恣意的に決められる,それも読売巨人軍オーナーの一声で決められる馬鹿げた世界です。因みに,野球協約では,球団の譲渡には30億円必要ですが,保有者の変更は球団譲渡と区別されており,保有者の変更だけでは,30億円は発生しないはずです。

up

112(2002/08/16) 日本ハム・バッファローズ・くらいしす

日本ハム・グループは,従業員数が関連会社を含めると16,000人を超え,売り上げは業界トップの巨大企業です。とはいっても大社義規会長・啓二社長による個人商店的色彩が強いともみられています。そうした中起きた牛肉偽装工作と牛肉焼却事件は,日本ハム・グループに深刻な影響を与えています。株価は下落し,主力の牛肉事業の自粛を強いられています。日本ハム製品の店頭撤去が流通業界の大半におよび,経営危機に直面しています。今回の事件は,会長や社長は知らなかったとされていますが,偽装の報告は副社長・専務レベルには上がっており,会社の体質に問題を抱えているみたいです。

ファイターズのオーナーである大社義規会長は,業界団体の日本ハム・ソーセージ工業協同組合の理事長を辞任し,日本ハムの専務と副社長も辞任する意向だそうです。会長や社長の進退問題に発展するかもしれません。ご存じのように日本ハムは,プロ野球のファイターズ,Jリーグのセレッソ大阪を所有しています。会長の大社義規氏は野球ファンで,高松の出身です。三原氏や中西氏と交流があり,それが縁でフライヤーズを買収しファイターズのオーナーとなりました。プロ球団を所有したことにより知名度があがり,日本ハムは業界のトップになったと言われています。

これに対し,息子の社長である啓二氏はサッカーファンとされ,本社のある大阪にセレッソ大阪というJリーグクラブを所有しています。今回の報道で連日テレビに写っていたのは,セレッソ大阪のキャラクター・ロビー君でした。日本ハムは,ハム・ソーセージが有名ですが,売り上げでは,牛肉部門がトップの主力事業です。この牛肉部門は,一種聖域化され,会長の義規氏が実権を握っており,社長の啓二氏は手を出すことできなかったとされています。

ファイターズの札幌移転の話がでて以降,日本ハム本社の株価は高く推移し,札幌に移転準備室を開設する矢先でした。この事務所開きは今回の不祥事により延期され,9月に予定されていた地元札幌の有力企業との懇親会も中止となったそうです。

親会社が野球の興行を通して利益を追求するというオーナーシップ制度の日本のプロ野球ビジネス・モデルの危険性が見えてきます。

札幌移転準備室開設延期
http://www.nikkansports.com/news/baseball/p-bb-tp0-020816-06.html
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/baseball/aug/o20020815_70.htm
26%を占める牛肉部門打撃 一部営業自粛の日ハム
http://www.kyodo.co.jp/kyodonews/2002/nichihamu/news/20020815-99.html

up

111(2002/08/07) くたびれてるんやろなあ〜,プロ野球が

FIFAワールドカップが始まる前,東京読売巨人軍のオーナー渡辺恒雄氏は,「Jリーグは,ワールドカップが終わってしまえば,つぶれてしまう」という発言を繰り返していました。しかし,

Jリーグのワールドカップ後の状況は,
「W杯の熱気がJリーグにもつながった。W杯会場の埼玉スタジアムで13日に行われた浦和―磐田戦は、J歴代3位となる5万7902人を動員。同会場で行われたW杯準決勝のブラジル―トルコ戦には及ばなかったものの、日本―ベルギー戦の5万5256人を上回った。浦和広報担当者によると「W杯準決勝直後に前売りが1万5000枚売れた」とW杯効果を説明。前日12日に売れ残った400枚も、この日午前に完売した。サポーター同士の衝突を避けるために緩衝ゾーンをつくったことで、同スタジアムで記録したJ史上最多の6万553人には及ばなかったが、熱気は最高潮だった。」(2002年7月14日スポニチ)

