この物語の原作です



『天上の楽園』は、『ハーレム』1991年(アレヴ・リトル・クルーテイエ著)の文中で取り上げられていた、
『快楽の殿堂』1566年(ウイリアム・ホインター著)
『スルタンと家臣』1897年(リチャード・ディビー著)
『アイリーン』1708年(チャールズ・ゴーリング著)
の一部を読んで、この物語を作りました。


『ハーレム』に記載されている、イレーネに関する全文をここで取り上げておきます。



 メフメット征服王の横の棺に眠る名もなき女性は、多くの謎に包まれている。モッラー(イスラム神学者)達は、後年、キリスト教会から聖人の列に加えられたイレーネだと紹介している。スルタン・メフメットはイレーネの虜になってしまい、「昼といわず夜といわずイレーネと時を過ごしたが、それでもなお、執拗な嫉妬に身を焦がした」と、ウイリアム・ポインターは1566年の『快楽の殿堂』という寓話集の中で述べている。

 スルタンは彼女に全てを与えたが、イレーネは自分の信仰を捨てようとはしなかった。モッラーたちは異教徒を愛した科(かど)でスルタンを責めた。リチャード・ディビーの『スルタンと家臣』(1897年)によると、ある日メフメットはモッラー全員を宮殿の中庭に集めた。その真ん中に、輝くベールをあげると、イレーネの世にもまれな美しい姿が現れれた。「見てのと降り、この女は誰よりも美しい」と、スルタンは言った。「夢で見る極楽の天女(フーリー)よりも愛らしい。余は余の命よりもこの女がいとおしい。だが、余の命も余のイスラムへの愛にくべたら、取るに足りない」
 スルタンはイレーネの金髪をわしづかみにしてひねり上げ、短剣で一刀のもとにその首をはねた。


『アイリーン(イレーネの英語読み)』(1708年)と題する死の中で、チャールズ・ゴーリングはこの息詰まる一瞬を次のように書き留めた。

 国政への思い去り難く、今はなき名声を惜しむ
 わが愛妾を殺めける、そは王者の辛き努め
 わが熱き思いに、もはや応え得ず
 国を傾け、この胸に抱かれしそなた



 これだけです。(笑)

 これだけしか読んでいないので、まるで映画の予告編だけを見て、小説を書いたようなものです。
 果たしてこれが、二次小説と呼べるかどうかは、はなはだ疑問ですが。


 クライマックスのシーンは、『スルタンと家臣』を、ほぼそのまま利用させて戴きました。
 ただ、イレーネの髪を「わしづかみ」というのはちょっと…と思い、腕に巻きつけさせました。
 でも、わしづかみの方が、切った首がぶらぶらしないで良かったかな?

(何を悩んでるんだ!?)

 それと、処刑前のスルタンの言葉の選び方が、大げさで、舞台台詞のようだったので雰囲気を変えさせてもらいました。
 スルタンは、その場で感情を顕わにすると言うより、押し殺して言葉を吐き出すのではないかなと解釈したもので。

 ただ、これはキリスト教徒が書いた物で、イスラムでは自分の妻は他の男性の目に曝さないんですよね。
 だから、密かに殺してしまうのではないでしょうか?
 でも、これを守ると物語が地味になってしまうのであえて、この部分は無視させてもらいました。

 原作のイメージをかなり壊しているのではないかと思います。
 原作を知っていらっしゃる方、ごめんなさい。