あとがき



「私たちは何処へ行くのかしら?」
 イレーネのこの最後の台詞の答えが、この小説のタイトルになっています。
 何故分かるのかですって?
 それは、私が神様だから。
   ・
   ・
 冗談です。

 いえ、実のところ、あながち冗談とは言い切れないのですが。

 小説を書く醍醐味のひとつに、「神になれる」ということがありますです。
 小説における作者は、登場人物の生殺与奪のみならず、天変地異さえ起こせるのですから。
 その世界では、神そのものなのですね。

 実際やってみると、
「神様も楽じゃないな」
などとぼやきたくなりますが。(これはまた、別の話です)



 さて、この小説ですが、初めにお断りしたとおり、二次小説です。
 二次小説というのは、下敷きになる小説があります。
 その小説をキャラクターを利用して別の話を作ったり、キャラクターの性格を変えてみたり、色々なことをします。

 でも、下敷きがある以上、神様になることはできないわけです。
 『眠りの森の美女』に登場する、最後の魔法使い並みの力しか有りません。
「私に姫の呪いを解く力はありません。ぜいぜいそれを和らげるのが精一杯です」
 こんな所ですね。



 スルタンに愛されながら、改宗を拒んで、処刑されてしまったイレーネ。
 宗教というものは、それを心から信仰していない人間にとっては理解できないほど、信者にとって深いものなのでしょう。
 その辺りを、どうこう言うつもりはありません。

 もし、彼女がスルタンに対して憎しみを持っていたら?
 そして、自分の命と引き替えに、スルタンに復讐を企てたら?
 彼の欲する物を、遠くへ持ち去ってしまうという復讐を。

 ただ、こんなにスルタンに愛されて最後まで彼を憎み通すことができるだろうか?

 この物語は、こんな発想から生まれました。
 そして、悲劇的な結末を迎える2人を、何とか幸せにできないものだろうかと。
 この物語は、無い力を振り絞った出来の悪い魔法使いの、努力の結果です。



 「終わりよければ…」「結果オーライ」。
 両方とも私の好きな台詞です。
 でも、今回のスルタンに対する仕打ちは我ながら、ひどいなと思いました。(笑)

 『原作』でもご紹介した通り、彼女がスルタンの手にかかり死んでいくことは変えられなかったのですが。
 愛する女の首に短剣を振り下ろすスルタンの気持ちは、作者にも測り知れません。

 スルタンは、帝国内の抵抗勢力をまだまだ抱えていたました。
 その彼が、異教徒の妻を持つことは、当時彼が帝国内で推進していた「完全なイスラム化」にとって、非常にまずいことでしょう。
 このときのオスマン=トルコ帝国には、まだまだイスラムと言うより、遊牧民時代の名残があり、父の側近達(抵抗勢力)はその有力者でした。
(こういうことは、本当は本文中で説明しないといけないのですが)

 彼らに足下をすくわれないためには、彼は、イレーネを改宗させるか、処刑することだけしかありません。
 イレーネを取るか? スルタンの地位を取るか?

   昔の歌にこんなものがありました。
 『その手に抱えきれない夢を つかめる者だけが背負った十字架』
 (ガンダムの歌です(笑))

 権力を掴むと言うことは同時に、『責任』を背負うということです。
 スルタンは、この『責任』を果たすことを選択し、イレーネを捨てます。

 それがどんなに辛い選択だったかは、イレーネも分かっていたでしょう。
 気持ちを偽り通すことで、その選択を少しは楽にしようと考えたくらいです。
 でも、それを気付かせてしまったのは、作者の陰謀です。(笑)
 辛くても、愛する人と心が通じ合っていたことを知った方が、最終的には本人の心に幸せをもたらすのではないかと考えたので。



 文章については、お恥ずかしい限りです。
 これもたぶん10年くらい前に書いた物が、元になっています。
 雑誌投稿用に書き、没になったものです。

 今回、蛍さんのご厚意で、UPしていただくことになり、かなり手直しをしました。
 それでも、一度書いてしまった物は、なかなか上手く書き直す事はできませんね。

 元の小説は、100枚(400字詰め原稿用紙)制限で書いたものです。
 その際、下書きを削れるだけ削り、何とか制限以内に収めたので、書き足りないところが多々ありました。
 それを今回、加筆訂正しました。



 私が、登場人物の中で好きなのは、カラ=エルマスです。
 きっぱり、はっきりと自分の意志を通す。
 こんな所が、私としてはたいそう気に入っています。
 訂正前の小説では、彼女の出番は少なく、一昔前の少女漫画の悪役的な役回りのみでした。
 (バレエシューズに画鋲を入れるタイプのような(笑))
 それで、今回は出演方法を微妙に変えてみました。

 毒殺は、ちょっと「なん」ですが……まだ子供だから、発想が直情的なんですね。

 ラストシーンで、イレーネとスルタンが結ばれているのに対し、彼女は影も形もなかったですね。
 これは、書いている本人もちょっとかわいそうだなと思いましたが、やはり殺人を犯そうとした彼女は、何らかの修行を科せられているのだと思いますよ。
 仏教でしたら、
「もう一度、生の苦しみを味わってきなさい」
というところでしょうが。
 この後、幸せになってくれると良いですね。

 クズラル=アガも、わりと好きです。
 あそこまでキャッシュなお方だと、何故か憎めません。(笑)
 立ち回りが上手いから、出世できたのでしょうね。
(上手いというより、露骨すぎるような気も)

 スルタンの感情表現も、今回は7章でほんのちょっと加筆しました。
 以前の小説では、彼がイレーネをどう思っているのか読者に全く分からない状態だったので。
「彼は、どうしてイレーネが好きなの?」
 と、書いている本人も疑問に思ったほどですから。(←しょーもない)
 



 こんなつたない、長い小説にお付き合い戴き、どうもありがとうございました。
 何か、お叱り、文句、感想等が有りましたらメールかHPの方の「書き込み」をご利用ください。
 まずは、目を通していただけただけで作者としては、無上の喜びです。

 また、この場を貸して戴いた蛍さんには、本当に感謝致します。
 どうもありがとうございました。

  バジル

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(当然のことですが、「原作」のページに『ハーレム』から転用してある部分は除外します)