実際,ワールドカップ前のJリーグ平均観客動員数は,1万5351人なのに対し,ワールドカップ後のそれは1万9278人です。Jリーグは,ワールドカップ後,つぶれるどころか,盛り上がりをみせています。

一方,プロ野球といえば,新聞の4コマ漫画でこのように心配される状態です。

平成14年8月 朝日新聞 ののちゃん から
祖母「なんかこのごろ,つまらんなあ,プロ野球も」「応援してた応援団長の岡田さんもおらんようになるし」
母「そらまあ,トシのせいもあるし,くたびれているんやで,おかあちゃん。」
祖母「たしかに,そうやなあ。ハーッ」
祖母「もうかれこれ,長いからくたびれてるんやろなあ〜,プロ野球が。」
母「んまにこたえんひとやわ」

とりあえず,岡田さんに合掌。

こういった中で,2002年7月1日東京読売巨人軍は,読売巨人軍となり,ビジター用ユニフォームからは,「TOKYO」が消え「YOMIURI」となりました(ユニフォームの変更は,7月8日以降です)。

この行為は,プロ野球が「球団の親会社が野球という興行を通して利益を追求」しているのであれば,「いくら読売が経営的に安定しているからと言って,そして地域性を取り入れることがモラル的に美しいからと言って,それが,読売の利益を損ねる行動であれば,ビジネスとして失格です。それどころか,「株主の利益」が重視されるこの時代,株主への背信行為と取られかねないのです。」(小林至著 「プロ野球ビジネスのしくみ」)ということでありプロ野球ビジネスとして当然ということになります。特に,読売は「本社組織の一部」「グループの販売促進部」「本業の一部」であり当然の行動ということになります。

しかしながら,大阪体育大学教授で,Jリーグの経営諮問委員会の委員をしている原田宗彦氏の近著「スポーツイベントの経済学」の言葉を借りれば,プロ野球興業は,他のプロスポーツと同様,プロ野球というサービス財(商品)が野球場で生産され,消費者であるプロ野球ファンがお金を払って観戦するという財の交換によって成立するビジネスである。すなわち,選手による「生産」(野球場での行為)とファンによる「消費」(プロ野球の観戦行為)が同時に行われるのがこのビジネスの特徴であり,消費者であるファンがいるところが生産拠点となる「需用者立地」という特性を持つ,ということになります。つまり,プロ野球興行というビジネスは,「消費者であるファンがいるところが生産拠点となる」,極めて地域性の高いビジネスなのです。地域性とはモラルの問題ではなく,ビジネス上の問題なのです。

プロ野球ビジネスとは,本来「プロ野球ファンがお金を払って観戦する」ことによって成り立つものであり,「球団が野球という興行を通して利益を追求」するビジネスのはずでした。ところが,戦前・戦後の日本のプロ野球興行市場の未成熟性からプロ野球は,プロ野球が持っている公共性に由来するメディア・バリューを生かした「親会社の宣伝機関」として「球団の親会社が野球という興行を通して利益を追求」するビジネスとして発展してきました。このため,本来の「プロ野球ファンがお金を払って観戦する」というプロ野球ビジネスの仕組みが忘れられてしまったのでしょうか。もちろん,これらの仕組みを作ったのは正力松太郎氏です。しかしながら,少なくとも同氏は,プロ野球の持っている公共性については意識していたと思われます。それが私(正力松太郎)に利するものであってもです。

ところが,渡辺恒雄氏は,プロ野球の持っている公共性を理解していませんし,ましてやプロ野球興行の基本である地域性についても理解していません。

これで,「東京読売巨人軍」はひとまず終了します。

up 

110(2002/07/22)  スポンサーシップと親会社の宣伝媒体の違い

現在のプロスポーツ・ビジネスにとって,放映権料やスポンサーシップが不可欠であり,これらはプロスポーツの持っているメディア・ヴァリューを利用して得られる収入です。放映権料も商業放送を前提にすると,広義的にはスポンサーシップに含めることができます。プロ・スポーツおけるスポンサーシップには次の3つがあります。ひとつはテレビやラジオのCMスポンサー。ひとつは,球場の広告看板や球場名のネーミング・ライツといった球場スポンサー。ひとつは,ユニフォームや球団ロゴの使用を許可された球団スポンサーです。球団スポンサーには球団名のネーミング・ライツも含まれます。

