夏の祭典−ナーダム−

男の祭典から国民の祭典へ

広いひろいユーラシア大陸に広がる大草原の緑と、おおきな宇宙 に抜けるような青空。そんな大地を、昔の人びとは馬で駆け
抜けていった。
紀元前、黒海周辺に最初の騎馬民族といわれるトルコ系民族スキタイの遊牧国家が誕生する。 その後も、ユーラシアには
匈奴(きょうど)、突厥(とっけつ)といった遊牧騎馬民族がうまれては滅んでいった。

13世紀にモンゴル系遊牧国家、モンゴル大帝国がチンギス・ハーンによって誕生する。
その大帝国の軍事訓練としてはじまったのが、モンゴル最大の祭典「ナーダム」といわれている。



当初、この祭典は「エリン・ゴルバン・ナーダム」(男の3つの祭典という意味)といわれ、男の祭典であった。しかし現在では、
モンゴル相撲以外の競馬、弓射には女性も参加する、国民の祭典となっている。
盛夏、大草原の緑が燃え盛る季節。社会主義の革命記念日である7月11日から3日間、首都ウランバートルをはじめ21の
各県の郡や町や村など、数百ヵ所にもおよぶ会場で、一斉に「ナーダム祭」を行う。
世界各地からも、この祭典を見るために、中国の北京からモスクワ行きのシベリア鉄道で、北はバイカル湖のあるイルクーツク
からの国際列車で、また空路はベルリン、モスクワそして日本から、ウランバートル近郊の大草原にある
チンギスハーン国際空港へ向かうモンゴル航空のエアバスも満席になる。

勝者は国民的英雄

競技は競馬、モンゴル相撲、弓射の3種目で行われる。

競馬の主役は6歳から12歳までの少年少女。競技前、ゴールとなる会場をパレードし、約30キロかなたのスタート地点へと
向かう。モンゴルの子どもたちは、幼い頃に自分の仔馬が与えられ、馬とともに育つ。 その日頃の腕が競われるのだから、
親たちも我が子の活躍に歓喜をあげる。やがて地平線から砂煙が見える。蹄の音が聞こえてくる。
ゴール近くに集まった大勢の観衆たちはどよめき、興奮は絶頂に達する。

モンゴル相撲は、大草原が土俵となる。先に相手を倒した方が勝ちで、技の数も多い。全国から力自慢が集まってくる。
日本でも白鵬、日馬富士や草分け的な旭鷲山、旭天鵬などモンゴル出身力士 が活躍している。勝者は国民の英雄となる。

弓射は男子75m、女子60m先の草原に置かれた的を射る。モンゴルの人びとの目はとてもいい。だから弓射の技術も高い。
かつて草原の戦闘などでつかわれた技術は競技として残っている。

勝者をたたえる歌が大地に響きわたり、モンゴルの夏、草原の恵みというべき、新鮮なミルクで醸くられた「アイラグ」という
馬乳酒が振る舞われる。こうしてモンゴル、北の大地の短い夏を人びとは思う存分楽しむのである。