日本ではこの三つのスポンサーが別々になっています。CMスポンサーはテレビ局やラジオ局が集め,放送局の収入となります。球団は放送局から放映権料という形で権料を受け取るだけです。球場の看板は,球場が広告主を集め,収入を得て,その中から一部が球団の懐に入る仕組みになっています。球団が独自に集め,球団の直接の収入になるのは,球団スポンサーだけです。日本の場合,この球団スポンサーが球団オーナーとなり,正当なスポンサー料という形では,球団に支払が行われておらず,球団の赤字補填分が広告宣伝費等という名目で,球団スポンサー料が支払われているだけです。赤字がでればそれが,広告宣伝費という名目で補填されるため,日本の球団の多くが,赤字に「鈍感な体質」となってしまっています。しかし,赤字にならなければ,スポンサー料は払わなくてもいいという仕組みになっています。

この恩恵を受けているのが,セントラル・リーグの4球団の親会社です。セントラル・リーグの球団は,巨人以外の球団でも,巨人戦の放映権料を得ることができるため,黒字と言われています。中日,ヤクルト,阪神そして読売の4球団は,親会社の宣伝媒体として企業名を名乗りながら,親会社は広告宣伝費を支払う必要がないのです。さらに,読売ジャイアンツ(読売巨人軍)は,巨額の黒字を生み出しながら,その利益をプロ野球に還元するのではなく,親会社の利益のために使っています。
up

109(2002/07/20) 広告効果 大阪近鉄の場合

大阪近鉄バファローズの親会社近畿日本鉄道は,私鉄の最王手で,グループ企業は230社を超え,不動産・観光・流通を合わせた大企業です。ところが,この近鉄にも不況とデフレが襲いました。近鉄は,グループ全体の事業の見直しを行い,首都圏での近鉄デパートの撤退など実施しています。

このため,「親会社の広告宣伝媒体と考えているため,赤字にも鈍感な体質ができあがって」いたバファローズにも事業の見直しが求められました。合わせて,本拠地大阪ドームの経営危機という問題を抱えていました。事業の見直しの中で球団の売却も検討されましたが,結局は大阪の唯一の球団であることもあり,近鉄グループの有力なコンテンツとして生かされる道が選択されました。その大きな根拠になったのが,「広告効果は144億円相当」という数字でした。これは,バファローズが持っているメディア・ヴァリューを数値化したものです。これなら球団の毎年の赤字15億円もたいしたことはないということで,バファローズを存続するということで球団の経営改革がなされるようになったということです。(「奮い立て!大阪近鉄バファローズの奇跡の組織改革(神山典士著 実業之日本社)」から)

up

108(2002/07/20) 曲がり角

「メジャー野球の経営学(大坪正則著 集英社新書)」によれば,「2003年3月決算から導入された連結会計システムが,日本のプロ球団経営に大きなインパクトを与えています。日本の球団経営の実情は,ベールに包まれていると言っても過言ではありません。利益の大半を親会社に吸い上げられている球団もあれば,親会社の脛を長年にわたり,かじりつづけている球団もあるようです。しかし,連結会計の導入によって,球団と親会社とのあいだのお金の流れが,証券アナリストや株主から厳しく監視されることになりました。日本のプロ野球の12球団の上場会社の子会社です。球団決算が継続的に赤字の場合,親会社の株主から球団経営改善の要求が出るのは当然のこととなりました。一方,親会社が球団の黒字に大きく依存している場合は,親会社の経営陣に対する風当たりが強くなることは避けられません。」ということです。

プロ野球と日本経済というレポートを去年書きましたが,経済の動きとプロ野球というのは関連性があります。今,日本経済は,産業構造の大転換期にあり,日本の企業は,会計制度の変更を含めた構造転換,不況・デフレ,グローバル化といった経営環境の大変動に直面しています。親会社の宣伝媒体という企業依存体質にある日本のプロ野球では,この影響を大きく受けることになります。

横浜ベイスターズは,親会社マルハの赤字補填のため,株式がTBSに譲渡され,親会社が水産加工業のマルハから放送事業者のTBSに変わりました。福岡ダイエーホークスは,親会社ダイエーの経営再建のため,ドーム・ホテル・球団の三点セットでの黒字化と売却の危機に直面しています。日本ハムファイターズの札幌移転の動機は,球団の赤字30億円を5億円程度に減らすという赤字圧縮の狙いがあります。そういう流れの中で今回の読売新聞の持ち株会社化と読売巨人軍の独立子会社化という状況にあります。今回の改革は,従来,西部読売と中部新聞の赤字補填に使われていた黒字球団巨人軍の利益を,グループ全体で享受しようというものです。

up

107(2002/07/20)  赤字にも鈍感な体質

「プロ野球はもうけなくてもよい」(既述)で始まった日本のプロ野球(NPB)は,「球団オーナーの多くが,球団経営をビジネスとしてとらえておらず,親会社の広告宣伝媒体と考えているため,赤字にも鈍感な体質ができあがってしまっている」(スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」 原田宗彦著 平凡社新書)。

むしろ,プロ野球設立当時の方がビジネスとしての野球に対する熱い思いがあった。当時,プロ野球の設立に奔走し,「球団と親会社を切り離すべきだ」(既述)と正力松太郎に意見した鈴木惣太郎は,「昭和6年に,はじめて市岡忠男氏と職業野球の創設を語り合ったころには,筆者(鈴木惣太郎)の頭脳の中には,メイジャー・リーグの当時の経営方式が存在していたのである」(「巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀」佐野眞一著 文春文庫)と述べています。

しかし,戦前の段階では,プロ野球といっても,興行収入だけではとてもペイできるものではありませんでした。プロ野球は,プロ野球の持っているメディア・ヴァリューを利用して初めてプロとして成立することができたのです。といってもこのメディア・ヴァリューの利用はなにも正力松太郎の専売特許ではなく,当時新聞社を後援とする野球組織は既に確立していたものでした。それが朝日新聞が後援する中等野球と毎日新聞が後援する都市対抗野球でした。読売(正力松太郎)はこれらライバル新聞のやり方を模倣したにすぎないのです。

新聞社や鉄道会社にとってプロ野球は直接,収入増に結びつきますが,他の業種にとっては,プロ野球は直接収益に結びつくものではありませんでした。新聞社は,記事としてプロ野球を取り上げ,入場券を新聞の販売拡張に利用できました。鉄道会社は,郊外やターミナルに球場を建設することによって乗降客を増やすことができたし,沿線の価値を高めることもできました。これに対し,他の業種の企業では,企業名の宣伝や入場券を販売促進に利用する程度です。プロ野球の設立当時は,この直接収益に預かれる鉄道会社と新聞社に限られていました。その後,食品会社や映画会社などが親会社になったりしましたが,これらの会社にとって,プロ野球は単なる宣伝媒体に過ぎない存在になっていました。西武や近鉄は,鉄道会社といっても,鉄道の占める割合は小さく,むしろ不動産や観光,流通といった総合企業といったほうがいい会社です。

そこで今日の振り出しに戻ります。「プロ野球はもうけなくてもよい」で始まった日本のプロ野球(NPB)は,「球団オーナーの多くが,球団経営をビジネスとしてとらえておらず,親会社の広告宣伝媒体と考えているため,赤字にも鈍感な体質ができあがってしまっている」のです。その影で読売新聞グループは,プロ野球の持っている力(メディア・ヴァリュー)を利用して直接的に収益を上げるシステムを築き上げていったのです。

up

106(2002/07/17) 東京読売巨人軍の謎

1947年から球団の名称をそれまでの「東京巨人軍(ジャイアンツ)」を「読売ジャイアンツ」「東京読売巨人軍」に変更しています。リーグ登録名が「読売ジャイアンツ」で,球団自身の組織名が「東京読売巨人軍」,そして呼称が「巨人」。球団の社名も「大日本東京野球倶楽部」から「読売興業(株)」に変更になっています。いっとき,独立して「(株)読売巨人軍」になりましたが,結局「(株)よみうり」の前身である「読売興業(株)」の「東京読売巨人軍」という一事業部という形に落ち着きました。戦後,巨人は正式に読売新聞の組織に組み込まれたのです。

ここで疑問。なぜ,一度独立して会社名を「読売巨人軍」としたのに,組織名は「東京読売巨人軍」のままだったのか。球団の名称を「読売ジャイアンツ」に変更したのに,なぜ球団の組織名を「東京読売巨人軍」とし,東京を消さなかったのか。ユニフォームにTOKYOの文字がなぜ残ったのか,なぜ,名称変更時に「YOMIURI」としなかったのか。

さらに,読売新聞は,単なる東京のブロック紙に終わるのではなく,全国展開を考えていて,実際1952年には関西に進出し,さらに九州,中部地方へと進出しています。ジャイアンツが,九州や関西,北海道で主催ゲームをやるのは,この読売新聞の全国紙化と関係しています。この地方の読売新聞拡販材として利用されています。

とすれば,ビジター用ユニフォームはとっくに「TOKYO」を棄て,「YOMIURI」となっていてもよかったはずです。また,呼称にしても「巨人」ではなく「読売」でよかったはずです。「読売」と名乗った方が,読売新聞の宣伝効果があるはずです。

しかし,それができなかったのは,なぜか。それは「ジャイアンツ」の公共性にあると思います。そして,その理由は「スポーツの公共性を企業が侵すことは企業にとってデメリットになり,マーケティングという面から見ても,企業が前面に出るのはあまり望ましいことではない」からであると思うのです。

up 

105(2002/07/16)  戦後の大正力

大正力は,戦後,巣鴨での収監(1945年〜1947年)や公職追放(1946年)により,一時期,読売新聞の影響力を失っていましたが,その間の1949年にはコミッショナーなどをやっておりましたが,そこで二リーグ制や新球場の建設をぶちあげています。この頃は,少しはプロ野球の企業性に関心があったかも知れません。2リーグ分裂(1949年)ってのは大正力対読売新聞戦争の構図でもありました。公職追放を1951年に解除されると読売の影響力を取り戻しています。その後,すぐに日本テレビの開設に奔走し,1953年日本テレビの本放送を開始すると,CM放送と後楽園球場の独占放送という東京読売巨人軍を利用した収益体制を作り上げていきました。大正力は,巨人軍の公共性に基づくメディア・ヴァリューを利用して読売新聞の販売拡張と日本テレビの視聴者獲得に成功しました。1952年には大阪読売が発刊され,「東京」読売巨人軍の公共性の範囲が東京圏から全国へ展開し始めます。

ここで気になる文書を巨怪伝で発見しました。正力が日本テレビの開設にあたっては,資金不足から日本初の民放テレビということで朝日新聞や毎日新聞からも支援を受け,共同経営体制をとっていました。ところが「正力は両社からきた役員たちに向かって,テレビは国家的な事業である,私利私欲を捨てねばならない,個人が株をもつことはまかりならぬと,誓いをたてさせた。ところが,いつのまにか読売が筆頭株主になっていた。両者の役員たちが読売の株集めに気づいた他時はもう遅かった。日本テレビの株はほぼ読売が掌握し,新聞と同様,正力個人の手へと落ちていった」

「テレビは国家的な事業である,私利私欲を捨てねばならない」どっかで聞いたセリフですね。「職業野球は私(私企業)のものではない。広くファンのものだ,いわば公的なものだ」うーん,同じです。大正力にとってプロ野球の公共性もテレビの公共性も,自分の私利私欲のためにあるのであって,私(大正力)に関係のないこと(プロ野球の企業性)には結局,無関心だったということですね。一時期,自分の私利とプロ野球の企業性が合致しかけていたときには,多少関心があったかもしれないですが。

up 

104(2002/07/15)  興行収入とメディア・ヴァリュー

日本プロ野球の平均的な球団の収支は,2年前の朝日新聞の記事によれば,支出が50〜60億円で,収入は,入場料20億円,広告料やグッズの売上で20億円で,残りの20億円分がセントラル・リーグは放送権料で,パシフィック・リーグは,親会社からの広告宣伝費ということになります。つまり,収入に占める入場料収入の割合は3割〜4割で残りは放送権料や親会社の広告宣伝費といったメディア・ヴァリューを貨幣変換したものです。アメリカ4大スポーツの38%で,その他の放送権料やグッズの販売といったメディア・ヴァリューを利用した収入です。ヨーロッパ・サッカーの例で言えば,マンチェスター・ユナイテッドの入場料収入は32%で,他は放送権料やスポンサー料などです。アメリカ4大スポーツとマンチェスター・ユナイテッドの例は「スポーツ経済効果で元気になった街と国」(上條典夫著 講談社+α新書 780円 2002年5月)によります。

スポーツ興行で直接得られるのは,入場料収入であり,これが興行収入ということができます。その他の収入は,スポーツの持っているメディア・ヴァリューにより間接的に得られる収入です。そう考えた場合,現代の日米欧のプロスポーツの収入構造は,興行収入である入場料収入が収入に占める割合が3割〜4割で,残りは放送権料やスポンサー料といったメディア・ヴァリューを利用して得られる収入といった共通した構造をしていることがわかります。

※ プロ球団収入は,入場料収入のほかには,放映権,スポンサーシップ,マーチャンダイジングなどがありますが,このうち放映権とスポンサーシップは,メディア・ヴァリューを利用したものといえますが,マーチャンダイジングについては必ずしはいえない場合もあるとは思います。アメリカ4大スポーツとマンチェスター・ユナイテッドでは区分けも若干異なっています。ですから,ここでのことは傾向として捉えていただければいいと思います。

※ ヨーロッパのサッカー・クラブの場合としては,マンチェスター・ユナイテッドしか例に挙げていませんが,いわゆるビッグ・クラブを中心に似たような収入構造をしていると思われます。場合によっては,マンチェスター・ユナイテッドよりも放映権やスポンサーシップの割合が高いクラブもあります。

up

103(2002/07/14) 正力松太郎は巨人軍で立派に儲けている

「チームそれ自体の経営は赤字であっても『正力松太郎は巨人軍で立派に儲けている』」という言葉は,今でも親会社の宣伝機関という日本プロ野球の状態を言い得ているものです。ところが,興行収入+メディア・ヴァリュー=<>興行費用という図式で考えるとアメリカ4大プロスポーツやヨーロッパ・サッカー・クラブの収入状況と一致しています。

異なる点は,メディア・ヴァリューが日本では親会社が享受しているのに対し,欧米のプロスポーツは球団やクラブが享受しているという点です。興行収入自体では赤字であっても,興行収入+メディア・ヴァリュー>興行費用という関係にあって,メディア・ヴァリューを貨幣という形で,興行主体としての球団やクラブが享受できれば,「チームそれ自体の経営も黒字」になるはずです。

up 

102(2002/07/12) プロ野球は公的なものだ!

我が国のプロ野球は発足以来,オーナー企業の宣伝メディアとして機能してきました。このプロ野球の持っているメディア性こそ,正力松太郎がいう「職業(プロ)野球は・・・公的なものだ」というプロ野球の公共性に由来するものなのです。

スポーツ・マーケティングの第一人者,スポーツナビの広瀬一郎氏は著書「ドットコム・スポーツ」の中で「スポーツは特定企業に属することなく,一般性や公共性を持ちやすい。そこからコンテンツとしての価値,メディアヴァリューが生まれてくる。端的に言って,スポーツの商品化とは,公共的なスポーツには人々の関心が集まるということに着目して,メディアヴァリューを利用することである。」と述べています。

プロ野球をはじめとするスポーツは,公共性があり,メディア・ヴァリューがあります。このメディア・ヴァリューを利用することにより,正力松太郎は「チームそれ自体の経営は赤字であっても『正力松太郎は巨人軍で立派に儲けている』」といわれる仕組みを作ることができたのです。換言すると,正力松太郎は,プロ野球の「興行収入<興行費用」という状況を「(興行収入+メディア・ヴァリュー)>興行費用」に変換させることができたということになります。重要なのは,このメディア・ヴァリューを貨幣価値にいかに変換させることができるのかということになります。 

ところで,広瀬一郎氏は上記に続けて「したがってスポーツの公共性を企業が侵すことは企業にとってデメリットになり,マーケティングという面から見ても,企業が前面に出るのはあまり望ましいことではない。スポンサーシップを「協賛」と呼ぶのはこのためもあろう。」と述べています。つまり,スポーツの持っているメディア性は,あくまでもスポーツの持っている公共性に由来するものであり,その公共性を侵すことは,メディア性を損ねる結果になるというものです。

up 

101(2002/07/11) 正力松太郎は,何を考えていたか?

正力松太郎は,何を考えていたか?ユニフォーム研究家で知られる綱島理友氏は朝日新聞のコラムで「なぜなら,ジャイアンツと読売新聞が一体でなければならないというのは,そもそも『大正力』の正力松太郎の考え方だ。アメリカ野球通の球団顧問,鈴木惣太郎が『球団と親会社を切り離すべきだ』と意見したときに,正力はきっぱりとそれを断っている。」と書いています。このコラムは,読売ジャイアンツのビジター用ユニフォームから「TOKYO」が消え「YOMIURI」と変更になったことに対するものです。

また,「『近代プロ・スポーツ』の歴史社会学」(菊幸一著 不味堂1993)によると「『中日ドラゴンズ30年史』は,元セントラルリーグ野球連盟会長鈴木龍二が正力から,『プロ野球はもうけなくてもよい。国民一般が明るい娯楽として楽しんでくれて,勤労の意欲ともなれば,自分がプロ野球を作った意義が生かされる』という主旨の発言を聞いて鈴木自身がひどく感激したというエピソードを取り上げながら,『もし,ほんとに,正力が,そのように考えて,職業野球を作ったのであれば,それはたいへんな誤りではなかったかと思う。採算を考えない,職業,あるいは企業は,あり得ないことだから・・・』と述べ,日本のプロ野球がそれ自体,企業体として『よこしまな道』を歩み続けてきた要因と捉えている。」としています。

ところが,今月創刊された雑誌「野球批評」P120によれば「日本では読売新聞社が1934年(昭和9年)に大日本東京野球倶楽部(東京巨人軍)を発足させて以来,メディア企業とプロ野球が密接な関係を保ち続けてきた。だが,プロ野球の父と呼ばれる正力松太郎氏は,1955年発行の雑誌『野球界』7月号のインタビューで,『『読売』ジャイアンツとか,『阪神』タイガースなどというものはもってのほかだ。職業野球は私(私企業)のものではない。広くファンのものだ,いわば公的なものだ』と答えている。(スポーツライターの)玉木氏は『少なくとも正力さんには,巨人軍を創立したとき,読売が独占せず,他社にも利益を広く分け与えるという発想があった』」としています。

一見矛盾しているようですが,鈴木龍二氏に語った「国民一般が明るい娯楽として楽しんで」という言葉と雑誌「野球界」のインタビューに出てくる「職業野球は私(私企業)のものではない。広くファンのものだ,いわば公的なものだ」という言葉は,同じことを言っているのです。つまり,正力松太郎は,プロ野球には公共性があり,この公共性を利用して,読売新聞の部数を伸ばそうと考えていたということです。正力松太郎が,プロ野球の公共性を考えていたからこそ,読売ジャイアンツは,読売ではなく巨人なのです。大正力は,プロ野球の公共性を考えていますが,プロ野球の企業性については全く考えていなかったか,考えが足りなかった。その証拠に,大正力は,大日本東京野球倶楽部(東京巨人軍)結成後も,自前の専用球場を作らなかったことです。プロ野球にとって,専用球場は営業上欠くことができないものです。

up